〈総まとめ〉産業医とは?仕事内容・役割・臨床医との違いを10項目で解説

(最終更新日:2023年3月14日)

働き方改革関連法の施行により法律上の権限が強化されたことや、ストレスチェック制度のスタートにより「産業医」の存在が注目を集めています。

では、産業医とはどんな仕事をする人でしょうか?

本記事では、産業医の行う”主な10の仕事”と”産業医になるには?”といった内容について、要点をまとめています。

また、それぞれの項目について細かく解説した記事もご紹介します。

これから「産業医を選任する」「産業医を目指してみたい」とお考えの方は、ぜひチェックしておきましょう!


産業医とはどんな医師?

産業医とは、職場の安全・健康を守る医師

産業医とは、端的に言えば「職場の安全・健康を守る医師」です。

つまり、産業医は労働者が健康で快適な作業環境のもとで仕事が行えるよう、専門的立場から指導・助言をする役割を持った医師のことです。

そして、企業は従業員の人数が50人以上の事業場ごとに、産業医を選任する義務があります。

通常の医師(臨床医)とは違い、産業医の役割は診断や処方をすることはありません。

では、産業医の仕事とは具体的には何でしょう?知っているようで知らない、産業医の仕事について解説します。

目次[非表示]

  1. 産業医とはどんな医師?
    1. 産業医とは、職場の安全・健康を守る医師
  2. 〈まとめ〉産業医の役割と主な仕事内容の10項目
    1. 産業医の仕事①:衛生委員会への出席と意見出し
    2. 産業医の仕事②:衛生講話
    3. 産業医の仕事③:職場巡視
    4. 産業医の仕事④:健康診断結果チェックと就業判定~2020年8月より押印不要に~
      1. 〈2020年8月〉産業医による「押印」が不要に
    5. 産業医の仕事⑤:健康相談
    6. 産業医の仕事⑥:休職面談
    7. 産業医の仕事⑦:復職面談
    8. 産業医の仕事⑧:ストレスチェック実施者としての産業医
    9. 産業医の仕事⑨:高ストレス者への面談
    10. 産業医の仕事⑩:長時間労働者への面接指導
    11. 産業医の仕事:まとめ
  3. 〈要件を解説〉産業医になる・目指すには?
    1. 産業医になるための要件とは
  4. 〈違いの解説〉産業医と臨床医の役割
    1. 産業医と臨床医では「役割」が違う
      1. 活動する場所の違い
      2. 対象とする人の違い
      3. 業務内容の違い
      4. 立場の違い


〈まとめ〉産業医の役割と主な仕事内容の10項目

産業医は、企業において具体的にどんな仕事をするのでしょうか?

主な10項目に分けてやさしく解説します。


産業医の仕事①:衛生委員会への出席と意見出し

従業員人数が50人以上いる企業は「衛生委員会」を設置・開催する必要があります。

また、特定の業種(※下図参照)については、安全委員会も設置することが求められています。

一般的に、産業医はこの衛生委員会・安全衛生委員会への構成員として出席し、事業場に対して意見を述べます(※労働安全衛生法第18条)

安全衛生委員会の開催は産業医訪問時に実施する企業が多く、1回あたりおよそ30〜40分程度で実施しています。

なお、安全・衛生委員会への産業医の出席は義務ではありませんが、構成員として出席することが望ましいとされています。

2020年からは、衛生委員会をリモート開催する企業も増えていると思われますが、必ず担当者が議事録を作成し、適切に保存する必要があります。

そして、産業医が出席できなかった場合には議事録を産業医に共有し、産業医が内容を確認できるようにしましょう。

●衛生委員会の議事録に関する記事はこちら

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産業医の仕事②:衛生講話

産業医が、安全衛生委員会や職場において、健康管理や衛生管理を目的に、社員に向けて研修を実施します。

これを「衛生講話」といいます。

衛生講話は、企業の希望に応じて行うものです。

頻度・開催方法などが法律に定められているものではなく、健康教育の一環として企業・組織の自発的な要望により開催されます。

まずは「衛生講話とは何か」「うちの会社に必要な講話はどのようなものか」ということを企業と産業医とで確認することが大切です。

その上で必要であれば、職場の課題に応じた衛生講話の目的や内容を考えましょう。



産業医の仕事③:職場巡視

産業医は少なくとも毎月1回(※)職場を巡視し、職場環境の確認を行います。

これを「職場巡視」をいいます。

企業によって職場巡視の内容は異なりますが、主な内容は次のものです。

  • 4S(整理、整頓、清掃、清潔の略)
  • 温熱環境(温度計、湿度計の設置、冷暖房環境、事務所衛生基準規則で定められた基準を守っているか)
  • 照度(一般事務でも最低500ルクス、通常750ルクス以上、設計業務では1500ルクス以上が推奨)
  • VDT作業(コンピュータを用いた作業)環境
  • トイレの衛生環境
  • 休養・休憩室
  • AED、消火器の場所
  • 休憩室の衛生管理ができているか(生ごみの臭いがないか、冷蔵庫の中の保存期限など)
  • 室温

また、産業医による職場巡視で問題が発見された場合には、衛生委員会等で報告し、改善を図ります。

※条件付きで2ヶ月に1回以上の職場巡視も可能です。

●産業医の職場巡視に関する記事はこちら

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産業医の仕事④:健康診断結果チェックと就業判定~2020年8月より押印不要に~

産業医は、健康診断の結果、異常の所見があると診断された社員について就業判定を行います。

その上で、休職等が必要と判断した従業員に対して「意見書」を作成します。

企業は「健康診断結果報告書」に産業医の押印をもらい、労働基準監督署に遅延なく提出する義務があります。

〈2020年8月〉産業医による「押印」が不要に

法令の改正によって、2020年8月中旬からは「定期健康診断結果報告書等」やストレスチェックに関する産業医の押印が不要となりました。

電子化の促進を目指した法改正ですが、各種の結果については医療のプロである産業医に確認してもらうことが、企業の健康リスク低減につながるでしょう。


産業医の仕事⑤:健康相談

健康診断後などに、従業員から希望があった場合、産業医は従業員の「健康相談」を受けます。

また、ストレスチェックの高ストレス者や長時間労働面談の対象者に、健康相談という名目で面談を行うこともあります。

企業や産業医によって面談を行うまでのプロセスは様々ですが、従業員が面談を受けやすい環境を整備することで、健康に関するリスクマネジメントが行えます。

●産業医の面談に関する記事はこちら

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産業医の仕事⑥:休職面談

従業員から休職を希望された場合や、体調不良での欠勤、遅刻、早退等の状態が続いていることが確認された場合に、産業医は「休職面談」を行います。

休職は本人からの申し出があることが一般的であり、従業員の休職希望の申し出から休職面談を行うという流れが多いといわれています。

休職者の対応について、慣れている担当者ばかりではないと思いますが、いざとなって慌てないよう、事前に情報収集を心掛けておきましょう。

●休職者の対応に関する記事はこちら

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産業医の仕事⑦:復職面談

休職していた従業員から、職場復帰の希望があった場合に、産業医はその従業員に対し「復職面談」を行います。

そして、復職面談で病状の回復程度を把握することにより、職場復帰の可否を判断します。

また、復職後の労働条件について、勤務の軽減等が必要な場合にはその旨期間を定めて就業制限を指示します。

●従業員の復職対応に関する記事はこちら

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産業医の仕事⑧:ストレスチェック実施者としての産業医

産業医は、ストレスチェックの実施者としてストレスチェックの計画・実施・終了まで全般に携わることが多いです。

その際、産業医にはストレスチェック実施者として、専門的な立場からアドバイスを行ってもらう役割もあるのです。

また、少しややこしいのですが、ストレスチェックには「実施事務従事者」という役割を持った人も携わります。

それぞれの違いや役割について、事前に確認しておきましょう。

●ストレスチェックの実施に関する記事はこちら

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産業医の仕事⑨:高ストレス者への面談

ストレスチェックの結果、高ストレスにより面接指導が必要であると判断された従業員がいる場合には、産業医が「高ストレス者面談」を行います。

産業医による高ストレス者面接指導により、その後の就業に関する意見をもらうことや、場合によっては休業に関するアドバイスもなされます。

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産業医の仕事⑩:長時間労働者への面接指導

時間外・休日労働時間が1月当たり80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる労働者に対して、申し出があった場合、産業医は「長時間労働者面接指導」を行います。

また、時間外・休日労働時間が1月当たり100時間を超える研究開発業務従事者に対しては、申し出なしでも面接指導を行います。

面談を通じ、産業医がストレス状態やその他の心身の状況及び勤務の状況等を確認します。

それにより、社員のメンタルヘルス不調のリスクを評価し、本人に指導を行うとともに、必要に応じて企業による適切な措置につなげることができます。

また、セルフケアのアドバイスを実施し、必要に応じて専門医を紹介することもあります。

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産業医の仕事:まとめ

産業医の多くは、嘱託産業医という形態で、月1回・数時間の訪問でこれら数多くの仕事を行っています。

よって、限られた時間の中、産業医はこれらの仕事に優先順位をつけて選択的に行うことになります。

この限られた時間を有効活用するためには、企業側があらかじめ自社の現状や課題を明確にしておく必要があります。

そして、自社として何を重点的に産業医に依頼したいかを判断し、産業医と連携することが大切です。

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〈要件を解説〉産業医になる・目指すには?

産業医になるための要件とは

企業の健康を保持・増進する「産業医」とは、どういった人物がなれる職業なのでしょうか?

産業医になるための要件について、おおまかに解説します。

産業医になるには、労働者の健康管理等を行う専門性を確保するため、医師であることが前提です。

その上で、以下のいずれかの要件を備えていることが必要となります。

  • 日本医師会の産業医学基礎研修を修了している:日本医師会認定産業医(5年毎更新)
  • 産業医科大学の産業医学基本講座を修了している
  • 産業医科大学で該当課程を修了、卒業し、大学が行う実習を履修している
  • 労働衛生コンサルタント(保健衛生区分)に合格している
  • 大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授、常勤講師又はこれらの経験者である



〈違いの解説〉産業医と臨床医の役割

産業医と臨床医では「役割」が違う

では、病院などでお世話になる臨床医と産業医は何が違うのでしょうか?

それぞれポイントごとにまとめて解説します。


活動する場所の違い

産業医:企業や団体などの「職場」

臨床医:病院・クリニック


対象とする人の違い

産業医:職場で働く「労働者」

臨床医:けが・病気などの「患者」


業務内容の違い

産業医:健康を保持・増進する役割

臨床医:検査、診断、治療を行う役割


立場の違い

産業医:企業・労働者の間に位置する中立的な立場

臨床医:患者に寄り添う立場


以上が、産業医と主治医の主な違いです。

主治医は患者個人を診察するのに対し、産業医は労働者が健康に仕事が行えるよう、事業主と労働者に指導・助言を行っていく立場になります。

従業員が50名以上の企業(事業場)であれば、産業医を選任する義務があります。

しかし「産業医の選任についてよく知らない・・・」

「どうやって産業医を探せばいいの・・・?」とお悩みの方も多いはず。

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サンポナビ編集部

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