【まとめ】よくわかる「健康診断」種類と費用・対象者・検査項目等を解説
(最終更新日:2022年2月20日)
人事労務・総務担当者の年中行事のひとつ、「健康診断」の手配と実施。初めて担当になった方は戸惑うことも多いのではないでしょうか。
また、これから健康診断を受ける従業員の方も、これを機に知っておきましょう。
本記事では種類や検査項目といった健康診断に関するベーシックな情報をまとめています。
後半では「健康診断って誰の義務なの?」「受診拒否したらどうなるの?」といった内容にも触れています。
目次[非表示]
- 1.健康診断には「特殊」「一般」の2種類がある
- 2.雇入時・定期健康診断の対象となる従業員は?
- 2.1.①雇入時の健康診断の対象となる従業員
- 2.2.②定期健康診断の対象となる従業員
- 3.雇入時・定期健康診断はいつ実施する?
- 4.雇入時健康診断と定期健康診断の検査項目は?
- 4.1.①雇入時健康診断の検査は11項目
- 4.2.②定期健康診断の検査は11項目
- 4.2.1.雇入時健康診断と定期健康診断、項目の違いは?
- 5.〈よくある疑問まとめ〉健康診断は誰の義務?費用は?
- 5.1.健康診断の実施は誰の義務?
- 5.2.健康診断を受診拒否したらどうなる?
- 5.3.健康診断の費用負担は企業?労働者?
- 5.4.健康診断の結果は、会社の「誰」が見られる?
- 5.4.1.人事なら知っておきたい健康診断の「保存期間」は?
- 5.5.健康診断に関する要点まとめ
- 5.6.さいごに確認しよう!学び度チェック
健康診断には「特殊」「一般」の2種類がある
「特殊健康診断」とは有害業務に従事する方が受ける健診
健康診断には大きく分けて特殊健康診断と一般健康診断がありますので、一つずつ確認していきましょう。
まずは特殊健康診断についてですが、特殊健康診断とは、法定の有害業務に従事する労働者が受ける健康診断です。
特殊健康診断については労働安全衛生法第66条等にて定められており、健診を実施しなければならないとされている業務は次の通りです。
・屋内作業場等における有機溶剤業務に常時従事する労働者 (有機則第29条)
・鉛業務に常時従事する労働者 (鉛則第53条)
・四アルキル鉛等業務に常時従事する労働者 (四アルキル鉛則第22条)
・特定化学物質を製造し、又は取り扱う業務に常時従事する労働者及び過去に従事した在籍労働者(一部の物質に係る業務に限 る) (特化則第39条)
・高圧室内業務又は潜水業務に常時従事する労働者 (高圧則第38条)
・放射線業務に常時従事する労働者で管理区域に立ち入る者 (電離則第56条)
・除染等業務に常時従事する除染等業務従事者 (除染則第20条)
・石綿等の取扱い等に伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務に常時従事する労働者及び過去に従事したことのある在籍 労働者 (石綿則第40条)
「一般健康診断」は業務内容・職種に関係なく実施する
一般健康診断とは職種に関係なく実施する健康診断で、すべての企業・労働者が対象になります。
雇い入れ時の健診や、1年以内ごとに1回実施する定期健診のほか、海外に6カ月以上派遣する労働者を対象とした健診や、給食従業員の検便なども含まれます。
健康診断の種類には、主に次の5つがあります。
1:雇入時の健康診断
2:定期健康診断
3:特定業務従事者の健康診断
4:海外派遣労働者の健康診断
5:給食従業員の検便
本記事では、この一般健康診断のうち、「1、雇入時の健康診断」と「2、定期健康診断」について解説します。
雇入時・定期健康診断の対象となる従業員は?
①雇入時の健康診断の対象となる従業員
雇い入れ時健康診断の対象となるのは法で定められた「常時使用する労働者」です。
常時使用する労働者の条件は「1年以上使用する予定で、週の労働時間が正社員の4分の3以上」である者です。
ですので、必ずしも正社員に限られず、一定の条件を満たしたパートやアルバイト、契約社員でも雇い入れ時健康診断の対象者に該当する場合があります。
これらの条件を満たさなかったとしても、週の労働時間が正社員の2分の1以上である場合等は実施することが望ましいとされています(※)。
なお、派遣労働者の一般健康診断は、労働者の派遣元で実施します。
(※参考:短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律)
②定期健康診断の対象となる従業員
雇入時の健康診断と同じく常時使用する労働者が定期健康診断の対象者となります。
ただし、以下にある特定業務従事者を除く者とされています。
イ 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
ロ 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
ハ ラジウム放射線、エツクス線その他の有害放射線にさらされる業務
ニ 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
ホ 異常気圧下における業務
ヘ さく岩機、鋲打機等の使用によつて、身体に著しい振動を与える業務
ト 重量物の取扱い等重激な業務
チ ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
リ 坑内における業務
ヌ 深夜業を含む業務
ル 水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
ヲ 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに 準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
ワ 病原体によつて汚染のおそれが著しい業務
カ その他厚生労働大臣が定める業務
これら特定業務に従事する労働者は「特定業務従事者の健康診断」の実施となります。
雇入時・定期健康診断はいつ実施する?
①雇入時健康診断は入社時に実施する
雇入時健康診断は、その名の通り雇い入れの直前または直後に実施しますが、入社前であっても健診の実施は可能です。
原則的に雇入時健康診断を省略することはできませんが、本人が入社前の3ヵ月以内に医師の健診を受けていて、その結果を会社に提出したときは雇入時健康診断を省略できます。
ただし、本人が提出する診断書が必須の健診項目をカバーしている場合に限りますので注意が必要です。
②定期健康診断は1年以内ごとに1回実施する
定期健康診断は1年以内ごとに1回、定期に実施することが、労働安全衛生規則(※)にて定められています。
また、原則として定期健康診断の間隔が1年以上空けることはできませんので、会社において定期健康診断の実施シーズンを変更する際には十分な注意が必要となります。
※定期健康診断
事業者は、常時使用する労働者(第四十五条第一項に規定する労働者を除く。)に対し、一年以内ごとに一回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。
雇入時健康診断と定期健康診断の検査項目は?
①雇入時健康診断の検査は11項目
雇入時健康診断の検査項目は労働安全衛生規則則第43条に定めがあり、実施が義務とされているのは以下の11項目です。
- 既往歴及び業務歴の調査
- 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
- 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
- 胸部エックス線検査
- 血圧の測定
- 貧血検査(血色素量及び赤血球数)
- 肝機能検査(GOT、GPT、γ―GTP)
- 血中脂質検査(LDLコレステロール,HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
- 血糖検査
- 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
- 心電図検査
出典:労働安全衛生規則第43条
②定期健康診断の検査は11項目
定期健康診断の健診項目は労働安全衛生規則則第43条に定められています。
雇い入れ時の健康診断とほぼ同じ11項目となっており、次の通りです。
- 既往歴及び業務歴の調査
- 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
- 身長(※)、体重、腹囲(※)、視力及び聴力の検査
- 胸部エックス線検査(※) 及び喀痰検査(※)
- 血圧の測定
- 貧血検査(血色素量及び赤血球数)(※)
- 肝機能検査(GOT、GPT、γ―GTP)(※)
- 血中脂質検査(LDLコレステロール,HDLコレステロール、血清トリグリセライド)(※)
- 血糖検査(※)
- 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
- 心電図検査(※)
※の項目は、年齢による省略と、基準に基づく医師の判断による省略ができます。
出典:労働安全衛生規則第43条
雇入時健康診断と定期健康診断、項目の違いは?
雇入時健康診断と定期健康診断の検査の違いは、雇入時健康診断では「4.胸部エックス線検査」となっているところが、定期健康診断では「4.胸部エックス線検査および喀痰検査」と変わります。
「4.胸部エックス線検査および喀痰検査」についても、喀痰検査を省略していることが多いようです。
〈よくある疑問まとめ〉健康診断は誰の義務?費用は?
健康診断の実施は誰の義務?
健康診断の実施は企業側(事業者)に義務があります。
企業は、労働安全衛生法第66条に基づき、労働者に対して、医師による健康診断を実施しなければなりません。この義務に違反した企業は、50万円以下の罰金が課せられます。
また、労働者は企業が行う健康診断を受けなければなりません。
健康診断を受診拒否したらどうなる?
労働者は健康診断を必ず受けなければなりません。
これは労働安全衛生法第66条1項にて「事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行わなければならない。」と定められています。
また、労働者の受診義務違反に対する罰則は設けられてはいませんが、もし受けなかった場合には企業が50万円以下の罰金を科せられる可能性があります。
そのため、企業は労働者に対して健康診断の受診を職務上の命令として、受診拒否する社員に対しては、懲戒処分の規則を設けていることが多いのです。
健康診断の費用負担は企業?労働者?
健康診断の実施は企業に義務付けられているものなので、健康診断の費用は企業が負担すべきものとされています。
以下の記事で健康診断の義務や費用について紹介しています。
●健康診断の費用はいくらかかる?
健康診断の結果は、会社の「誰」が見られる?
では、健康診断の結果について、会社の「誰」が見ることができるのでしょうか。
健康診断の受診後、会社の中で健診結果を見ることが出来る存在は限られています。
以下の記事で解説していますので、あわせてチェックしておきましょう。
●健康診断、結果の取り扱いについて
人事なら知っておきたい健康診断の「保存期間」は?
特に人事担当者向けの内容になりますが、健診結果の取り扱いはとてもデリケートです。
また、結果については保存すべき期間も定められていますので、あわせてチェックしておきましょう。
●健康診断、結果の保存期間について
健康診断に関する要点まとめ
・健康診断には大きく分けて一般健康診断と特殊健康診断がある
・一般健康診断とは、職種に関係なく行う健康診断
・雇入時の健康診断、定期健康診断は一般健康診断に含まれる
・雇入時の健康診断の対象は「常時使用する労働者」
・「常時使用する労働者」は、一定の条件を満たしたパートやアルバイトでも該当する場合がある
・雇入時の健康診断は雇入れの直前または直後に実施する
・定期健康診断の対象も「常時使用する労働者」
・定期健康診断は1年以内ごとに1回実施する
・定期健康診断の検査項目は雇入時の健康診断とほぼ同じだが、ある項目では基準に基づき省略が可能
・健康診断の実施は、企業に義務がある
・企業は、健康診断の受診を職務上の命令として命じることができる
・健康診断の費用は企業負担
さいごに確認しよう!学び度チェック
問題:健康診断を拒否する社員に対して、会社はどのような対応をとれるか?
A. 何もできない
B. 職務上の命令として命じることができる
C. 来年の健康診断で代替できる
正解は…「B」!
企業は労働者に対して健康診断の受診を職務上の命令として命じることができ、受診拒否する社員に対しては、懲戒処分をもって対処することもできます。
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