悩んでいるのはあなただけじゃない!企業の休職・復職対応の現状とは?

うつ病という言葉が広く知られるようになった今、「職場で休職者が出ちゃって…」「前例もないしどう対応したらいいかわからない!」と悩んでいる企業は多いのではないでしょうか。

産業医サポートサービスを提供する株式会社エムステージでは、休職・復職のお悩みを抱える企業を対象にメンタルヘルス対策を実践するためにと題し、人事労務担当者向けのセミナーを定期的に開催しています。


今回は6/22開催のセミナーに参加した人事労務担当者のアンケート結果をもとに、メンタルヘルス不調者・企業のメンタルヘルス対策の現状と、企業が取り組むべき対策について見ていきます。


参加理由の約30%が「休職者がいる・いたから」

セミナー終了時参加者アンケート:セミナーの参加理由は?(自由記述)


「セミナーに参加した理由はなんですか」という質問に対し、全体の30.8%の人事労務担当者が「現在(または過去)に休職者がいたから」と回答しました。

その他の参加理由としては、「休職・復職を体系的に学びたかった」「企業で休職・復職の制度設計をするため」などの理由がありました。

以下は、「休職者がいる・いた」と回答した方の具体的な回答です。

該当社員がいて、今までにそのような経験が会社としてなかったため。(人材サービス業界)

休職・復職に悩むことが多いが、いいセミナーがなかなかなかったため。(IT業界)

休職者が多く、今後メンタルヘルスの問題に取り組んでいかなければならない問題だと思っていたので。(出版業界)


休職・復職に対して、「前例がない」「対応方法がわからない」というご意見が多く見られました。

では、全国的にはどのくらいの企業で休職者が発生しているのでしょうか。


労働政策研究・研修機構:現在メンタルヘルスによる休職者が1名以上いる企業


平成25年(2013年)労働政策研究・研修機構の調査によると、常用労働者50人以上を雇用している企業20,000社のうち、調査回答時点で「現在メンタルヘルスによる休職者が1名以上いる」と回答した企業は16.4%となっており、10企業のうち1~2企業でメンタルヘルスによる休職者が発生しているという計算になります。


セミナーに参加された人事労務担当者への終了時アンケートでは、自社で取り組んでいるメンタルヘルス対策についても聞きました。


メンタルヘルス対策、「休職・復職対応」は28.6%にとどまる

セミナー終了時参加者アンケート:現在行っているメンタルヘルス対策は?(複数回答可)


「勤務先では具体的にどのようなメンタルヘルス対策を行っていますか?」と質問したところ、1位は「ストレスチェックの実施」で、全体の57.1%でした。

一方、今回のセミナーのテーマでもある「休職・復職時の対応に関する制度設計」は28.6%という結果でした。


休職者を経験する企業が増えている状況で、休職・復職者対応の制度設計はあまり進んでいないという実態が見えてきました。

では、全国的にはどうでしょうか。


厚生労働省:メンタルヘルス対策の取り組み内容


厚生労働省の平成28年(2016年)労働安全衛生調査では、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所のうち、17.9%しか職場復帰への支援ができていないという結果が出ています。


今後行いたい対策の1位は「管理職向けの教育・研修」

セミナー終了時参加者アンケート:今後行いたいメンタルヘルス対策は?(複数回答可)


では、人事労務担当者はどのような対策を求めているのでしょうか。

「社内で今後行いたい対策はなんですか」という質問に対して、「管理職向けの教育・研修」という回答が68.6%で1位になりました。

続いて、「休職・復職時の対応に関する制度設計」「従業員向けの教育・研修」が60.0%で同率2位となりました。


セミナー終了時アンケートでの「現在行っているメンタルヘルス対策」の回答で実施率が低かった管理職・従業員向けの教育・研修に加え、「休職・復職時の対応に関する制度設計」に課題意識があることがうかがえます。

また、「休職・復職時の対応に関する制度設計」に関しては、セミナー終了時の無料相談で、実際に休職者が発生した企業の担当者から「自社に規定がないから対応に迷っている」「休職者への対応方法が決まっておらず困っている」という相談が多く寄せられました。

このように、そもそも就業規則等で規定がない、規定はあるが具体的な対応が決まっていない、など「規定・制度設計の不備」でお悩みの企業は少なくありません。



エムステージは、メンタルヘルスについて企業が取り組むべき対策として以下のものを挙げます。


企業が取り組むべき対策

就業規則の整備

あらかじめ企業として休職・復職へどう対応するのかを決めておかなければ、休職者が出た際にその場で対応を考えたり、ケースごとにばらつきのある対応になったりします。

休職中の給与額や復職が難しい場合の対応など、企業としての対応をきちんと設定しておかなければ、万が一、訴訟されたときに安全配慮義務を果たしていたことを証明できない可能性があります。


そういったことを防ぐために、事前に就業規則の中で休職・復職への対応方法を企業のルールとして設定しておくことが大事です。


休職・復職のプロセスに対応するためのマニュアルの整備

休職者がでてしまった場合に「誰が、いつ、どう対応するのか」といった現場での対応をあらかじめ決めて、マニュアル化しておくことが大切です。


とはいっても、社内だけで事細かに対応を考えるのは容易ではありません。

エムステージでは「誰が、いつ、どう対応するのか」が一目でわかり、現場ですぐに使える休職復職対策マニュアルを提供しております。


産業医・社労士が監修した休職・復職マニュアル 


産業医との連携を強化 

管理職が、休職希望の部下の様子を見て「こんなの甘えじゃないか」と休職を認めず悪化してしまった、復職希望の社員を見て「もう大丈夫だろう」となんとなく判断してしまい、再度休職してしまったというケースは多々あります。

そういった"なんとなくの判断"を防ぐため、医療の専門家である産業医との連携を強化し、社員に対して適切な対処をとることが大切です。


また、主治医が復職可能だと判断したのに、再度休職してしまうケースもあります。主治医は企業の業務がどのようなものか、業務にはどんな能力が必要なのかという企業の情報は十分に把握しきれません。

そのため、休職・復職の際は主治医だけでなく、社内をよく知る産業医の指示を仰ぐことが重要です。


管理職・一般社員への研修

メンタルヘルスケアは、人事労務担当や産業医・産業保健スタッフだけでなく管理職・一般社員も含め企業全体で取り組む必要があります。

厚生労働省の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」の中で、企業がメンタルヘルスケアを実践する際は「4つのケア」が必要であると示されています。

この「4つのケア」は、管理職が行う「ラインによるケア」、一般職員の行う「セルフケア」、「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」、「事業場外資源によるケア」で構成されます。

▼4つのケアに関してはこちらの記事で詳しく解説しています。

メンタルヘルス対策のPDCAサイクル「4つのケア」をわかりやすく解説


特に、企業でメンタルヘルスケアを実践する際は、管理職がメンタル不調者を早期に発見し、職場復帰の支援とそれに伴う職場環境の改善を行うための「ラインケア研修」、一般社員へストレスの正しい理解や対処について指導する「セルフケア研修」を行うことが重要です。


休職者が出る前に「メンタルヘルス対策」として企業ができること

まずは、自社のメンタルヘルス対策について振り返ってみましょう。

エムステージでは、「メンタルヘルス休職・復職対応リスク度チェックリスト」をご用意しています。

項目をチェックすることで、自社の状況を確認できます。

「課題はあるけど、何から始めればいいかわからない…」という場合は、チェックリスト下のフォームからチェック結果を送信していただくと、弊社スタッフがご相談に応じます。


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