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【産業医による職場巡視とは】2か月に1回でもOK?目的や頻度について解説

50名以上の労働者がいる事業場では、従業員の健康と安全を守るため、産業医と連携しながら職場巡視を行う義務があります。

しかし、「どこまでが義務範囲かがわからない」「実施する時間が限られている」など、職場巡視の実行に悩む人事・労務担当者の方も多いのではないでしょうか。

本記事では、産業医による職場巡視について、行う頻度や罰則規定、具体的な流れについて解説します。職場巡視を効果的に行うためのチェックポイントも紹介していますので、参考にしてみてください。


産業医による職場巡視は法令上の義務

職場巡視とは、労働安全衛生規則第15条で定められている義務です。職場を実際に巡回し、労働者の健康障害を防止するために作業環境や作業方法、衛生状態などを確認します。巡視の結果、改善が必要であれば産業医から改善や指導を行います。

産業医による職場巡視を行う目的は?

産業医による職場巡視を行う目的は、労働者の健康障害の防止です。産業医が実際に職場を巡視することで、業務による健康への影響や過重労働などのリスクを早期に発見します。作業環境測定や保護具の着用など、法令で定められた事項を守っているかの確認も行います。

また、産業医が現場の従業員とコミュニケーションを取ることも目的の一つです。面接指導後の就業判定や職場環境改善の参考にするため、職場を巡視することで産業医の業務理解が深まります。

職場巡視を行わない場合の罰則はある?

産業医が労働者の健康管理を適切に行っていないとみなされ、50万円以下の罰金が課せられる恐れがあります。また、労災発生時に職場巡視を怠っていたことが発覚した場合、安全配慮義務違反とされ、企業の責任が問われる可能性もあります。

従業員の健康と安全を守るため、法令に沿った職場巡視を行いましょう。

リモートやオンラインで巡視してもよい?

職場巡視は、産業医が現場に訪問し、直接確認を行う必要があります。作業環境や作業方法を直接確認することで、安全衛生上の問題点を発見できるからです。
例えば、作業場の気温や湿度、騒音レベル、従業員の作業動作などは直接確認しないと正確な評価が困難です。

リモートもしくはオンラインでの確認は、あくまで補助的な情報収集方法であることを理解しておきましょう。


産業医による職場巡視の頻度は原則月1回以上

産業医による職場巡視は、「少なくとも毎月1回」の実施が義務付けられています(労働安全衛生規則第15条)。産業医が定期的に訪問し、職場巡視ができる体制を整えておくことが大切です。

条件によっては2か月に1回でも認められる

平成29年6月施行の労働安全衛生規則の改正で、条件を満たせば産業医の職場巡視頻度を2か月に1回とする例外が認められました。2か月に1回とするための条件は以下の2つです。

  • 事業者の同意を得ていること
  • 事業者から産業医に所定の情報を提供すること


事業者の同意については、2か月に1回でも問題や支障がないかを衛生委員会での調査審議や産業医の意見を踏まえて判断します。

また、産業医に提供する所定の情報とは、以下を指します。巡視頻度が少なくなっても、労働者の安全が守られるよう、産業医への定期的な情報提供が求められます。

  • 衛生管理者が行った職場巡視の結果(毎週1回以上)
  • 職場巡視結果のほか、衛生委員会などで提供することを決定した情報(労働者の休業状況など)

  • 休憩時間を除いて週40時間以上かつ1か月当たり100時間以上働いた労働者の氏名、時間外労働の時間


産業医制度に係る見直しについて」(厚生労働省)を編集して作成

巡視頻度の見直しは、産業医の職務の「軽減ではない」ので注意

産業医の職務は職場巡視だけではなく、衛生委員会への出席や健康診断業務、就業判定、面接指導など多岐にわたります。
特に、社会的に増加するメンタルヘルス不調や、長時間・過重労働者対応など、産業医に求められる機会が増えています。
2か月に1回の条件が規定されているのは、あくまで産業医の職場巡視に限りますので、誤解しないように注意しましょう。巡視頻度にあわせて、産業医の訪問回数も減らすのは望ましくありません。

労働安全衛生規則の一部を改正する省令 (産業医の職務の改正関係 - 平成29年6月1日~ 施行) の適正・適切な運用を!【健康課】」(厚生労働省)を編集して作成

産業医による職場巡視の流れ

産業医による職場巡視の流れ

産業医と連携して職場巡視を進めるには、次の5つの流れで行うと効率よく行えるでしょう。

  1. 年間計画の立案
  2. 職場巡視チェックリストの作成
  3. 職場巡視の実施
  4. 職場巡視報告書の作成
  5. 改善が必要な箇所への対策

1.年間計画の立案

計画的に職場巡視を行うため、年間計画を立てましょう。
新年度が始まる前に、前年度の職場巡視結果を振り返り、新年度の重点的な巡視テーマを決定します。
例えば、「潜在的なリスクを洗い出す」「労災頻度の高い非定常業務をチェックする」など、具体的に決めましょう。

次に、具体的な巡視計画を立てます。以下のポイントを関係者間で確認し、産業医とも共有することで、効率的な職場巡視ができる体制を整えましょう。

  • 巡視対象:巡視する部署や場所、作業内容
  • 巡視を行う人:産業医の他に、衛生委員会メンバーの参加を促す

  • 巡視日程:巡視したい作業内容に合わせて設定

  • 巡視経路:巡視範囲と役割分担、当日の巡視順序

2.職場巡視チェックリストの作成

大まかな巡視計画が決まったら、確認箇所を示す職場巡視チェックリストを作成しましょう。チェックリストに法的義務は定められておらず、厚生労働省が推奨する共通の書式もありません。そのため、事業場や作業環境の特性に合わせて作成する必要があります。

具体的には、以下のようなポイントをチェックするとよいでしょう。

【工場の場合】

  • 作業内容に応じた照明の明るさ
  • 機械や設備のメンテナンス状況

  • 重量物や危険物の取扱い方法

  • 保護具着用など化学物質の取扱い方法

  • 4S(整理・整頓・清掃・清潔)の管理状況

【事務所・オフィス環境の場合】

  • VDT作業環境(PC作業)
  • 残業時間や出張回数の状況

  • 湿度や温度、Co2濃度、明るさなどの作業環境

  • 喫煙対策の有無

  • 避難経路の確保や地震対策など防災

株式会社エムステージの健康経営トータルサポートでは、産業医や衛生管理者が職場巡視を行う際のチェック事項をまとめた「職場巡視チェックリスト」を無料で提供しています。ぜひチェックしてみてください。

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3.職場巡視の実施

職場巡視の当日は、作成したチェックリストに沿って確認を進めていきましょう。巡視を行うメンバー間でチェックリストを共有し、項目の見落としを防ぎながら漏れなく行います。

職場巡視の際には、作業内容や環境を単に確認するだけでなく、現場の従業員や管理監督者とコミュニケーションを取ることが大切です。潜在的なリスクの発見につながり、安全管理上の問題をより深く理解できます。

また、巡視中に明らかな問題を発見した場合は、その場で直接フィードバックを行うとよいでしょう。例えば、保護具の未着用やマニュアル通りでない作業方法を見かけたら、即座に指摘し改善を促します。

4.職場巡視報告書の作成

職場巡視の実施後は、結果を報告書にまとめましょう。衛生委員会で調査審議を行う際の共通資料として役立ちます。報告書の公式フォーマットはありませんが、以下の内容でまとめるとよいでしょう。

  • 巡視日時
  • 巡視職場名

  • 巡視を行った者の氏名

  • 指摘事項

【報告書のサンプル】

報告書サンプル

出典「産業保健21職場巡視のポイント」(労働者健康安全機構)

5.改善が必要な箇所への対策

職場巡視報告書に記載された指摘事項については、衛生委員会や安全衛生委員会で共有し、改善計画を審議します。指摘だけで改善できる問題は即座に解決しやすいですが、全社的な対応が求められる問題もあります。

例えば、ある部署で確認された作業環境の問題に、設備の改修が必要な場合、予算措置も含めた対応が不可欠です。問題の大きさや影響範囲によって、委員会で十分に議論を重ね、適切な対応策を考えることが大切です。

産業医と連携して従業員が健康に働ける職場づくりを

産業医と連携して職場巡視を行うことは、法令遵守の観点だけでなく、従業員の健康と安全を守るために不可欠な施策です。そして、職場巡視を行った後も、環境改善を継続的に行っていくことが求められます。

職場巡視で見つかった問題点を、どのように改善すべきか迷うことも少なくありません。改善のためには、産業医と連携し、事業場の特性に応じた対策を取っていく必要があります。

株式会社エムステージの健康経営トータルサポートでは、官公庁や大手・中小企業まで幅広くご活用いただいている、産業医紹介サービスをご提供しています。お気軽にお問合せください。


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サンポナビ編集部

サンポナビ編集部

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