「健康経営優良法人2025」認定基準・メリット・申請法を解説
2017年度からスタートした、経済産業省の認定制度「健康経営優良法人」は、その認定企業数が年々増えており「健康経営優良法人2024」には大規模法人部門2,988法人、中小規模法人部門では16,733法人の認定発表がありました(2024年3月11日発表)。
健康経営®を推進し健康経営優良法人に認定されることは、いわば「ホワイト企業のステータス」にもなるため、企業等からの注目が高まっています。
本記事では、そんな企業の担当者の方に向けて、健康経営優良法人の「認定基準」や「健康経営に取り組むメリット」など、よくある疑問をひとつずつ解説します。
〈編集部注〉申請期間や認定の基準等については記事作成時点での情報です。必ず経済産業省などのホームページにて確認してください。
目次[非表示]
「健康経営優良法人」認定のための基礎知識
「健康経営優良法人」とは
まずは「健康経営優良法人」とは何かを知るところから始めましょう。
「健康経営優良法人」とは、経済産業省の認定制度です。
積極的な健康活動に取り組んでいる企業(法人)に対して、毎年認定を行っています。
これは、いわば行政からホワイト企業としての”お墨付き”をもらうことともいえます。
詳細については経済産業省のホームページにて確認することができますが、定義については以下に記載しておきます。
●健康経営優良法人 認定制度とは?
健康経営優良法人認定制度とは、地域の健康課題に即した取組や日本健康会議が進める健康増進の取組をもとに、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を顕彰する制度です。
健康経営に取り組む優良な法人を「見える化」することで、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人」として社会的に評価を受けることができる環境を整備することを目標としています。
本制度では、大規模の企業等を対象とした「大規模法人部門」と、中小規模の企業等を対象とした「中小規模法人部門」の2つの部門により、それぞれ「健康経営優良法人」を認定しています。
「健康経営優良法人」に認定されると、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人」として社会的な評価を受けられます。
また、「健康経営優良法人」ロゴマークの使用が可能となります。
そのほか、健康経営優良法人や健康経営に取り組む企業向けに、自治体や金融機関等においてさまざまなインセンティブがあります。
「大規模法人部門」と「中小規模法人部門」、「ホワイト500」のちがいとは
健康経営優良法人には、規模の大きい法人や医療法人を対象とした「大規模法人部門」と中小規模の法人や医療法人を対象とした「中小規模法人部門」の2部門があります。
そして、これとは別に「ホワイト500」という認定基準もあるのです。
このホワイト500は、大規模法人部門の中でも、上位の法人が「ホワイト500」に認定されます。
「中小規模法人部門」に新設された「ネクストブライト1000」とは
中小規模法人の上位法人は「ブライト500」に認定されます。
さらに健康経営優良法人2025では、上位501位から1501位を「ネクストブライト1000」として認定することとなりました。
〈認定基準の区分〉大規模・中小規模を分ける「従業員の人数」
従業員の人数によって、大規模法人か中小規模法人か区分けされる
大規模法人部門と中小規模法人部門、どちらの部門になるかは、業種ごとに、申請時点における「常時使用する従業員」の人数から決められています。
「常時使用する従業員」とは「予め解雇の予告を必要とする者」に当てはまる人を指します(労働基準法第20条)。
また、この「常時雇用される従業員」は、必ずしも正社員に限りません。
一定の条件を満たしたパートやアルバイトでも「常時雇用する従業員」として該当する場合があるため注意しましょう。
●大規模法人部門:人数の区分
- 製造業その他:301 人以上
- 卸売業:101人以上
- 小売業:51人以上
- サービス業:101人以上
●中小規模法人部門:人数の区分
- 製造業その他:1人以上 300人以下
- 卸売業:1人以上 100人以下
- 小売業:1人以上 50人以下
- サービス業:1人以上 100人以下
自分の会社がどの業種に当てはまるのかは総務省の日本標準産業分類で確認できるので、迷ったときはチェックしてみてください。
健康経営優良法人は「健康経営銘柄」と何が違う?
「健康経営銘柄」とは、健康経営に優れた企業を原則1業種1社選定するものです。
また、対象となるのは東京証券取引所の上場会社のみです。
経済産業省と東京証券取引所との共同で行われる、という点も健康経営優良法人と異なります。
健康経営銘柄は、健康経営優良法人の認定制度より先の2015年度から始まりました。
第10回目となる「健康経営銘柄2024」では、26業種から52社が選定されています。
経済産業省による下の図では、その区分けと認定までのフローが分かりやすく解説されています。
出典:経済産業省「健康経営優良法人の申請について」
「健康経営優良法人」の認定基準をチェックしておく
健康経営優良法人の認定で基軸となる5つの基準
健康経営優良法人の認定基準は、主に以下5つの項目で構成されています。
- 経営理念
- 組織体制
- 制度・施策実行
- 評価・改善
- 法令遵守・リスクマネジメント
この5つの大項目には実施が必須であるものと、何項目か以上実施していることが条件になっている項目があります。
令和6年度調査のポイント
令和6年度は、日本経済社会を支える基盤として新たな健康経営を目指し、以下の点について政策の3本柱に沿って見直しがありました。
- 健康経営の可視化と質の向上
- 新たなマーケットの創出
- 健康経営の社会への浸透・定着
大規模法人部門、中小規模法人部門でそれぞれ基準が異なりますので、一つずつ見ていきましょう。
健康経営優良法人2025「大規模法人部門」の認定基準(評価項目)
大規模法人部門の認定基準(評価項目)は、前述した「経営理念」「組織体制」「制度・施策実行」「評価・改善」「法令遵守・リスクマネジメント」という5つの大項目に分類されます。
そして、中項目~小項目では細かな条件が提示されており、これらを一定数クリアする必要があります。
令和6年度の調査では、PHR活用※や非正社員等に関する新たな設問の追加、仕事と介護の両立や柔軟な働き方に関する設計の変更、経営層の関与に関する配点バランスの修正等が行われました。
※PHR=Personal Health Record(個人の健康・医療情報)
詳細については次の図で確認することができます。
出典:経済産業省「健康経営優良法人2025(大規模法人部門)の認定要件」
「大規模法人部門」認定基準を満たすためのポイントは?
必須項目になっている産業医又は保健師が健康保持・増進の立案・検討に関与については、産業医と企業担当者の連携が欠かせません。
しかし、企業に所属しているものの、産業医が健康活動に積極的でない場合には、この基準を達成することは困難になります。
健康経営の推進では、企業の規模に関係なく「産業医の役割」「産業医との連携」が重要になります。
この点について、特定非営利活動法人 健康経営研究会の理事長である岡田邦夫先生にインタビューしていますので、次の記事も確認しておきましょう。
健康経営優良法人2025「中小規模法人部門」の認定基準
「中小規模法人部門」の認定基準も、大規模法人部門と同様の「5大項目」に大別されます。
また、認定基準の基本的な構成も共通している部分が多いため、中小規模法人部門だからとって、決して認定のハードルが低いわけではありません。
中小規模法人部門の認定企業の事例を見ると、産業医や産業保健師を有効活用している例がほとんどです。
経営者による「トップのかけ声」や、従業員の「やる気」だけで実現することはなかなか難しいため、産業医等の専門スタッフにアドバイスをもらい、計画的に要件をクリアしていくことが、近道と言えそうです。
中小規模法人部門の認定基準&認定要件は以下の図で確認しておきましょう。
出典:経済産業省「健康経営優良法人2025(中小規模法人部門)の認定要件」
中小企業部門の認定事例を参考にする
健康経営の推進は、離職の防止や生産性の向上など数多くのメリットがあり、注力する中小企業が増えています。
また、経済産業省ではこれまでに認定された中小企業(中小規模法人)の事例集も公表していますので、参考にしてくだい。
経済産業省:健康経営優良法人2021(中小規模法人部門)「認定法人 取り組み事例集」
「健康経営優良法人」申請から認定までのステップ
大規模法人部門、中小規模法人部門で認定プロセスが異なります。
「大規模法人部門」認定までの5ステップ(ホワイト500を含む)
STEP1:「健康経営度調査」に回答する
※経済産業省が実施する、従業員の健康管理に関する取組やその成果を把握するための「従業員の健康に関する取り組みについての調査」(健康経営度調査)に回答する。2022年よりオンラインで行なうことが可能に。
STEP2:回答の結果をもとに、認定基準に適合しているかの判定を受ける
※回答結果をもとに、健康経営優良法人(大規模法人部門)の要件に適合しているかの判定を受けます。認定基準に適合している場合には「申請書及び誓約書等」が同封されます。
STEP3:保険者との連名により「申請」を行う
※上記の申請書類を健康経営優良法人の認定事務局に提出します。
STEP4:健康経営優良法人の認定委員会による審査
STEP5:日本健康会議による認定
●健康経営度調査ってなに?
健康経営度調査とは、法人の健康経営の取組状況と経年での変化を分析するとともに、「健康経営銘柄」の選定及び「健康経営優良法人(大規模法人部門)」の認定のための基礎情報を得るために実施している調査です。
「中小規模法人部門」認定までの5ステップ(ブライト500を含む)
STEP1:「健康宣言」事業に参加する
※「健康宣言」は協会けんぽ等の保険者が取り組んでいます。
STEP2:「健康経営優良法人(中小規模法人部門)認定申請書」の作成
※申請書や基準解説書、Q&Aなどについては経産省の資料にてチェックできます。
STEP3:「健康経営優良法人(中小規模法人部門)認定申請書」を提出
※提出先は協会けんぽや健康保険組合など。
STEP4:健康経営優良法人の認定委員会による審査
STEP5:日本健康会議による認定
●健康宣言ってなに?
中小規模法人部門については、所属している保険者(全国健康保険協会及び健康保険組合)が健康宣言の取り組みをしていない場合は申請ができません。
保険者による健康宣言の取組の有無については、所属されている保険者にお問い合わせください。
▼全国健康保険協会(協会けんぽ)の健康宣言についてはこちら
「健康企業宣言」募集中!
■こちらも参考に!■
「健康経営優良法人2025」の申請期間・認定基準はいつだった?
「健康経営優良法人2025」の申請期間
●大規模法人部門(ホワイト500含む)
健康経営度調査:2024年8月19日~10月11日
※健康経営度調査を受けなければ申請はできません。
●中小規模法人部門
申請期間:2024年8月19日~10月18日
健康経営優良法人の認定基準については、例年5~6月頃に検討が行われ、8月末頃より申請の受付が始まる流れになっています。
「健康経営優良法人2026」についても、同様の期間であることが予想されます。
申請を検討している場合には、経済産業省のホームページをチェックしておきましょう。
認定にはどんなメリットがある?「健康経営優良法人」
健康経営優良法人、認定のメリットは、生産性向上・業績向上・株価上昇etc
健康経営優良法人に認定されることのメリットは「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人」として社会的評価を受けることができる、という点だといえます。
もう少し具体的にすると…
経済産業省の公表によれば、以下のようなメリットが挙げられています。
●健康経営優良法人に認定されるメリット
・従業員への健康投資を行うことで、活力向上、生産性向上、組織の活性化が見込める
・結果的に業績が向上し、株価も向上する
※その他にも「健康経営に取り組んでいるかどうかが、就職先の決め手になるか」という質問したところ、就活生・親双方で7割以上が重要な決め手になるとの回答がありました。
中小企業にもメリット多数!自治体からの表彰や低利融資も
中小企業が健康経営優良法人に認定された時のメリットは、自治体から表彰される可能性があることです。これは、企業にとってよいブランディングになります。
それだけでなく、地銀や信金などからの低利融資を受けられることもあるようです。
健康経営優良法人の認定は、企業のブランディングだけにとどまらず、従業員の離職防止にも大きな期待が集まっています。
株式会社エムステージでは、健康経営優良法人認定の取得や、健康経営に関する業務をトータルサポートします。産業医や保健師の紹介からメンタルヘルス領域まで、産業保健のあらゆるお悩みに対応するサービスを展開しています。
「健康経営に取り組みたいけど何をしたら良いか分からない」という人事労務担当者の方は、ぜひ一度お問い合わせください。
「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。