健康経営のリーディングカンパニーの証「ホワイト500」
国認定のさまざまな”ホワイト企業マーク”について、非営利一般社団法人安全衛生優良企業マーク推進機構(SHEM)の木村誠理事長が、それぞれの取得のメリットや取得に必要な条件をシリーズで紹介します。
3回目は「ホワイト500」です。
木村 誠(きむら・まこと)
非営利一般社団法人安全衛生優良企業マーク推進機構理事長。
1968年、長野県生まれ。東洋大学法学部卒業。
1991年、第一生命保険相互会社(現第一生命保険株式会社)入社。2003年、株式会社ユニバーサルステージ設立。代表取締役(現任)
2015年、非営利一般社団法人安全衛生優良企業マーク推進機構(SHEM)設立
前回の記事では、健康経営に積極的に取り組む企業を認定する「健康経営優良法人認定制度」の中小法人部門についてご紹介しました。
今回はその大規模法人部門・通称「ホワイト500」にフォーカスを当ててご説明します。大企業でも健康経営への意識は高まっているのです。
ホワイト500認定制度とは?
ホワイト500とは、経済産業省が実施する「健康経営優良法人認定制度」の大規模法人部門の通称です。健康の保持・増進に対して、特に優良な取り組みを実践している大規模の企業や法人を国が認定・公表することで、健康経営の認知と普及を図っています。ホワイト500の対象となる大規模法人の定義は以下のとおりです。
・製造業その他:301人以上
・卸売業:101人以上
・小売業:51人以上
・医療法人・サービス業:101人以上
また、中小規模法人部門よりも認定基準や申請要件がシビアになっている点が特徴です。認定企業には、取引先や顧客などに健康経営を普及拡大していく“トップランナー“としての役割が求められるなど、ホワイト500はまさに日本の健康経営をリードする企業の証と言えるでしょう。
ちなみに「ホワイト500」というネーミングは、健康経営優良法人認定制度を運営する日本健康会議が掲げた、
・健保組合等保険者と連携して健康経営に取り組む企業を2020年までに500社以上とする
という目標に由来しています。したがって500社しか認定されないということはありません。
ホワイト500に認定された法人は1年で2.3倍に
ホワイト500の認定企業数の推移には目を見張るものがあります。初年度となる2017年度の認定法人数は235法人でしたが、その翌年には約2.3倍の541法人にまで増加しました。
「2020年までに認定法人数500を達成する」という当初の目標は、予定より3年も早く達成されたことになります。健康経営に対する急速な意識の高まりが見える結果と言えるでしょう。
ホワイト500の認定を目指す企業は5年で約4倍に
認定を受ける前段階、つまりホワイト500の申請を行うには、まず経済産業省が実施している「健康経営度調査」に回答し、さらに一定水準を満たす必要があります。その回答用紙は数十ページにおよび、決して片手間に対応できる調査ではありません。それにも関わらず回答企業数は年々増加しています。
参照:日本健康会議「健康なまち・職場づくり宣言2020の見直しについて」
2014年度の健康経営度調査の回答数は493法人でした。翌年以降、その数は加速度的に増加し、2018年度には1,800社にまで増えています。多くの企業がホワイト500への取得に乗り出していることが分かります。
ここまで健康経営やホワイト500に対して大企業の注目が集まっているのには、近年の社会的背景に理由があると考えられます。
「絶対に大手企業を志望」という学生は1割以下
前回の記事でもご説明したとおり、超売り手市場化によって若手を中心とした人材の採用が難しくなっています。「とはいえ人材確保に苦戦するのは中小企業で、知名度や安定感でアドバンテージのある大手企業はまだ余裕がある」―。そのように考える方もいるかもしれません。
しかし、全国求人情報協会が2017年卒大学生に、就職活動時に志望した従業員規模について調査したところ、「絶対に大手企業が良い」と答えた学生は全体の9%に過ぎませんでした。反対に、「どちらかというと中堅・中小企業が良い」と答えた学生は26%、「絶対に中堅・中小企業が良い」と答えた学生も2%以上いるのです。
出典:全国求人情報協会「2017年卒学生の就職活動の実態に関する調査」
もはや近年の若年層において大企業信仰は絶対とは言えない状況になっています。この価値観の変化は、経済産業省が2016年度に実施した調査からも見て取ることができます。
参照:経済産業省「健康経営の労働市場におけるインパクト調査」
約1,400人の就活生と就活を控えた学生を持つ1,000人以上の親に、就職を希望する企業の条件について質問したところ、企業規模や知名度を重視する学生は決して多くないことが判明しました。この調査は複数回答制になっていますが、それでも企業規模の大きさを重視する就活生は1割程度に留まったのです。一方、「従業員の健康や働き方に配慮している」企業を志望すると回答した学生は4割を超えています。
多くの就活生が企業規模や知名度などの表面的なステータスだけでなく、これから身を置く職場が本当に働きやすいのか、健康的に社会人生活を過ごせるのかを真剣に考えている時代です。健康的で働きやすい職場だというPRができるかどうかは、大企業においても今後の人材確保、さらには企業の存続において大きな課題になると考えられます。
ホワイト500の認定メリット
ホワイト500に認定される主なメリットは以下の三つです。
・採用力の強化
・社外イメージのアップ
・生産性の向上
ホワイト500に認定されると、経済産業省のホームページに企業名が掲載され、認定マークを広報活動や求人サイトなどに使用することができます。採用活動での大きなアピールポイントとして期待できるとともに、取引先や顧客に対しても良好な関係を築く一助にもなります。
また、認定に向けた取り組みの中で従業員の健康状態の維持・改善が実現できれば、一人一人の生産性向上をもたらし、業績の向上も期待できます。特に企業規模が大きくなるほど、従業員一人一人に対して目が届きにくくなります。認定を通して従業員の健康を保持・増進する仕組みづくりを行うことは、企業にとって非常に意義のある取り組みとなるでしょう。
ホワイト500の認定基準
ホワイト500の認定基準は、大きく五つの項目に分けられます。
1.経営理念・方針(経営者の自覚)
アニュアルレポートや統合報告書などによる健康宣言の社内外への発信が求められます。
2.組織体制
健康づくりの責任者を役員以上のポジションが担当し、健保などの保険者と連携して取り組むことが求められます。
3.制度・施策実行
生活習慣病の予防対策やメンタルへルス対策など、17の項目のうち一定基準を満たすことが求められます。具体的な内容としては、
・定期検診受診率100%
・受診勧奨の取り組み
・50人未満の事業場におけるストレスチェックの実施
などがあります。
4.評価・改善
健康保持・増進を目的とした導入施策への効果検証を実施する必要があります。
5.法令遵守・リスクマネジメント
法令違反や労働災害など安全衛生上の状況について問われます。具体的な内容としては、
・定期検診を実施していること
・保険者による特定健康診査・特定保健指導が実施されていること
・従業員の健康管理に関する法令について重大な違反をしていないこと
などが求められます。
ホワイト500の申請方法
ホワイト500の認定までの流れについては、大きく分けて五つのフェーズを踏むことになります
1. 健康経営度調査に回答
2. 健康経営度調査の結果が回答法人の上位50%以内に入る
3. 保険者と連名で申請
4. 認定審査
5. 日本健康会議による認定
ホワイト500の申請条件で最もネックなのは、健康経営度調査で上位50%に入らなければならない点でしょう。今後、健康経営に対する認知度が高まれば回答企業全体のレベルも上がり、さらに上位に入ることが難しくなるかもしれません。
まとめ
企業規模を問わず、健康経営優良法人の認定に向けて取り組む企業は年々増加しています。中小企業の認定数が増えている今、比較的体力に余裕のある大手企業においてホワイト500に取り組んでいないことは、むしろマイナスポイントになる可能性さえあります。
反対に、早期にホワイト500を取得できれば働き方に対して高い意識を持つ先進的な企業であることを強くアピールすることができます。他の企業との大きな差別化が可能となり、ホワイト500の認定を受けるメリットを最大限に得ることができるでしょう。
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