2018年産業保健を振り返る~エムステージ・産業保健事業部座談会


企業への産業医紹介や産業医選任後の実務サポートなど、産業保健サービスを提供する株式会社エムステージ。約1,000の企業に訪問した産業保健事業部の営業プランナーたちが、2018年の企業の産業保健に対する意識やニーズの変化を振り返りました。


メンバー


鈴木友紀夫:取締役(産業保健事業部担当)

木村直文:名古屋支社・産業保健事業部営業プランナー

西部幸平:東京本社・産業保健事業部営業プランナー

佐藤香澄:東京本社・産業保健事業部営業プランナー

正岡亜紀:東京本社・産業保健事業部営業プランナー


―2018年は、企業の産業保健ニーズにどのような特徴がありましたか


西部「すでに選任している産業医を変更したい」という声が増えたように感じます。弊社には、産業医の面接指導の手配をサポートするサービスがあるのですが、以前は、企業が契約している産業医がストレスチェック後の高ストレス者面接に対応してくれなかった場合、こちらのサービスを利用して別の産業医に依頼する企業が多かったのです。しかし、最近はそんな企業が「すべてにしっかり対応できる産業医がいい」と産業医を変更するようなりました。企業の産業医を選ぶ目はシビアになっています。



―企業の産業保健や産業医に対する認識は変化していますか


木村:そうですね。「産業保健は重要」という意識は広まってきたように感じます。休職・復職や労災など、企業だけでは解決することが難しい問題が増えています。それらを解決する方法を考えた時に「いつでも相談できる産業医を選任したい」と感じる機会が多くなったのではないでしょうか



佐藤産業保健の知識をある程度持っている人事労務担当者が増えた感覚はあります。以前は最初の訪問時に、産業医の役割から説明することが多かったのですが、今は産業医を選任していない事業所でも、担当者が自ら産業保健について勉強をされていますね。


―働き方改革関連法が成立し、2019年4月から施行されるということが影響しているのでしょうか


西部働き方改革関連法だけというより、2015年のストレスチェック義務化から度々労働安全衛生法や規則が改正されてきたという一連の流れの影響ではないでしょうか。そして今回、2018年に働き方改革関連法が成立したことで、産業医の権限はさらに強化されます。「産業保健というものが重視されている」「自分たちも対応していかないといけないんだ」という緊張感を企業側も感じてきたのだと思います。


―ストレスチェックの義務化は、企業の産業保健への意識を変える上でも意義があったのですね


鈴木ストレスチェックが義務になったことは、企業の意識を変える大きなきっかけだったと思います。義務になると、向き合わざるをえませんから、担当者は専門知識を勉強しないといけません。そのように産業保健について学ぶ中で、自社の課題に気づいた企業もあるはずです。



西部:確かに義務化によって、「うちの産業医はだめだ」という気づいた企業は多いでしょう。ストレスチェックの実施者になり、高ストレス者面接に対応するというのが、しっかりした産業医の一つの基準になった気はします。


佐藤一方で、「ストレスチェックをどのように活用すればいいのかわからない」という企業の声もよく聞きます。どうすれば高ストレス者が面接を希望しやすくなるのか、組織分析の結果をどのような対策に反映すればいいのか―。人事労務担当者は産業保健の専門家ではありませんから、社内だけで考えるのは限界があります。やはり、頼れる産業医の存在は重要です。


―企業が産業保健を推進する上での課題はなんだと思いますか。推進するためにはどうしたらいいでしょうか


正岡自社のリスクを把握しきれていない企業は、まだまだあります。私は主に初めて産業医を選任する企業に訪問していますが、長時間労働者や、メンタル不調のリスクがある従業員について把握していない担当者は珍しくありません。従業員が50人を超えるから産業医を選任するけど、産業医にどんな活動をしてもらいたいかということまではイメージできていない企業も多いですね



木村まずは、人事労務担当者が自社の産業保健に対する課題を整理することが必要です。普段は自社の産業保健だけを考える機会はなかなかないでしょうから、課題整理の時間をしっかり取ることは大切です。私は企業を訪問するとき、何が課題なのかを一緒に考え、整理をさせていただいています。

事業所によって課題やニーズはさまざまですので、それぞれ解決策も異なります。初めから難しいと決めつけず、把握した課題を真摯に受け止め、解決策を考えることが大事です。実際に行動に起こすことで、次の課題も見えてきますから。


また、企業の産業保健が進まない理由として、担当者は把握している職場の課題が、経営層にまで共有されていないケースがあります。担当者としては上層部に報告しにくいのかもしれないですが、課題意識が経営層に共有されなければ、根本的な解決はなかなかできません。担当者は産業保健の意義を分かっていても、経営層はただのコストだと考えていることもあります。経営層に意義をしっかり説明をするためにも、自社の課題の整理は必要です。



―日本はここ数年で法改正を進め、産業保健の基盤を固めてきたと言えます。制度や仕組みでは、今後どんなことが課題になっていくのでしょうか。


西部:従業員が50人以上いる企業は、産業医を選任する義務があるので、選任した産業医を活かして産業保健は進んでいくと思います。懸念は、50人未満の事業所です。多くは「義務ではないから」と対応していません。しかし小さな事業所でも、産業保健のリスクや課題は必ずあります。費用がない、人もいない、というところに、どうやって産業保健を根付かせていくか。将来的には、その部分を民間企業としてサポートしていけたらと思っています。


佐藤50人という区切りをつくることには疑問が残ります。むしろ従業員50人未満の企業だからこそ、一人一人の存在はより重要になります。休職者が出た場合、大きな企業であれば、多くの従業員でカバーできますが、20人の事業所だとなかなか難しいですよね。すぐにいい人材が採用できるとも限らないので、小さな事業所こそ産業保健の体制をしっかり整えることが大切です



鈴木: そうですね。企業は義務化された産業保健にただ取り組むのではなく、その成果を見据えるべきです。「自分たちは産業保健にどんな成果を求めているか」。今一度、考える必要があると思います。


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