【よくわかる】衛生委員会とは?設置基準・メンバー構成等に関する4つの要点
(最終更新日:2023年3月1日)
一定の基準に該当する会社では安全委員会、 衛生委員会(または両委員会を統合した安全衛生委員会)を設置しなければなりません。
本記事では「これから衛生委員会を設置する」「はじめて衛生委員会の担当者になった」という方に向け、衛生委員会に関する情報をまとめています。
衛生委員会を設置する目的や設置基準、構成メンバーとその人数など、衛生委員会を設置する前の「よくある疑問」について4つの要点を紹介します。
目次[非表示]
〈要点①〉衛生委員会とは?設置の目的・役割を知る
衛生委員会とは、職場の健康と安全確保を目的として設置する委員会
衛生委員会は、働く人の健康障害・労働災害を防止することや、健康の保持増進・健康教育を目的として設置することが求められています。
健康障害や労働災害の防止には、事業者からの一方的な指示だけでは足りず、労働者の協力も不可欠なもになります。
そのため、衛生活動については労使一体となって取り組むことが大切であり、衛生委員会はその協議の場としての役割があるのです。
また、月に1回程度行われる衛生委員会のベーシックな活動内容として、職場の状況(休職者・長時間労働者の発生状況等)の共有や、産業医による衛生講話等が挙げられます。
衛生講話で取り上げるテーマについては、例えば「5月病に備えて、4月はメンタルヘルスの内容にしよう」「夏到来前の6月に熱中症予防をテーマにしよう」といったように、職場の課題やシーズンに合ったものが選ばれるケースが多いです。
このように、衛生委員会は職場の安全や健康を確保するためにとても重要な役割を持っているのです。
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〈要点②〉衛生委員会の設置義務・基準を確認する
衛生委員会の設置義務・基準
衛生委員会の設置は労働安全衛生法(※)により義務化されています。
そのため、対象となる企業等はもれなく衛生委員会を設置し、適切に運営することが求められています。
なお、衛生委員会では業種を問わず、常時50人以上の労働者が在籍している場合に衛生委員会の設置をする必要があります。
※(衛生委員会) 第十八条
事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、次の事項を調査審議させ、事業者に対し意見を述べさせるため、衛生委員会を設けなければならない。
一 労働者の健康障害を防止するための基本となるべき対策に関すること。
二 労働者の健康の保持増進を図るための基本となるべき対策に関すること。
三 労働災害の原因及び再発防止対策で、衛生に係るものに関すること。
四 前三号に掲げるもののほか、労働者の健康障害の防止及び健康の保持増進に関する重要事項
出典:労働安全衛生法 第18条
安全委員会の設置基準
もうひとつ、安全委員会の設置基準についても紹介します。安全委員会は、業種により設置基準の人数が異なります。
①従業員50人以上で次の業種に該当するもの
林業、鉱業、建設業、製造業の一部の業種(木材・木製品製造業、化学工業、鉄鋼業、 金属製品製造業、輸送用機械器具製造業)、運送業の一部の業種(道路貨物運送業、 港湾運送業)、自動車整備業、機械修理業、清掃業
②従業員100人以上で次の業種に該当するもの
②製造業のうち①以外の業種、運送業のうち①以外の業種、電気業、ガス業、熱供給業、 水道業、通信業、各種商品卸売業・小売業、家具・建具・じゅう器等卸売業・小売業、 燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業
安全衛生委員会の設置基準
安全委員会および衛生委員会の両方を設けなければならない場合には、それぞれの委員会に替えて安全衛生委員会としての設置が可能となっています。
衛生委員会・安全衛生委員会等の設置基準についてまとめる、下の表のようになります。
業種 |
常時使用する労働者の数 |
安全委員会 |
衛生委員会 |
|
1 |
林業、鉱業、建設業、 製造業の一部(木材・木製品製造業、化学工業、鉄鋼業、金属製品製造業、輸送用機械器具製造業)、 運送業の一部(道路貨物運送業、港湾運送業)、 自動車整備業、機械修理業、清掃業 |
50人以上 |
必要 |
必要 |
2 |
製造業(1以外) 運送業(1以外) 電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器等小売業、 燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業 |
100人以上 |
必要 |
必要 |
3 |
1と2以外の業種 |
50人以上100人未満 |
義務なし |
必要 |
〈要点③〉衛生委員会の人数と構成メンバーを決める
衛生委員会を構成するメンバー・人数の決め方
次に、衛生委員会を構成する委員についてです。メンバーの決め方についても定めがあるため確認しておきましょう。
衛生委員会は以下のようなメンバーで構成されます。
- A:総括安全衛生管理者または事業の実施を統括管理する者若しくはこれに準ずる者(1名)
- B:衛生管理者
- C:産業医
- D:衛生に関し経験を有する労働者
上記Aの人物が衛生委員会の議長を務めることになります。そして、A以外のメンバーに関しては事業主が氏名する必要があります。
その他、A以外の半数のメンバーについては(労働者の過半数で組織される)労働組合にて、労働者の過半数を代表する推薦された人を指名します。
労働組合が無い場合であっても、労働者の過半数を代表する人を指名しなければなりません。
ちなみに、衛生委員会を構成するメンバーの人数については特に定めはありません。
よって、会社の規模や業務の実態に基づいて適宜決定するものとされています。
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衛生委員会の構成を図で表すと以下のようになります。
〈要点④〉衛生委員会メンバーの役割・資格・選任上の注意点を知る
A:衛生委員会における議長の役割
前述したAの人物が衛生委員会の議長を行います。議長は衛生委員会の司会進行を行う最も重要な役割です。スムーズな進行を心がけましょう。
また、社内に総括安全衛生管理者がいる場合は、総括安全衛生管理者が議長として指名されます。
企業等の規模によって総括安全衛生管理者がいない場合は、人事部長、総務部長、工場長、支店長などが指名されることが一般的です。
統括安全衛生管理者については、厚生労働省の「統括安全衛生管理者について教えてください。」が参考になります。
B:衛生委員会における衛生管理者の役割
続いて衛生委員会メンバーBの人物「衛生管理者」の役割についてです。
Bの人物は「衛生管理者」の資格を有している必要があります。また、この資格は人事・総務担当が取得していることが一般的です。
衛生管理者はストレスチェックの実施事務従事者になることも多く、産業医とのやりとりの窓口になることも多い。
そのため、人望があり、職場のことをよくわかっている従業員で、役職者でない方がこの役割を担うことが望ましいとされます。
C:衛生委員会における産業医の役割
産業医は専門家としての意見を述べる会社(事業者)側のメンバーです。産業医の出席は義務ではありませんが、構成員として出席することが望ましいとされています。
なお、産業医は議長ではありませんので、衛生委員会を仕切る立場ではありません。
産業医は、医療を修めた専門家の目線から、労働災害の原因および再発防止についてアドバイスをします。
企業によっては産業医が衛生委員会に全く出席しないというケースもあるようですが、これでは本質的な産業保健活動を行うことは難しいでしょう。
よって、従業員の健康管理に協力してくれる産業医を選任することが大切になります。
産業医を選任する際は、その産業医が「役割を果たしてくれるか」どうかをよく見極める必要があります。
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D:衛生委員会における構成員の役割
会社(事業者)側の委員は、少なくとも1名は役員またはそれに準ずる者が望ましいです。
それにより、話し合われた内容をすぐに運用にすすめることができます。労働者側の委員は、男女のバランスと部署のバランスを考慮して選任しましょう。
なお、委員の任期に関する上限はありませんが、1年で改選することが多くなっています。
議決をとるため、議長含め全体の人数は奇数の方がよいとされています。
(例として100名程度の企業の場合、5~7名の構成が多くみられます。)
【まとめ】衛生委員会の立ち上げ・設置は外部に依頼することも有用
「衛生委員会の立ち上げって、なんだか大変そう…」
「担当者として設立してみても、うまく機能するか心配…」
ここまで読んでみて、そう思われた方も多いかもしれません。
そんな時は、衛生委員会の立ち上げを社外に依頼するのも一つの手です。
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ではここで、学んだことをおさらいしてみましょう!
\ここがポイント/
・委員会設置の目的:労働災害防止の取り組みを労使が一体となって行うこと
・衛生委員会の設置基準:業種を問わず常時50人以上の労働者が在籍していること
・安全委員会の設置基準:業種により異なる
・安全委員会、衛生委員会の両方を設置しなければならない場合:安全衛生委員会としての設置が可能
・構成メンバー:議長以外の構成メンバーの半数を労働組合から構成する必要がある
(労働組合がない場合は労働者の過半数の推薦による指名された人)
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