ストレスチェックの結果は、誰にどこまで開示する?
事業者は従業員50人以上の事業場で、ストレスチェックを実施する必要があります。労働者が安心して受検できるよう、ストレスチェックの実施者と実施事務従事者には守秘義務があり、ストレスチェックの結果を本人の同意なく事業者に開示することは禁止されています。
ストレスチェックの結果は、誰にどこまで開示できるのでしょうか?確認しましょう。
ストレスチェックの結果は本人の同意がなければ事業者に開示できない
ストレスチェックは、労働者のストレスの程度を点数化して把握する制度です。
労働安全衛生法により、事業者には、常時50人以上の従業員を使用する事業場(本社、支社、営業所など)で年1回実施することが義務付けられています。
労働者が自身のストレスの状況に気付き、事業者が職場改善をして働きやすい職場をつくることで、メンタルヘルス不調を未然に防ぐことを目的としています。
ストレスチェックの実施責任は「事業者」にあります。ストレスチェック制度の実施計画を策定するのは「ストレスチェック制度担当者」で、一般的には企業のメンタルヘルス推進担当者や衛生管理者が担当します。
そして、産業医などの医師や保健師などが「実施者」となります。実施者の指示により、ストレスチェック実施の事務をするのは、産業保健スタッフや事務職員の「実施事務従事者」です。個人情報を扱うため、実施者と実施事務従事者には守秘義務があります。労働者が安心して受検ができるように、結果を本人の同意なく事業者に提供することは禁止されています。
同意の取得方法としては、対象となる労働者全員に対して個別に同意を取得する必要があり、衛生委員会などでの合議による包括的な同意は認められません。
労働者の同意があれば、本人通知と同じ範囲内の情報を事業者に開示できる
実施者はストレスチェックの結果について、労働者の同意が得られた場合には、事業者にその労働者に通知する情報と同じ範囲内の情報についてストレスチェック結果を提供することができます。
また、衛生委員会などで調査審議した上で、ストレスチェックの結果そのものではなく、「その労働者が高ストレス者として選定され、面接指導を受ける必要があると実施者が認めた」という情報のみを事業者に提供する方法もあります。
事業者は、本人の同意により提供されたストレスチェック結果を、その労働者の健康確保のための就業上の措置に必要な範囲を超えて、その労働者の上司や同僚などに共有してはいけません。
一方、労働者それぞれがストレスチェックを受検したかどうかの情報については、個人情報という取り扱いにはなりませんので、労働者の同意がなくても、事業者に提供することは可能です。
ただし、厚生労働省は、最終的な受検状況を事業者に提供する目的や、不利益な取り扱いにつながらないようにすることなどについて、「衛生委員会などで調査審議を行い、社内のルールとして決めておくことが望ましい」としています。
ストレスチェック結果を事業者に開示するための本人の同意取得方法は?
本人の同意はどのように取得するべきなのでしょうか。
厚生労働省の労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアルには、「事業者は、ストレスチェックの実施前または実施時に労働者の同意を取得してはならない」とあります。ストレスチェック結果が知らされていない時点で、事業者への提供について同意を取得することは不適当だからです。
同意の取得は、次のいずれかの方法でなければなりません。
① ストレスチェックを受けた労働者に対してストレスチェックの結果を通知した後に、事業者、実施者または実施事務従事者が、ストレスチェックを受けた労働者に対して、個別に同意の有無を確認する
② ストレスチェックを受けた労働者に対してストレスチェックの結果を通知した後に、実施者または実施事務従事者が、高ストレス者として選定され、面接指導を受ける必要があると実施者が認めた労働者に対して、その労働者が面接指導の対象であることを他の労働者に把握されないような方法で、個別に同意の有無を確認する
なお、ストレスチェックを受けた労働者が、事業者に対して面接指導の申し出をした場合は、その申し出をもってストレスチェック結果の事業者への提供に同意がなされたものとみなして差し支えありません。
ただし、トラブルを防ぐためには、結果の通知の際、そのように取り扱う旨を労働者に知らせておいた方がいいでしょう。
また、事業者は、労働者に対して同意を強要する行為や強要しているとみなされるような行為を行ってはいけません。
(厚生労働省の労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル)
本人からの情報開示請求があったら、面接指導結果はすべて開示するの?
労働者本人がストレスチェック後の面接指導を受けた後、その労働者から事業者に面接指導結果についての開示請求がされた場合は、事業者は医師の意見も含めて面接指導結果を全て開示しなければならないのでしょうか。
個人情報保護法第25条第1項の規定により、本人から保有個人データの開示を求められたときは、本人に対しその個人データを開示しなければなりません。
しかし、開示することにより、
①本人又は第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがある場合
②当該個人情報取扱事業者の業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合
③他の法令に違反することとなる場合
のいずれかに該当する場合は、
その全部または一部を開示しないことができます。
面接指導結果について本人から開示請求があった場合は、事業者は原則として開示する必要があります。ただし、面接指導結果の中には、業務との関連性に関する判断や、就業上必要と思われる措置に関する意見、職場環境の改善に関する意見なども含まれている可能性があります。つまり、結果に記載されている内容に応じて、どこまで開示するべきかを個別に判断しなければなりません。
本人に開示することにより、本人や面接指導をした医師、事業者の関係が悪化するなどのおそれがある場合や、症状についての詳細な記載があり、本人に十分な説明を行ったとしても、本人に重大な心理的影響を与え、その後の対応に悪影響を及ぼす場合なども考えられるからです。
ストレスチェックの結果を提供、開示する範囲について確認できましたか?
本人から提供の同意が得られたストレスチェック結果の共有範囲や利用方法は、トラブルにつながらないように、あらかじめ衛生委員会などで調査審議し、ルールを決めてしっかり周知しておきましょう。
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