【2021年】健康診断ってどんな種類があるの?費用は?実施前のよくある疑問を解説!
(最終更新日:2021年4月23日)
人事労務・総務担当者の年中行事のひとつ、健康診断の手配と実施。
初めて担当になった方は、戸惑うことも多いのではないでしょうか。
今回は、そんな初心者の方も安心して実務に取り組んでいただけるよう、実施前のチェックポイントについて解説します!まずは健康診断を実施する準備をはじめましょう!
<特集>はじめてでもすぐわかる! 産業保健の基礎を学ぼう!
STEP1.健康診断の実施 ← 今はここ
STEP2.ストレスチェックの実施
STEP3.安全衛生委員会の立ち上げ
STEP4.産業医の選任
■この記事で学ぶ内容
健康診断の種類とは?
健康診断には大きく分けて特殊健康診断と一般健康診断があります。
特殊健康診断とは?
法定の有害業務に従事する労働者が受ける健康診断です。
労働安全衛生法で特殊健康診断を実施しなければならないとされている業務は、次の通りです。
1、高気圧業務
2、放射線業務
3、特定化学物質業務
4、石綿業務
5、鉛業務
6、四アルキル鉛業務
7、有機溶剤業務
一般健康診断とは?
一般健康診断は職種に関係なく実施する健康診断で、すべての企業が対象になります。
雇い入れ時の健診や、1年以内ごとに1回実施する定期健診のほか、海外に6カ月以上派遣する労働者を対象とした健診や、給食従業員の検便なども含まれます。
健康診断の種類には、主に次の5つがあります。
1、雇入時の健康診断
2、定期健康診断
3、特定業務従事者の健康診断
4、海外派遣労働者の健康診断
5、給食従業員の検便
今回は、この一般健康診断のうち、「1、雇入時の健康診断」と「2、定期健康診断」について解説します。
誰が健康診断の”対象者”なのか?
①雇入時の健康診断
対象は「常時使用する労働者」です。
「常時使用する労働者」の条件は「1年以上使用する予定で、週の労働時間が正社員の4分の3以上」である者です。
ですので、必ずしも正社員に限られず、一定の条件を満たしたパートやアルバイトでも該当する場合があります。
これらの条件を満たさなかったとしても、週の労働時間が正社員の2分の1以上のときは努力義務となります。(参考:短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律)
なお、派遣労働者の一般健康診断は、労働者の派遣元で実施します。
②定期健康診断
雇入時の健康診断と同じで、「常時使用する労働者」が対象になります。
ただし、下記にある特定業務従事者を除く者になります。
イ 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
ロ 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
ハ ラジウム放射線、エツクス線その他の有害放射線にさらされる業務
ニ 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
ホ 異常気圧下における業務
ヘ さく岩機、鋲打機等の使用によつて、身体に著しい振動を与える業務
ト 重量物の取扱い等重激な業務
チ ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
リ 坑内における業務
ヌ 深夜業を含む業務
ル 水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
ヲ 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに 準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
ワ 病原体によつて汚染のおそれが著しい業務
カ その他厚生労働大臣が定める業務
これら特定業務に就く者は「特定業務従事者の健康診断」の実施となります。
健康診断はいつ実施するのか?
①雇入時の健康診断
雇入時の健康診断は、その名の通り雇い入れの直前または直後に実施します。
入社前であっても、健診の実施は可能です。
また、本人が入社前3ヵ月以内に医師の健診を受けていて、その結果を会社に提出したときは、雇入れ時健診を省略できます。
ただし、本人が提出する診断書が必須の健診項目をカバーしている場合に限ります。
②定期健康診断
定期健康診断は1年以内ごとに1回実施します。
雇い入れ時健康診断?検査項目はどのようなものがあるの?
①雇入れ時の健康診断の検査項目
検査項目は以下の通りです。
1 既往歴及び業務歴の調査
2 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
3 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
4 胸部エックス線検査
5 血圧の測定
6 貧血検査(血色素量及び赤血球数)
7 肝機能検査(GOT、GPT、γ―GTP)
8 血中脂質検査(LDLコレステロール,HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
9 血糖検査
10 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
11 心電図検査
②定期健康診断
定期健康診断の健診項目は、雇い入れ時の健康診断とほぼ同じで、次の通りです。
1 既往歴及び業務歴の調査
2 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
3 身長(※)、体重、腹囲(※)、視力及び聴力の検査
4 胸部エックス線検査(※) 及び喀痰検査(※)
5 血圧の測定
6 貧血検査(血色素量及び赤血球数)(※)
7 肝機能検査(GOT、GPT、γ―GTP)(※)
8 血中脂質検査(LDLコレステロール,HDLコレステロー
ル、血清トリグリセライド)(※)
9 血糖検査(※)
10 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
11 心電図検査(※)
※がついている項目は、年齢による省略と、基準に基づく医師の判断による省略ができます。
雇入時の健康診断との違いは、雇い入れ時の健康診断では「4.胸部エックス線検査」となっているところが、定期健康診断では「4.胸部エックス線検査および喀痰検査」と変わります。
「4.胸部エックス線検査および喀痰検査」についても、喀痰検査を省略していることが多いようです。
健康診断の結果は、会社の「誰」が見られるのか
では、健康診断の結果について、会社の「誰」が見ることができるのでしょうか。
健康診断の受診後、会社の中で健診結果を見ることが出来る存在は限られています。
●健康診断、結果の取り扱いについて
「会社の上司は、部下の健康診断の結果を見られる?」
こちらの記事で解説していますので、あわせてチェックしておきましょう。
人事なら知っておきたい健康診断の「保存期間」
ここは、特に人事担当者向けの内容になりますが、健診結果の取り扱いはとてもデリケートです。
また、保存すべき期間も定められています。
●健康診断、結果の保存期間について
保存期間については、こちらの記事でまとめていますので、あわせてチェックしておきましょう。
健康診断の実施は義務なのか?
健康診断の実施は、企業側(事業者)に義務があります。
企業は、労働安全衛生法第66条に基づき、労働者に対して、医師による健康診断を実施しなければなりません。
この義務に違反した企業は、50万円以下の罰金が課せられます。
また、労働者は、企業が行う健康診断を受けなければなりません。
●健康診断、前日と当日の「NG行為」とは?
健康診断の前日には禁酒などのルールがありますので、以下の記事も要チェックです。
健康診断を拒否する社員への対応は?
労働安全衛生法は、労働者の受診義務違反に対する罰則は設けていませんが、企業は労働者に対して健康診断の受診を職務上の命令として命じることができます。
そして、受診拒否する社員に対しては、懲戒処分をもって対処することもできます。
健康診断の費用負担は企業?労働者?
企業に健康診断の実施が義務付けられているものなので、健康診断の費用は企業が負担すべきものとされています。
●健康診断の費用はいくらかかる?
健康診断の費用について、以下の記事も確認しておきましょう。
新型コロナウイルスで延期した健診は、いつまでに実施する?
コロナ禍における健康診断の延期について
新型コロナの流行により、健康診断を延期している場合です。
2021年1月5日時点、厚労省のホームページに記載されている内容をまとめると、次のようになります。
・健診機関:”3密”を避け、十分な感染防止対策がされている機関を選ぶこと。
・延期について:2020年6月末までの間、健診を延期している場合には、できるだけ早期にの実施を目指す。具体的には、2020年10月までには実施すること。
出典:厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)令和2年8月26日時点版」
●「コロナ延期」した健康診断はいつまでに実施する?
健康診断の延期については、以下の記事も確認しておきましょう.。
お役立ちリンク集
健康診断を実施する上で参考になる、公的機関のリンク集や、人事担当の方が実務を進める上で役立つ資料について「人事のお役立ち資料」まとめています。
無料でダウンロードでき、すぐに使えるものがたくさんありますので、チェックしておきましょう。
●人事お役立ち資料&リンク集
まとめ
ではここで、学んだことをおさらいしてみましょう!
ここがポイント!
・健康診断の実施は、企業に義務がある
・企業は、健康診断の受診を職務上の命令として命じることができる
・健康診断の費用は企業負担
・健康診断には大きく分けて一般健康診断と特殊健康診断がある
・一般健康診断とは、職種に関係なく行う健康診断
・雇入時の健康診断、定期健康診断は一般健康診断に含まれる
・雇入時の健康診断の対象は「常時使用する労働者」
・「常時使用する労働者」は、一定の条件を満たしたパートやアルバイトでも該当する場合がある
・雇入時の健康診断は雇入れの直前または直後に実施する
・定期健康診断の対象も「常時使用する労働者」
・定期健康診断は1年以内ごとに1回実施する
・定期健康診断の検査項目は雇入時の健康診断とほぼ同じだが、ある項目では基準に基づき省略が可能
・【NEW】新型コロナウイルスが拡大中の期間は、健康診断の受診を延期する
確認しよう!学び度チェック
問題:健康診断を拒否する社員に対して、会社はどのような対応をとれるか?
A. 何もできない
B. 職務上の命令として命じることができる
C. 来年の健康診断で代替できる
正解は…「B」!
企業は労働者に対して健康診断の受診を職務上の命令として命じることができ、受診拒否する社員に対しては、懲戒処分をもって対処することもできます。
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※この記事は「健康診断」の準備編です。実施編は以下よりどうぞ。
健康診断後に会社がすべきフォローとは?実施後のチェックポイント
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