ストレスチェックを拒否する社員にはどう対応すればいいの?
2015年に義務化が始まったストレスチェック制度。実施することは義務化されているものの、社員が受検することまでは法的に義務付けられておらず、また、高ストレス者への面接指導も本人からの申出がなければ企業から強制的に受けさせることはできません。
そのため、ストレスチェックの受検を拒否する社員や、高ストレス者判定が出ているにもかかわらず面接指導の申出をしない社員がいることに不安を抱く人事・労務担当者の声は多く聞かれます。
そこで今回は、ストレスチェックを受検しない社員への適切な対応を解説します。
<目次>
2.ストレスチェックを拒否する社員に対して、企業側がとるべき姿勢は?
社員が拒否しても、法的責任は追及される?
労働安全衛生法や厚生労働省の定めるガイドラインの規定は、社員にストレスチェックを受検させることや、面接指導に関して絶対的な強制力をもったものではなく、あくまで社員の自由意思を尊重したものとなっています。
しかしながら、「社員が拒否したから、企業として法的責任を全うしている」とは言い切ることはできません。
企業側は実施義務が規定されているにも関わらず、社員側に受検義務がないことにより、企業側が潜在的な労務リスクを抱える状況となっています。
拒否されたからという理由で、ストレスチェックの未受検者をそのままにしておくと、安全配慮義務違反とみなされることがあるためです。
安全配慮義務とは
「安全配慮義務」とは、企業側が労働者に対して安全に働くことができるよう準備や配慮をする義務のことで、労働契約法にて、以下のように明文化されています。
(労働者の安全への配慮)
第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
引用元:労働契約法
危険な場所での作業など身体的な安全だけでなく、メンタルヘルスなど心理的な安全も含むと解釈されています。
ストレスチェック制度において、社員側が受検を拒否した、医師による面接指導を申し出なかった、という理由で適切な対応をしなければ安全配慮義務違反とみなされるリスクがあります。
例えば、社員の自殺や過労死などの労務問題が起きてしまった際に、その社員がストレスチェックを受検していないことが分かれば企業側が安全配慮義務違反を追求されてもおかしくありません。最悪の場合、訴訟問題になることや、社会的信頼を大きく失墜することにも考えられるでしょう。
このような労務リスクを減らすために、受検や申出を拒否する社員に対して適切な対応を行う必要があります。
ストレスチェックを拒否する社員に対して、企業側がとるべき姿勢は?
ストレスチェック指針によると、全ての労働者がストレスチェックを受検することが望ましく、そのために企業または実施者や実施事務従事者から受検勧奨することができると規定されています。
では、受検勧奨はどの程度まで行えばよいのでしょうか?厚生労働省のQ&Aを見てみましょう。
Q5-1 事業者が行う受検勧奨について、安全配慮義務の観点からどのくらいの頻度・程度で受検勧奨するのが妥当なのでしょうか。
A 受検勧奨の妥当な程度はそれぞれの企業の状況によっても異なると考えられます。
その方法、頻度などについては、衛生委員会等で調査審議をしていただいて決めていただきたいと思います。
ただし、例えば就業規則で受検を義務付け、受検しない労働者に懲戒処分を行うような、受検を強要するようなことは行ってはいけません。
これによると、どの程度まで受検勧奨を行えば安全配慮義務違反にはならない、と言い切ることはできません。
そもそも、安全というものは万が一のリスクを限りなくゼロに近づけるための不断な取り組みであり、かつ企業によっても事情が大きく異なるため、このような記載となっているのだと思われます。
明確な規定はないものの、企業は【安全配慮義務を果たそうと最善を尽くす姿勢を大切にするべき】と言えるでしょう。
適切なプロセスを徹底しよう
では、企業の「安全配慮義務を果たそうと最善を尽くす姿勢」とは?
具体的には
- 衛生委員会でストレスチェック、面接指導について調査審議をしっかりと行うこと
- 衛生委員会での決定事項に基づき、受検勧奨や面接指導の申出勧奨を確実に履行すること
など、適切なプロセスを通して説明責任を果たすことのできる状態にしおくことです。
受検者を増やすために受検勧奨を徹底していたという事実が、万が一の時の労務リスクを減らすことにも繋がるでしょう。
衛生委員会での調査審議、ストレスチェックの受検勧奨、面接指導の申出勧奨など、1つ1つのプロセスを徹底して丁寧に行っていきましょう。
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