健康経営の推進に欠かせない、産業医と経営者の連携

健康経営研究会 岡田邦夫理事長(写真左)と株式会社エムステージ 歌代敦


2020年度は過去最多の企業・法人が「健康経営優良法人」に認定されるなど、健康経営への注目は年々高まっています。

健康経営®の推進において、産業医や経営者はどのような役割意識を持ち、そして連携していくべきでしょうか。

産業医として企業で活躍し、健康経営研究会の理事長も務める岡田邦夫先生へ、株式会社エムステージ 産業保健事業部 歌代敦取締役がインタビューしました。

社会全体のヘルスリテラシーが向上。健康経営がスタンダードになった

歌代:2020年度は健康経営優良法人には過去最高の企業数が認定されましたが、岡田先生が「健康経営研究会」を発足された当時から見て、現在の状況をどのように見ていますか。


岡田先生:2020年度は数多くの企業が健康経営優良法人の認定を取得し、その数は過去最多の9,735件となり、とても喜ばしいことだと感じています。

私が理事長を務める「特定非営利活動法人 健康経営研究会」が発足した2006年の当初は、「ブラック企業」の存在が社会的な話題になっていました。

しかし、その後に経済産業省による「健康経営優良法人」をはじめ、「ホワイト企業」というキーワードがクローズアップされるようになったことで、結果的にブラック企業は淘汰されつつあります。

こうした現状を見ますと、日本の企業におけるリテラシーはかなり向上したという実感があります。



歌代:当社に寄せられる相談などからも、健康経営のキーパーソンとして産業医の存在に期待が高まっていることを感じていますが、産業医を取り巻く現状についてもお聞かせいただけますか。


岡田先生:大阪産業保健総合支援センターの相談員や、数社の産業医の経験があり、現在も継続していますが、ここ数年で産業医の役割には一層の期待が寄せられるようになっています。

やはり、ひと昔前であれば、産業医が適切な業務を行なっていないケースも数多く存在していたこともあり、また、経営者の産業保健に関する意識も高くはなかったのではないでしょうか。

例えば、事業を優先させるあまり従業員の健康管理に目が届かなかった経営者も多く、健康被害が発生してからやっと産業医と連携するということがありました。

しかし、今では産業医を活用して、戦略的に健康経営を進めていくことにシフトしつつあります。

ですので、産業医にも経営的な視点から意見が出せる資質が求められています。

それでもまだ、現状として企業における産業保健に対する意識の格差は存在していますね。


歌代:私が大企業からよく相談を受ける事例ですが、本社では高水準の産業保健活動を行なっているものの、地方支社・支店では積極的な産業保健活動が出来ていないという悩みを聞きます。このあたりの格差は、どのように無くしていけば良いでしょうか。


岡田先生:本社が主導し、支社を巻き込んだ健康経営に取り組むことが大切だと考えます。

まずは、経営者が健康経営に関する当事者意識をしっかりと持ち、産業保健活動の方針を決定すること。その際には、幅広い視野から本社ならびに支社の産業医から意見をもらうようにしてください。

もし、経営者やCHOと産業医のコミュニケーションが不足しているような場合には、衛生委員会に経営者が参加するなどして意見交換することをおすすめします。

また、産業保健スタッフの活動支援としては、年に1回から数回程度、産業医・保健師などのスタッフが一同に会し、産業保健活動に関する企業の新年度や中長期的な方針を共有することが大切。

支社の産業医に業務を一任するのではなく、経営者・産業医・従業員が緊密にコミュニケーションを取り、健康経営の実現に向けて活動していきましょう。


歌代:その際にも、産業医は中立性を持ち、そのことを従業員にももっと理解してもらう必要性がありそうですね。


岡田先生:そうです。産業医は企業・経営者にとって都合の良い存在ではなく、しっかりと実態に即した各種の評価と助言を行っていくことが重要です。

私が見た例をお話ししますと、長時間労働をしている従業員の方がおりまして、本人から「先生、最近あまり寝てないのにすごく元気なんですよ」と聞きましたので、すぐに1週間の休職が必要だと判断しました。

経営者としては「何で元気な従業員を休ませるんだ?」という反応でしたが、産業医の私から見ればその従業員の方は明らかな軽躁状態だったのです。

1週間後の面談でも睡眠負債が解消されていなかったので、さらに1週間の休業することを勧めました。

このように、経営者や管理者のみで健康に関する判断することは危険ですし、産業医としても「このまま働かせたらどうなるか」という、予見可能性の観点から就業の判断を行なっていくべきなのです。 

つまり経営のプロの経営者と産業保健のプロの産業医がスクラムを組んで、企業の科成果と従業員の健康づくりを両立させるというアウトカムを出すことです。



「人生100年時代」を見据えた健康経営の推進

歌代:健康経営の推進について、経営者にとってヒントとなるポイントを教えてください。


岡田先生:労働安全衛生法等を守っていることを前提として、健康経営の推進するに際して「何からとりくむべきかわからない」という経営者の方は、健康経営優良法人の認定基準を参考にすることがおすすめです。

また、健康経営は日々の積極的な産業保健活動の積み重ねです。

ですので、従業員の行動変容が無ければ、健康経営を実現することは難しいのです。

例えば、私の知っている運送関連での事例ですが、毎日行うアルコールチェックの際、血圧の測定も産業医の助言でされたそうです。

すると、それまで健康診断の前だけしか血圧の薬を飲まなかった従業員の方が、毎日薬を服用するになったそうです。これで、安全と健康の両者のレベルアップが図られたことになったのです。

このように、少しの工夫で健康経営は推進できますので、経営者の方はぜひ産業医と話し合ってみてください。


歌代:企業側が健康経営に注力していても、それに応えてくれない従業員も多いと聞きますが、どのように対策するべきでしょうか。


岡田先生:健康経営は企業の未来に向けた従業員の健康への投資ですので、しっかりと効果のある活動にしなくてはなりません。

仰るように、従業員の協力する姿勢によっては、健康経営に行き詰まりを感じている経営者もいると思います。

 まずは経営者のメッセージをしっかりと伝えること、次に、インセンティブを考えてみること、そして最後に「ディスインセンティブ」の仕組みを上手に活用してみることです。

例として、健康診断の再検査や精密検査を受けない従業員には、ボーナスをカットするというアナウンスを出してみるといった真剣勝負としての対応です。

少し手荒ではありますが、このようにして「あなたの健康は会社にとって極めて重要です」というメッセージを発信し、本人にも理解してもらうことが大切です。

こうした健康に対する企業の姿勢や、空気を醸成することが健康経営の軸になりますし、企業のCSRにとっても欠かせない物になるでしょう。


歌代:「人生100年時代」と言いますが、今後、産業保健や健康経営ではどのようなことがテーマ・課題になってくると思われますか。


岡田先生:ひと昔前までは、定年を迎えた後に、病気を患う方や亡くなってしまう方が本当に多かったのですが、今後も定年の年齢が伸びることや「人生100年時代」を考えると、働いている時どのようにして健康の基盤を構築するのか、という健康経営の考え方が非常に重要になります。

同時に、わが国の少子高齢化社会においては、人材(現在では人財となりつつある)を大切にすることが求められています。

健康経営に取り組むことは、若手従業員の休職・離職の防止にもつながりますので、ぜひ取り組んでください。

また、2025年には「中小企業の承継問題による廃業」がやってきますので、今後多くの企業がM&Aによって再編されていきます。

そのような場合では、メンタルヘルス不調の問題が発生してくることが想定されますし、仮に再編後の健康管理活動の水準の健康保持増進の取組が低かった場合には、大きなリスクになります。

こうした様々な変化に対応していくためにも「人生100年時代」を見据えた健康経営が求められていますね。

「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。


〈編集部より〉

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