【社労士解説】メンタル弱すぎ…?新卒・若手社員の不調原因と企業の対応策

企業にとって大きな課題である、新卒・若手社員のメンタル不調対策。

新卒社員がメンタル不調になってしまう原因と、企業でとるべき対応策について、社会保険労務士・カウンセラーとして多くの企業の現場で活躍している舘野聡子先生が解説します。



目次[非表示]

  1. 1.新卒社員がメンタル不調に陥りやすい原因は「ギャップ」
    1. 1.1.新卒がメンタル不調になる要因その①「学生時代とのギャップ」
    2. 1.2.新卒がメンタル不調になる要因その②「能力のギャップ」
    3. 1.3.新卒がメンタル不調になる要因その③「期待と現実のギャップ」
    4. 1.4.新卒がメンタル不調になる要因その④「環境の変化によるギャップ」
  2. 2. 新卒社員のメンタル不調、企業や上司はどう対応するべきか
    1. 2.1.メンタル不調対策、新卒社員とのコミュニケーションはどうすればよいか
    2. 2.2.上司はどのように新卒社員とコミュニケーションするべきか
    3. 2.3.メンタル不調対応のためにも、乱れがちな新卒社員の生活習慣を管理する
  3. 3.新卒社員のメンタル対策で最も避けるべき「放置・孤立化」
    1. 3.1.メンタル不調の新卒社員、絶対にNGなのは「放置すること」
    2. 3.2. 世代のギャップは仕方のないこと。新卒社員を抑圧しすぎないこと
    3. 3.3.メンタル不調にならないために、新卒社員として必要な心構えは? 


新卒社員がメンタル不調に陥りやすい原因は「ギャップ」

新卒がメンタル不調になる要因その①「学生時代とのギャップ」

新卒社員がメンタル不調に陥りやすい理由のひとつに「学生時代とのギャップ」が挙げられます。

学生時代と社会人になってからでは、生活や自分の「地位」に当然ながら大きな違いがあります。

たとえば、ある学生が、大学のゼミやサークルなどで行動力があり、友達も多く、周囲と良好な人間関係を構築していたとします。

いわゆる「コミュ力」も高いと評価されていて、リーダーシップも発揮できていました。

しかし、会社に入ると、それまで勝ち得てきた評価や蓄積はリセットされて、一からのスタートになります。


また、会社の評価基準は大学までの評価基準とは違うのが普通です。

いち新卒社員として、先輩や取引先など知らない人たちばかりの中、初めての環境で人間関係を築かなくてはなりません。

しかもそこでは、今までどおり振る舞っていても、誰も「リーダーシップがある」とか「コミュニケーション能力が高い」とは思ってくれません。

ここでまず「こんなはずではなかった」と、つまずきを感じるようです。


新卒がメンタル不調になる要因その②「能力のギャップ」

新卒者の自分と周囲との「能力のギャップ」もあります。

例えば次のようなもの。

・海外留学経験の有無による英語力の差

・大学の専攻の違いによる専門知識の差

・その職種に関係する資格の有無による知識の差 など

このように、スタート地点で、すでにほかの新卒社員と大きく「能力のギャップ」がついているように感じ「周囲のほうが優れている」と落ち込んでしまうようです。


新卒がメンタル不調になる要因その③「期待と現実のギャップ」

新卒社員が会社に対して抱く「期待と現実のギャップ」も、メンタル不調の要因となります。

たとえば、新卒社員が望んで入った会社でも、入社前に考えていた会社のイメージと現実とはもちろん異なります。

最初からやりがいを感じられたり、華やかな仕事ができたりするわけではありませんから、「こんなはずではなかった」と思ってしまう。会社に失望して、やる気をなくしてしまうのですね。

ガソリンスタンド、工場のライン、営業支店などで研修をしていて、現場の叩き上げの人に思わぬことで叱責され、メンタル不調になり、くじけてしまう例もあります。


「期待と現実のギャップ」に関して言えば、配属先で失望する新卒社員もいます。

思っていた部署やチームでなかった、同期の配属先で働きたかった、同期についた上司がうらやましいなど、同僚のほうがよい環境で仕事ができているように思ってしまうのです。

さまざまな小さな差異が、決定的なキャリアの差につながると考えてしまいます。

そのほか、もともと別の会社に就職したかったのに、親に反対され、しぶしぶ親が認める有名企業や大企業に入った後で「こんなはずではなかった」と思う人も多いようです。

親が本人の進路に介入しすぎるなど、親子関係に問題があることもあります。


新卒がメンタル不調になる要因その④「環境の変化によるギャップ」

ゴールデンウイーク明けに「5月病」がやってきて、新卒社員はメンタル不調になりがちだと一般的に言われています。

しかし、私の経験では、新卒社員のメンタル不調は6月や7月に増えているように思います。

この、6月・7月というのは、研修期間や研修後の配属期間に当たるからです。こうした環境の変化による更なるギャップが、新卒社員のメンタル不調要因の一つとなっているのでしょう。


以上、新卒社員がメンタル不調になってしまう要因について解説しました。

やはり、ゼミ長やサークル長など、学生時代にそれなりのポジションにいた人ほど、入社後にそのバイタリティが維持できなかったりすることも多いのです。

新卒の本人としては「思った環境ではなかった」「こんなつまらない仕事をしなくてはならないのか」という失望感を持ったりして、やりがいが見えなくなってしまいがちです。


入社たった3ヶ月くらいで異動希望を出すケース、出社することができなくなるケースも珍しくありませんし、企業としてもせっかく雇用した人材が流出してしまうのはもったいないことです。

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 新卒社員のメンタル不調、企業や上司はどう対応するべきか


メンタル不調対策、新卒社員とのコミュニケーションはどうすればよいか

新卒社員にとって、上司よりも年の近い、先輩社員やメンターのような人がいれば理想的です。

先輩社員から「自分もそうだった。同じような経験をして、同じように悩んでいた」とか「この仕事は無意味に思えても、必ず将来につながる」ということを伝えてほしいです。

新卒社員とのコミュニケーションで重要なのは、ひとりで悩んだままにさせないことです。

「あなたの今の気持ちは、あなただけでなくみんな経験していることだ」ということが伝わるだけでもずいぶん違います。

そして「今やっていることにも価値がある」と繰り返し伝えてあげてください。

やはり、会社や仕事に慣れるまでは、年の離れた上司より、年齢の近い先輩の言葉のほうが有効であることが多いですね。


上司はどのように新卒社員とコミュニケーションするべきか

新卒社員に「自分は承認されている」という感覚を持たせてあげることが大事です。

ですので、上司の方からは「入社してくれてありがとう」「あなたのことはちゃんと見ている。今はできないことがあるかもしれないが、これからの会社には君が必要だと思っている」ということを伝えてください。

新卒社員としては、自信を失ったり、自分を見失ったりして、会社にいていいのか分からなくなっているのです。

ですので、上司の立場から「信頼している」「あなたのことを認めている」「会社にいてほしいと思っている」というメッセージを伝え、応援してほしいのです。

そのためにはまず、声をかけることです。


メンタル不調対応のためにも、乱れがちな新卒社員の生活習慣を管理する

生活習慣の乱れがメンタルヘルスに悪影響を与えることがわかってきました。

ですので、新卒社員のメンタル不調対策は、生活面からの管理・改善も大切なのです。

睡眠時間、バランスの取れた食事、適度な運動などしっかりと生活習慣を整えると気持ちの落ち込みを予防できる可能性があります。

新卒社員は学生時代からの夜型生活をひきずっている人も多いのです。

「深夜まで起きていて、ちょっと寝て出社する」など、明らかに睡眠時間が足りていなかったり、食事も菓子パンなど簡単に食べられるものに偏っていたりします。

そういう生活習慣を改善して、特に睡眠が改善するだけで気分が軽くなる人もいます。


産業医面談は疲れやストレスを専門家の立場から見てアドバイスを受けられる、今後困ったときの相談できる医師として連携をする、などの面からも有効です。

新入社員は入社後、産業医面談を必ず全員が受けるという対策をとっている会社もあります。とてもいい取り組みだと思います。

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新卒社員のメンタル対策で最も避けるべき「放置・孤立化」

メンタル不調の新卒社員、絶対にNGなのは「放置すること」

新卒社員のメンタル不調に気づかないことや、気付いていても放置するのが一番よくないですね。

一見、元気そうに見えても、それだけで本当に元気かはわかりません。

上司や会社が大丈夫だと思うのは、周囲の勝手な見立てに過ぎないこともあります。

入社して2、3年目の社員なら、パフォーマンスの低下などで、元気なときとの比較ができますが、新卒社員では経年の変化が分かりませんよね。

ですので、入社後1年くらいは面談を頻繁にするなど、おせっかいなくらいに介入して、気をつけておく必要があります。

落ち込んでも自力で回復する人もいますが、夏休みなどまとまった期間休んだ後、「もう会社に戻れない」と思い詰めてしまう人もいるからです。


 世代のギャップは仕方のないこと。新卒社員を抑圧しすぎないこと

いまの若い世代はLINEが日常の連絡手段で、メールはあまり使わないなど、連絡の方法ひとつとっても上の世代とは違います。

仕事のやり方も違って当然です。

上司の世代から見て「空気読めない」的な振る舞いに見えても、世代間の常識の違いによるものだったり、きちんと説明されていないためにとった行動だったりします。

それを頭ごなしに「わがまま」とか「非常識」と切り捨てないことです。

今の管理職も若いころは「新人類」とか言われてきたでしょう。


例えば、新入社員が「これって残業つくんですか」などの労働条件に対する素朴な疑問を投げてきたとします。

「そんなことを聞くな」と抑圧するのはNGです。

法令順守は会社の義務ですし、聞くこと自体全く問題ありません。上の世代の「自分はそんなこと【忖度して】聞かなかった」、というのは新入社員の疑問とは全く関係ないことです。

新卒社員には、きちんと状況を説明してあげてください。


メンタル不調にならないために、新卒社員として必要な心構えは? 

新卒社員の方は、目先のつらさにとらわれすぎないほうがいいでしょう。

今の積み重ねが、必ず今後の仕事のしやすさをつくっていきます。

入社したばかりで何もできないのは当たり前です。

少しずつ仕事をしていくうち、信頼を得て、「次もあの人にこの仕事を頼もう」と思われるようになり、だんだん楽になっていくものです。

周囲や上司の方にお願いしたいのは、今つらそうにしている新卒入社の社員に「この先に仕事のしやすさがある」「やりがいが見つけられる」という、先のビジョンを見せることです。

そして、繰り返しになりますが、「あなたに来てもらって感謝している」「ここで一緒に働いてほしいんだ」ということを伝えることが、メンタル不調の対策にもなるのです。

そして、この会社で働いてよかったと思ってもらうことを目標にしてほしいですね。

文/奥田由意 編集/サンポナビ編集部


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舘野聡子

舘野聡子

たての・さとこ 株式会社ISOCIA 代表取締役/特定社会保険労務士/シニア産業カウンセラー/キャリアコンサルタント/メンタルヘルス法務主任者 民間企業に勤務後、社労士事務所に勤務。その後「ハラスメント対策」中心のコンサル会社にて電話相談および問題解決のためのコンサルティング、研修業務に従事。産業医業務を行う企業で、予防のためのメンタルヘルス対策とメンタル疾患の人へのカウンセリングに従事。2015年に社労士として独立開業、株式会社エムステージでは産業医紹介事業の立ち上げにかかわる。

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