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ストレスチェックの義務とは?目的や拒否する従業員への対応を解説

ストレスチェックとは、メンタルヘルス不調を予防するため、平成27年12月より義務化された制度です。常時使用する従業員が50名以上の事業場では、年1回のストレスチェック実施が義務付けられています。

「ストレスチェックの実施を任されたが、どこから手をつければよいかわからない…」
「受検を拒否する従業員にはどう対応すればいい?」
とお悩みの人事・労務担当者に向けて、対象となる従業員の範囲や実施の流れ、拒否する従業員への対応方法を解説します。

ストレスチェックの義務とは

ストレスチェック制度とは

ストレスチェック義務化の背景

ストレスチェック義務化の経緯は、厚生労働省が平成18年に制定したメンタルヘルス指針に始まります。
メンタルヘルス指針は、仕事や職業生活にストレスを感じる労働者が5割を超える状況を踏まえて、企業が労働者に対して行うべきメンタルヘルスケアの方針を定めました。

しかし、制定後も精神障害などによる労災件数が増加の一途をたどっていました。そこで、平成26年に労働安全衛生法の一部が改正され、ストレスチェックが制度化されたのです。

ストレスチェックの目的

ストレスチェック制度は、労働者自身のストレスへの気づきを促し、メンタルヘルス不調を未然に防止することを目的として導入されました。
また、企業が労働者のストレス状態を把握し、高ストレス者面談や職場環境改善など適切な措置を取ることも求められます。

50人未満の事業場も義務化を検討

現在、努力義務である50人未満の事業場での実施率は32.3%に留まっており、50人以上の事業場の実施率は84.7%と顕著な差がみられています。
メンタルヘルス不調者は右肩上がりで増加傾向となっており、令和6年10月、厚生労働省の検討会において、50人未満の事業場でもストレスチェックを義務化する方向性が示されました。

しかし、50人未満の事業場では産業医の選任義務がないため、ストレスチェックの実施体制が整備されていない事業場がほとんどでしょう。50人未満の事業場に即した形で実施をするために、以下のポイントが施行に向けた論点となっています。

  • 50人未満の事業場に即したマニュアル等の作成
  • 労働基準監督署への報告有無

  • 地域産業保健センターとの連携強化

第1回~第6回検討会における主な意見及び論点案」(厚生労働省)を編集して作成

ストレスチェックの対象者の範囲

ストレスチェックの対象者の範囲

ストレスチェック実施が義務付けられているのは、「常時使用する労働者」です。具体的には、以下のように、雇用形態と労働時間から常時使用する労働者かどうかが判断されます。

【雇用形態】

  • 期間の定めのない労働契約で働く者
  • 1年以上の有期雇用者(もしくは契約更新により1年以上の使用が予定されている者)
  • 1年以上継続して雇用されている者


【労働時間】

  • 1週間の所定労働時間数が正社員の4分の3以上

なお、労働時間が正社員の4分の3未満の労働者においても、雇用形態の条件を満たし、1週間の所定労働時間が2分の1以上である者も、ストレスチェックを行うことが望ましいとされています。

契約期間や労働時間数によって対象に含まれるかが決まります。そのため、正社員だけでなく、パートやアルバイト、契約社員なども対象となるため、漏れなく実施しましょう。

労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」(厚生労働省)を編集して作成


具体的なストレスチェック対象の範囲は以下の関連記事を参考にしてみてください。

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ストレスチェックの実施手順


ストレスチェックを行う手順について、「実施前の準備」と「ストレスチェックの実施」にわけて解説します。


1.実施前の準備

ストレスチェックを初めて実施する場合は、まず企業としてストレスチェックを行う目的を方針として従業員に示しましょう。その上で、衛生委員会などの合議の場で、具体的な実施方法について以下の点を決定します。

  • ストレスチェックの実施者と実施事務従事者
  • 実施時期、頻度
  • 質問票の選定
  • 高ストレス者の判定基準
  • 面接指導を行う医師と申出先
  • 集団分析の方法
  • 結果の保存方法や担当者

合議決定した事項を「ストレスチェック規程」など社内規程として明文化し、従業員に周知します。ストレスチェック規程は、厚生労働省の「ストレスチェック制度実施規程(例)」を参考にして作成するとよいでしょう。

2.ストレスチェックの実施

実施時期になったらストレスチェックを実施しましょう。質問票を従業員に配布したり、オンラインプログラムを利用して入力してもらいます。

質問票は、以下の3つの項目が含まれている必要があります。

  • ストレスの原因
  • ストレスによる心身の自覚症状
  • 労働者に対する周囲のサポート 

厚生労働省は「57項目の職業性ストレス簡易調査票」を推奨しています。

結果の回収は、実施者や実施事務従事者が行います。記入済みの質問票を第三者や人事権を持つ従業員が確認することのないよう注意しましょう。

ストレスチェック制度導入マニュアル」(厚生労働省)を編集して作成

ストレスチェック実施後の対応



ストレスチェックの実施後は、結果を適切に取り扱う必要があります。事後対応として以下の6つの流れを行いましょう。

  • 結果処理と高ストレス者の判定
  • 従業員への結果の通知
  • 高ストレス者面接指導の実施
  • 集団分析と職場環境改善
  • 労働基準監督署への報告
  • 結果の保管

1.結果処理と高ストレス者の判定

回答された調査票を採点し、従業員の個人プロフィールを作成します。合わせて、面接指導を行う対象者を選定するため、得点から高ストレス者を判定しましょう。判定基準は以下が推奨されています。

①「心身のストレス反応」に関する項目の評価点の合計が高い者
②「心身のストレス反応」に関する項目の評価点の合計が一定以上であり、かつ「仕事のストレス要因」及び「周囲のサポート」に関する項目の評価点の合計が著しく高い者 

出典:「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」(厚生労働省)

採点方法や高ストレス者の判定基準については、具体的な方法を以下の記事で解説しています。ぜひ参考にしてみてください。

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2.従業員への結果の通知

ストレスチェック結果を従業員へ通知します。実施者から従業員に直接通知し、従業員の許可なく企業に共有されないよう配慮しましょう。従業員に通知するストレスチェック結果は以下を含むことが望ましいとされています。

  • 個人のストレスチェック結果(プロフィール、ストレスの程度、面接指導対象かどうか)
  • セルフケアのためのアドバイス
  • 面接指導対象者には申出方法や窓口を記載

3.高ストレス者面接指導の実施

高ストレス者と判定された従業員に対して、医師による面接指導を行います。従業員から申出があった場合、遅滞なく面接指導を実施しなければなりません(労働安全衛生規則第52条の16)。申出があってから1か月以内に実施し、就業時間中に行いましょう。

面接指導は事業場の状況をよく知る産業医が行うことが望ましいです。面接指導では、従業員の勤務状況や心理的負担の程度、心身の状態が確認されます。必要に応じてストレス対処の保健指導、受診勧奨も行うこともあるでしょう。

面接指導の実施後は、1か月以内に医師から就業上の配慮の要否について、意見を聴取します。事業者は、医師の意見を踏まえて適切な措置を行います。

面接指導の受検は強制できない

面接指導は、企業側から強制できず、受けるかどうかは従業員本人の意思によります。しかし、面接指導が必要であるにもかかわらず放置し、後に労災が発生した場合には責任を追及される恐れもあります。

そのため、なるべく面接指導を受けるよう、対象の従業員に申出の勧奨を行いましょう。申出の勧奨は原則的に実施者、もしくは実施事務従事者のみが可能です。

また、勧奨だけでなく、面接指導を申し出やすい環境づくりも必要です。例えば、業務を調整して面接指導の時間を確保したり、面接指導により不当な扱いをされないことを丁寧に周知したりしましょう。

4.集団分析と職場環境改善

ストレスチェックの結果から、職場環境改善を目的とした集団分析を行います。集団分析は努力義務であり、必須ではありません。しかし、メンタルヘルス不調の予防のため、職場の健康リスクを抽出し、ストレス原因を取り除くために有効な方法です。

ストレスチェックの結果を部署ごとに集計し、以下のような2つの判定図を用いて健康リスクを判断します。

仕事のストレス判定図


出典:「ストレスチェック導入ガイド」(厚生労働省)


左図は「量-コントロール判定図」で、仕事の量的負荷とコントロール度(裁量性)のバランスを判定するものです。与えられる仕事量に対して、どれほど自由度があるかがわかり、量的負荷が大きくコントロール度が低い場合に高ストレスとされます。

右図は「職場の支援判定図」で、上司や同僚からのサポートを評価するものです。双方ともに低い状態だと高ストレスと判断されます。

2つの判定図を用いて、部署単位で傾向を把握することで職場環境改善につなげられます。例えば、仕事のコントロール度が低い部署の場合、メンバーに裁量性を持たせるなど、業務プロセスの改善をはかります。

集団分析結果は、従業員の同意なしに実施者から企業側へ通知できます。ただし、10人未満の部署については、個人が特定される可能性があることから、分析を控えることが望ましいでしょう。

5.労働基準監督署への報告

ストレスチェックの結果は、毎年所管の労働基準監督署への報告が義務付けられています。ストレスチェック実施後は、所定の様式に沿って報告書を作成し、遅滞なく提出することが必要です。

ストレスチェック結果の労働基準監督署への報告を怠ると、最大で50万円の罰金が課せられる可能性があります(労働安全衛生法120条)。忘れずに提出しましょう。

6.結果の保管

ストレスチェックの結果は、情報保護の観点から、適切に保管する必要があります。結果の保管方法は、「従業員の同意の有無」により若干異なるため、注意しましょう。

ストレスチェック結果を企業に提供することへの従業員の同意がない場合、実施者や実施事務従事者が管理します。衛生委員会などで管理場所や方法を審議し、秘密が守られるよう配慮が必要です。

従業員の同意を得られた場合は、事業者が結果の記録を管理します。結果の記録や提供の同意に関する書面は、5年間保存しておくことが義務付けられています(労働安全衛生規則第52条の13)。

ストレスチェック制度に関する法令」(厚生労働省)を編集して作成

ストレスチェックを拒否する従業員がいたらどうする?


ストレスチェックを拒否する従業員がいたらどうする?

従業員にはストレスチェックを受けることは義務付けられていないため、受検を拒否する従業員には強制できません。しかし、ストレスチェックを受けていない従業員に過労死などの問題が生じた場合、安全配慮義務違反となる恐れがあります。

それでは、ストレスチェックを拒否する従業員には、どのように対応すればよいのでしょうか。基本的には、拒否する理由を丁寧に尋ね、適切な説明を行うことが大切です。より詳しい対応について3つのポイントを紹介します。

対応①:情報の取扱いや評価への影響を説明する

ストレスチェック結果が人事評価に影響するのではないかという心配から受検を拒否する場合は、結果の取扱いやルールを周知しましょう。従業員の同意なく企業側に共有しないことや、不利益につながる扱いの禁止など、不安を取り除くように説明します。

対応②:勤務体制に配慮した実施時期を設定する

業務が忙しく、ストレスチェックを受検する余裕がないという場合もあります。時間的余裕がない場合、実施時期の変更を検討してみましょう。可能な限り繁忙期は避け、従業員が負担なく受けられる時期に設定します。

また、シフト制や深夜勤務などがある場合など、勤務体制の違いにも配慮が必要です。
詳しくはこちらの記事をご参考ください。

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ストレスチェックに関する厚生労働省のマニュアル集

ストレスチェック制度導入マニュアル (厚生労働省)
ストレスチェックの定義から実施方法、注意点までを簡単に理解できるマニュアルです。初めてストレスチェックについて知る人にはおすすめの資料です。

労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル (厚生労働省)
ストレスチェック指針や労働安全衛生法の規程を参照しながら、具体的な運用方法の事例を記載しています。

ストレスチェック制度関係Q&A (厚生労働省)
ストレスチェックに関するよくある疑問をまとめたQ&A形式の資料です。

ストレスチェックサービス「Co-Labo」でメンタルヘルス不調防止

ストレスチェックは、実施体制の整備から拒否する従業員への対応まで、安全配慮義務を守れるよう、漏れなく法令対応することが求められます。また、法令対応のためだけでなく、組織に役立つストレスチェックの実施も重要です。

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サンポナビ編集部

サンポナビ編集部

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