取得に高い水準が求められる「ホワイトマーク(安全衛生優良企業)」
国認定のさまざまな”ホワイト企業マーク”について、非営利一般社団法人安全衛生優良企業マーク推進機構(SHEM)の木村誠理事長が、それぞれの取得のメリットや取得に必要な条件をシリーズで紹介します。
初回は「ホワイトマーク(安全衛生優良企業)」です。
木村 誠(きむら・まこと)
非営利一般社団法人安全衛生優良企業マーク推進機構理事長。
1968年、長野県生まれ。東洋大学法学部卒業。
1991年、第一生命保険相互会社(現第一生命保険株式会社)入社。2003年、株式会社ユニバーサルステージ設立。代表取締役(現任)
2015年、非営利一般社団法人安全衛生優良企業マーク推進機構(SHEM)設立
取得することでホワイト企業であることを公的に証明できる「ホワイトマーク(安全衛生優良企業公表制度)」をご存じですか?
なぜホワイトマークの取得がホワイト企業の証明となるのか、そしてホワイトマークを取得するにはどうすればいいのかをご説明します。
ホワイトマークとは?
ホワイトマーク(安全衛生優良企業公表制度)は、
・労働者の安全や健康を確保するための対策に積極的に取り組んでいる
・実際に高い安全衛生の水準を維持・改善している
これらの条件を満たしている企業に対して、厚生労働省が安全衛生優良企業として認定を行う制度です。いわば、ホワイト企業に対して国がそのお墨付きを与える取り組みなのです。
最大のメリットは採用力の強化
ホワイトマークを申請し認定基準を満たした企業は、安全衛生優良企業として3年間の認定を受けることができ、以下のようなさまざまなメリットを得ることができます。
・労働局での授与式や厚生労働省ウェブサイトの掲載など、優良企業としての露出が増える
・認証マークを名刺、商品、広報誌などに使用してPRできる
・ホワイトマーク取得企業限定の国の就活イベントに参加できる
・調達における一般競争入札で加点評価される
また厚生労働省では、制度普及のため取得企業に対するさらなるインセンティブも検討されています。ますます企業にとって有益な制度になっていくことが予想されます。
ホワイトマークの取得をお勧めしたいのは
・優秀な人材を安定的に獲得したい
・従業員に長く働いてもらいたい
このような経営課題をもつ企業です。なぜなら、ホワイトマーク取得の最も大きなメリットは「採用力の強化」だからです。
就活生、親世代が求めるのは安全で健康に働ける企業
以下の統計は、経済産業省が2016年度に行った調査の結果です。
参照:経済産業省「健康経営の労働市場におけるインパクト調査」
この調査では、約1,400人の就活生と就活を控えた学生を持つ1,000人以上の親に、就職を希望する企業の条件について質問しました。
「従業員の健康や働き方に配慮している」企業を望むと回答した学生は4割を超えています。これは、一般的に魅力的だと考えられていた、
・知名度が高い
・企業規模が大きい
・給与水準が高い
これらの条件を回答した学生数を、大きく引き離しています。
つまり、ネームバリューや給与水準などで大企業に引けを取りがちな中小企業でも、働く場として優れた企業だと証明することができれば、十分に人材を獲得できる可能性があるのです。ホワイト企業だという証明が採用力を左右する時代になっています。
この調査で同時に注目していきただきたいのは、就活生の親も同様に「従業員の健康や働き方に配慮している」という点を重視していることです。
つまり、就活生の親世代も、業績や給与よりも働き方に配慮した企業を好む傾向にあることを意味しています。従って、高いスキルを持つベテラン層を中途採用したい場合にも、ホワイト企業であることをPRできれば大きな強みとなるでしょう。
実際にホワイトマークを取得したとあるIT企業では、登録していた既卒エンジニア募集サイトに認定マークを追加掲載したところ、従来の約5倍もの応募者を獲得することに成功しました。結果、社員数も僅か14カ月で47名から101名にまで増加しています。
企業の未来を担う若手と現状の課題を打破しうるベテラン世代、この両者に強い訴求力を持ち得るのがホワイトマークなのです。
ホワイトマーク取得に必要な認定項目
高い信頼性と大きな効果が期待できるホワイトマークですが、その分認定基準も非常にシビアになっているのが特徴です。
大まかな認定項目は以下の三つ。それぞれ複数の項目があり、全体として高い水準を満たしている必要があります。
① 企業の状況として満たしていることが必要な項目
・過去3年以内に労働基準関係法令の違反で送検されていないこと
・直近事業年度において、平均した1か月当たりの時間外労働時間が60時間以上の従業員がいないこと
など合計15項目
② 企業の取り組みとして満たしていることが必要な項目
・各事業場に健康や安全に関する責任者を任命していること
・企業のトップが従業員の健康や安全の確保を重心する方針を明文化していること
など合計10項目
③ 企業の積極的な取り組みを評価する項目
・企業全体として従業員の健康の保持・増進に関する計画を策定し、着実に実施しているか
・過去3年間の全ての年において年次有給休暇の取得率が70%であるか
など合計44項目
①と②については、すべての項目を満たす必要があります。
③については採点方式となっており、健康管理やメンタルヘルス、過重労働防止対策などの各分野でそれぞれ6割以上、全体で8割以上を満たせば認証基準に到達します。
ホワイトマークの申請・取得の方法
ホワイトマークの申請を行う際は、まず厚生労働省の自己診断サイトで自社の安全衛生の取組レベルを把握します。
自己診断の結果、安全衛生優良企業の基準を満たしている場合には、各項目を満たしていることを証明する書類を作成し、本社を管轄する都道府県労働局へ申請します。
申請後、労働局による書類審査やヒアリング調査が実施され、無事認定されれば厚生労働省のウェブサイトに企業名が掲載されることになります。
まとめ
ホワイトマークは本格的に開始して3年程度のまだ日の浅い制度です。その一方、短い期間で多くの取得企業に実感可能な効果が表れており、徐々に注目が集まっています。
認定までのプロセスは厳しいものの、その苦労以上の大きなポテンシャルが秘められている制度だと言えるでしょう。
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