長時間労働の社員をどう説得すればいい? 教えて!山越先生 よろず相談室 第1回 

働き方改革が叫ばれる中、会社としては長時間労働を減らしたい。
でも、現場の社員からは「好きで働いているので、放っておいてほしい!」と返されることも。

人事労務担当者は、そんな板挟みになってしまうことが多いですよね。

このコーナーでは現役で活躍されている産業医の山越志保先生が、人事労務担当者の疑問や悩みにズバッと答えます。

第1回目となる今回は、「長時間労働が続いている社員への対応」についてです!



 人事労務担当者

Q . 長時間労働が続いている社員に、早めに帰るように促すと、「自分は好きで働いているので大丈夫!」と言って聞きません。長時間労働が健康によくないということを、どのように説明すればいいでしょうか?


  山越先生

A . こういう社員さん、いますよね。。。ワーカホリック的で、『24時間働けます!!!』って感じで。人事担当者も、本人が好きで働いているから、、、っていう扱いをしてしまいがちです。ただ、最近は以前にも増して、長時間労働に対して、世間の目も、労基署の対応も厳しくなってきており、企業に対する外圧は年々強くなってきているように感じます。


産業医をしていても、面談では、長時間労働の本人は笑顔で『大丈夫ですよ~先生、健康ですから、それより、仕事が立て込んでるんで席に戻っていいですかぁ』って言っちゃったり、毎月毎月、産業医面談になる社員さんもいたりして、『いや、今月も先生と会っちゃいましたね(笑)』と言ってくる始末。


山越 志保(やまこし しほ)/日本医師会認定産業医/労働衛生コンサルトタント(保健衛生)


都内の病院で内科医として勤務しながら、日本医師会認定産業医・労働衛生コンサルタントを取得し、産業医としての業務を開始。これまで多岐にわたる企業で、産業医業務を担ってきた。現在は、株式会社さくら事務所を設立し、臨床と産業医活動を行っている。


  山越先生

まあ、こんな感じで、実は、長時間労働者は割と固定化・慢性化されてくるんですよね。つまり、ほぼいつも決まったメンバーが長時間労働となるように、、、

もちろん、特定の時期だけ長時間労働になる場合であったり、たまたま運用しているシステムが炎上したとか、やり手の社員さんが急病で抜けてしまって…とか特殊事情により、一時的に長時間労働になるケースがありますが、このような場合は、社員さん自身も長時間労働が終わるゴールが見えていたりするので、割と問題発生が少ないのです。やはり、問題なのは慢性的に長時間労働となり、社員さん本人が気づかない間に、疲労が蓄積していたり、睡眠障害の初期症状が出てきたりと体調を崩してしまう事です。


前置きが少し長くなりましたが、今回は、長時間労働者への説明からその直属上司、企業への対策について拡げてお話したいと思います。


長時間労働者への説明

  山越先生

わたくしは、産業医面談の中で、長時間労働者には、下記のように説明しています。

まずは前置き、長時間労働って、単純に仕事時間が増えて物理的・精神的な負荷が増えるだけでなく、仕事以外の余暇・睡眠時間が減ってしまいます。疲労を回復させる時間すらも確保できなくなり、少なくとも2倍は不健康ですよぉ!!』とここで一拍おいて、そして、具体的な病気の話をしていきます。


例えば、『1日11時間以上の労働している人は、1日7~10時間労働時間の人と比べて、心筋梗塞や脳梗塞などの病気のリスクが約2~3倍高いことが分かっていますよ。』


この話、特に、産業医でなくても、人事担当者さんから話して頂いてもいいと思うんですよね。人事担当者さんのほうが、医療者でない分、かえって非専門的な言葉でお話頂けますので、説得力が強い場合もあります。是非、皆さん、トライしてみてください。


ただし、ここでもう一歩踏み込んで注意したいのが、長時間労働者本人にだけ、健康リスクを説明してもなかなか、現実には長時間労働は減らないということです。実際、このタイプの社員さんはタフで、長時間労働に慣れてしまっているし、しかも本音としては『仕事が雨あられと振ってくるのに、残業するなと言われても、、、困るよ』ということで、本人に話すだけでなく、直属上司、ゆくゆくは企業全体にも次のような対策を取る必要があります。


直属上司への対策

  山越先生

直属上司には長時間労働と健康障害の関連について説明するだけでは不十分だと考えます。まず、直属上司に話すべきは安全配慮義務です。安全配慮義務とは、企業側が労働者に対して安全に働くことができるよう準備や配慮をする義務のことです

この義務は、上司にも課されてくるため、そこを強調することが重要です。『コンプライアンス』『法律』という言葉を交えて、具体的な労働裁判の判例などを用いて説明するとより効果的でしょう。


まぁ、もっとぶっちゃけ言ってしまうと、『あなたの部下が長時間労働してますけど、ある日、倒れて死んでしまったら、場合によっては、あなたの責任を問われる可能性もあるよ!!』ということです。


いまだに、残業時間への配慮など他人事のように話す上司たちもいますからね。

その上で、彼らに、特に『どうしたら、特定社員に業務が集中しないようにできるのか?』ということで、現場の仕事内容、システムを具体的に考えて直してもらうことは重要です。残念ながら、産業医や人事担当者はそこまで細かく調整できないので、、現場の社員さんたち自身に認識してもらう必要があります。

何かあったら、あなたにも責任の一端がありますよ』と伝えないと、なかなか現場は本気になってくれないことが多いです。


企業への対策

  山越先生

最後に、企業自体が『長時間労働はまずいんだ。今は、健康経営を考えていくことが当然!!!』という風に、その体質が変わるといいですよね。そのためにはトップダウンで物事が進むとスムーズです。手っ取り早いのは、社長や経営層にその意識を浸透させていくことです。つまり、経営者、社長自らが、『長時間労働はしないように』と社員に呼び掛けてもらうのがいいでしょう。

これが一番、難しい気がしますが、、、、


今回は、長時間労働と健康障害の社員への説明から上司や企業への対策まで拡げてお話してみました。長時間労働が体に悪いのは直感的に理解できると思いますが、理解だけでなく、現実にそんな働き方がなくなればいいな…と願っています。せつに、、、



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▼ この記事は「教えて!山越先生 よろず相談室」の第1回です

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