休職者対応で事前に押さえておきたい13のポイント


メンタルヘルスを重視しているのは、今や大企業だけではありません。採用に苦労した中小企業が、積極的にメンタルヘルス対策に取り組んでいる事例もあります。


では、社員から「休職したい」という希望が出たとき、人事担当者はどのように対応すべきなのでしょうか?

休職を本人の個人的な問題と捉えた場当たり的な対処では、他の従業員にも会社に対する不信感が生まれ、第二、第三の休職者を生みかねません。
休職者が出たタイミングは、自社の課題を洗い出すチャンスでもあります。その場しのぎの消極的な対応ではなく、会社のピンチをチャンスに変える積極的な休職者対応をしたいものです。

今回は、初めて休職者対応を行う際に、人事担当者として押さえておきたいポイントを解説します。

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目次[非表示]

  1. 企業には休職制度を設ける義務があるのか?
  2. うつになるのは特殊な人なのか?
  3. 休職希望者への適切な対応とは?
    1. 休職希望者と事前に確認しておきたいポイント
    2. 1.      会社との連絡方法(連絡手段、内容、頻度、連絡先、会社側の担当者)
    3. 2.      休職時の制限事項と禁止事項
    4. 3.      復職の条件と復職までのフロー



企業には休職制度を設ける義務があるのか?

「休職」は労働基準法等の法律で定められた制度ではないため、企業には休職制度を設ける義務はありません。

休職期間や休職時の給与、復職の条件等は会社によって異なりますし、そもそも休職制度を設けていない会社もあるでしょう。

休職制度がなくとも、企業が法的にとがめられることはありません。しかし、昨今の健康経営を推進する時流や企業の社会的責任を考えれば、休職制度の設置やメンタルヘルス対策は避けて通れない喫緊の課題だと言えます。


実際、メンタルヘルス対策に取り組んでいる企業は、ここ数年で増加しています。厚生労働省の平成 27 年「労働安全衛生調査(実態調査)」によると、【メンタルヘルス対策に取り組んでいる】と回答した企業は全体の59.7%。平成23年の43.6%と比較すると、20ポイント近く増えています。

初めて休職希望者が出た場合は、まず自社の休職制度の有無から確認しましょう。休職制度がない場合は設置する、現状に即していない場合は見直しを視野に入れて確認することが、休職者対応の第一歩です。


うつになるのは特殊な人なのか?

うつは心が弱い人だけがなる病気ではありません。「心の風邪」と言われるほど、誰もがかかる可能性のあるものです。

例えば、古典的なうつ病である「メランコリー親和型うつ病」の場合、「周囲への気配りができて、仕事熱心で、几帳面なタイプ」がかかりやすいと言われています。こうした特徴は、企業が積極的に採用したい優秀な社員像と重なるのではないでしょうか。


もうお分かりだと思いますが、うつ病になるのは特殊な人ではありません。ごくごく一般的な人もかかる病気であり、むしろ優秀な人材が我慢に我慢を重ねた結果うつ病を発症することも珍しくありません。

メンタルヘルス不調者が出たからと言って、人事担当者や該当部署の残されたメンバーが「うちの会社はブラック企業なのだろうか…」と激しく落ち込む必要はないでしょう。

メンタルヘルスの不調による休職は、誰にもどの会社にも起こり得る、現代社会が抱える一般的なトラブルのひとつなのです。


大切なことは、復職を見据えた休職対応をしっかりと行うこと。そして、次のメンタルヘルス不調者を出さないように、不調者が休職に至った原因に向き合い、出来る限り根本的な対処を行うこと。

休職者の仕事量はどうだったのか、人事評価は適切にされていたのか、部署の人間関係に問題はなかったのか等々、人事担当者として次なるトラブルを防ぐために確認しておきたいポイントは多々あるはずです。



休職希望者への適切な対応とは?

休職とは、企業が「就労に適切でない」と判断した社員に対して、労働関係を維持しつつ労働義務を一時的に免除または禁止するものです。


休職には、他社への出向に伴う「出向休職」、労働組合の活動に専念する場合に適用される「専従休職」等さまざまな種類がありますが、今回は「私傷病休職」、その中でも数の多い「メンタル疾患による休職」を前提として説明します。


業務上の傷病とは異なり、私傷病による休職の場合、法的な雇用保障はありません。

健康保険法による傷病手当金の給付は定められていますが、会社としてどのような条件で休職が可能なのか、復職するためにはどうすれば良いのか、最初にきちんと今後の道筋を説明することが重要です。


休職希望者と事前に確認しておきたいポイント

  1. 休職理由
  2. 休職手続きの方法
  3. 休職期間(保障期間や最長期間)
  4. 休職中の給与や手当
  5. 休職中の保険料等
  6. 傷病手当金の給付手続き
  7. 会社との連絡方法(連絡手段、内容、頻度、連絡先、会社側の担当者)
  8. 主治医による診察および治療の報告義務
  9. 休職時の制限事項と禁止事項
  10. 休職中のリワーク・プログラム(会社の支援範囲)
  11. 復職の条件と復職までのフロー
  12. 再度休職する場合の休職日数の計算方法
  13. 復職前に休職期間が満了した場合の対応

こうしたポイントを先に押さえておくことで、休職者は安心感を得られ、会社は後手対応に回ることを避けられます。

「休職者がスムースに会社に戻れる環境づくりは、休職と同時にスタートしている」ということを念頭に置いて、一つひとつ対応すると良いでしょう。


特にメンタル疾患の場合、次の3点について企業がイニシアチブを取ることで、トラブルを未然に防ぐ確率はグンと上がります。


1.      会社との連絡方法(連絡手段、内容、頻度、連絡先、会社側の担当者)

休職期間の最終期限が迫ってくると、焦って復職を希望する休職者もいます。

しかし、突然「もう大丈夫です」と言われても、本当に大丈夫かどうかすぐに判断することは難しいでしょう。

そこで、休職者の状態を定期的に確認するフローをあらかじめ設けておくことが重要です。また、最初はメールから始めて最後は対面に変えるなど、連絡手段に段階を設けることで復職までの道筋がつきやすくなります。


2.      休職時の制限事項と禁止事項

メンタルヘルス不調者の場合、会社で感じていたストレスがなくなると以前と同じような日常生活を送れるようになるケースは珍しくありません。

そうした場合、休職者が休職期間中に旅行をしたり、さらにはその写真をSNSに公開したり…といったことも起こり得ます。

しかし、詳細を知らされていない他の社員が休職者の旅行写真を目にした場合、どんな気持ちがするでしょうか。

それがきっかけで職場の雰囲気が悪化し、新たな不調者が出る可能性もあります。休職中に避けて欲しい事項があれば、その理由とともに事前に伝えておきましょう。


3.      復職の条件と復職までのフロー

休職者が「復職したい」という意志を持っており、主治医が復職可能と判断した場合でも、職場環境によっては再休職のループに陥ることがあります。

そこで重要になるのが、職場環境や休職者の職務を把握している産業医の意見です。

ただし、産業医が「復職は時期尚早」と判断した場合、休職者の復職意向が強ければ強いほど揉める可能性が高まります。

場合によっては、訴訟問題に発展するリスクも。人事担当者としては、リスク回避のためにも、事前に「誰が、何を基準に、復職可能と判断するのか」「復職までにどのようなフローがあるのか」「会社として、復職時にどのようなサポートが可能なのか」を明確にしておく必要があります。

休職から復職までの一連の流れを確認するには、厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」に目を通しておくと良いでしょう。


「休職者のゴールは、退職ではなく復職である」と人事担当者が目標を明確に定めることが、復職への第一歩。休職期間への入り方によって、復職率が変わると言われています。


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