流行語・死語で読み解くニッポンの働き方 第3回 〜1990年代・バブル崩壊、失われた20年〜


流行語、死語を追うことで、日本の働き方の変遷を学ぶ連載。3回目となる今回は「1990年代バブル崩壊失われた20年」です。職場で不思議に思っていた、働き方の世代ギャップの理解も進むかも?

1991年3月についにバブルが崩壊。バリバリ働いてしっかり稼いでいたビジネスマンたちは一転、不景気による会社の倒産や人員削減に怯えることに。給料もボーナスも下がり、バブルに浮かれていた日々は幻に…。

新規採用も止まり、いわゆる就職氷河期へと突入。パート、アルバイト、派遣社員、契約社員といった非正規雇用、フリーターの出現など人々の働き方も変わりました。

そんな激動の時代を昭和世代はどう生き抜いたのか?!今回も平成生まれのRちゃんが、昭和世代のミスターJとたどります。


この記事は連載の第3回目です。

【第1回】1980年代前半・モーレツ企業戦士が24時間戦っていた時代 

【第2回】1980年代後半・働いたら報われたバブル時代

【第3回】1990年代・バブル崩壊失われた20年

【第4回】2000年代・過労死対策はじめ

【第5回】2010年代:本気で働き方改革時代


<登場人物プロフィール>

ミスターJ:1958年生まれ(60歳)。私立大学を卒業後1980年広告代理店入社。現在個人事務所を経営。結婚3回、趣味はゴルフ。


Rちゃん:1990年生まれ(27歳)。美容系、飲食系など職を転々としつつ将来のために闇雲に資格を集めている。趣味は心霊スポットめぐり。



バブル崩壊、戦う場所がなくなった企業戦士

(バブルに終止符を…)

Rちゃん:

バブルがはじけたー! そもそもバブルってなんだったの…?


ミスターJ:

好景気に浮かれていたオレたちが見ていたものは、文字通り中身のない泡バブルだったってわけ。

土地やゴルフ場の会員権を買った人、株に投資した人、同僚にもいたけれど、本当に泡のように消えてしまった。一瞬だったよ…。

会社にすべてを捧げてきたのに人員整理が始まり、寒〜い空気感になった…。

ちなみ1990年代ってこんな時代

1990年:おどるポンポコリン(B.B.クィーンズ)大ヒット。
1991年:「東京ラブストーリー」「101回目のプロポーズ」人気。
1993年:バブル崩壊。コギャル出現。
1995年:Windows95が彗星の如く現る。
1996年:アムラー出現。ルーズソックスブーム。
1999年:ヤマンバ出現。


Rちゃん:

人員整理…!


ミスターJ:

とはいっても、この時代は年功序列の意識が強かったから、早期退職、希望退職を支援するというより「新規採用を止める」ことでしか対応できなかった。終身雇用制度も背景にある。

今いる社員たちでなんとか頑張らないといけない、そう思ってはいても、1987年に改正された労働基準法によって法定労働時間が短縮され給料も下がる。かつての企業戦士たちは一気にお疲れモードになった。


Rちゃん:

企業戦士は戦う場所がなくなっちゃったんだね。


ミスターJ:

そうだね。

24時間戦えますか」と息巻き栄養ドリンクを飲んでいたイケイケビジネスマン(牛若丸三郎太こと時任三郎)から、「まいったなぁ~」とぼやきながら缶コーヒーを飲む哀愁漂うサラリーマン(矢沢永吉)へ、当時のテレビCMをみるとわかりやすいよね。


Rちゃん:

わかりやすすぎる変化(笑)

ほんとにみんな「まいったなぁ~」って感じだったんだろうね。

労働時間が規制されて給料も減るって、バブルを謳歌してきた人たちにとってはすごくきついもんね…。


ミスターJ:

話していてもつらくなってくるな…。

就職氷河期は就職希望者だけでなく、残された企業戦士にとっても厳しいものだったと思う。

リストラの横行や成果主義へのシフト、人員削減による業務負荷、社会に対する不安、家庭・家族とのバランス…多くのビジネスマンが極度のストレスで倒れていったよ


Rちゃん:

そう言ってるミスターJは鋼のメンタルを持っていそうだけど…。それでもつらかったの?


ミスターJ:

バブル崩壊はさすがのオレも参ったよ!
でも会社員はつらいなと思い知らされて、将来を見据えていろいろ動いたな。

就職できなかった人たちがフリーターになったり最悪の場合ニートになったわけだけど、非正規雇用という働き方の選択肢ができたことには悲観的ではなかったよ。会社にしがみついて働き続けるのも楽じゃなかったからね。


とはいえ、ここで非正規雇用が増えたことが現在においてもワーキングプアなどを生む温床になった。

社会の歪みを生んだとは言えるんじゃないかな(ため息)。


変化してきた、産業医の役割

(先生、職場の悩みを聞いてください…)


Rちゃん:

仕事はないし、非正規雇用で不安定だし・・・。運よく仕事にありついても、過労にあえいでたってことか。

仕事があっても地獄、なくても地獄じゃん。


ミスターJ:

そのころには過労死が社会問題化して、ビジネスマンのストレスも増加、ついに産業医の重要性が認識されはじめたんだ

産業医という概念自体は1972年の労働安全衛生法の制定時に確立されていたけど、ここに来てやっと認知されてきた。もともと職場環境に起因する健康管理を求められていた医師が一般企業の会社員のメンタルヘルスをケアする役割になったんだ


具体的には、
・1996年に産業医として働くためには産業医学の研修受講が必要だと定められ
・日本医師会と産業医科大学は産業医の養成に注力し
・日本産業衛生学会は専門医制度を確立した

労働衛生に関するスペシャリストが求められる時代になったんだね。


Rちゃん:

産業医に求められる役割も変わっていったんだね


ミスターJ:

まだカジュアルに相談できるって感じでもなかったけど、これは今の時代につながるとても歴史的なことだと思うよ。ただ心身健康に働くことが大事なんだって気づくのに時間がかかってしまったよね

少し遅すぎたくらいだ。


Rちゃん:

遅すぎた?


ミスターJ:

そう。悲しいことに、1991年に電通の社員が過労が原因で自殺した事件があったんだよ。このニュースは大々的に報じられて、「過労自殺」が重大な労働問題として認知された。

過労死って長時間労働による疲労からくる血管疾患、動脈硬化、脳出血、血栓ができることによる心筋梗塞、脳梗塞、そういうフィジカルな疾患が原因だと思っていたから、精神疾患による自殺のニュースはショックだったよ。

過労死等防止対策推進法が施行されるのが2014年、次はそんな話になるかな。


Rちゃん:

バブル崩壊によって失われたものって、経済的なものだけじゃないんだね。


ミスターJ:

バブル崩壊によって失われた10年、さらに経済回復するまで10年。

失われた20年って言われているけど、経済的なダメージに連鎖する損失はあちこちにあったんだよな…。


Rちゃん:

はー…。バブルから一転、今日はつらい話だったなぁ。

でも、これからのために、過去から学んでいけばいいんだよね!


ミスターJ:

お。ポジティブだな。


つづけて読みたい

▼流行語・死語で読み解くニッポンの働き方、次回は2000年代です!

【第4回】2000年代・過労死対策はじめ


あわせて読みたい

▼第1回目をまだ読んでいない方はこちらからどうぞ。

【第1回】1980年代前半・モーレツ企業戦士が24時間戦っていた時代 


(参考データ)
総務省「労働力調査特別調査」「労働力調査」
総務省統計局

イラスト/とりのささみ。 (@torinosashimi)  ・ 文/ふるたゆうこ


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