二次健診の受診率を上げるには? 教えて!山越先生 よろず相談室 第3回


産業医の山越志保先生が、人事労務担当者の疑問や悩みに答える「教えて!山越先生 よろず相談室」。

第3回となる今回は、「二次健診の受診率」についてのお悩みにお答えします!


 人事労務担当者

Q .次健診対象者の受診率が低い状況です。
本人には受診勧奨はしているのですが、他にどのような対応をすべきでしょうか。


  山越先生

A . 法律的には定期健診受診率は100%が前提ですが、それすら、まだ徹底していない企業もございます。

しかし、そのような企業はさておき、定期健診の受診率はなんとか100%に近い数字になりました。そして、次のステップとして、次健診対象者の受診率が低い‥‥このような企業もありますよね。


企業の人事担当者によっては、
「先生、二次健診を受けるように、該当社員に個別メールを出していますが、無視されます」とか言われることもあります。

厚生労働省の指針通りに二次受診の結果を事業者に提出するように社員に働きかけたり、健診のデータが非常に悪い社員などに積極的に産業医面談をセッティングして、産業医から社員に指導してもらったりする企業もあります。

中には、二次健診受診の費用も企業で支払うとしているところさえあるのです。


一方で、二次健診を受けない人の話を聞くと、 医療の専門家である産業医として、
『せっかく、定期健診を受診して、病気が疑わしい部分を早めに指摘されたのに。万が一、重大な病気の始まりだったらどうすんだ!!!』と思ってしまいます。

にもかかわらず、二次健診を受けない社員さんはゼロになりません。なぜでしょう?                                                    


山越 志保(やまこし しほ)

日本医師会認定産業医/労働衛生コンサルトタント(保健衛生)


都内の病院で内科医として勤務しながら、日本医師会認定産業医・労働衛生コンサルタントを取得し、産業医としての業務を開始。これまで多岐にわたる企業で、産業医業務を担ってきた。現在は、株式会社さくら事務所を設立し、臨床と産業医活動を行っている。


では、二次健診を受けない社員の立場になって、『なぜ、二次健診を受けないのか?』と考えてみましょう。


わたくしとしては、大きく分けて3つの理由があるのではないかと考えております。

1.   定期健康診断の結果・コメントをしっかり読んで理解していない。
2.   定期健康診断の本来の役割・意義を知らない。
3.   『もし病気になってしまったら、自分がどのような状態になるのか』をわかっていない。


では番号順にこの理由について解説していきます。



1. 定期健康診断の結果・コメントをしっかり読んで理解していない

  山越先生

そもそも論として、定期健診の結果・コメントをよく見ていないという社員さん、結構、います。なぜでしょうか?

数年前までは、わたくしもよく怒っていました!なんで結果を読まないんだよっ(怒)大切な自分の身体のことだろう!って。


でも、ヒトって意外と、よくわからないこと・理解しづらい情報ってなかなか細かく読み解く気になりませんよね。

(かく言うわたくしも、小難しいスマホやパソコンなどの取扱説明書などは全く読む気になりません)


また、結果やコメントを何となく読んでも、日常が忙しくて、つい病院に行くことを忘れてしまい、1年経過したという人も少なくないです。

そのような人は、根底に次の2と3の理由があるのではないかと思います。


2.定期健康診断の本来の役割・意義を知らない

  山越先生

定期健診の役割・意義をきちんと理解していない社員さんも結構、多いです。法律的に、定期健診を受けることが義務となっていることも知られていません。


定期健診は、病気を早期発見し、治療につなげる目的で行うとともに、『業務に耐えることができるのか』ということを判断するひとつの材料になります 。

このため、従業員50名以上の企業では、定期健診の結果は産業医が確認して、就業判定しているのですが、その事実を知らない社員さんもいます。


企業としては、社員に定期健康を受けさせて、産業医が就業判定してフォローする一連の流れをとることが安全配慮義務を果たすことにつながるのです。

衛生委員会などで、こうした健診の役割、意義、その結果の診方(みかた) を学ぶ場を作ったり、社内で情報発信することで解決する部分もあるのではないでしょうか。

 

3.『もし病気になってしまったら、自分がどのような状態になるのか』をわかっていない

  山越先生

最近では、再雇用制度の普及により、60歳以上の社員さんも増えてきましたが、やはり、社員さんの大半は働き盛りであり、自分自身もあまり大病したことがないし、自分の周りも大病したことがない方が多いのではないでしょうか。

となりますと、病気によっては、治らず、一生抱えていく病気があることや、治療を継続することに、どれほど時間・労力・お金がかかるかということを知りません。


このため、病気の早期発見・早期治療がいかに大切か、骨身に染みては理解されていない人がいます。

(核家族化が進み、身近に高齢者が少ないという社会構造的に仕方ない部分もあるかと思いますが)医師のわたくしからみると、非常に病気に対して、無防備であるといえます。


特に、生活習慣病、発生頻度の高い悪性疾患などについては、2と同様に、医療情報を共有する場を設けてもいいかと思います。

生活習慣病は、自分のライフスタイルが病気を生み出しもすれば、防ぎもします。

若いうちから、病気だけでなく、適切な食事や運動についての知識を持っておくことは決して無駄ではありません。


また、悪性疾患については、いまや一生涯のうち、2人に1人ががんになる時代です。また、20~50代の就業年齢において、がんにかかりやすいのは実は、女性のほうです。

個人的には増えつつある働く女性に定期健診・二次健診だけでなく、婦人科健診への知識を持っていただくのもいいかと思っております。


社員へ健康・健診への自己理解を促すような情報発信を

  山越先生

もちろん、人事担当者からの「二次健診を受けて下さい」という呼びかけ、健診データが著しく悪い社員への指導などの個別対応も大切ですが、社員さん自身の健康・健診への自己理解を促すような情報発信、教育の機会を設けるなどの仕組みづくりも同時に重要と考えます。

健診の意義、その結果の診方、小難しい医療情報について、社員さん目線でわかってもらうために情報を流す努力をするのです。


そして、企業が安全配慮義務を負っていると同時に、社員も健康に働き、会社から与えられた労務を提供できるように自身の健康管理をするという自己保健義務を負っています。

このため、社員さんも自分の健康に無関心ではいられないのです。


このように、個々の健康管理、病気への理解が進むことは、企業にとっても社員にとっても大きな資産となり、いずれは、両立支援、障害者雇用などへも理解を得られる素地となるのではないかと思います。


つづけて読みたい

▼ 教えて!山越先生 よろず相談室のバックナンバーはこちら
第1回 「長時間労働の社員をどう説得すればいい?」

第2回「メンタル不調社員に産業医面談を受けてもらうには?」


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