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あなたの会社の産業医、「名義貸し」になっていませんか?罰則・リスクについて解説

多忙を極める人事・労務担当者にとって、産業医の選任はわからないことが多く、負担の大きい仕事かもしれません。
しかし、後のことを考えれば、安易に「名義貸し」等に頼って手を抜くと危険です。
労基署(労働基準監督署)から指摘が入り「労働基準関係法令違反に係る公表事案」として企業名を公表されるという最悪の事態を招いてから後悔しても、時すでに遅し。
しかも、産業医の選任にあたっては、気を付けていないと陥りやすい複数の落とし穴が潜んでいます。
今回は、その中でも「名義貸し」という罠にフォーカスして見ていきましょう。

目次[非表示]

  1. 産業医の「名義貸し」は違法なのか
  2. ストレスチェックや、高ストレス者への面接指導を担当しない産業医
  3. 「選任しているだけ」で、産業医が機能していない2つの理由
    1. 実務ができる産業医の不足
    2. 企業側が産業医を活用する姿勢の不足
  4. 「名義貸し」による罰則は?3つのリスク
    1. リスク1:労働安全衛生法の罰則
    2. リスク2:違反企業として公表される
    3. リスク3:追加の支払い
  5. 産業医の「名義貸し」が発覚するのはなぜ?
    1. 労働基準監督署の定期監督で発覚
    2. 労働基準監督署による申告監督で発覚
    3. 労働基準監督署の重点監督で発覚
  6. 産業医の「名義貸し」状態を解決するには
    1. 産業医の交代で「名義貸し」の問題を解決する
  7. 産業医を、「健康経営の柱」に

産業医の「名義貸し」は違法なのか

結論から言えば、産業医の「名義貸し」は違法です。
具体的には、産業医に選任された人が、労働安全衛生法で定める以下の業務を行わなかった場合、労働安全衛生法違反となります。

第十五条 産業医は、少なくとも毎月一回(産業医が、事業者から、毎月一回以上、次に掲げる情報の提供を受けている場合であって、事業者の同意を得ているときは、少なくとも二月に一回)作業場等を巡視し、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。
一 第十一条第一項の規定により衛生管理者が行う巡視の結果
二 前号に掲げるもののほか、労働者の健康障害を防止し、又は労働者の健康を保持するために必要な情報であって、衛生委員会又は安全衛生委員会における調査審議を経て事業者が産業医に提供することとしたもの


出典:労働安全衛生法

ストレスチェックや、高ストレス者への面接指導を担当しない産業医

ストレスチェックの実施者や、高ストレス者への面接指導は、【事業場の実情を理解している産業医】が行うことが最も望ましいとされています。

実施結果をもとに面接指導や職場環境の改善をする上で、普段から事業場の様子を巡視している産業医の方が、実態にあった提言が可能なためです。

しかしながら、事業場が選任している産業医から、ストレスチェックの実施者になることや、高ストレス者の面接指導を断られるケースも少なくありません。

厚生労働省労働衛生課調べ(平成 29 年7月)のストレスチェック制度の実施状況によると

  • 事業場選任の産業医がストレスチェック実施者となった企業は僅か49.4%
  • ストレスチェックを実施した事業場のうち、高ストレス判定者に対して医師による面接指導を実施した事業場は32.7%
  • そのうち事業場選任の産業医が面接指導を担当したのは79.1%

事業場選任の産業医でも、5割のケースでストレスチェック実施者を担当せず、2割のケースで面接指導を担当していないという実態があります。

これは、産業医を「選任しているだけ」で、産業医が本来担うべき役割を十分果たしていると言えない状態だと言えます。

「選任しているだけ」で、産業医が機能していない2つの理由

厚生労働省が公表した平成28年度の「過労死等の労災補償状況」によると、精神障害に関する労災件数は過去最大の請求1,586件、認定498件となりました。

労働者のメンタルヘルスは、無視できない喫緊の課題です。

「健康経営」や「働き方改革」というキーワードをよく耳にするように、国としても企業のメンタルヘルス対策には力を入れていく方向性が見られます。

それでもなお、メンタルヘルス対策の鍵を握る産業医が、依然としてうまく機能していないことが多い背景には何があるのでしょうか。

要因として【実務ができる産業医の不足】と【企業側が産業医を活用する姿勢の不足】という、産業医側と企業側双方の問題が考えられます。

実務ができる産業医の不足

産業医の中には、「メンタルヘルスは専門外だから、精神科の医師に頼んで」 と業務を断ってしまうケースや、医師として臨床が忙しく産業医の仕事と両立できていないケースなどが存在します。

産業医自身が名義貸しに疑問を持たず、本来の業務を行っていない場合、産業医として具体的にどのような仕事をしなければならないのか、一から説明する必要があります。

企業側が産業医を活用する姿勢の不足

一方で、企業側の「選任していればいい」という姿勢も大きな問題です。

「法規定されているため」、「罰則金を払わないようにするため」、「安全配慮義務違反にならないようにするため」にとりあえず選任しているという、いわゆる「名義貸し」という状態に陥ってしまうケースも少なくありません。例えば、健康診断を請け負っている会社等に相談したところ「職場巡視などの企業訪問なしで良ければ、月2万円で大丈夫です」と言われて、そのまま契約してしまったケース等があります。

「名義貸し」による罰則は?3つのリスク

「名義貸し」による罰則は?3つのリスク

産業医は、従業員の健康を維持するために必要なポジションです。職場訪問を渋る医師が頼りになるのか否か、契約の前にしっかり判断した方が良いでしょう。

月額コストを少しでも抑えるために、あえて産業医の名義貸しを依頼している企業もあるかもしれません。
しかし、月数万円、年間数十万円の産業医に支払う費用が浮いたとしても、労働安全衛生法違反が発覚したときの損害はそれ以上になる可能性があります。「名義貸し」による3つのリスクを紹介します。

リスク1:労働安全衛生法の罰則

産業医の未選任や、実態のない名義貸し選任の場合、「50万円以下の罰金」が科されるリスクがあります。

リスク2:違反企業として公表される

厚生労働省は「労働基準関係法令違反に係る公表事案」として、労働基準関係法令違反を行った企業を公表しています。
厚生労働省のサイトで誰でも見ることができるため、違反した企業をブラック企業と呼ぶ人も出てくるでしょう。

リスク3:追加の支払い

労働安全衛生法違反をきっかけに、労基署の更なる調査が入る可能性があります。
そこでもし未払いの残業代等が発覚した場合「50万円以下の罰金」とは比べものにならない金額を支払うことになるかもしれません。
名義貸しが発覚した場合の企業のリスクは大きく、長期間にわたって影響を及ぼすものです。経営者はもちろんのこと、人事・労務担当者も「知らなかった」では、済まされないでしょう。

産業医の「名義貸し」が発覚するのはなぜ?

産業医の「名義貸し」が発覚するのはなぜ?

産業医の「名義貸し」は、ほとんどの場合、労基署の企業への立入り調査がきっかけで発覚します。労基署の調査には、例えば次のようなものがあります。

労働基準監督署の定期監督で発覚

ランダムに企業を選んで行う、通常の調査です。事前に調査日程を調整し、必要な資料などの連絡があったうえで調査に訪れることが多いようです。

労働基準監督署による申告監督で発覚

労働基準法や労働安全衛生法に違反しているという内部告発があった場合に行われる、立入り調査です。証拠隠滅を防ぐために、ほぼ抜き打ち調査となりますが、情報提供者保護の観点から「定期調査」という名目を使うことがあります。

労働基準監督署の重点監督で発覚

2013年9月に、若者の使い捨てが疑われる企業等に対して集中的に「過重労働重点監督」が実施されました。

産業医の「名義貸し」状態を解決するには

産業医の交代で「名義貸し」の問題を解決する

自社の産業医が名義貸し状態であれば、しっかり活動できる産業医への交代を検討することが解決策になります

知らないとうっかり陥りやすい産業医の「名義貸し」ですが、発覚したときのリスクは計り知れません。社会的に健康経営が重視される今、産業医の選任は、採用と同じくらい慎重に行ってみてください。

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産業医を、「健康経営の柱」に

厚生労働省としても、産業医の選任強化や、ストレスチェック義務化など、メンタルヘルス対策を推進しています。

「選任しているだけ」の状態から、産業医を「健康経営の柱」として活用していくための第一歩として、まずは産業医について理解を深め、選任している産業医の職務内容を確認してみましょう。

従業員が50名を超えると、様々な産業保健活動が義務化されます。

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