ストレスチェックの実施者と実施事務従事者は何をするの?
最終更新日:2023年3月6日
2015年よりスタートしたストレスチェック制度。ストレスチェックを実際に行うには、「実施者」と「実施事務従事者」を立てなければなりません。
また、2020年からはじまったは新型コロナウイルスの世界的な流行によって、2022年現在のわれわれの働き方も大きく変化しました。
働き方の変化があった際には、メンタルヘルス対策が重要だといわれています。
「実施者」と「実施事務従事者」それぞれの役割と仕事内容を説明します。
<目次>
ストレスチェックの「実施者」とは
ストレスチェックの実施者とは、ストレスチェックを企画し、結果の評価をする人のことです。
混同されることがありますが、ストレスチェック実施者は企業等の事業者のことではありません。
労働安全衛生法では、ストレスチェック実施者について下記のように定められています。
事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者による心理的な負担の程度を把握するための検査を行わなければならない。
引用:労働安全衛生法 第66条の10第1項
この「医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者」で、ストレスチェックを実施する人のことをストレスチェック実施者といいます。
「その他の厚生労働省令で定めるもの」とは、厚生労働大臣が定める研修を修了し検査のための知識を得ている「看護師」「精神保健福祉士」「公認心理師」を指します。
ストレスチェック「実施者」の役割
実施者がストレスチェックにおいて実際に行う仕事は、具体的には次の①~③の3点になります。
①専門的なアドバイス
事業者がストレスチェックの調査票の内容や項目を決定する際、専門的な立場から提案や助言、確認などを行います。
②評価方法や基準の確認
ストレスチェックで高ストレス者を選定する基準や評価方法を決定する際、衛生委員会の意見も踏まえつつ、専門的な立場から提案や助言、確認などを行います。
高ストレス判断の基準や評価方法については企業によって労働環境が異なるため、選定基準の最終決定は実施者ではなく、事業者が下します。
③面接指導の選定
ストレスチェックの結果を集計・分析し、面接指導が必要な労働者を選定します。
また、ストレスチェック実施者は、必要に応じて実施事務従事者に指示し、次の事項を行います。
- ストレスチェックの個人結果を本人に通知する
- 職場・部署ごとで集団分析を行い、事業者へ結果を報告する
- 高ストレスであって面接指導が必要な労働者に、医師による面接指導を受けるように勧奨する
ストレスチェックを外部事業者に委託する場合
ストレスチェックを外部機関に委託する場合の実施者には、以下の2つのパターンがあります。
- 外部機関に実施者も依頼する
- 自社で選任している産業医が外部機関と共同で実施者になる
厚生労働省の「労働安全衛生法に基づく ストレスチェック制度 実施マニュアル」では、以下のように、自社の産業医が共同で実施者となるパターンが推奨されています。
ストレスチェックの実施を外部機関に業務委託する場合にも、産業医等の 事業場の産業保健スタッフが共同実施者として関与し、個人のストレスチェ ックの結果を把握するなど、外部機関と事業場内産業保健スタッフが密接に 連携することが望まれます。
引用元:厚生労働省「労働安全衛生法に基づく ストレスチェック制度 実施マニュアル」
ストレスチェックの「実施事務従事者」とは
次に、ストレスチェックにおける「実施事務従事者」について説明します。
ストレスチェック実施事務従事者とは、実施者の補助を行う人のことです。
厚生労働省の「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」には下記のように定義されています。
実施者のほか、実施者の指示により、ストレスチェックの実施の事務(個人の調査票のデータ入力、結果の出力又は記録の保存(事業者に指名された場合に限る)等を含む。)に携わる者をいう。
引用元:厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」
実施事務従事者は、一般的には、社内の衛生管理者やメンタルヘルス担当者、産業保健スタッフ、事務職員が指名されます。
実施事務従事者を外部委託することも可能です。
実施事務従事者の人数についての規定はありませんが、一般に1~2名を配置する事業所が多く、規模の大きい所ではそれ以上を指名するケースもあります。
ストレスチェック「実施事務従事者」の役割
実施事務従事者は、実施者の指示に従って下記のような業務を行います。
- ストレスチェックの調査票の配布
- 調査票およびデータの回収
- 個人および集団の調査結果の出力
- 個人への結果通知
- 事業所へ集団分析の結果通知
- 面接指導対象者へ面接の勧奨・窓口業務
- 事業者に指名された場合は結果の保存
- ストレスチェック未受検者への声掛け
- 「ストレスチェック対象者管理基本台帳」の作成
実施事務従事者は、医師や実施者と同様に、労働安全衛生法の第104条によりストレスチェックの実施において知りえた情報を漏洩してはならないと定められています。
ストレスチェック実施者・実施事務従事者になれないのはどんな人?
ストレスチェック結果が、人事上の不利益な取扱いに利用されないようにしなくてはなりません。
そのため、労働者の解雇、昇進又は 異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある人は、ストレスチェックの実施者・実施事務従事者になることはできません。
人事を担当する部署に所属する者であっても、こうした権限を持たない場合は、実施者・実施事務従事者になることができます。
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ストレスチェック「実施者」は「面接指導担当医」にもなる?
最後に、実施者と面接指導担当医について説明します。
ストレスチェックを実施した後、高ストレス者判定が出た従業員が面接指導を受けることを希望した場合は、医師が面接指導を実施することになります。
この「面接指導担当医」は、実施者となっている産業医が担当することが望ましいとされています。
厚生労働省が各都道府県に向けた通達内では以下のように説明されています。
事業場の状況を日頃から把握している当該事業場の産業医がストレスチェック及び面接指導等の実施に直接従事することが望ましい
引用元:厚生労働省
しかし一部では、自社の産業医に依頼できず、実施者以外の医師が面接指導のみを行うケースもあります。
その理由としては、メンタルヘルスの専門ではないことへの不安や、業務の負担増になることから、産業医自身が実施者を担当することに消極的であること、などがあります。
ストレスチェックの「流れ」と「高ストレス者対応」についても確認しておく
以上、「実施者」と「実施事務従事者」の役割や仕事内容を説明しました。
それぞれを誰に担当してもらうかを決めることが、ストレスチェック実施前の第1ステップです。
ストレスチェック実施前に定めるべき8つの事項も参考にして、早速ストレスチェック制度導入のために実働していきましょう。
また、ストレスチェックの「流れ」や、高ストレス者への対応についてはこちらの記事で解説していますので、あわせてチェックしておきましょう
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