【教えて!山越先生】内科の産業医もメンタル対応できる?(6)

​​​​​​​内科の産業医もメンタル対応できる?の山越先生のイメージ写真

産業医の山越志保先生が、人事労務担当者の疑問や悩みに答える「教えて!山越先生 よろず相談室」。

第6回となる今回は、「内科の産業医でもメンタル面の相談に対応できるの?」についてのお悩みにお答えします!


(人事労務担当者) 軽いうつ程度の従業員のメンタル面の相談を精神科の先生に診てもらいたいという意見が社内ででています。産業医は内科の先生が多く精神科の先生は少ないとも聞きますが実際、内科の先生でもメンタル面をみてもらえるのでしょうか?

(山越先生) 私も産業医でもありながら、内科医でありますので、かつて企業に訪問した際に『精神科医でもないのに、メンタル対応できるんですか?』と、あからさまに企業担当者から聞かれたことがありました。

その当時は、内心、かなりムッとしてしまいました。メンタルヘルスは産業医の基本科目だと思っていたからこその感情です。

しかし、よくよく当時を振り返ってみると、その企業担当者は、悪意があってそう話されたのではなく、主治医と産業医の役割を混同して考えていたんだろうな、と感じます。

また、今回の質問の中に出てくる、従業員のメンタル面を診てほしいという要望もやはり主治医と産業医の役割を取り違えているなと思ってしまいます。

今回、お話したいのは、主治医と産業医の役割と、疾病性と事例性という概念についてです。


1.主治医と産業医の役割

(山越先生) 主治医という言葉、よく聞きますよね。

これは、もっと分かりやすく言うと、かかりつけ医、病院やクリニックのお医者さんです。医療機関で患者さんを診察し、必要があれば検査をして、病気の場合は治療、すなわち処方や手術をします。さらに必要があれば、診断書を作成します。立場としては、完全に患者さん優先です。

それに対し、産業医はどんな立場でしょうか。

産業医は『企業の中のお医者さん』、医療の専門家です。産業医は診察はしません。

しかし、企業のお医者さんとして、「安全に業務できる健康状態なのか」という観点で、従業員の定期健診の事後措置をしたり、過重労働者に対して「現状で健康障害を来していないか』とうい視点で過重労働面談をしたりします。

そのほか、必要時には産業医面談をして、対象となった従業員に助言や指導を行い、企業に対しては意見書を作成して、業務上の必要な配慮にアドバイスします。企業と従業員との間に立って、双方の利益を考慮する中立的な立場です。

このように説明しますと、主治医と産業医の役割は全く違うことが分かるかと思います。当然、拘束され、遵守すべき法律も違います。

冒頭の質問に戻りますが、産業医の行うメンタル対応というものは、精神科専門医の行う精神疾患の診断と治療ではないのです。

従業員と面接し、そのメンタルの状態を評価し、企業における業務内容を鑑みて、業務が安全に遂行可能かを判断します。

そして、精神科専門医の診療が必要と考えられれば、紹介状を作成し、受診を促します。さらに、残業禁止や出張禁止などの就業制限、職場環境を変えるなど業務上の措置を必要とするかを判断し、企業に対して意見書を提出します。

このように産業医が行っているメンタルヘルス対応は、精神科疾患の治療とは全く別のものですトレーニングを受け、経験を積んだ産業医なら、内科医であろうと、外科医であろうと、皮膚科医であろうと、診療科を問わず、メンタルヘルス対応ができると思っていただいていいでしょう。

通常の精神科や心療内科などで行っているような診療、すなわち診察、検査、診断や治療という行為を、産業医はできない、いや、しないのです。

これは医師のスキル的な能力の問題というより、診療する立場にないと言ったほうがいいでしょうか。

例え、専門が精神科医であったとしても、産業医として働くのなら、業務は産業医としての評価、指導、助言であり、診断・治療ではないのです。診断しているわけではないので「診断書」ではなく、面談・就業上の措置を判断した「意見書」を記載するのです。


2.疾病性と事例性という概念

(山越先生) 産業保健で問題となるケースを考える際に重要な「疾病性」と「事例性」という概念を知ると、主治医と産業医の役割がより分かりやすくなるかもしれません。まず、この二つの定義をご紹介したいと思います。

疾病性:病気の診断や症状そのもののことで、職場で問題となっていることの背後にある病気や医学的なことを背景とした考え方

事例性:職場で困っていることや仕事上で問題となっている行動について、客観的な事実を背景とした考え方

疾病性を取り扱うのが主治医です。そして、事例性を取り扱うのが産業医であり、人事担当者となります。

人事担当者は問題となるケースと直面したときに「事例性は何なのか」という観点で、ケースをとらえ、産業医に相談して、問題解決に取り組む必要があります。

疾病性と事例性をごちゃ混ぜにして、従業員を病気だと決めつけて産業医に相談を持ちかける人事担当者もいます。

わたくしは、産業医業務においては、疾病性と事例性に分けて、交通整理をして、問題となる事例性を分析し、疾病性の部分を主治医にお願いする、という形をとるようにします。

まず、主治医と産業医と立場を分け、その前提の上で、どちらが判断すべき業務なのかを明らかにすることで、問題解決に向けて一歩進みだすことができるのではないかと考えます。

わたくしも、時々、別の産業医の先生から問題となる従業員の対応について相談を受けることがありますが、そのようなときは、人事担当者も産業医自身もこの二つの概念を十分に理解されていないことがあります。

ケースの事例性が整理できていない状態で、疾病性を問題にして、どう対応したらいいかを悩んでいる状況なのです。ぜひ、この二つを整理して問題の対応を試みてください。

産業医は、従業員のメンタル対応の場合も、事例性という観点でアドバイスしていくことになります。人事担当者には、主治医と産業医、疾病性と事例性、これらの違いを分かった上で、企業内の健康・人事・労務にまつわる対応をしていただきたいのです。

そこがしっかり整理できれば、「内科医の産業医にメンタルの相談なんかできない」という発言もなくなるのではないかと期待しています。

【プロフィール】

山越 志保(やまこし しほ)/日本医師会認定産業医/労働衛生コンサルトタント(保健衛生)

都内の病院で内科医として勤務しながら、日本医師会認定産業医・労働衛生コンサルタントを取得し、産業医としての業務を開始。これまで多岐にわたる企業で、産業医業務を担ってきた。現在は、株式会社さくら事務所を設立し、臨床と産業医活動を行っている。



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