社員のメンタル不調のサイン、気づいていますか?

 

職場でメンタルヘルスの不調を感じている社員は少なくない。2016年11月に独立行政法人 労働政策研究・研修機構が発表した「第2回日本人の就業実態に関する総合調査」結果では、4人に1人が、過去3年間でメンタルヘルスの不調を感じたことが「ある」と回答している。

 

進行すると、休職やその後の退職につながりかねないメンタル不調。事前にサインに気づくことでそれを防ぐことはできないのか?メンタルで休職しそうなボーダーラインにいる社員への適切な対応とは?

社労士、カウンセラーとして多くの企業の現場で活躍されている舘野聡子先生にお話をうかがった。

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メンタル不調の最初のサインは勤怠の乱れ

 

――多くの企業で社労士として、またカウンセラーとして、メンタル休職の実態を見てこられたと思います。休職に至る前に、早期発見して、適切な対応をすることが欠かせないと思うのですが、メンタル不調で休職しそうな社員が発するサイン、あるいはそれを見つけるチェックポイントにはどのようなものがあるのでしょうか。

 

一番気にしてほしいのは「勤怠の乱れ」です。例えば、これまで定時に来ていた人が、最初は月曜だけちょっと出社が遅れる。はじめは5分以内の短いものです。それがだんだん、月曜だけでなくて、5分、10分の遅刻が増えてくる。そのうち遅刻時間もだんだん大きくなってきて、30分遅れるなどがざらになる。本人は出社しようと思っているのだけれど、身体がどうしても言うことを聞かないという状態です。

 

さらには突然有給休暇を突然取るようになる。欠勤が増え、週5日のうち、3日も出社しなくなる。そんなふうになったら、もう明らかにメンタルの不調を疑ったほうがいい。

タイムカードのデータを見ると、一目瞭然で、勤怠の乱れがわかります。

 

同時に、いつもならできていたことができなくなってきます。取引先に仕事の電話がかけられない。定型書類なのに満足に作れない。単純なミスが増える。気づけば手が止まっていて、仕事の効率が落ちているなどがわかりやすいサインです。

これら勤怠の乱れや、いつもと違うミスなどはやはり最初に気づくのは同僚、上司など一緒に仕事をしている人ですね。

 

食欲不振、眠れない、酒量、肩こりや頭痛も見逃せない

 

――初期のメンタル不調のサインは勤怠や仕事の仕方からうかがえるということですね。体調面でのサインはどうなのでしょうか。

 

体調の悪化もあります。ストレスを感じると、アルコール、たばこの量が増える人がいます。また、食欲不振でやせたり、睡眠障害で眠れない。風邪をひきやすくなったり、頭痛がとれない、腰痛肩こりが悪化する、胃痛が治らない・・・・・・これらはもちろんメンタル以外の病気の場合もありますが、メンタル不調に伴う症状であることも多いのです。

休みたいのに眠れないので休めず、その疲れがたまった状態で仕事をするので、パフォーマンスが上がらず、仕事が間に合わなくて焦り、パフォーマンスが落ちた分を補うために長時間労働になるという悪循環にもなります。

こうした体調の変化に、本人が気づいていなかったり、逆に隠そうとしたりすることもあります。

例えば、本人は食欲が落ちている自覚がなくても、「昨日の夜は何を食べた?」、という聞き方をすると、とっさに本当のことを言ってしまうことがあります。「食べなかった」とか「〇〇しか食べてません」とか具体的な状況に気づくことができます。「食欲はありますか?」と聞くと「あります」としか返ってこないのですが、「何を食べましたか?」と聞かれると人は嘘をつくのが難しいので、正直に答えることが多いのです。そうすると、自分でも以前と違うことに気づくことができます。

 

――メンタルが不調が進んでくると、誰から見ても元気がなかったり、情緒不安定だったりしますよね。

 

気分の落ち込みが激しく、何をしても楽しくないし、楽しそうでない。ちょっとしたことで神経質になったり、いらいらしたり、感情の起伏が激しくなったりします。ふとしたことで、泣き出してしまい、涙がとまらなくなる、ということもあります。家族と些細なことでけんかしてしまうとか、普段穏やかな人が、突然声を荒げることがあったりすると、これも兆候かもしれません。

 

――メンタル不調は、自分では分かるものなのでしょうか。

 

もちろんはっきりと自覚しなくても「何かおかしい」と感じている人もいます。

しかし自分でも気づかないことも多く、人に指摘されて気づくこともありますが人が気づいた時には、かなりつらい状態になってからのことが多いので、こういう状況になったらメンタルが不調だと自覚するように、日ごろから教育研修しておくことが大事ですね。

 

さっき言ったような自覚症状の他に、もうひとつわかりやすいポイントとして、メンタルが不調になると、姿勢が変わります。うつむき加減になり、視線が必ず下に落ちるのです。肩をいからせて、胸を張りながら、「いやあ、最近落ち込むことが多くってさあ」なんて言う人はいません。猫背になって、縮こまるようにパソコンに張り付いていたり、休憩時間にはうつむいてスマホを眺めていたりします。声も小さくなります。声を届かせるには前を向いて、実際の距離より遠くを見なければなりませんから。

実は姿勢が感情を作るということがあり、胸をはるようにするだけで、ちょっと前向きになれるものなのです。ものごとは変わらなくても、物理的に姿勢を変えることで気分を変えることはできます。

客観的、具体的な指摘を上司がすることが大事

 

―さきほどご指摘のあった、「勤怠の乱れ」や明らかに様子がおかしい、といったことに周囲が気づいたときに、具体的にどのように対処するのがよいのでしょうか。

 

大切なのは、上司が「客観的なデータをもとに」、「具体的に」指摘するということです。例えば、「最近勤怠がこのように乱れているけれど、どうしたの」とか、「いつもはこういうミスはしないのに、最近立て続けにこういうミスが何回もあったけれど、どうしたの」という具体的な事実の指摘が大事です。

それをせずに、「メンタルが弱っているんじゃないの」とか「病気なんじゃないか」などと言っても本人に自覚がない場合は納得性が低く、また本人が自覚していたとしても認めたがらない人が多く、余計に頑なになってしまいます。

客観的、具体的に指摘したうえで、「体調が悪いなら産業医やカウンセラー、主治医などのに相談してみたら、病院や相談室に行ってみたら」と勧めることが大事です。

 

また、これらの指摘は、やはり上司がいうべきであると思います。職場で部下の健康に配慮する責任があるのは管理職です。部下が本当に何らかの病気だとしたら、それを必要な部署に繋ぐ役目もあります。同僚からも声かけも重要ですが、あまり深刻に受け取られないこともありますし、権限もありません。

 

――例えば、単純に仕事量が一時的に増え過ぎたり、慢性的に多すぎて、滅入っているだけで、仕事量が平準化されれば、回復したり、休まなくてすんだりするということはありますか。

 

もちろん、原因がそれだけであれば、回復する人もいるのではないかと思います。しかし一見、業務量だけが問題で、不調のように見えても、実は本当の原因は複合的にからみあっていることがあります。表面的に仕事量を減らしても、結局本人が仕事がないと不安で、抱え込んでしまったり、放っておくとまた業務量がもとに戻っているという例があります。

そして、仕事の量だけではなく、上司との関係、周囲との関係など様々なことから離れて、心身をゆっくり休ませること、休養そのものが必要な人の場合には、それ以外の方法では回復は難しい場合が多いです。

休職は主治医、産業医等お医者様の判断になりますが、早く休むことで深刻な状況にならずに済むこともあります。休んでいる間に、服薬と休養をとり、仕事をするのに必要な体力を回復します。また、心理療法を受けたりして考え方のくせを見直し、仕事のやり方を変えることで再休職にならないようにすることもあります。早めに受診してお医者様に判断してもらうことが大事です。

 

――管理職がストレッサーで、管理職と関わるのがストレスになっていて、調子が悪い場合もありますよね。

 

そうだとしても、上司がそして上司だけがストレッサーであるか否かは、本人と話しをしてみない状態では誰にも特定できません。仕事の仕方や体制かもしれないし、本人の中にある別の原因かもしれないし、もちろん複合的な原因であることが多いものです。

原因はどうであれ、職場で体調不良が疑われる社員がいる場合には、その悪化を防ぐために、心の健康づくりの指針などでもラインケアとして上司が部下のメンタルヘルスについて責任をもって関わるよう位置づけられています。

その役割を上司が十分にはたすためには、前もって教育をしてメンタルヘルス問題への理解を深めておくことが絶対に必要です。

 

――枠組みとしては上司が気付いて声をかけるとしても、職場全体の理解というのも必要ですね。

 

メンタルヘルスについてはまだまだなかなか率直に話をできない、という職場も多いと思いますが、気になったら「大丈夫?」などとちょっとした声を掛け合うようにすることを職場全体の取り組みとして進めていけるといいですね。

メンタルヘルスについては偏った知識を持っている人も多く、偏見にさらされる、レッテルを貼られるということも本人にとっては不安なことです。まず職場全体として正しい知識を知ってもらう場が必要です。

そして、そのうえでメンタル不調にはケアが必要なのだと本人に気づいてもらう。周りもその必要性を理解する。

産業医、カウンセラー、相談室、主治医、病院などに行くことは、特別なことでも、罪悪感を覚えるべきことでも、恥ずかしいことでもなくて、けがの治療と同じで必要なことなんだと本人も理解し、周囲もそういう認識を持つことが大事です。

 

プロフィール舘野 聡子(たての さとこ)

株式会社ISOCIA 代表取締役/特定社会保険労務士/シニア産業カウンセラー/キャリアコンサルタント/メンタルヘルス法務主任者

民間企業に勤務後、社労士事務所に勤務。その後「ハラスメント対策」中心のコンサル会社にて電話相談および問題解決のためのコンサルティング、研修業務に従事。産業医業務を行う企業で、予防のためのメンタルヘルス対策とメンタル疾患の人へのカウンセリングに従事。2015年に社労士として独立開業、株式会社エムステージでは産業医紹介事業の立ち上げにかかわる。

文/奥田由意

 

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