産業医の職場巡視は2か月に1回でもOK?頻度と条件について解説

職場巡視は、法で定められている産業医の重要な業務の1つです。

職場巡視は毎月必ず行われることが義務付けられていましたが、2017年の法律改正により、所定の条件を満たすことで「2か月に1回でも可能」ということになりました。

法改正のねらいや、「2カ月に1回」が可能になる条件とはどのようなものでしょうか。確認してみましょう。

産業医が行う職場巡視の重要性

職場巡視は、労働者の健康や安全を守るため、産業医が定期的に行う活動です。

企業に産業医が訪問し、五感を使って職場の状態を観察します。そして、職場に潜む危険や健康問題を察知し、解決に向けた取組をします。

また、単に職場を観察するだけでなく、職場巡視は従業員とのコミュニケーションをとる場としての機能があります。

職場巡視の主な機能は以下のものです。

・4S(整理、整頓、清掃、清潔の略)

温熱環境(温度計、湿度計の設置、冷暖房環境、事務所衛生基準規則で定められた基準を守っているか)

・照度(一般事務でも最低500ルクス、通常750ルクス以上、設計業務では1500ルクス以上が推奨)

・VDT作業(コンピュータを用いた作業)環境

・トイレの衛生環境

・休養・休憩室

・AED、消火器の場所

・休憩室の衛生管理ができているか(生ごみの臭いがないか、冷蔵庫の中の保存期限など)

・室温

問題があった場合には、衛生委員会等で報告し、改善を図ります。

※確認事項は企業の業種・業態よって異なります

法律の改正で職場巡視の頻度は「2か月に1回」でもOKに

2017年に労働安全衛生規則が改正され、それに伴い産業医の業務に関する内容も変更。

法律改正により、それまで「毎月1回以上行うことが義務」だった職場巡視が、条件を満たすことで「2か月に1回でも可能」となりました

その理由について、厚生労働省は「過重労働による健康障害の防止やメンタルヘルス対策等が事業場における重要な課題となっているため、“産業医の業務をより効率的かつ効果的”にする必要がある」としています。

つまり、産業医による職場巡視の頻度を減らしても構いませんが、その分、過重労働対策やメンタルヘルス対策の強化に時間を充てることを目指した法改正といえます。


産業医が企業に訪問して活動できる時間は限られているため、その時間を最大限に有効化していくことが求められています。

職場巡視を「2か月に1回」にするために満たすべき“条件”とは?

産業医による職場巡視を「2か月に1回」でも可能にするためには、2つの条件があります。ひとつは「事業者の同意」。もうひとつは「事業者から産業医に所定の情報を毎月提供すること」です。

1つずつ見ていきましょう。

事業者の同意とは?~衛生委員会で決定~

産業医から「職場巡視の回数を減らしたい」と申し出があったとしても、産業医の一存で頻度を決定することはできません。必ず事業者の同意が必要となります。

また、事業者のみの判断で決定することも不可です。同意のためには、産業医の意見を衛生委員会等で調査審議した上で決定することが必要です。

次に、職場巡視の頻度を変更する一定の期間を定めます。さらに、その一定期間ごとに調査審議した上で、産業医の意見に基づいて行います。

〈例えば…〉

1月から6月までの6か月間は職場巡視の頻度を2か月に1回にすると衛生委員会で決まった場合、7月の衛生委員会で再度話し合い、職場巡視の頻度が2か月に1回で問題ないか審議します。

資料:実務に役立つ「衛生委員会議事録フォーマット」のダウンロードはこちら

産業医に毎月提供する「所定の情報」とは?~衛生管理者の活動~

産業医に提出する「所定の情報」とは、次の①~③です。

① 衛生管理者が少なくとも毎週1回行う作業場などの巡視の結果

・職場巡視を行った衛生管理者の氏名、巡視の日時、巡視した場所

・職場巡視を行った衛生管理者が「設備、作業方法または衛生状態に有害のおそれがある」と判断した場合に、行った対策の内容

・その他、労働衛生対策の推進にとって参考となる内容

② ①のほか、衛生委員会の調査審議を経て事業者が産業医に提供することとした情報(例)

・長時間労働をしている従業員の氏名とその労働時間

・新規に使用される予定の設備名(化学物質も含む)、それを使用する時の業務内容

・従業員の休業状況

③ 長時間労働者の情報

・休憩時間を除き、従業員が1週間に40時間以上働き、その累計時間が1か月で100時間を超えている場合には、従業員の氏名と超えた時間の内容

資料:職場巡視に役立つチェックシートのダウンロードはこちら

産業医の訪問回数を減らすことが法改正の目的ではない

法改正で職場巡視の頻度が少なくできるようになったとはいえ、産業医の訪問回数を減らすことが法改正の目的ではありません

あくまでも産業医がこれまで職場巡視をしていた時間を活用して、過重労働対策やメンタルヘルス対策などを強化することがねらいです。

また、産業医は毎月行われる衛生委員会の構成員としての役割もあるため、単純に産業医の訪問回数を減らす目的で運用すべきではないでしょう


毎月1回、定期的に行われることが一般的な職場巡視。

職場巡視の頻度を減らすためにはいくつかの要件があります。それらの要件を満たすことは、企業の負担が増加することにもなります。

対応策としては、産業保健師などの専門職を導入することが挙げられます。医療の専門職を活用することで、企業の業務負担を軽減することができ、産業保健機能の強化にも効果が期待できます。

産業医が訪問する限られた時間を最大限に有効活用するためにも、職場巡視の頻度を変更する際は、企業と産業医が慎重に話し合った上で決めていくといいでしょう。



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