パタニティ・ハラスメント? 健康経営マンガ:ねぎま産業(株)第16回
「だんだん社員も増えてきたし、健康経営がんばるぞ!」と、意気揚々な会社があった。――その会社の名は、ねぎま産業株式会社。
健康経営がんばるつもりはある、だけどちょっとずれている。そんな働くトリたちの奮闘記。
今回のテーマは「パタニティ・ハラスメント」。
第16回 パタニティ・ハラスメント?
ようやく社内の産休・育休の制度を整えたねぎま産業(株)。
これで小さいヒナがいる家庭も安心♪と思っていたのに…。
制度があっても使えなかったらまじで意味ない…。
ペンギン上司は「前にいた会社で育休を取ったんだぞ」って自慢してたのに。
そもそもペンギン上司に却下する権限なんてないし、あんなふうに言うなんてパタハラじゃないか!
オスもメスも育休を取り、協力し合って育児をする時代に、「カルガモなら抱卵はメスの役割だ!」なんて…
ここはやっぱり昭和ですか?
性別・種族を問わずに、気軽に育休を使える社風にしたい…!
今日の人事労務キーワード:パタニティ・ハラスメント(パタハラ)
パタニティ・ハラスメントって?
パタニティ・ハラスメントとは、英語で父性を表す Paternity と、嫌がらせを意味する harassment を組み合わせた和製英語です。
一般的に、妊娠・出産をしたり、育児休業を取得したりした女性社員への肉体・精神的な嫌がらせや解雇、降格・減給などの不当な扱いは「マタニティ・ハラスメント(マタハラ)」と呼ばれています。一方、育児休業制度などを利用しようとする男性社員への嫌がらせ・不当な扱いは「パタニティ・ハラスメント(パタハラ)」と呼ばれます。
20~59歳の男性有職者1,000人を対象にした日本労働組合総連合会の2014年の調査では、子どもがいる男性525人のうち11.6%がパタハラを経験したと回答しました。
また、厚生労働省の2017年度「雇用均等基本調査」によると、女性の育休取得率83.2%に対し、男性の育休取得率は5.14%にとどまっています。
▼産休・育休制度については、こちらの記事で詳しく解説しています。
男性社員への嫌がらせ…。弊社と一緒だ…!
ハラスメント・不利益取り扱いの防止措置
2006年の男女雇用機会均等法改正により、妊娠・出産、産休・育休取得から1年以内に解雇、配置転換、減給、降格などを行うことは「不利益取り扱い」として禁止されました。
また、2017年には男女雇用機会均等法、育児・介護休業法が改正され、「職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント」の防止措置が企業に義務付けられました。
パート、アルバイト、契約社員、派遣社員を含むすべての労働者が対象です。
この「ハラスメント」とは、妊娠・出産をした女性労働者産休・育休など子育てのための制度を利用した・しようとする男女の労働者について、上司・同僚が就業環境を害する言動を行うことをいいます。例えば、解雇などを示唆する発言、制度利用の阻害、嫌がらせなどです。
ハラスメントになってしまうのか…。
会社の行うべきハラスメント防止措置
会社は「職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント」の防止措置として、具体的に何をすればいいのでしょうか。
企業が講ずるべき措置は、厚生労働大臣の指針に定められています。
1.事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
①ハラスメントの内容、②妊娠・出産、育児休業などに関する否定的な言動がハラスメントの原因・背景になり得ること、③「ハラスメントはあってはならない」という方針―などを明確化します。
また、「ハラスメントを行った者に対して厳正に対処する」という方針・対処の内容を、就業規則などの文書に規定します。そして、これらについて管理職を含む労働者に周知・啓発します。
2.相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
相談窓口を設置し、相談窓口の担当者が相談内容やその状況に応じて適切に対応できるようにします。
また、実際にハラスメントが発生している場合だけでなく、発生の恐れがある・該当するか微妙である場合でも、広く相談に対応し適切な対処を行うようにします。
3.職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
ハラスメントの事実関係を迅速かつ正確に確認します。そして、速やかに被害者に対する配慮の措置・行為者に対する措置を適正に行います。そして、1.の方針の周知・啓発など再発防止措置を実施します。
4.職場における妊娠・出産・育児休業などに関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置
業務体制の整備など、企業や労働者の実情に応じて必要な措置を行います。(例:妊娠などをした労働者と周囲の労働者の業務分担の見直し、業務の点検・効率化など)
5.合わせて講ずべき措置
マニュアルの整備など、ハラスメントの相談者・行為者のプライバシーを保護するために必要な措置を行い、その旨を労働者へ周知します。
また、ハラスメントの相談をしたり、事実確認に協力したりしたことなどを理由として不利益取り扱いをしてはならない旨を就業規則などの文書に規定。労働者へ周知・啓発をします。
より具体的な取り組みや措置のポイントについては、厚生労働省のパンフレットが参考になります。
弊社も取り組まなきゃ!
(by サンポナビ編集部)
マンガ作者プロフィール:とりのささみ。
イラストレーター、デザイナー。
地方から上京しブラック企業に入社、転職に失敗して仕方なくフリーランスをやっている内になんだか楽しくなり、今に至る。ブラックジョークをオブラートに包むイラストが得意。
とりのささみ。 (@torinosashimi) | Twitter
参考)
厚生労働省「雇用における男女の均等な機会と待遇の確保のために」
事業主が職場における性的言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針 2006年(厚生労働省告示第 615 号)
事業主が職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針 2016年(厚生労働省告示 312 号)
子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針 2009年(厚生労働省告示第 509 号)
▼「健康経営マンガ:ねぎま産業(株)」の連載を読む
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