産業医に何を依頼する?契約更新は必要?産業医選任後のよくある疑問を解説
「産業医選任しよう<準備編>」で産業医を選任したら、いよいよ実務スタートです。
会社として、産業医にお願いしたい内容は決まっていますか?
そもそも、産業医に義務づけられている業務は?産業医の契約更新って必要?万が一、産業医を変更したい場合はどうするの?など、産業医の選任後によくある疑問について解説します!
<特集>はじめてでも、すぐわかる。産業保健の基礎を学ぼう!
STEP1.健康診断の実施
STEP2.ストレスチェックの実施
STEP3.安全衛生委員会の立ち上げ
STEP4.産業医の選任 ← 今はここ
■この記事で学ぶ内容
産業医に何を依頼する?
産業医が行う主な業務は、以下の10項目になります。
- 衛生委員会への出席
- 衛生教育(衛生講話)
- 職場巡視
- 健康診断結果チェック
- 健康相談
- 休職面談
- 復職面談
- ストレスチェック実施者
- 高ストレス者面接指導
- 長時間労働者面接指導
詳しくは、「産業医の仕事って具体的に何?主な10個の仕事内容」の記事で説明しています。
1回の訪問時にこれらをすべて行うわけではありません。産業医の多くは、嘱託産業医という形態で、月1回の訪問でこれらの仕事を行っていますので、限られた時間の中で、優先順位をつけて選択的に行うことになります。
産業医に義務づけられている業務
これらの業務の中で、50人以上従業員がいる職場(事業場)で、法的に産業医が行うことが義務づけられているものを紹介します。
衛生委員会の構成メンバーになること
労働安全衛生法において、産業医は衛生委員会で会社側の構成メンバーになることが定められています。委員会への出席は義務ではありませんが、出席することが望ましいとされています。
産業医はあくまで、議題について専門家としてアドバイスや意見を述べる立場となり、衛生委員会を仕切る立場ではありません。
衛生委員会については「衛生委員会に必要な人数は?設置の目的は?よくある疑問を解説!」の記事で詳しく解説しています。
職場巡視
職場巡視とは、安全衛生上の問題点を見つけて改善していくことを目的として、作業環境を実際に見て回ることです。
労働安全衛生規則第15条第1項において、会社は産業医に少なくとも毎月1回、(条件付きで2ヶ月に1回以上)職場を巡視する権限を与え、職場環境の確認を行うことが定められています。
産業医がやることが望ましい業務
次に、産業医がやることが望ましい業務についてご紹介します。
健康診断後の健康診断チェック
労働安全衛生法第66条の4において、企業は健康診断の結果、異常所見があると診断された社員について医師等の意見を聴かなければならない、と定められています。
「医師等」とされていますが、産業医が労働者の健康状態や作業内容、作業環境についてより詳細に把握しうる立場にあることから、産業医から意見を聴くことが適当である、とされています。(出典:健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針)
健康診断後のフォローについては「健康診断の結果は誰が見られる?再検査は強制?実施後のよくある疑問を解説」の記事で詳しく解説しています。
また、50人以上従業員がいる職場(事業場)には、健康診断後に「定期健康診断結果報告書」を提出することが労働安全衛生法で義務づけられています。この報告書には産業医の押印が必要になります。
休職面談・復職面談
休職面談は、休職希望の社員が発生した場合や、体調不良での欠勤、遅刻、早退が続いているなどの状況が確認された場合に行う面談です。
復職面談は、職場復帰希望の社員が発生した場合に面談を行い、病状の回復程度を把握することにより、職場復帰の可否を判断するものです。
厚労省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」には、職場復帰において、主治医による診断を産業医等が精査した上で対応を判断することが重要、とされています。そのため、休職に入る前の休職面談、復職判断時の復職面談は、産業医が実施することが望ましいでしょう。
休職希望者への適切な対応については「休職者対応で事前に押さえておきたい13のポイント」の記事で詳しく解説しています。
ストレスチェック実施者
ストレスチェックの実施者は、ストレスチェックを企画し、結果の評価を行います。ストレスチェックの実施者は医師、保健師、厚生労働大臣が定める研修を修了し、検査のための知識を得ている看護師、精神保健福祉士が行う、と労働安全衛生法で定められています。
厚生労働省の「ストレスチェック制度実施マニュアル」の中では、産業医が実施者となることが最も望ましいとされています。
ストレスチェックについては「ストレスチェック義務化、職場できちんと対応できてますか?」の記事で詳しく解説しています。
高ストレス者面接指導
高ストレス者面接指導は、ストレスチェックの結果、高ストレスと判定された人の面接指導です。労働安全衛生法では、医師が行うと定められています。厚生労働省の「ストレスチェック制度実施マニュアル」の中では、その職場環境をよく理解している産業医を面接指導の実施者とすることが推奨されています。
高ストレス者面接指導については「ストレスチェック後の面接指導について、よくある10の疑問」の記事で詳しく解説しています。
長時間労働者面接指導
時間外・休日労働時間が1月当たり80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる労働者に対して、申し出があった場合、産業医は長時間労働者面接指導を行います。
また、時間外・休日労働時間が1月当たり100時間を超える研究開発業務従事者に対しては、申し出なしでも面接指導を行います。労働安全衛生法では、医師が行うと定められていますが、産業医が望ましいとされています。
健康相談
健康診断後などに健康相談希望の社員が発生した場合に、産業医は社員の健康について相談を受けることがあります。ただ、これは産業医に限ったことではなく、保健師や産業保健スタッフが受けることもあるでしょう。
産業医の契約更新って必要?
選任当時にどのような契約をしているかによります。紹介会社などが間に入って会社間で業務委託契約をしている場合は、1年ごとの自動更新になっていることが一般的です。
医師と会社の直接契約となっている場合は、その契約内容によります。
産業医を変更したいときは?
紹介会社などが間に入っている業務委託契約の場合は、紹介会社に変更したい理由を相談して、産業医とのやりとりを調整してもらうことになるでしょう。
医師と会社で直接契約している場合は、会社側が医師に直接、契約解除の希望を伝えることになります。ただ、契約している産業医と長年付き合いがあるなど、しがらみがあって容易には契約を解除できないこともあると聞きます。その場合、産業医を新たに選任し、2名体制をとるという方法をとるところも多いようです。
産業医を変更した場合は、「総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医選任報告様式」に記入し、労働基準監督署に提出しなければなりません。新任者の選任は、前任者の解任から14日以内に行う必要があります。
届出時に前任者の氏名と辞任解任の年月日の記入を忘れると、前任者も登録されたままになってしまうので注意が必要です。
まとめ
ではここで、学んだことをおさらいしてみましょう!
\ここがポイント!/
・産業医が行う主な業務は、以下の10項目
- 衛生委員会への出席
- 衛生教育(衛生講話)
- 職場巡視
- 健康診断結果チェック
- 健康相談
- 休職面談
- 復職面談
- ストレスチェック実施者
- 高ストレス者面接指導
- 長時間労働者面接指導
・法的に産業医が行うことが定められているのは「衛生委員会の構成メンバーになること」と「職場巡視」
・それ以外の業務も、産業医が行うことが望ましいとされている。
・産業医の契約更新は、業務委託契約では自動更新が一般的。企業と医師の間で雇用契約がある場合は、契約内容による。
・産業医を変更した場合は、新任者の選任は、前任者の解任から14日以内に行う。
確認しよう!学び度チェック
【問題】産業医がやることが法的に義務づけられている「職場巡視」。その頻度は?
A. 毎年1回
B. 半年に1回
C. 毎月1回
正解は…「C」!
労働安全衛生規則第15条第1項において、産業医は少なくとも毎月1回、(条件付きで2ヶ月に1回以上)職場を巡視し、職場環境の確認を行うことが定められています。
<つづけて読みたい>
▼この記事は「産業医を選任しよう」実施編です。準備編がまだの方は以下よりどうぞ。
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