就業規則いつ変更する?36協定との違いは?よくある疑問を解説

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事業場ごとに労働条件や職場の規律を定める「就業規則」。

常時10人以上の労働者を使用する事業場で作成し、所轄の監督署に届け出る必要があります。

就業規則の作成手順や罰則については、就業規則を作成しよう<準備編>で解説しました。

では、作成後はどのような点に注意すればいいのでしょうか。

変更のタイミングや36協定との違いなど、よくある疑問に回答します。

<目次>

Q1 就業規則を変更したいときはどうするの?

Q2 就業規則の変更を検討するタイミングは?

Q3 支社ができたら、就業規則はどうなるの?

Q4 従業員に不利益になる変更はできる?

Q5 就業規則と労働契約はどちらが優先される?

Q6 就業規則と36協定はどう違う?

Q7 最近増えている「副業」。就業規則に定めた方がいい?

Q8 ユニークな就業規則、どんなものがある?


Q1 就業規則を変更したいときはどうするの?


就業規則を変更する場合、作成と同様の以下の手続きが必要です。


① 就業規則の作成・変更

② 労働者代表の意見聴取

③ 所管の監督署へ届出

④ 労働者への周知


具体的には、就業規則を作成しよう<準備編>を参考にしてください。


Q2 就業規則の変更を検討するタイミングは?


就業規則を一度作成したっきり、そのままにしていませんか?

特に、労働法の改正があったり、会社の経営の方向性・社内の管理体制を見直したりするタイミングでは、就業規則をしっかり見直しましょう。


全国社会保険労務士会連合会、都道府県社会保険労務士会は就業規則の見直しや変更のタイミングとして、以下の例を挙げています。


①法改正があった

②就業規則に記載されている労働条件と実際の就業の状態にギャップ(ズレ)がある

③非正社員の増加で、正社員用の就業規則がそのままの状態では使えない

④労使問題(紛争)が生じたときに、就業規則がその解決に対応できる内容となっていなかったため混乱を生じ、その反省を踏まえ、今後のトラブル防止又は予防のために改定する

⑤会社の成長や労働環境の変化により、従業員側から又は会社の起案により労働条件の変更の要望が生じた

⑥合併や吸収、会社分割、営業譲渡など経営状況に大きな変化があった

⑦労働組合が結成され団体交渉などが行われ、又は労使協議制により従業員の労働条件に変更があった

⑧企業防衛及びリスク管理のために、新たに規定を追加する必要性が出てきた

⑨助成金を受給するために就業規則への規定の追加や見直しが必要になった

⑩労働基準監督署から是正勧告や指導を受けた


これらの例に該当する場合は、特に注意して就業規則を見直しましょう。

中小企業のための就業規則講座「就業規則作成・ 見直しのポイント」~不況に負けない『いきいき職場』をつくるために~(厚生労働省委託 中小企業労働契約改善事業)


Q3 支社ができたら、就業規則はどうなるの?


就業規則は事業場単位の届出が原則なので、本社以外に事業場を設ける場合は、就業規則も別に設ける必要があります。

共通の就業規則でも、原則として事業場ごとに当該営業所の所在地を管轄する労働基準監督署へ届け出をします。

ただし、本社と各事業場の就業規則の内容が同一である場合は、本社を統括している労働基準監督署長に一括して届け出ることが可能です。

その場合、意見書は事業場ごとに添付しましょう。


Q4 従業員に不利益になる変更はできる?


会社側は労働者の同意なく、賃金・退職金の減額などの労働者の不利益になるような労働条件に就業規則を変更することはできません。労使の合意が原則です。


平成20年(2008年)に施行された労働契約法第9条で、下記のように定められています。


使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働条件を変更することはできない


ただし、同法第10条によると、以下の2つの要件を満たす場合、就業規則を変更して労働条件を変更することができます。


<要件>

就業規則の変更が合理的である

②変更後の就業規則を労働者に周知させた


合理的かどうかは、その不利益の程度、変更の必要性、変更後の内容の相当性、労働組合などとの交渉状況、その他の事情を考慮し、総合的に判断されます。


Q5 就業規則と労働契約はどちらが優先される?


労働契約は、労働者が労働し使用者が賃金を支払うことについて、労働者と使用者が合意することによって成立します。(労働契約法第6条)

事業場に就業規則がある場合、就業規則と労働契約の内容が異なったらどちらが優先されるのでしょうか。


同法第7条によると、使用者が以下の2つの要件を満たす場合、就業規則の方が労働条件となります。

<要件

① 就業規則の内容が合理的

② 就業規則を労働者に周知させていた


また、労働契約で定めている労働条件が、就業規則を下回っている場合、労働条件は、就業規則の内容まで引き上がります。(同法第12条)

ただし、法令や労働協約に反する就業規則は、労働者の労働条件にはなりません。(同法第13条)


Q6 就業規則と36協定はどう違う?


就業規則は、労働時間や賃金などの労働条件や、労働者が就労の際に守らなければならない規律です。

では、労使協定である「36(サブロク)協定」との違いはなんでしょうか。

36協定には、労働者に規律を守らせる効力はありません。36協定にあるのは、使用者が罰則を免れる効力(免罰的効力)です。


まず「労使協定」とは、使用者と、労働者の過半数で組織する労働組合か労働者の過半数を代表する者との間で取り決められる協定です。

中でも「36協定」は、「時間外労働協定」を指します。

時間外・休日労働について定め、行政官庁に届け出た場合に、法定の労働時間を超える時間外労働、法定の休日における休日労働が認められます。

(労働基準法第36条に定めがあることから「36協定」と呼ばれています。)


締結し、届け出をすれば、法定労働時間を超えて労働者に残業をさせても、使用者は処罰されません。ただ、36協定だけでは、労働者は、残業命令に従う義務はないのです。

残業を命じるには、労働契約や就業規則に、残業命令に従うべき義務があるという規定を設けることが必要です。


Q7 最近増えている「副業」。就業規則に定めた方がいい?


厚生労働省では、平成29年(2017年)3月の働き方改革実現会議で決定した「働き方改革実行計画」を踏まえ、副業・兼業を普及促進しています。

このことを背景に、厚生労働省は平成30年(2018年)1月、モデル就業規則を改定。労働者の遵守事項の「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定を削除し、副業・兼業について規定を新設しました(第14章第67条) 。

平成30年(2018年)は「副業元年」とも呼ばれています。


厚生労働省の副業・兼業の促進に関するガイドラインには、企業、労働者それぞれの副業・兼業のメリットが挙げられています。

≪企業≫

◇優秀な人材の獲得・流出の防止ができ、競争力が向上する

◇労働者が社外から新たな知識・情報や人脈を入れることで、事業機会の拡大につながる

≪労働者≫

◇離職せずとも別の仕事に就くことが可能となり、スキルや経験を得ることで、 労働者が主体的にキャリアを形成することができる 

◇本業の所得を活かして、自分がやりたいことに挑戦でき、自己実現を追求することができる


ただ現実には、副業・兼業は、守秘義務の問題のほか、労働時間の管理や長時間労働による心身の不調の問題などがあり、企業での導入は進んでいません。

特に、労働時間の通算の問題は、注意が必要です。

労働基準法で定められる1日8時間、週40時間の法定労働時間を超えて働かせた場合、働かせた職場が割増賃金を支払わなければなりません。
近年、労働時間の適正把握が企業の義務になっていますので、職場が労働時間を管理しないということもできません。


労働時間の通算規定は、昭和20年代に出された通達が基本です。
現在、政府は見直しに向けて「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会」を開催しています。

副業に関しては、職場が労働者の労働時間をどのように把握するか、割増賃金の支払いについてどのように考えるかが整理されないと、導入のメリットよりデメリットの方が大きくなりがちです。

副業・兼業で労使双方にメリットが得られると判断した場合に、副業・兼業の規定を設けましょう。


改定されたモデル就業規則の副業・兼業についての規定は以下の通りです。

第14章 副業・兼業
(副業・兼業)
第67条 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
2 労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行う ものとする。
3 第1項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止又は制限することができる。
① 労務提供上の支障がある場合
② 企業秘密が漏洩する場合
③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
④ 競業により、企業の利益を害する場合


規定を設ける際は、参考にしてください。


Q8 ユニークな就業規則、どんなものがある?


就業規則で、カラーが出しやすいのは休暇制度です。

バースデー休暇、家族のための休暇、自分で設定できる記念日休暇、自分や家族の結婚に伴う休暇などさまざまな休暇があります。

有給休暇を2年間で消滅させず、傷病休暇として蓄えておける制度を設けている企業もあるようです。

就業規則を変更するタイミングと合わせて、自社の売りになるような、オリジナルの休暇を検討してみてはいかがでしょうか。


以上、就業規則作成後のよくある疑問について回答しました。


就業規則は、使用者の考える会社運営を実現させるために労働者に伝える”お手紙”とも言えます。

しっかり設計して、必要に応じて見直しをしていきましょう。


つづけて読みたい 

▼ この記事は「就業規則を作成しよう」実施編です。準備編がまだの方は以下よりどうぞ。

就業規則を作成しよう<準備編>


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