【簡単!】5つのステップで理解するストレスチェックの制度と運用方法
最終更新日:2020年10月15日
「労働安全衛生法」の改正で2015年12月より、50人以上の労働者がいる事業所で毎年1回の実施が義務付けられているストレスチェック制度。
その全体像を把握し、正しく運用するために、押さえておきたいポイントを5ステップでまとめました。
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そもそも「ストレスチェック制度」とは?
「ストレスチェック制度」とは、ストレスチェック実施における準備段階から、実施、事後措置までを含めた一連の運用制度のことを指します。
労働者のストレス状態の現状を把握し、適切な対応を行うことで「うつ」などのメンタルヘルス不調を未然に防止することを目的としています。
「ストレスチェック」は、社員のメンタルヘルスに関する質問票を用いて労働者にストレス状態を調べる簡単な検査を指します。
出典:厚生労働省「ストレスチェック導入ガイド」より抜粋
やさしく解説:ストレスチェック制度を運用する5つのステップ
ストレスチェック制度を実施・運用するためには以下の5つのステップで進めていくのがおすすめです。
- ストレスチェック制度に関する方針決定
- ストレスチェック実施
- 高ストレス者の中で希望者を対象に「医師の面接指導」実施
- ストレスチェック結果の分析と職場環境の改善(※努力義務)
- 労働基準監督署への報告
それぞれについて簡単に概要をおさえておきましょう。
【ステップ①】ストレスチェック制度に関する方針決定
ストレスチェックを実施する前にまずは組織として、誰が、いつ、どのように、ストレスチェック制度を運用していくかを決定する必要があります。
はじめに決めるべきことは以下の8点です。
●ストレスチェックを始める際に決めておくこと
1.ストレスチェックは誰に実施させるのか。
2.ストレスチェックはいつ実施するのか。
3.どんな質問票を使ってストレスチェックを実施するのか。
4.どんな基準でストレスの高い人を選ぶのか。
5.面接指導の申出は誰にすれば良いのか。
6.面接指導はどの医師に依頼して実施するのか。
7.集団分析はどんな方法で行うのか。
8.ストレスチェックの結果は誰が、どこに保存するのか。
出典:厚生労働省「ストレスチェック導入ガイド」より抜粋
社内でこの8つの論点を議論した上で、方針を決定したら規程に明文化し、自事業所および社内に周知し、すべての労働者に伝える事を徹底しましょう。
規程を作成する際は、厚生労働省が作成していて参考例があるのでそちらを参照ください。
参考ページ:ストレスチェック制度実施規程
【ステップ②】ストレスチェックの実施
ストレスチェック制度に関する組織の方針が決定し、事前の社内周知が完了したら、早速ストレスチェックを実施していきます。
労働安全衛生法では、ストレスチェックを実施するためには医師などの【実施者】と【実施事務従事者】を決定する必要があることが規定されています
ストレスチェックの実施者になれるのは、医師、保健師、そして(検査を行うために必要な知識についての研修であって厚生労働大臣が定めるものを修了した)歯科医師、看護師、精神保健福祉士又は公認心理師です。
●ストレスチェックの「実施者」についてよく読まれている記事
ストレスチェックの調査票とは
ストレスチェックに用いる調査票は労働安全衛生法で、以下のように定義されています。
ストレスチェックの定義
第 66 条の 10 第1項の規定によるストレスチェックは、調査票を用いて、規則第 52 条の 9 第 1 項第 1 号から第 3 号までに規定する次の3つの領域に関する項目により検査を行い、労働者のストレスの程度を点数化して評価するとともに、その評価結果を踏まえて高ストレス者を選定し、医師による面接指導 の要否を確認するものをいう。
- 職場における当該労働者の心理的な負担の原因に関する項目
- 心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目
- 職場における他の労働者による当該労働者への支援に関する項目
ストレスチェックの調査票
事業者がストレスチェックに用いる調査票は、規則第 52 条の 9 第 1 項第 1 号から第 3 号までに規定する3つの領域に関する項目が含まれているものであれば、実施者の意見及び衛生委員会等での調査審議を踏まえて、事業者の判断により選択することができるものとする。 なお、事業者がストレスチェックに用いる調査票としては、別添の「職業性 ストレス簡易調査票」を用いることが望ましい。
出典:厚生労働省「労働安全衛生法に基づく ストレスチェック制度 実施マニュアル」より抜粋
労働安全衛生法では、厚生労働省が提供する「職業性 ストレス簡易調査票」(57項目)を用いてストレスチェックを実施する事が推奨されています。
これを23項目に簡略化した質問票も公開されています。
また、「職業性 ストレス簡易調査票」を用いてストレスチェックを実施した場合、その後の集団分析では厚生労働省が公開する「仕事のストレス判定図」を用いる事が推奨されています。
ストレスチェックを実施したいが、初回のため、どの調査票を用いれば良いのか分からない場合は、上記の「職業性 ストレス簡易調査票」の質問票を利用しましょう。
出典:厚生労働省「ストレスチェック導入ガイド」より抜粋
一方で、ストレスチェックに用いる質問票の形式・質問内容は法定で規定されていません。
そのため、社内で独自に質問票を作成し、ストレスチェックを実施する事も出来ます。
ただし、その場合には以下の3つの項目を確認できるような質問項目を作成する必要があります。
1.ストレスの原因
2.ストレスによる心身の自覚症状の有無
3.労働者に対する周囲のサポートの有無
これらの質問内容が実施者および社内の衛生委員会で問題ないと判断されれば、独自の質問票を用いてストレスチェックを実施する事が可能です。
●ストレスチェック調査票がダウンロードできるサイトをまとめた記事
ストレスチェックの実施方法
まずは、実施事務従事者が労働者に調査票を配布し、調査票を回答後、再度実施事務従事者が回収します。
その結果を医師などの実施者が集計・分析し、高ストレス者の判定を行います。その後、実施者は高ストレス者に対して「医師との面談」の案内を行います。
判定結果は、実施者から直接本人に通知します。ストレスチェックの実施結果の保存は実施者が行う必要があり、保存期間は5年間とされています。
また、ストレスチェックはITシステムを用いてオンラインで行うこともできます。
オンラインで実施する場合は、厚生労働省の以下のサイトを参照ください。
「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」ダウンロードサイト
出典:厚生労働省「ストレスチェック制度簡単!導入マニュアル」
【ステップ③】高ストレス者を対象に「医師の面接指導」実施
ストレスチェックの分析結果から、実施者より「高ストレス者」と判断された労働者から1ヶ月以内に医師の面談希望の申し出があった場合、事業者は申し出から1ヶ月以内に面接指導の場を設ける必要があります。
また、面談内容を記録を作成し、事業所で5年間保存する必要があります。
医師との面談後、事業者は1ヶ月以内に、就業上の措置の必要性について面談医師に意見聴取することが必要です。
面談医師の意見を踏まえて、労働時間の短縮など必要な対策を行います。
【ステップ④】ストレスチェック結果の分析と職場環境の改善(※努力義務)
労働安全衛生法では、ストレスチェックの実施結果から集団分析を行う事が努力義務とされています。
事業者は、検査を行った場合は、当該検査を行った医師等に、当該検査の結果を当該事業場の当該部署に所属する労働者の集団その他の一定規模の集団ごと に集計させ、その結果について分析させるよう努めなければならない。 2 事業者は、前項の分析の結果を勘案し、その必要があると認めるときは、当該集団 の労働者の実情を考慮して、当該集団の労働者の心理的な負担を軽減するための適切な 措置を講ずるよう努めなければならない。
引用元:労働安全衛生法 第52条の14
集団分析とは、部、課、チームなど、特定の集団ごとでストレスチェックの結果を比較して、各集団のストレス状況を分析することを指します。
集団分析を行う事で高ストレス者が多い集団の要因を特定して職場改善に役立てる事が出来ます。
【ステップ⑤】労働基準監督署への報告
ストレスチェックの実施結果と高ストレス者の面接指導の実施結果は、毎年、労働基準監督署に所定の様式で報告する必要があります。
労働安全衛生法で、ストレスチェックは毎年【11月末まで】に実施しなければならないと定められていますが、労働基準監督署への報告書提出の期限は具体的に定められておらず、事業所ごとに設定して構わないとされています。
そのため、ストレスチェック実施・集計後に各事業所が設定する、期末などのタイミングで忘れずに提出をしましょう。
参考ページ:厚生労働省「ストレスチェック制度の実施状況(平成30年度)」
報告書のテンプレートは厚生労働省のホームページから、労働安全衛生規則様式第6 号の2『心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書』のPDFファイルをダウンロードする事が出来ます。
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以上、ストレスチェック制度運用の全体像を5ステップで紹介しました。
全体像を把握することで、運用していくイメージが掴めたのではないでしょうか。
ストレスチェックは、「うつ」などのメンタルヘルス不調を未然に防止することを目的としています。
面接指導や集団分析という実施後の対応こそが大切です。高ストレス者が生じる要因を特定し、適切な対応ができなければ組織の問題を解決することはできません。
そのためには、労働者の健康を守るプロである産業医の活用が1つの効果的な方法です。
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