時間外勤務手当の削減額を社員に還元:株式会社ODKソリューションズ
長時間労働の是正などで多様な働き方を目指す「働き方改革関連法案」が、今年4月に施行される。企業が健康経営を模索する中、学校法人などに情報サービス事業を展開する株式会社ODKソリューションズ(大阪府大阪市)は、「時間外勤務手当の削減額を社員に還元する制度」を2018年から導入。部署や立場を問わず全社員が活用できる“定期健康診断の充実“と”一時金の支給“の2本柱で、健康経営を実現した。
制度導入の背景や思いなど、同社企画総務部総務広報課の黒野沙樹子氏に話を聞いた。
黒野 沙樹子(くろの・さきこ)
2017年7月1日 株式会社ODKソリューションズ入社、企画総務部 総務広報課配属
社員の健康意識とモチベーション向上が目的
―時間外勤務手当の削減額を社員に還元する制度(以下、還元制度)とは、どのような内容でしょうか
当制度は、定期健康診断の充実を図る「健康還元制度」と、一時金を支給する「賞与還元制度」の2種類の制度で構成しています。前年と比較して削減できた時間外勤務手当が還元制度の原資です。70%を還元制度として直接的に、30%を能力開発などとして間接的に還元するコストに充当します。
健康還元制度は、定期健康診断で内臓脂肪のCT検査などのオプション検査を受診した場合、会社がその受診料を5千円まで補助するものです。賞与還元制度は、健康還元制度の原資を除いた全額を、下期賞与と合わせて還元します。
―還元制度の狙いは何ですか
当社は「まんなかに人」という言葉を人事ポリシーの一つに掲げ、社員一人ひとりを会社の最大の財産と考え、人つまり社員を何よりも中心に据えて様々な制度設計に取り組んできました。健康還元制度は、社員に自分自身の健康への意識を向上させるきっかけ、賞与還元制度はモチベーションの向上を目的としています。また、部署や役職に関係なく、全員が同じ条件で使える制度であることも魅力です。
長時間労働是正のために、社員がしっかり体を休める環境づくりを
―還元制度の前提となる働き方改革にいち早く取り組んだ理由を教えてください
IT業界では長時間労働が常態化しがちと言われており、当社も入試シーズンなどの繁忙期には少なからず長時間労働が発生していました。また、時間外勤務は「頑張っている証拠」と捉えた考え方が一部に定着しており、時間外勤務で当日中に対応する必要のない仕事までこなしている場合もありました。
そのような状態を是正するためには、社員がしっかりと体を休める仕組みや環境づくりが肝心であると考え、働き方改革、健康経営の実現に向けて取り組み始めました。
―働き方改革、健康経営の実現にはコストや労力がかかると思いますが、特に大変だった点は何でしょう
コスト面では特にデメリットはありませんでしたが、制度の導入に伴い、既存の勤務制度や就業規則などの社内制度を大きく変える必要がありました。また、社員に理解を得られるよう説明会も開催しました。こうして2017年10月に、繁閑時期を考慮して年間の労働日を設定する「1年単位の変形労働時間制」と、業務都合に合わせて勤務時間を設定できる「シフト勤務制」を導入することができました。さらに、勤怠と工数の管理システムも取り入れました。
また、働き方改革や健康経営の実現に対して、社員が「やらされてる」と受け止めないような工夫も必要です。還元制度の導入にあたっては専属チームを発足し、社員の成果を還元するにはどうしたらいいのか、制度の課題を挙げては改善に向けて話し合うことを繰り返しました。
時間外勤務手当は2割減少、社員一人当たり15万円を還元した
―実際に還元制度を導入して、どのような変化がありましたか
社員の残業や休日出勤が減り、休むことへの意識改革や生産性の向上がみられるようになりました。
結果、時間外勤務手当として支払っていた金額が前年より約2割減少し、2018年の下期賞与に合わせて社員一人当たり一律約15万円を還元することができました。また、2019年4月の健康診断から健康還元制度もスタートします。
社員からは「効率的な働き方ができるようになった」や「長期休暇が取れるようになった」「定期健康診断と合わせてオプション検査を受診したいと考えている」などの声が挙がるようになりました。このような喜びの声が聞けたことは、うれしかったですね。
―今後、新たな働き方改革や健康経営を目指す企業の担当者にメッセージをお願いします
「制度」とは単なる仕組みではなく、社内の風土を変えるものだと思います。働き方改革や健康経営により時間外勤務手当が削減できると、削減できた時間そのものに目が向き、仕事の成果よりも削減した時間が多かった社員が「会社への貢献度が高い」と評価されがちです。当社は、社員一人ひとりが目標達成に向けて生産性向上に取り組み、全社として健康経営を実現することが働き方改革の成果であると捉えています。また、時間外勤務時間の抑え方は、仕事の内容や管理職・非管理職の立場によって異なりますが、全員が同じ条件で使える制度にすることが、社員全体の理解が得られやすいと思います。
当社も引き続き、全社で意識改革を継続し、健康経営の実現を目指していきます。
文/南雲あかね 編集/サンポナビ編集部
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