産業医の仕事って何?主な10個の仕事内容

働き方改革関連法の施行により法律上の権限が強化され、注目を集めている「産業医」。労働者が健康で快適な作業環境のもとで仕事が行えるよう、専門的立場から指導・助言を行う役割の医師のことをいいます。企業は従業員の人数が50人以上の事業場ごとに、産業医を選任する義務があります。

通常の医師とは違い、産業医の役割は診断や処方をすることはありません。では、産業医の仕事とは具体的には何でしょう?知っているようで知らない、産業医の仕事について解説します。

目次[非表示]

  1. 1.産業医の具体的な仕事は?
    1. 1.1.衛生委員会への出席
    2. 1.2.衛生講話
    3. 1.3.職場巡視
    4. 1.4.健康診断結果チェック
    5. 1.5.健康相談
    6. 1.6.休職面談
    7. 1.7.復職面談
    8. 1.8.ストレスチェック実施者
    9. 1.9.高ストレス者面接指導
    10. 1.10.長時間労働者面接指導
  2. 2.産業医になるための要件
  3. 3.産業医と主治医の違い
    1. 3.1.活動場所
    2. 3.2.対象者
    3. 3.3.業務内容
    4. 3.4.立場
    5. 3.5.事業主への勧告権


産業医の具体的な仕事は?

産業医は、具体的にどんなことをするのでしょうか?主な仕事を10項目に分けて説明します。

衛生委員会への出席

従業員の人数が50人以上いる企業は、衛生委員会を設置する必要があります。また、特定の業種(※下図参照)については、安全委員会も設置する必要があります。

産業医は、この衛生委員会・安全衛生委員会への構成員として出席し、意見を述べます。

一般的には、安全衛生委員会は毎月1回の産業医訪問時に実施する企業が多く、大体30〜40分程度で実施しています。産業医の出席は義務ではありませんが、構成員として出席することが望ましいとされています。

衛生委員会・安全衛生委員会では、必ず担当者が議事録を作成し、保存します。産業医が出席できなかった場合には議事録を産業医に共有し、産業医が内容を確認できるようにしましょう。

衛生講話

産業医が、安全衛生委員会や職場において、健康管理や衛生管理を目的に、社員に向けて研修を実施します。これを衛生講話といいます。

企業の希望に応じて行うもので、頻度・開催方法などが法律に定められているものではなく、健康教育の一環として企業・組織の自発的な要望により開催されるものです。

まずは、「衛生講話とは何か」ということを企業と産業医とで確認することが大切です。その上で必要であれば、職場の課題に応じた衛生講話の目的や内容を考えましょう。

職場巡視

産業医は少なくとも毎月1回(※)職場を巡視し、職場環境の確認を行います。これを職場巡視をいいます。

確認事項は、企業によっても異なりますが、主なものは以下になります。

  • 4S(整理、整頓、清掃、清潔の略)
  • 温熱環境(温度計、湿度計の設置、冷暖房環境、事務所衛生基準規則で定められた基準を守っているか)
  • 照度(一般事務でも最低500ルクス、通常750ルクス以上、設計業務では1500ルクス以上が推奨)
  • VDT作業(コンピュータを用いた作業)環境
  • トイレの衛生環境
  • 休養・休憩室
  • AED、消火器の場所
  • 休憩室の衛生管理ができているか(生ごみの臭いがないか、冷蔵庫の中の保存期限など)
  • 室温

問題があった場合には、衛生委員会等で報告し、改善を図ります。

※条件付きで2ヶ月に1回以上の職場巡視も可能です

健康診断結果チェック

産業医は、健康診断の結果、異常の所見があると診断された社員について就業判定を行い、就業制限や休職が必要と判断した社員に対して「意見書」を作成します。

企業は、「健康診断結果報告書」に産業医の押印をもらい、監督署に遅延なく提出する義務があります。

健康相談

健康診断後などに健康相談希望の社員が発生した場合に、産業医は社員の健康について相談を受けます

ストレスチェックの高ストレス者や長時間労働面談の対象者に、健康相談という名目で面談を行うこともあります。それにより、労働者にとっての面談のハードルが下がり、面談を受けてもらいやすくなるためです。

休職面談

休職希望の社員が発生した場合や、体調不良での欠勤、遅刻、早退が続いているなどの状況が確認された場合に、産業医は休職面談を行います

休職は本人からの申し出があることが基本であり、社員の休職希望の申し出から休職面談を行うという流れが一般的です。

休職者の対応については、「初めての休職者対応で事前に押さえておきたい13のポイント」の記事で詳しく説明しています。

復職面談

職場復帰希望の社員が発生した場合に、産業医は社員へ復職面談を行い、病状の回復程度を把握することにより、職場復帰の可否を判断します。

復職後の労働条件について、勤務の軽減等が必要な場合にはその旨期間を定めて就業制限を指示します。

復職までの流れは「復職後の再休職を防ぐには?適切な復職支援について」の記事で詳しく説明しています。

ストレスチェック実施者

産業医は、ストレスチェックの実施者としてストレスチェックの計画〜実施〜終了まで全般に関わります。

ストレスチェックの実施者についてはストレスチェックの実施者と実施事務従事者、どう違うの?で詳しく説明しています。

高ストレス者面接指導

ストレスチェックの結果、高ストレスであり、面接指導が必要であるとストレスチェックの実施者が判断した者を対象とする産業医による高ストレス者面接指導を行います

ストレスチェック後の面接指導については「ストレスチェック後の面接指導について、よくある10の疑問」で詳しく説明しています。

長時間労働者面接指導

時間外・休日労働時間が1月当たり80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる労働者に対して、申し出があった場合、産業医は長時間労働者面接指導を行います。

また、時間外・休日労働時間が1月当たり100時間を超える研究開発業務従事者に対しては、申し出なしでも面接指導を行います。

面接を行い、ストレス、その他の心身の状況及び勤務の状況等を確認します。それにより、社員のメンタルヘルス不調のリスクを評価し、本人に指導を行うとともに、必要に応じて企業による適切な措置につなげることができます。セルフケアのアドバイスを実施し、必要に応じて専門医を紹介することもあります。


産業医の多くは、嘱託産業医という形態で、月1回の訪問でこれらの仕事を行っています。限られた時間の中では、これらの仕事に優先順位をつけて選択的に行うことになります。

そのためには、企業側がまず自社の現状や課題を明確にしておく必要があります。自社として何を重点的に産業医に依頼したいかを判断し、産業医と一緒により健康的な職場づくりを推進していきましょう


産業医になるための要件

これらの仕事を行う産業医は、どういった人がなれる資格なのでしょうか?産業医になるための要件を解説します。

産業医になるには、労働者の健康管理等を行う専門性を確保するため、医師であることが前提ですその上で、以下のいずれかの要件を備えていることが必要となります。

  • 日本医師会の産業医学基礎研修を修了している:日本医師会認定産業医(5年毎更新)
  • 産業医科大学の産業医学基本講座を修了している
  • 産業医科大学で該当課程を修了、卒業し、大学が行う実習を履修している
  • 労働衛生コンサルタント(保健衛生区分)に合格している
  • 大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授、常勤講師又はこれらの経験者である

産業医と主治医の違い

では、産業医と病院などでお世話になる主治医とは何が違うのでしょうか?ポイントごとに解説します。

活動場所

産業医:企業内

企業内に専属として常駐する場合、嘱託で必要に応じて企業を訪問する場合があります。専属と嘱託については、「産業医の選任が義務になるのは、どのタイミングから?」の記事で詳しく説明しています。

主治医:病院・クリニック

対象者

産業医:職場で働く健康な人から心身の状態が優れない人まで

主治医:病気の人、医療機関を受診した人

業務内容

産業医:診断、治療は行わない(必要な場合は医療機関を紹介する)。具体的な内容は前述のとおりです。

主治医:検査、診断、治療を行う

立場

産業医:事業主と労働者のどちらかに偏らない中立的立場

主治医:患者本人の味方

事業主への勧告権

産業医:勧告権あり。産業医の立場から見て、職場改善が必要であれば、事業主に対して勧告を行います。

主治医:勧告権なし。


以上が、産業医と主治医の違いです。主治医は患者個人を診察するのに対し、産業医は労働者が健康に仕事が行えるよう、事業主と労働者に指導・助言を行っていく立場になります。

休職・復職にあたっては、産業医と主治医が連携をとっていく場面もあります。詳しくは「復職後の再休職を防ぐには?適切な復職支援について」で解説しているので、そちらもご覧ください。


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