【社労士に聞く】社員のメンタルヘルス対策 ≪人事・労務担当者編≫


社労士の舘野聡子先生に教わるメンタル不調対策。2回目は、さまざまな相談に応じるうち、自身のメンタルが不調に陥ってしまいがちな人事労務担当者のケースを解説する。


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舘野 聡子(たての さとこ)​​​​​​​

株式会社ISOCIA 代表取締役/特定社会保険労務士/シニア産業カウンセラー/キャリアコンサルタント/メンタルヘルス法務主任者


民間企業に勤務後、社労士事務所に勤務。その後「ハラスメント対策」中心のコンサル会社にて電話相談および問題解決のためのコンサルティング、研修業務に従事。産業医業務を行う企業で、予防のためのメンタルヘルス対策とメンタル疾患の人へのカウンセリングに従事。2015年に社労士として独立開業、株式会社エムステージでは産業医紹介事業の立ち上げにかかわる。


トラブルが重なったときが危険


―人事労務担当者もメンタルヘルス不調に陥ることがあるのですね。どんな事例がありますか。


トラブル対応がたまたま重なった場合が多いです。たとえば、メンタルヘルス不調の休職者が立て続けに出て、休職者との連絡や、復職時の産業医と受け入れ先の上司との調整に苦労しているときに、退職した元社員が「退職理由が違う、解雇じゃないか」などと言ってきて、一方では社内のパワハラの訴えも発生―、などというような大変な状況で、疲れ果てている人事労務の担当者にお会いすることがあります。気になって良く眠れないとおっしゃることもありますね。

 

―人事労務担当者のメンタル不調の一番の問題はなんでしょう。


人事労務担当者は責任が重いのに評価されないことが多いです。営業の人は売上げが伸びれば褒められ、評価されます。しかし、人事はトラブルに対処してもなかなか評価につながりません。トラブル対処は大変な仕事なのに、社内では「トラブルがないのが当然」と思われがちです。また、仕事柄、社員のマイナスな感情にさらされることも多いです。

ある人事労務担当者からは、「一生懸命助言しても、ためにならなかったと言われた」「相談中に求められた対応について『制度上できない』と言うと、嫌な顔をされた」などの声を聞いたことがあります。


仕事と割り切れずストレスになる人も


―仕事をしても報われないというのはつらいですね。


性格の向き不向きもあります。「人に関わることがしたい」という理由で人事を希望したり適性があると思われたりして、人事関係の部署に異動することがあります。人事の仕事では時には社員の意にそわない判断を伝えることや、それに基づいて動かざるを得ないところがありますが、仕事と割り切れないのはつらいです。相談者の気持ちを全部引き受けて共感しすぎる人にはむしろ不向きな仕事ではないでしょうか。自分の業務と当事者の気持ちの問題を割り切って考えられない場合、それがストレスとなりメンタルヘルス不調につながることがあります。

相談された内容や問題がいつまでも頭から離れなかったり、担当として矢面に立ったことで恨みを買ってしまったのではないかと不安になったりするというお話も聞いたことがあります。

リストラや異動の措置など、「会社の制度なので」「業務だから」と割り切って、対象者と距離をおけるといいのですが、リストラを全て完了した後、気持ちの落ち込みが酷く退職してしまう人事担当者もいます。


―責任感の強さゆえにつらくなることもありそうですね。


人事のエキスパートとしての責任感から、自分のつらさを他人に見せられない人もいます。周囲も「この人ならできるはず」と思ってしまいがちで、それがプレッシャーにつながります。

 責任感から、休日でも電話で何時間も相談を受けてしまい、相談者からメールが来たら気になって後回しにできずに、ずっとそのことに関わり続けてしまうのです。しかも、人事の担当者は相談できる相手が限られています。同僚にも話すことができず、ひとりで抱え込んで、そのうち倒れてしまうのです。メンタルヘルス不調はもとより、胃潰瘍、原因不明の発熱、じんましん、咳が続くなどの症状が出る人もいました。

会社の規模によっては、人事がひとりで採用からトラブル対処までしなくてはなりませんから、大きなストレスになります。


▼ 休職・復職対応をマニュアルで解決


担当者は1人で悩まず、相談相手を作って


―どのような対策を打てばよいのでしょうか。


人の話を聞きすぎてつらくなってしまう傾向にある人は、相談相手を作ることです。誰かに気持ちを話すことでプレッシャーや不安は緩和されます。自分が抱いたマイナスの感情について「当然だよ」と言ってもらい、受け止めてもらう、肯定してもらうことが必要です。人事が2人以上いれば、お互いに話し合う、人事メンバーのなかで聞き合うという体制をつくるとよいでしょう。また、社外の相談窓口を利用する、カウンセラーを確保するのも有効です。


―悩んでいる担当者に心がけてほしいことはありますか。


考え方のヒントとして、「正解はない」と思ってほしいです。人事労務担当者だからといって、全部を解決することはできません。たとえば、社員のメンタルヘルス対策ならやるべきことが決まっているのでそれをやる。制度面で解決できたらそれでよしとする。そして、相手の感情と業務を切り分けましょう。ここまで制度や法的な面からアプローチしたのだから、あとは当事者の感情面では解決しきれなくてもしかたない、と割り切ってほしいのです。


―問題を手放すのですね。


相手のことを思って最善を尽くそうと思えば思うほど、苦しくなってしまうケースがあると思います。もしいつまでも気になって仕方がない、すっきり割り切れないという時があれば、そういう時こそ、プロに話を聞いてもらってください。そして頑張っている自分をねぎらって大切にしてほしいと思います。


会社は「人事は大変な仕事をしている」という敬意を


―会社としてはどういう対応をすべきでしょう。


会社が「人事はしんどい仕事を担当している」ということを認めることが大切です。人事という仕事に対する敬意を持ち、きちんと評価してほしいですね。周囲が、感情をとりあつかう仕事の大変さを理解することも必要です。

 そして、世話好きや人の気持ちがわかる、という理由だけで人事担当にすると本人がつらくなるかもしれませんね。人事の仕事をしていても、まったくつらさを感じない人もいますが、そういうつらさを個人の性格のせいにせず、みんなで支えあってほしいと思います。


―産業医なども活用できますよね。


カウンセラー、産業医に相談することは大事ですね。第三者が「ここまでやったからもういいよ」と伝えたり、担当者が必要以上にのめりこみすぎないように客観的に見守ったりする仕組みがあるといいと思います。​​​​​​​


文/奥田由意 編集/サンポナビ編集部


>>>3回目は、中間管理職になったばかりで、不調に陥りやすい ≪40代≫ の対処法を解説します。

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