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ロスジェネ世代の働き方座談会 流行語・死語で読み解くニッポンの働き方 <番外編>


この連載「流行語・死語で読み解くニッポンの働き方」では、モーレツ社員が活躍した1980年代から、働き方改革時代の現在まで、30年間の日本の働き方をたどってきました。

流行語・死語で読み解くニッポンの働き方 これまでの連載はこちら

【第1回】1980年代前半・モーレツ企業戦士が24時間戦っていた時代 

【第2回】1980年代後半・働いたら報われたバブル時代

【第3回】1990年代・バブル崩壊失われた20年

【第4回】2000年代・過労死対策はじめ

【第5回】2010年代・本気で働き方改革時代

今回の番外編・座談会の主役は、連載でイラストを担当してくれた、とりのささみ(@torinosashimi) さん(38歳)

生まれたとき、当時の親世代は企業戦士。
幼少期にバブルが終わり、就職するときには氷河期に。
フリーター、ブラック企業、転職を経て、今はツイッターのフォロワー数25,000を超えるフリーデザイナー。まさに、今流行の「個のブランド力」持っている方です。




そんな、とりのささみ。さんに、これからの働き方のヒントを聞きたく、座談会を企画しました。

今宵、新橋のとある焼き鳥屋に集まったのは…



とりのささみ。(以下、とりささ):連載のイラストを担当。フリーのデザイナー兼イラストレーター。


編集部S:ロスジェネ世代でもあり、ぎりぎりミレニアル世代。当サイト、サンポナビ編集長。


編集部O:ロスジェネ世代の働きづらさを世界の中心で叫びたい。女性医師のキャリアと子育て・生活の両立を応援するWEBマガジンjoynet編集長。


ライターF:連載のライティングを担当。転職2回、脱サラ歴2回。割と思うがままに生きている。


全員、まさにロスジェネ世代。

就職氷河期、ブラック企業、恐ろしいバブル先輩。

アラフォーまでがむしゃらに働いて、気づけば会社では煙たがられる存在に…!?

わたしたち、これからどう生きていけばいいんでしょうか…。同じ時代に働く者同士、今宵は語り合います。


とりのささみ。さん、焼き鳥屋に登場。

とりささ:いや〜、こんな時間に新橋で焼き鳥を食べれるなんて、サラリーマンみたいっす


編集部S:連載を支えてくれたとりさささんと、こうやってとりのささみを味わえるなんて、数日前からわくわくが止まりませんでした。今日は、よろしくお願いします!


ライターF:いま「サラリーマンみたい」って言ったってことは、とりさささん、就職はしなかったんですか?

就職氷河期どストライクですよね?


とりささ:就活自体しませんでしたよ、へへ。この氷河期だし就職できる状態じゃないなってことで諦めました

実は医大に受かってたんですが、絵とデザインに興味があって(あと、やっぱり血がダメで…)専門学校に行きました。好きな絵を描いて、時々スロットに出稼ぎに行ったりとかして、ぷらぷらしてましたね〜。


実は公務員だった!?ブラック企業を渡り歩いた時代。

編集部O:じゃあ、一度も就職経験なしですか!?


とりささ:3、4年ぷらぷらした後、某公的機関に就職しました(笑)


編集部S:ぷらぷら後、某公的機関!振り幅すごいですね…!


とりささ:デザイン関係の仕事をしたかったんですけど、まさに時代が時代でどの企業も募集がなかったんですよね。デザイン部門って広告費で成り立つんで、完全に不況のあおりを受けるわけです。

それで目に付いたのが某公的機関の求人でして(笑)。

テストは得意なんで一発合格、職種は経理でした(笑笑)


ライターF:ぷらぷら生活から公務員なんて、超飛び級じゃないですか!


とりささ:でも、1年半くらいで辞めましたね。ふふ。

いや〜完全ブラックでしたね真っ黒っす

月曜出勤して土曜日の朝帰宅する、みたいな生活が続いて、このままでは死んじまうって思って逃げました。公務員って駆け出しは給料安いんですよ。それなのに、公務員=給料ドロボーみたいに言われる。残業を200時間近くしていても50時間しか付けられない。暇な日なんて1日もなかったですね…。

そのあと製薬業界のデザイン会社に転職するもこれまたブラック。人間関係がひどすぎて、直接何かされたわけではないけど関わりたくなくて。ふふ。

そこが1年半くらい…。そのあと居酒屋を運営している会社に…2年くらい。


編集部S:なぜまた居酒屋!?


とりささハローワークで求人検索していて、経験を活かせる「経理」と、好きな「デザイン」、間違って「and検索」しちゃったんですよ。そしたら1件引っかかっちゃって。売上管理しつつデザインもしました(笑)。

入社してから気づいたんですけど、サービス業なんで土日も営業なんですよね…、パートの人たちは休みで、ボクだけ土日ワンオペになっちゃったんです。

さらに店長がパワハラ系で…。バイトの子を怒鳴って泣かせたり、パートの人もどんどん辞めちゃって。そんな雰囲気がやっぱりいやになって、辞めましたね、ははは。


そしてたどり着いたジャングルジム。

編集部Oとりさささん、転職にハードル感じないタイプなんですね。ロスジェネ世代は不況で倒産や年功序列の崩壊を目の当たりにしてきたからこそ、会社への忠誠心が少ないと言われていますが。


とりささハードルも忠誠心もないですね。このころには傍でやっていたデザインの仕事がうまく回りだしていて、やっていけそうだなーと。それでフリーランスになって、4、5年たちました。


編集部S:フリーランスという働き方はどうですか?ツイッターを始めたのもこのころ?


とりささ酒飲みながら仕事できるってサイコーだわ〜、ですね。


昼間に公園のジャングルジムでビール飲んでました。おかげで近所の野鳥に詳しくなったりして。

ツイッターは流行っていたからなんとなく…、その日の晩メシが“とりのささみ”だったんで、アカウント名は「とりのささみ。」にしました。

知らない間にフォロワーが増えていって、ブランディングとかそういうオシャレなことを考えたこともないし、知ろうとするのもめんどくさいと思うタイプで、とにかくよくわからない今です。


編集部S:「個のブランド力」のヒントを聞こうと思ったのに拍子抜けです…。


とりささ:狙いすぎていない感じ、かっこつけてない等身大でちょっとダメな感じ、とにかく日々つぶやいていることが功を奏したんですかね。

あと、「いつも寝てる設定」というのもよかったのかもしれません(笑)

(とりささ。さんのツイートでおなじみ「いつも寝てる設定」)


自由に生きすぎて、自由に飽きた、自由人、とりのささみ。

編集部S:ところで、ツイッターでもつぶやかれていますが、「求職中」って本当ですか??


とりささ:はい!求職中です(キリッ)!


編集部S:さっき「酒飲みながら仕事できるってサイコー!」って言ってましたけど…?


とりささジャングルジムでビールを飲む生活に飽きたんです…

昼間におっさんが公園でビール飲んでたら、保育園児が安心して遊べないし。今日が何曜日かわからない生活ってどうなのよって。少年ジャンプのおかげで月曜日だけかろうじて把握してますが。

会社って短期目標とか業務分担とか細かい決め事があるじゃないですか。今ボクが受けている仕事って“ざっくり”が多いんです。社会との接点がなくなっているのを感じるんですよね。当事者として感じるべき環境の変化、社会の動きを、まわりから知ることが増えた気がして、これはやばいぞ、と。今年のゴールデンウィークの並びがいいってなんのこと?って(笑)


編集部O:もしかしてですけど、求職理由は「曜日感覚を取り戻すため」ですか…!?


とりささ:それですね、ははは。20歳くらいから自由に生きすぎたんです。その反動で、縛られたくなりました。自由に疲れた…


ライターF:次はどんな仕事を?


とりささ:今までやったことのない、ベルトコンベアーでひたすらネジをはめるみたいな仕事がしてみたいですね、ふふふ。


ライターF:それまた曜日感覚なくなりそうですけどね…。


ロスジェネ世代は、やっぱり損してる?

編集部O我々ロスジェネ世代って世の中から価値を見出してもらえない世代だなって思ってるんですよね

就活では超氷河期で選別され、会社では上からのあおりを食って、下からは馬鹿にされ。アラフォーになってめんどくさい先輩だと思われる。身を粉にしてがんばってきたのに!って。


とりささ:あー、それはわかりますね。


編集部O:安室ちゃんが引退するって聞いて、同じ世代を生きてきた自分を重ねちゃって、ああわたしも終わりだな…って思いました。


ライターF:あ、それはわかる(笑)

でも、働き方を選べる時代、働き方を選ぶためにスキルアップを目指す今の時代ってロスジェネ世代にとってはチャンスだと思うんですよね

就職氷河期に奇跡的に就職して、わたしも転職を繰り返してフリーランスになりましたけど、まだ、終わりじゃない。とりさささんが自由に飽きて就職しようとしているみたいに、会社員とフリーランスを行き来したっていい。


編集部O:確かに、会社だけに必死に居場所を求めようとするのでなく、新しい働き方を主体的にうまく取り入れることでロスジェネ世代の割を食った感も解消されるかもしれませんね

それにしてもロスジェネ世代で共感できる仲間が少ないんですよね。


とりささ:もう働いてないのかな…?

特に女性は、アラフォーにもなると進路もバラバラで、働いていない人も多いのかも。


編集部S生まれる時代は変わることはできないけれど考え方や身の振り方は自分次第でいくらでも変えられますよね

社会や会社のせいにするのではなく、働き方、生き方を自分の意思で選んで、それに責任を持てるような大人になりたいですね。

もう、十分大人だけど…。


とりささ:そうっすね。「これだからゆとり世代は〜」っていう時点でかっこわるい。価値観だっていろいろじゃないですか

僕なんてこの先のことは考えてないし、儲けようとか他人と比べてどうとかまるでないっす。そういう人間もいて、要は多様な生き方を認め合えばいいんじゃないですかね〜(笑)


編集部O:企業戦士、バブル世代、先輩たちが築いた道があって、我々も次の時代に道を残す。時代のせいにせず前向きに歩きたいですね


ライターF:自分らしく、前も向いて進む。次の世代の人たちに、少しでも何か残せるといいな〜。ロスジェネ世代結局まじめなんですよね(笑)


協力/とりのささみ。 (@torinosashimi)  ・ 文/ふるたゆうこ ・ 編集/サンポナビ編集部


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【第1回】1980年代前半・モーレツ企業戦士が24時間戦っていた時代 

【第2回】1980年代後半・働いたら報われたバブル時代

【第3回】1990年代・バブル崩壊失われた20年

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