定期健康診断の費用は会社負担?健診の種類・項目・義務内容のおさらい
労働者が健康で働けるよう、企業が労働者に健康診断を実施することは、労働安全衛生法で義務付けられています。また費用については、企業が負担することになっています。
企業が実施を義務付けられている健康診断にはいくつかの種類がありますが、特に定期健診は、職種や規模に関わらず、最低でも年1度の実施が必要です。
定期健診の実施にはどれほどの費用がかかるのでしょうか。確認してみましょう。
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実施が義務とされている健康診断にはどんな種類がある?
実施が義務付けられている健康診断とその種類
企業が実施を義務付けられている健康診断は、職種に関係なく、常時雇用する労働者を対象とした「一般健康診断」と、労働衛生対策上特に有害であるといわれている業務に従事する労働者に対する「特殊健康診断」や、じん肺法施行規則別表で定められた24の粉じん作業に従事する労働者に対する「じん肺健診」などがあります。
「一般健康診断」は職種に関係ないため、すべての企業が対象になります。
雇い入れ時の健診や1年以内ごとに1回実施する定期健診のほか、海外に6カ月以上派遣する労働者を対象とした健診や、給食従業員の検便などが含まれます。
また、有害であるといわれている業務に従事する労働者のうち「特殊健康診断」を実施しなければならない業務は、以下のものです。
1、高気圧業務
2、放射線業務
3、特定化学物質業務
4、石綿業務
5、鉛業務
6、四アルキル鉛業務
7、有機溶剤業務
「じん肺健診」は、常時粉じん作業に従事させる労働者が対象です。
定期健診で定められている診断項目はどんなものがある?
定期健康診断は11項目
健康診断は複数の種類がありますが、特に定期健診は、企業の規模や職種に関わらず、担当者は最低でも年に1度は手配や準備が必要になります。
ここでは、定期健診について詳しくみてみましょう。
定期健診は、疾病の発見や予防のほか、就業の可否や適正配置などの判断のために行います。「定期」とは、毎年一定の時期にという意味で、その時期については、事業場ごとに決めることができます。
定期健診の法で定められた診断項目(法定項目)は以下の11項目になります。
1、既往歴及び業務歴の調査
2、自覚症状及び他覚症状の有無の検査
3、身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
4、胸部エックス線検査及び喀痰検査
5、血圧の測定
6、 貧血検査(血色素量及び赤血球数)
7、 肝機能検査(GOT、GPT、γ―GTP)
8、 血中脂質検査( LDLコレステロール、 HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
9、 血糖検査
10、 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
11、 心電図検査
また、2018年4月から、8. 血中脂質検査、9. 血糖検査、10. 尿検査については、項目は変わりませんが、取り扱いが変更になりました。
変更点は以下の通りです。
8. 血中脂質検査について
LDLコレステロールの評価方法が示されました。 LDLコレステロールの評価方法として、フリードワルド式によって総コレステロールから求める方法、又はLDLコレステロール直接測定法によることが示されました。
9. 血糖検査について
空腹時又は随時血糖の検査を必須とし、HbA1c のみの検査は認められません。
10. 尿検査等について
医師が必要と認めた場合には、「血清クレアチニン検査」の追加が望まれます。
また、企業は定期健診の結果について、記録を作成し、5年間保存する必要があります。
定期健康診断の費用は自由診療。会社が全額負担する
健康診断の費用は全額会社負担?
健康診断は法律により企業に実施が義務付けられているものですので、費用は企業が全額負担することが労働安全衛生法にて定められています(※)。
健康診断は保険適用外のため自由診療となり、費用はさまざまです。
定期健康診断の場合、一人当たり5000円~15000円前後に設定している医療機関・健診機関が多いようです。
企業の定期健診用に見積もりを受け付けている医療機関・健診機関もあります。
選ぶ際は、費用はもちろんですが、予約は取りやすいのか、労働者にどのような形式で健診を受けさせるのか―など、さまざまな視点から検討しましょう。
※労働安全衛生法および同法施行令の施行について(抜粋)
(2) 第六六条関係
イ 第一項から第四項までの規定により実施される健康診断の費用については、法で事業者に健康診断の実施の義務を課している以上、当然、事業者が負担すべきものであること。
ロ 健康診断の受診に要した時間についての賃金の支払いについては、労働者一般に対して行なわれる、いわゆる一般健康診断は、一般的な健康の確保をはかることを目的として事業者にその実施義務を課したものであり、業務遂行との関連において行なわれるものではないので、その受診のために要した時間については、当然には事業者の負担すべきものではなく労使協議して定めるべきものであるが、労働者の健康の確保は、事業の円滑な運営の不可決な条件であることを考えると、その受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましいこと。
特定の有害な業務に従事する労働者について行なわれる健康診断、いわゆる特殊健康診断は、事業の遂行にからんで当然実施されなければならない性格のものであり、それは所定労働時間内に行なわれるのを原則とすること。また、特殊健康診断の実施に要する時間は労働時間と解されるので、当該健康診断が時間外に行なわれた場合には、当然割増賃金を支払わなければならないものであること。
ハ 第四項の「その他必要な事項」には、健康診断項目の追加等があること。
昭和四七年九月一八日 基発第六〇二号
定期健康診断はどのようにして受ける?
定期健診のパターンとしては、
- 企業で集団検診を受ける
- 企業指定の医療機関・健診機関で健診を受ける
- 労働者それぞれが任意の医療機関・健診機関で健診を受ける
などが想定されます。
1の企業で集団検診を受ける場合は、巡回する健診バスを利用する方法もあります。
定期健康診断、受診時の賃金・給料はどうなる?
定期健康診断、受けている時間の賃金・給料は「支払う方がよい」
雇い入れ時の健診や定期健診などの「一般健康診断」は、一般的な健康確保を目的として企業に実施義務を課しているので、業務遂行との直接の関連はなく、受診時間の賃金は労使間の協議によって定めるべきです。
ただし、厚生労働省は「安全衛生に関するQ&A」の中で、「労働者がスムーズに受診するためには、健診時間の賃金を支払うことが望ましい」旨を回答しています。
また、前述した労働安全衛生法にも「(中略)受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましい」としています。
特殊健康診断、受診時の賃金・給料の支払いは?
一方で、有害業務に従事する労働者のための「特殊健康診断」は、業務の遂行に関して、労働者の健康確保のため当然に実施しなければならない健診です。
健診時間は労働時間であり、賃金の支払いが必要ですので注意しましょう。
また、健診を受診する時間帯が就業時間中でない場合は、割増賃金も発生します。
健康診断の費用について紹介しました。
健康診断は労働者の健康確保の基本です。確実に実施しましょう。
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