「みなし労働時間」を超えたら残業代は出る?裁量労働制のキホンと注意点を解説

仕事の内容やペースを労働者個人の裁量に委ねる「裁量労働制」には、専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制の2種類が存在します。

裁量労働制を運用する際に大切になる「みなし労働時間」の基本ルールと、注意点について解説します。


目次[非表示]

  1. 1.「裁量労働制」と「みなし労働時間」ってなに?
    1. 1.1.「裁量労働制」とは?
    2. 1.2.「みなし労働時間」をオーバーした分は残業代として支払う
  2. 2.専門業務型と企画業務型、2つの裁量労働制の違いとは?
    1. 2.1.専門業務型裁量労働制の対象となる業務
    2. 2.2.企画業務型裁量労働制の対象となる業務
    3. 2.3.専門業務型と企画業務型裁量労働制、定義からみる「違い」
  3. 3.「裁量がない」労働者を裁量労働制で働かせることはできない
    1. 3.1.裁量労働制を拡大解釈し、悪用することは厳禁
    2. 3.2.裁量労働制で働く従業員も、過重労働に関する取扱いは同じ

「裁量労働制」と「みなし労働時間」ってなに?

「裁量労働制」とは?

2019年からスタートした「働き方改革関連法案」の中でも注目されている裁量労働制。

裁量労働制とは、使用者と労働者があらかじめ「みなし労働時間」の取り決めを行った上で行う業務形態です。

つまり、裁量労働制は「実際に1か月で何時間働いたか」という考え方ではなく「1か月○○○時間働いたとみなす」という労働形態になります。

その代わりに、業務の遂行方法は大幅に労働者の裁量に委ねられ、使用者からも具体的な指示をされないことが、裁量労働を運用する際のルールとなります。


「みなし労働時間」をオーバーした分は残業代として支払う

裁量労働制が適用されている労働者が「みなし労働時間」をオーバーしていた場合でも、これまでは割増賃金の支払い義務がありませんでした。

しかし、2019年4月からスタートした「働き方改革関連法案」では、裁量労働制で働く人も一般的な労働者と同様に、労働時間を把握した上で割増賃金を支払うことを義務付けています。

要するに「みなし労働時間制」で働いた場合にも残業代が支払われるということです。

そのためには「みなし労働時間制」だとしても、企業は裁量労働で働く従業員の勤怠時間をしっかり把握することも大切になります。

それと同時に、裁量労働制で働く労働者であっても、長時間働いた場合には産業医(医師)による面接指導の実施が義務化されています。


専門業務型と企画業務型、2つの裁量労働制の違いとは?

専門業務型裁量労働制の対象となる業務

専門業務型と企画業務型、2つの裁量労働制の違ですが、それぞれで対象となる業務内容や労働条件が異なっています。

まずは専門業務型裁量労働制から見ていきましょう。

専門業務型裁量の対象になる業務は以下のものがあります。

専門業務型裁量労働制の対象業務

①開発者(新商品・新技術)、研究者(人文科学・自然科学)

②情報処理システム分析・設計の業務

③記者、編集者(新聞・出版事業)

④デザイナー(衣服・室内装飾・工業製品・広告等)

⑤プロデューサー、ディレクター(放送番組、映画等の制作事業)

⑥コピーライター(広告、宣伝等)

⑦システムコンサルタント(情報処理システム活用等への助言業務)

⑧インテリアコーディネーター(照明器具、家具等の配置に関する考案業務)

⑨ゲーム用ソフトウェアの創作者

⑩証券アナリスト

⑪金融商品の開発者

⑫大学での教授研究の業務

⑬公認会計士、弁護士、建築士、不動産鑑定士、弁理士、税理士、中小企業診断士

裁量労働制を運用する場合には、上記の業務に当てはまる業務内容であることが条件です。

また、使用者と労働者は以下の項目について労使協定を結び、必ず所轄の労働基準監督署へ届け出ることが必要です。

  • 「制度を適用する業務の範囲」
  • 「業務遂行の方法などへ具体的な指示をしないこと」
  • 「1日あたりのみなし労働時間数」  など

※専門業務型裁量労働制の労使協定の作成例は厚生労働省のHPにて公開されています。


企画業務型裁量労働制の対象となる業務

企画業務型裁量労働制の対象業務となるのは、以下の条件を満たしている必要があります。

企画業務型裁量労働制の対象となる業務の条件

①業務が所属する事業の運営に関するものであること

②企画、立案、調査及び分析の業務であること

③業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要がある業務であること

④業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務であること

なお、企画業務型裁量労働制を運用する場合には、労使委員会で5分の4以上の多数議決が必要になります。そして、この決議を所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。


専門業務型と企画業務型裁量労働制、定義からみる「違い」

専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制の対象業務と同じように、それぞれの業務形態について知っておきたい定義が以下のものです。

確認しておきましょう。

  • 専門業務型裁量労働制:業務の性質上、その遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があるため、業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し具体的な指示をすることが困難な業務
  • 企画業務型裁量労働制:事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査、分析の業務であって、業務の性質上、その遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があるため、業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し具体的な指示をしない業務


「裁量がない」労働者を裁量労働制で働かせることはできない

裁量労働制を拡大解釈し、悪用することは厳禁

裁量労働制の対象となる業務を拡大解釈すること、みなし労働時間を理由に「長時間労働を強いる」「残業代を支払わない」といった裁量労働制の悪用は厳禁です。

前述してきたように、裁量労働制を適用するためには要件をクリアする必要があります。

そして、労働者本人にも対象業務を適切に遂行するための知識・経験を有していることが条件となっているのです。

したがって、全く職務経験や裁量がない労働者を裁量労働制で働かせることはできません

また、裁量労働制で働く従業員に対して実際には裁量を与えず、上司から「業務について具体的な指示」を出しているような場合は、裁量労働として認められないので注意します。


裁量労働制で働く従業員も、過重労働に関する取扱いは同じ

たとえ「みなし労働時間」で働いている従業員であっても、使用者は労働者の勤務時間を把握することが必要です。

そのためには、出勤・退勤時刻(入退室時刻)を具体的に把握・記録し、長時間労働の実態があれば改善することが求められています。

また、裁量労働制で働く従業員であっても長時間労働をしている場合には産業医による面接指導の対象になります。

裁量労働制とはいえ、労働者の労働時間や健康には使用者の管理が求められています。

適切な対応を心がけましょう。




▼サンポナビの関連記事▼

【やさしく解説】義務化された「労働時間の客観的把握」方法と対象者とは

【長時間労働対策のポイント】過労死・労災・訴訟リスクに企業はどう対応する?

努力義務になった「勤務間インターバル制度」適切な時間や運用の注意点は?

サンポナビ編集部

サンポナビ編集部

企業の産業保健を応援する『サンポナビ』編集部です。産業医サポートサービスを提供している株式会社エムステージが運営しています。 産業医をお探しの企業様、ストレスチェック後の高ストレス者面接でお困りの企業様は、ぜひお問い合わせボタンからご相談ください。

\導入数1,700件超!/エムステージの産業保健サービス

◇産業医紹介/選任後サポートはエムステージにお任せください【従業員50人以上の事業所必須】 ◇

サービス料金 初期費用0円&月額3万円~【業界最安値水準】

2か月に1回・60分の業務頻度で月額3万円のプランからご検討可能です。実際の月額費用は、業務時間・業務頻度・候補産業医の経験・対象事業場所在地等により変動します。貴社にマッチするプランを各種ご提案可能ですので、お気軽にお問い合わせください。

産業医紹介で終わらない 業界最高水準のサポート体制/専任カスタマーサポート

専任カスタマーサポートによる実務相談、衛生委員会の運営支援、業務内容の事前調整や日程調整、様々な資料やフォーマットの提供、産業保健業務管理クラウドの提供等、産業医の紹介後も充実のサポートでご担当者の業務負担を大幅に軽減いたします。

サービス導入実績 全国700企業・1,700事業所以上/大手から中小企業まで

従業員数1,000人以上の大手企業から、50人未満の中小企業まで幅広くご活用いただいています。登録産業医10,000名以上&全国7拠点のネットワークで、日本全国で産業医をご紹介可能です。また、100事業所以上の産業医を同時選任した実績もございます。

関連記事


【やさしく解説】義務化された「労働時間の客観的把握」方法と対象者とは

労働安全衛生法が改正され、使用者は2019年4月から労働時間を客観的な方法で適正に把握することが義務付けられました。義務化にはどのような目的があるのでしょうか。また、具体的にどのような方法で把握をすればいいのでしょうか。確認しましょう。

何時間あければOK?「勤務間インターバル制度」運用のポイントと注意点

2019年4月から導入が努力義務となった「勤務間インターバル制度」。働く人の睡眠時間などを確保することで、ワークライフバランスの向上につながることが期待されています。導入のメリットをはじめ、有効な活用方法や注意点について紹介します。

2021年:労災認定基準が改正「過労死ライン」に企業はどう対応する?

毎年11月は「過労死防止啓発月間」です。2020年は新型コロナウイルスの流行によって働き方にも大きな変革があり、リモートワークでの過重労働対策も課題になっています。過労死を防ぐために個人・企業が知っておきたいことをまとめました。

◇外部相談窓口の設置◇
社員のメンタル不調の防止だけでなく、健康増進による生産性の向上で企業の業績改善に!

◇メンタルヘルス研修の実施◇
専門家による質が高い研修を実施!集合研修、オンライン研修、動画研修と幅広くご対応可能

\1回ごとに産業保健業務を委託可能なサービス《スポット産業医紹介》/


◇メンタルヘルスの法令対応はお済みですか?◇

《従業員50人以上の事業所》 労働安全衛生法への対応はお済みですか?

衛生管理者の選任や産業医の選任、衛生委員会の設置、ストレスチェックの実施、定期健康診断結果報告書の提出が必要になります。法令対応のサービスはこちらから。

中小企業へのパワハラ防止法施行予定《2022年4月》職場のハラスメント対策が必要!

2022年4月に中小企業にパワハラ対策が義務化!※大企業はすでに義務化済み。外部相談窓口の設置やハラスメント研修で対策可能です。

\\導入企業700社・事業所1,700以上の導入実績!大手から中小企業まで幅広くご活用//

◆TOP5◆

いま最も読まれている記事



○産業医のオススメ記事

○産業保健おすすめサービス


◆TOP5◆

ダウンロード数の多い資料



○産業保健のオススメ資料


○新型コロナウイルス感染症対策の資料(産業保健師監修)
企業においては、感染予防に関する正しい知識を衛生委員会で共有し、従業員に啓発することが求められます。「産業保健担当者向け資料」と「衛生講話資料」、そして基本的な感染症対策についてまとめた「衛生講話サマリー」(社内掲示用)、「COVID-19のワクチンについて」の4つをご用意しました。

▷無料でダウンロード


○衛生委員会のオススメ記事


○法令対応サービスをご提供


○外部相談窓口設置で専門家に相談可能/企業向けサービス


○メンタルヘルス研修で従業員の不調を未然に防ぐ


「メンタル不調の社員が増加している」「産業保健業務が多すぎて、産業医の対応時間内に収まらない」という悩みはございませんか?
そんなときは「産業保健師の選任」がオススメです!産業保健師が社内にいると、保健指導や健康相談、健診前後サポート、フォロー面談等が実現可能です。\産業医との同時活用で、充実の産業保健体制に!/

▶産業保健師の紹介/選任サービス


〒141-6005 東京都品川区大崎2-1-1 ThinkPark Tower5F

☎03-6697-1660
(9:00~18:00 土日祝を除く)