【まとめ版】専門家が教える「障害年金」給付額・支給の3要件・請求手続きの基本

専門家の社労士が「障害年金」の基本をやさしく解説

公的年金の一つで、病気やけがで働いたり生活をしたりすることが困難になった人に支給される「障害年金」。

障害年金の専門家である松山純子先生(社会保険労務士)は「無理せず長く働くために大切な制度」と話す。

また、近年特に話題となるのは「働く世代に特に多いメンタル関連疾患」による障害年金の給付。

障害年金の「制度」「給付額」「請求・申請方法」といった具体的な内容や手続きのポイントについて、専門家が解説します。



目次[非表示]

  1. 1.専門家の社労士が「障害年金」の基本をやさしく解説
  2. 2.障害年金の基本:公的年金3つの種類と給付額の仕組み
    1. 2.1.障害年金の種類:「障害基礎年金」と「障害厚生年金」
      1. 2.1.1.●公的年金の種類と給付額の関係
    2. 2.2.障害年金の給付額は加入期間や給与、障害等級で決まる
      1. 2.2.1.●障害等級とは?
  3. 3.障害年金の支給対象は「外部」「精神」「内部」の3つ
    1. 3.1.障害年金の支給対象となる病気・けがの種類を知っておく
      1. 3.1.1.●障害年金の支給対象となる障害
    2. 3.2.「精神障害」で障害年金の支給対象となるには
  4. 4.給付額はいくら?障害年金の「等級」と支給の「3要件」
    1. 4.1.障害基礎年金の給付額は、2級で月65,000円程度
    2. 4.2.障害年金の支給を受けるための「3要件」
      1. 4.2.1.●障害年金における支給の3要件
      2. 4.2.2.●障害者手帳を持っていなくても障害年金は請求できる
  5. 5.支給の「3要件」と障害年金の請求手続きのポイントその1
    1. 5.1.〈支給要件①〉障害年金の請求手続きでは「初診日の確定」がポイント
      1. 5.1.1.●手元にカルテが無い…。「初診日」を知る方法はある?
      2. 5.1.2.●そもそも「初診日」とはいつのこと?
    2. 5.2.〈支給要件②〉保険料納付の要件は日本年金機構で確認できる
    3. 5.3.〈支給要件③〉障害等級の確認には、医師の診断書を提出する
      1. 5.3.1.●医師が正確な診断を行なえるよう、情報を伝えることがポイント
  6. 6.「書類審査がすべて」障害年金の請求手続きのポイントその2
    1. 6.1.障害年金、請求手続きのポイントは書類審査
    2. 6.2.さいごに:障害年金の請求手続きは専門家に相談を



松山 純子(まつやま・じゅんこ)


社会保険労務士。YORISOU社会保険労務士法人代表社員。

短期大学卒業後、福祉施設(身体・知的・精神)で人事総務やケースワーカーとして10年以上勤務。2006年松山純子社会保険労務士事務所を開業。2017年10月に法人化した。著書に「改訂版 障害年金をもらいながら働く方法を考えてみませんか?」(日本法令)「スッキリ図解 これならわかる障害年金」(翔泳社)など。


障害年金の基本:公的年金3つの種類と給付額の仕組み

障害年金の種類:「障害基礎年金」と「障害厚生年金」

日本の公的年金制度は、20歳以上の全ての人が共通して加入する基礎年金(国民年金)と、会社員が加入する厚生年金などによる「2階建て構造」になっています

そして、公的年金には、高齢になったときに受け取る「老齢年金」。

重度の障害を負ったときに受け取る「障害年金」。

家計を支える人が亡くなった時に遺族が受け取る「遺族年金」があり、それぞれの種類と内容は以下の表のようになっています。


●公的年金の種類と給付額の関係



基礎年金
厚生年金
老齢

老齢基礎年金

保険料を納めた期間などに応じた額

老齢厚生年金

保険料を納めた期間や賃金に応じた額

障害

障害基礎年金

障害等級に応じた額

(子がいる場合には加算あり)

障害厚生年金

賃金・給与や加入期間、障害等級に応じた額

遺族

遺族基礎年金

老齢基礎年金の満額に、子の数に応じて加算した額

遺族厚生年金

亡くなった方の老齢厚生年金の3/4の額


障害年金の給付額は加入期間や給与、障害等級で決まる


上の表で記載したように障害年金の給付額は、障害等級に応じた額が給付されます。

また、障害厚生年金の給付額は、加入期間や賃金・給与によって決まり「厚生年金への加入期間中の給与と賞与の平均額」ということになります(後述)。


●障害等級とは?

障害基礎年金は1~2級、障害厚生年金は1~3級の障害等級があり、1~2級の等級は基礎年金と厚生年金で共通しています。

2級以上の障害厚生年金の受給者は、同時に障害基礎年金を受給できます。

ちなみに、級の数字が少ない方が重度の障害ということになります。

参考:厚生労働省「公的年金制度の仕組み」



障害年金の支給対象は「外部」「精神」「内部」の3つ

障害年金の支給対象となる病気・けがの種類を知っておく

障害年金の支給対象となる病気・けがの種類にはどのようなものがあるのでしょうか―。

障害年金の対象になる病気やけがは、目や手足の障害などの「外部障害」、統合失調症やうつ病などの「精神障害」、がんや糖尿病などの「内部障害」の3種類に分かれます。


●障害年金の支給対象となる障害


外部障害
眼、聴覚、手足の障害など
精神障害
統合失調症、うつ病、認知障害、てんかん、知的障害、発達障害など
内部障害
がん、糖尿病、呼吸器疾患、心疾患、腎疾患、肝疾患など


障害と支給対象の年金については上記のようになっており、請求手続きもそれぞれで異なります。

現役世代では、メンタル疾患の患者数や休職者が増えていますので、ここでは精神障害に限定して対象や手続きを説明します。


「精神障害」で障害年金の支給対象となるには

精神障害で障害年金の支給対象になるのはどんな人でしょうか―。

障害年金制度において、精神障害は「神経症」と「精神病」の2つに分かれます。

パニック障害や不安障害、適応障害などが「神経症」。

そして、統合失調症やうつ病が「精神病」です。

このうち、神経症は「原則として認定の対象にならない」とされています。

まずは、自分の病気が「神経症」と「精神病」どちらの分類かを確認することが必要です。

ただ、現在神経症の病名で診断されていても、精神病の病態を発症している人もいます。その場合、対象になる可能性は十分あります。


給付額はいくら?障害年金の「等級」と支給の「3要件」

障害基礎年金の給付額は、2級で月65,000円程度

ここから少しおさらいすると、障害年金は老齢年金と同様、国民年金と厚生年金の「2階建て」の構造になっています。

そして、初診日に国民年金に加入していた人は「障害基礎年金」。

初診日に厚生年金に加入していた人は「障害厚生年金」です。


また、障害基礎年金の場合、障害の重い方から1~2級の等級があり、等級に応じて給付額が決まります。

障害基礎年金の給付額は、障害等級2級の基本はおよそ月6万5千円です(給付は2か月に1回)

なお、受給者に18歳未満の子どもがいる場合などは加算があります。

障害厚生年金の給付額は、等級のほか賃金や加入期間に応じた給付額になります。

★詳しい算出方法については日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・支給開始時期・計算方法」をご覧ください。


障害年金の支給を受けるための「3要件」

障害年金が支給されるためには「3つの要件」があります。

1つは「初診日の確定」、2つ目は「保険料納付要件を満たしていること」。そして3つ目は「障害認定日に障害年金の等級に該当する状態であること」です。

それぞれの要件については後ほど詳しく解説しますので、以下の①~③について知っておきましょう。


●障害年金における支給の3要件

  • ①初診日の確定
  • ②保険料納付要件を満たしている
  • ③障害認定日に障害年金の等級に該当する状態である


また、③の「障害年金の等級に該当する状態」に関しては、次の⑴~⑶についてもおさえておく必要があります。

(1)障害年金は、原則病名を問わない(神経症は対象外)

(2)障害年金と障害者手帳は別の制度

(3)障害年金は、日常生活の大変さを問う


●障害者手帳を持っていなくても障害年金は請求できる

「障害者手帳=障害年金」と勘違いしている人は多いのです。

しかし、障害者手帳と障害年金は全く別の制度であるため、障害者手帳を持っていなくても障害年金は問題なく請求することができますし、障害の等級が同じになるとは限りません。

また、前述のように、障害年金の支給対象は「外部障害」「精神障害」「内部障害」に分かれていて、それぞれ請求の手続きが異なります。



支給の「3要件」と障害年金の請求手続きのポイントその1

〈支給要件①〉障害年金の請求手続きでは「初診日の確定」がポイント

自分の病気が、障害年金の支給対象になる可能性があることが分かったら、請求手続きを行いましょう。

その際にポイントとなるのが「初診日の確定」であり、前述した「3要件」の①です。

これについては精神障害と診断された初診日のカルテがあればOKです。

しかし、医療機関では5年の保存期間を過ぎると、カルテを破棄してしまうため注意してください。

もちろん、初診日が5年以内なら、病院にカルテが保存されていますので、ご自身で確認することが可能です。


●手元にカルテが無い…。「初診日」を知る方法はある?

「障害年金制度のことを知らなかった」という方が、後から「請求しよう」と思った場合です。

そして、初診日からすでに5年間が経過していて、病院にカルテがないというケースはよくあります。うちの事務所への相談も「カルテがない」というものが多いです。

しかし、カルテが手元に無い場合でも、例えば次の①~③のように、初診日を確定する方法はいくつかあります。

①「自分の家にある、初診日がわかる書類」

・・・例えば、診察券に初診日が書いてあったとか、医療機関からの領収証の中に初診料が書いてあった、というケース。

「病院の紹介状」

・・・A病院からB病院に転院した時に、B病院に残っている紹介状に、A病院の初診日が書かれていることがあります。

「初診の病院より後に通院した病院のカルテ」

・・・A→B→Cの順番で三つの病院に通院していた場合、C病院に残っているカルテに「大学1年生の時に一つ目の病院に行きました」ということが残っていたとします。C病院に残されていたそのカルテが5年より前なら初診日の確定となります。


●そもそも「初診日」とはいつのこと?

「初診日」とは、状が出て初めて医療機関を受診した日のこと例えば、胃が痛くて内科に行っても症状が改善せずに、その後精神科を受診して精神疾患の病名がついたとします。その場合は、内科を受診した日が初診日となります。

※初診日や初診日の確定方法がわからない場合は、早めに社労士などの専門家にご相談ください。


〈支給要件②〉保険料納付の要件は日本年金機構で確認できる

次に、支給の要件②の「保険料納付要件を満たしている」というものについてです。

保険料の納付要件を満たしているかどうかは、日本年金寄稿へ行き、問い合わせることでわかります。


〈支給要件③〉障害等級の確認には、医師の診断書を提出する

最後に、支給要件の③「障害認定日に障害年金の等級に該当する状態」の確認方法です。

これについては、障害年金の等級に該当する状態であるかどうか、を確認。

精神障害の症状によって日常生活にどれくらい影響があるのかがポイントになります。

また、障害年金の請求手続きには所定の医師の診断書を提出する必要があります。

これについては、医師それぞれの判断になるので、正確な評価がされていないことが起こりえます。

患者自身が日ごろの受診時に、医師に自分の日常生活の様子についてしっかり伝えておくことが必要です。


●医師が正確な診断を行なえるよう、情報を伝えることがポイント

下の、障害年金の精神の障害用診断書をご覧ください。この中に、「日常生活能力の判定」という項目があります。

障害年金の精神の障害用診断書

例えば、(1)「適切な食事」―配膳などの準備も含めて適当量をバランスよく摂ることがほぼできる―、(2)「身辺の清潔保持」―洗面、先発、入浴等の身体の衛生保持や着替え等ができる。また、自室の清掃や片付けができるなど―、などの項目があります。

これに対して、医師が4段階で評価します。

しかし、医師が患者の日常生活の様子について詳しく把握しているとは限りません。


例えば、医師が「食事は摂っていますか?」と尋ね、患者が「食べています」と答えたとしても、その食事の内容はカップラーメン1個、ということはあり得ます。

カップラーメン1個では、「日常生活能力の判定」の項目の「適切な食事」―配膳などの準備も含めて適当量をバランスよく摂ることがほぼできる―、とは言えません。

自身の状態が診断書に正しく反映されるように、医師に日常生活の様子を話すことを心がけましょう。


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「書類審査がすべて」障害年金の請求手続きのポイントその2

障害年金、請求手続きのポイントは書類審査

障害年金は書類審査。ですので、請求手続きに使用する書類がすべてです。

提出するのは、医師による診断書と本人による「病歴、就労状況等申立書」。この書類は日本年金機構や役所で入手できます。

病歴、就労状況等申立書は、家族や社労士などに代筆を頼んでも構いません。

書類は自分で書ける場合も、書いた後で客観的な視点を持った第三者に見てもらうのがおすすめであり、ひとつのポイント。

また、不支給の場合は、再度請求をやり直すことも不服申し立てをすることもできます。両方同時に進めることもできます。


さいごに:障害年金の請求手続きは専門家に相談を

障害年金の請求手続きには、さまざまな注意すべきポイントがあります。

障害年金制度のことを知っても、手続きが複雑なため途中であきらめてしまう人もいると思います。

障害年金は自分を守る大切な制度ですので、あきらめる前にぜひ専門家に相談していただきたいです。


また、障害年金は人材の流出防止にも効果があります。

その理由は、病気やけがになった従業員が、障害年金の受給をすることで経済的な不安が軽減され、自分に合った労働時間を選択しやすくなれば、貴重な人材を失わずに済むからです。

障害年金は、まだまだ認知度が低いことが課題です。

病気やけがで、これまでのようには働けず、休職や退職を悩んでいる従業員がいたら、情報の一つとして提供してみてはいかがでしょうか。


文・編集/サンポナビ編集部



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松山純子

松山純子

(まつやま・じゅんこ)社会保険労務士。YORISOU社会保険労務士法人代表社員。 短期大学卒業後、福祉施設(身体・知的・精神)で人事総務やケースワーカーとして10年以上勤務。2006年松山純子社会保険労務士事務所を開業。2017年10月に法人化した。著書に「改訂版 障害年金をもらいながら働く方法を考えてみませんか?」(日本法令)「スッキリ図解 これならわかる障害年金」(翔泳社)など。

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