ストレスチェックを外部委託するなら、産業医を共同実施者に!
2015年より義務化が始まったストレスチェック制度。
2017年7月に厚生労働省が公表したストレスチェック制度の実施状況では、外部機関にストレスチェック実施者を委託した事業場の割合は41.8%、面接指導を外部委託先の医師に依頼した事業場は15.1%でした。
ストレスチェックを外部委託することで、スムーズに実施できるなどのメリットがありますが、注意すべき点もあります。今回は、ストレスチェックを外部機関へ委託する際のチェックポイントについてまとめました。
<目次>
ストレスチェックの外部委託の範囲
ストレスチェック制度は、以下の5ステップで構成されています。
- ストレスチェック制度に関する方針決定
- ストレスチェック実施
- 高ストレス者の中で希望者を対象に「医師の面接指導」実施
- ストレスチェック結果の分析と職場環境の改善(※努力義務)
- 労働基準監督署への報告
労働基準監督署への報告は事業場の義務になりますが、労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアルにあるように、ストレスチェック又は面接指導の全部又は一部を外部機関に委託することが可能です。
ストレスチェック又は面接指導は、事業場の状況を日頃から把握している当該事業場の産業医等が実施することが望ましいが、事業者は、必要に応じてストレスチェック又は面接指導の全部又は一部を外部機関に委託することも可能である。この場合には、当該委託先において、ストレスチェック又は面接指導を適切に実施できる体制及び情報管理が適切に行われる体制が整備されているか等について、事前に確認することが望ましい。
引用元:厚生労働省『労働安全衛生法に基づく ストレスチェック制度 実施マニュアル』
外部委託する場合の注意点
ストレスチェックの実施者と実施事務従事者以外は、労働者の個別の同意がなければ、ストレスチェックの結果を把握することができません。
(参考:サンポナビ「ストレスチェックの実施者と実施事務従事者、どう違うの?」)
ストレスチェック実施の本来の目的は、労働者自身のストレスへの気付きを促すとともに、職場改善につなげ、働きやすい職場づくりを進めることによって、労働者がメンタルヘルス不調となることを未然に防止することです。
外部機関と自社の産業医の連携がうまくいかないと、就業状の措置や職場環境の改善などストレスチェック実施後の対応がうまくいかず、ストレスチェックの本来の目的を達成できない可能性があります。
外部委託する際は、ストレスチェックを実施するだけではなく、その後の措置や改善がブラックボックス化しないように注意しましょう。
自社の産業医を「共同実施者」に
このような問題を解決するために、厚生労働省は自社の産業医が共同実施者となり、密接に連携することを推奨しています。
共同実施者とは、ストレスチェックを外部委託する場合に、外部のストレスチェック実施者と共にストレスチェックを実施する自社の産業医等のことです。
共同実施者がどの程度ストレスチェック実施に関与すべきかの参考として、厚生労働省のストレスチェック制度関係 Q&Aには以下のように示されています。
Q
ストレスチェックを外部委託し、事業所の産業医は個々人の結果を把握するた めに、共同実施者となる予定ですが、どの程度関与していれば共同実施者といえるの でしょうか。
A
少なくとも、事業者が調査票や高ストレス者選定基準を決めるに当たって意見を述 べること、ストレスチェックの結果に基づく個々人の面接指導の要否を確認すること が必要です。
引用元:厚生労働省 「ストレスチェック制度関係 Q&A」
つまり、自社の産業医が共同実施者として関与し、ストレスチェック制度全体の方針決定や、ストレスチェック実施後の対応策などに意見を述べるべきということです。
もしも産業医が共同実施者でない場合には、個人のストレスチェックの結果は 労働者の個別の同意がなければ産業医が把握することができず、十分な対応を行うことが難しくなる可能性があります。
共同実施者として、産業医が具体的にすべきこと
具体的に、産業医の共同実施者としての役割は以下の4点です
- ストレスチェックの質問項目や高ストレス者の選定基準の方針について意見を述べること
- 個人のストレスチェック結果に基づく医師による面接指導の要否に関して確認すること
- 面接指導の申出の勧奨
- ストレスチェックや医師による面接指導の結果の記録、保存
ストレスチェックを外部委託する際は、自社の産業医に相談し、共同実施者としてのどのような役割を担ってもらうかを確認しておきましょう。
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