繁忙期に従業員から有給休暇申請が!取得日は変更できる?時季変更権を解説

最終更新日:2021年3月9日

2019年4月の労働基準法の改正によって、企業は従業員に毎年最低5日間の有給休暇を取得させることが義務化され、義務を果たさない場合には罰則を課されることになりました。

しかし、有給休暇の申請が繁忙期に重なってしまった場合など、使用者は従業員からの申請日を他の日に変更することが可能なのでしょうか。

有給休暇の「時季変更権」行使のポイントと注意点を確認しましょう。


目次[非表示]

  1. 1.有給休暇の“時季変更権”とは?
    1. 1.1.1年のうち有給休暇を「最低5日」取得させる“新ルール”
    2. 1.2.有給休暇を取得させるには使用者からの“時季指定”もOKに
      1. 1.2.1.①労働者の申出による取得
      2. 1.2.2.②使用者の時季指定による取得
    3. 1.3.年次有給休暇の時季変更権とは?
  2. 2.年次有給休暇の“時季変更権”その強制力とは?
    1. 2.1.有給休暇の取得理由は無くてもいい「いつどんな目的で使うか」は労働者の自由
    2. 2.2.では“時季変更権”はどのような時に使えるのか
      1. 2.2.1.①使用者が時季変更権を行使できる条件
      2. 2.2.2.②有給休暇の時季変更が不可となるケース
      3. 2.2.3.③就業規則にも時季変更権について明記しておく
  3. 3.時季変更権を濫用すると損害賠償の“罰則”が課される
    1. 3.1.パワハラになる恐れもある時季変更権“濫用”のリスク
    2. 3.2.時季変更で重要なのは“取得させるためにどこまで配慮したか”

有給休暇の“時季変更権”とは?

1年のうち有給休暇を「最低5日」取得させる“新ルール”

有給休暇の取得は労働者の“権利”であり、企業(使用者)には取得させる“義務”があります。

2019年4月に改正された労働基準法の新ルールについては、過去にもサンポナビの記事「2019年4月から働き方改革関連法が施行。企業が取るべき措置は?」にて取り上げましたが、あらためて内容をおさらいしておきましょう。


新ルールでは「年次有給休暇が10日以上付与されている労働者に対して、毎年5日、必ず有給休暇を取得させる」ことが義務化されています。

例えば、今年の4月1日に入社した従業員には、10月1日に有給休暇が付与されます。その有給休暇を来年の9月30日までに5日、取得させなければなりません。


有給休暇を取得させるには使用者からの“時季指定”もOKに

有給休暇の取得には主に以下2つの方法が挙げられます。


①労働者の申出による取得

有給休暇取得の最も一般的な方法です。労働者から使用者に対して「〇月〇日に休みます」という申請を出す方法。


②使用者の時季指定による取得

2019年4月の労働基準法改正によって新設された方法。

「〇月〇日に休んでください」という風に使用者が労働者に対して有給取得日を指定します。

その際、使用者は労働者の意見を聞いた上、労働者の意見も尊重することが求められています。

つまり、労働者があまりに有給休暇を取得しないような場合には、企業から有給休暇を取得するよう促さなければならなくなりました。


年次有給休暇の時季変更権とは?

年次有給休暇の時季変更権とは、労働者から申請のあった有給休暇取得日を使用者が変更する権利のことです。

労働基準法には「(中略)請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。(第39条第5項)」とあります。

とはいえ、法的には労働者の持つ有給休暇取得の権利の方が強いといえるため、使用者が時季変更権を行使するためには、まず変更について従業員からの合意を得ることが重要となります。

また、強硬的な時季変更権の行使にはさまざまなリスクが伴うため、細心の注意が求められています。

次に、時季変更権の詳細について見ていきましょう。



年次有給休暇の“時季変更権”その強制力とは?

有給休暇の取得理由は無くてもいい「いつどんな目的で使うか」は労働者の自由

労働基準法の原則として、有給休暇をいつ取得するかということは労働者の自由とされています。そのため、使用者の持つ時季変更権のそれ自体に強制力があるとはいえません。

また、従業員の有給休暇の使い道を理由に、使用者が時季を変更することも不可とされています。

例えば……

従業員「〇月〇日に有給休暇を使わせてください」

使用者「何のために休むのですか?」

従業員「友人とスキーに行こうと思っています」

使用者「遊びが理由なら駄目です。有給休暇を使うなら△月×日にしてください」

なお、有給休暇を取得する理由を尋ねること自体は問題になりませんが、このような場面では従業員の意志を尊重する必要があるため、使用者の言い分は通らないことになるといえます。


では“時季変更権”はどのような時に使えるのか

時季変更権を行使する際には注意すべきポイントがあります。

また、時季変更権を濫用することは罰則の対象になる可能性もあるため、慎重な判断が必要です。


使用者が時季変更権を行使できる条件

時季変更権を行使するためには、従業員の有給休暇取得によって「事業の正常な運営を妨げる場合」であることが条件となります。

「事業の正常な運営を妨げる場合」と判断される要素は以下となります。

  • 事業所の規模や業務内容
  • 有給休暇を申請した従業員の担当している職務内容や職務の性質
  • 職務の繁閑
  • 代替要員確保の配置の難易、同時季に有給休暇を指定した員数
  • これまでの労働慣行など(※)。

極端な話ですが、例えば業務の繁忙期に「明日から20日間の有給休暇を取らせてください」という申し出があった場合などが上記のケースに該当するといえます。

※労働基準法第39条5項(時季変更権)


有給休暇の時季変更が不可となるケース

従業員や会社の事情によって、時季変更が不可となる場合があります。

例えば、以下のようなケースが該当します。

  • 従業員の有給休暇が時効消滅してしまう場合
  • 従業員の退職(あるいは解雇)が決まっていて、退職(解雇)予定日までの日数より保有する有給休暇の日数が多い場合
  • 事業廃止や倒産といった理由で、時季変更権の行使をすると有給休暇を消化できない場合
  • 時季変更権を行使することで、産後休業や育児休業の期間に重なる場合

これらのような事情がある場合には、従業員からの申請を受け入れ、有給休暇を取得させるようにすることが求められます。


就業規則にも時季変更権について明記しておく

例えば就業規則には「従業員より申請された時季に年次有給休暇を取得させることで事業の正常な運営を妨げる場合には、取得日を変更することがある」という風に、年次有給休暇の時季変更についてあらかじめ明記し、従業員に対して周知しておくことも大切です。

ただし、就業規則に記載したからといって時季変更権の行使が可能になるわけではないため注意が必要となります。

  年次有給休暇管理簿はどのように作成すればいい? 働き方改革関連法施行により、年次有給休暇が年10日以上付与される労働者に、年間5日間の年休を取得させることが使用者の義務になりました。また、労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成しなければなりません。年次有給休暇管理簿の作成手順を確認しましょう。 エムステージ 産業保健サポート



時季変更権を濫用すると損害賠償の“罰則”が課される

パワハラになる恐れもある時季変更権“濫用”のリスク

例えば、使用者が時季変更権を濫用し「この日は休んじゃダメだから違う日にして」「その日もだめだから」という風にして、従業員から申請のあった日に有給休暇を取得させないことや、そもそも有給休暇を取らせないために時季変更権を濫用したような場合、従業員が「パワハラだ」と受け取ることも考えられます。

そうした場合、使用者は従業員からの訴訟リスクや、罰則が課せられる可能性もあります

〈使用者に課せられる罰則〉

6か月以下の懲役または30万円以下の罰金

※労働基準法第39条(年次有給休暇)、労働基準法第119条(罰則)

それに対して、適法な時季変更であれば、従業員は当初有給休暇を申請した日に働く義務が生じることになります。


時季変更で重要なのは“取得させるためにどこまで配慮したか”

従業員から申請された有給休暇の取得日が繁忙期であったとしても、使用者はできる限り有給休暇を取れるように配慮することが求められています。

例えば「代わりの従業員を確保する」ことや「勤務のシフトを変更する」など、使用者は状況に応じて有給休暇を取得させる努力をすることが必要です。

これらの配慮をした上で、それでも人員調整などに限界がある場合には時季変更が可能ともいえますが「人手不足で休まれると困る」といった理由が適法とは判断されづらいため、時季変更権の行使は慎重にすべきです。

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有給休暇に関するルールが変わり、企業には対応が求められていますが、大切なのは時季変更が必要な状況にならないよう、日ごろから業務の内容や人員の調整ができる職場づくりをしていくことでしょう。



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