「産業医の選任」だけじゃない!従業員が50人になったらやるべきこと
会社はその規模に応じて、人事・労務でやるべき義務が生じます。労働者の人数別に、義務と努力義務になることをまとめました。
項目ごとに、労働者にアルバイトや派遣社員は含めるのか、といった「誰を労働者としてカウントするか」が異なります。あわせてチェックしていきましょう。
目次[非表示]
- 1.50人になったら義務になること
- 1.1.ストレスチェックの実施
- 1.2.産業医の選任
- 1.3.衛生委員会の設置
- 1.4.衛生管理者の選任
- 1.5.定期健康診断結果報告書の提出
- 2.従業員が45.5人を越えると義務になること
- 2.1.障害者の1人の雇用義務
- 3.50人未満の場合の努力義務
- 3.1.ストレスチェックの実施
- 3.2.医師等による健康管理等
- 4.10人以上の場合
- 4.1.就業規則の作成
- 4.2.衛生推進者(安全衛生推進者)の選任
- 5.10人未満でも義務になっていること
- 5.1.定期健康診断の実施
- 5.2.長時間労働者の面接
- 5.3.社会保険・労働保険の加入
50人になったら義務になること
事業場で労働者が50名以上になると、会社としてやらなければならないことが増えてきます。ひとつずつみていきましょう。
- ストレスチェックの実施
- 産業医の選任
- 衛生委員会の設置
- 衛生管理者の選任
- 定期健康診断結果報告書の提出
ストレスチェックの実施
ストレスチェック制度は、2015年12月から50人以上の労働者がいる事業場に実施が義務化されています。1年に1回実施し、労働基準監督署まで報告書を提出します。
ストレスチェックについては「ストレスチェックの実施<準備編>」で詳しく解説しています。
ストレスチェック 労働者50人のカウント方法
正社員だけでなくパートタイマー、アルバイト、契約従業員、派遣従業員も労働者数にカウントします。雇用形態や契約期間の定めの有無は問いません。
産業医の選任
労働安全衛生法により、労働者が50人以上の労働者がいる事業場では産業医を置くことが義務になります。
14日以内に選任し、選任報告書を労働基準監督署に提出しなければなりません。
人数や業種によって、選任すべき産業医の人数や業務形態が異なりますので、詳しくは「産業医の選任<準備編>」を参考にしてみてください。
産業医の選任 労働者50人のカウント方法
正社員だけでなくパートタイマー、アルバイト、契約従業員、派遣従業員も労働者数にカウントします。雇用形態や契約期間の定めの有無は問いません。
衛生委員会の設置
労働安全衛生法により、労働者が50人以上の場合には業種を問わず、衛生委員会の設置をする必要があります。
一方、安全委員会は業種により設置基準の人数が50人、または100人と異なります。「衛生委員会の設置<準備編>」で詳しく解説しています。
衛生管理者の選任
衛生委員会を設置する場合、構成メンバーとして指名される衛生管理者も、このタイミングで選任が義務になります。14日以内に選任し、選任報告書を労働基準監督署に提出します。
衛生管理者の資格については「衛生管理者ってどんな資格?よくある疑問をQAで解説」で解説しています。
衛生委員会の設置・衛生管理者の選任 労働者50人のカウント方法
正社員だけでなくパートタイマー、アルバイト、契約従業員、派遣従業員も労働者数にカウントします。雇用形態や契約期間の定めの有無は問いません。
定期健康診断結果報告書の提出
健康診断そのものは労働者が1人でも実施しますが、健康診断の結果を労働基準監督署へ報告する義務が生じるのは、事業場の労働者が50人になった時点からです。
健康診断についての詳細は「健康診断を実施しよう<準備編>」で解説しています。
定期健康診断結果報告書の提出 労働者50人のカウント方法
1年以上雇用しているか、する予定で、週の労働時間が正社員の4分の3以上の労働者をカウントします。必ずしも正社員に限られず、条件を満たしたパートやアルバイトでも該当する場合があります
以上が、事業場で従業員が50人以上になったら新たに義務になることでした。
50人に達する前に、少し中途半端な数字ですが、45.5人を越えると義務になることがあります。0.5人のカウント方法もあわせて解説します。
従業員が45.5人を越えると義務になること
障害者の1人の雇用義務
障害者雇用促進法により、45.5人を越えると障害者1名の雇用が義務になります。(法定雇用率2.2%)
また、労働者が100人を越えた企業では、法定雇用率を未達成の場合に障害者雇用納付金が徴収されます。
▼詳しくは厚生労働省「障害者の雇用」のページで確認できます。
障害者雇用 労働者45.5人のカウント方法
週の労働時間20時間以上30時間未満の短時間労働者の場合、1人を0.5人としてカウントします。また、派遣従業員については、派遣先が雇用主ではないためカウントに含めません。
50人未満の場合の努力義務
義務ではありませんが、50人未満の場合でも実施が望ましいとされていることは、以下になります。
- ストレスチェックの実施
- 医師等による健康管理等
ストレスチェックの実施
50人未満の会社では、ストレスチェック制度は当分の間、努力義務とされていますが、労働者のメンタルヘルス不調の未然防止のため、できるだけ実施することが望ましいとされています。
医師等による健康管理等
産業医の選任は義務ではありませんが、医師等による健康管理等については努力義務とされています。
10人以上の場合
労働者が10人以上になると、新たに義務になることについて解説します。
- 就業規則の作成
- 衛生推進者(安全衛生推進者)の選任
就業規則の作成
労働者が10名以上の場合、就業規則の作成が義務になります。
労働基準法により、就業規則を作成または変更した場合は、「就業規則(変更)届」と、労働者側の意見を書面化した「就業規則意見書」を提出することが義務づけられています。
また、就業規則は作って終わりではなく、見やすい場所への掲示、備え付け、書面の交付などによって労働者に周知することも、労働基準法には定められています。
▼「就業規則(変更)届」「就業規則意見書」のテンプレートは東京労働局のホームページからダウンロードできます。
また、詳細については、厚生労働省のリーフレット「就業規則を作成しましょう」「モデル就業規則について」で確認ができます。
就業規則 労働者10人のカウント方法
正社員だけでなくパートタイマー、アルバイト、契約従業員も労働者数にカウントします。雇用形態や契約期間の定めの有無は問いません。ただし、派遣従業員は雇用関係にはないため、この場合の労働者の範囲には含まれません。
衛生推進者(安全衛生推進者)の選任
労働者が10人以上50人未満の職場では、業種により「安全衛生推進者」または「衛生推進者」を選任する義務が発生します。
※衛生推進者の選任義務の詳細については「安全衛生推進者(衛生推進者)について教えてください。」(厚生労働省)のページが参考になります。
衛生推進者 労働者10人のカウント方法
正社員だけでなくパートタイマー、アルバイト、契約従業員、派遣従業員も労働者数にカウントします。雇用形態や契約期間の定めの有無は問いません。
10人未満でも義務になっていること
最後に、労働者が10人未満の場合から、義務になることについてです。
- 定期健康診断の実施
- 長時間労働者の面接
- 社会保険・労働保険の加入
定期健康診断の実施
1年以上雇用しているか、する予定で、週の労働時間が正社員の4分の3以上の労働者が1人でもいたら、定期健康診断を実施します。
労働安全衛生法第66条により、企業は労働者に対して、医師による健康診断を実施する義務があります。
健康診断については「健康診断を実施しよう<準備編>」で詳しく解説しています。
長時間労働者の面接
時間外・休日労働時間が1月当たり80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる労働者に対して、申し出があった場合、産業医は長時間労働者面接指導を行います。
また、時間外・休日労働時間が1月当たり100時間を超える研究開発業務従事者に対しては、申し出なしでも面接指導を行います。
パートやアルバイトに対しても、時間外労働などが一定基準を超え、疲労の蓄積があればその申し出に応じて面接指導を実施しなければなりません。
この原則は派遣労働者に対しても適用されますが、面接指導の実施義務は雇用主である派遣元事業主に課せられます。
▼詳しくは「長時間労働者への医師による面接指導制度について 」(厚生労働省)が参考になります。
社会保険・労働保険の加入
- 健康保険
- 厚生年金保険
- 雇用保険
- 労働者災害補償保険(労災保険)
労働者1人のカウント方法はそれぞれ異なります。
健康保険と厚生年金保険については、法人か個人事業かによって義務となる人数が異なります。パート、アルバイトでも、1日または1週間の労働時間および1ヶ月の所定労働日数が、通常の労働者の分の4分の3以上あれば加入させる必要があります。法人の場合は1人から必ず加入しなければなりません。個人事業の場合は、労働者が5人以上になると加入義務が発生します。
雇用保険については、①1週間の所定労働時間が20時間以上で②31日以上の雇用見込がある人を1人でも雇い入れた場合に加入が義務になります。
労災保険については、パートやアルバイトも含むすべての労働者が1人でもいる場合は必ず加入しなければなりません。
以上、労働者の人数別に人事・労務面で義務になっていることをまとめました。
あなたの会社の規模に応じて、やるべきことをチェックしてみてください。まだできていない場合は、さっそく取り組みをスタートしましょう。
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