事例あり:従業員が新型コロナに感染したら、何日間休む必要がある?
新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が進んでいますが、感染者は増加傾向にあります。
本記事では、感染判明した従業員が仕事に復帰するまでに必要な休養日数や、企業における対応の流れ・フローについて、事例とともに紹介しています。
「5類」に移行した新型コロナウイルス。職場での対応は?
令和5年から「5類感染症」に移行した、新型コロナウイルス。
新型インフルエンザ等感染症(いわゆる2類相当)からどのような対応に変わるのでしょうか。
大きな変更ポイントは下記の4つです。
引用:新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後の対応について|厚生労働省
- 政府として一律に日常における基本的感染対策を求めることはない。
- 感染症法に基づく、新型コロナ陽性者及び濃厚接触者の外出自粛は求められなくなる。
- 限られた医療機関でのみ受診可能であったのが、幅広い医療機関において受診可能になる。
- 医療費等について、健康保険が適用され1割から3割は自己負担いただくことが基本となるが、一定期間は公費支援を継続する。
令和5年以降、法律に基づく外出自粛は求められていません。 発症後5日間は他人に感染させるリスクが高いことから、外出を控えることが推奨されていますが、あくまで個人の判断に委ねられています。周囲や企業は、個人の主体的な判断が尊重されるよう、配慮する必要があります。
※以下の内容は2021年時点のものですので、最新の情報につきましては、厚生労働省はじめ各自治体等のホームページを必ずご確認ください。
感染判明~仕事復帰に関する目安が厚労省より示されている
職場への復帰に関しては厚労省より基準・目安が示されている
厚生労働省からは「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律における新型コロナウイルス感染症患者の退院及び就業制限の取扱いについて」という通知による基準・目安が公表されています。
ここには、感染判明から退院までの日数の目安や「発症日」「症状軽快」といった用語・基準も示されているためとても有用です。よって、企業の人事担当者・衛生担当者の方は目を通しておくことをおすすめします。
以下にて、厚生労働省の同通知(「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律における新型コロナウイルス感染症患者の退院及び就業制限の取扱いについて」)をもとに、新型コロナウイルス感染と職場復帰についてやさしく解説し、まとめて紹介します。
「発症日」「症状軽快」等の基準を理解しておく
従業員の感染が判明した際、出社に関する判断について、まずは”退院の基準”をクリアする必要があります。
また、入院しなかった場合にも同様に(おそらく、現時点では無症状で入院するケースは少ないと考えられますが)退院の基準が職場復帰の目安として参考となるでしょう。
なお、目安を読み解くためには、その基準となる「発症日」「症状軽快」の基準を理解しておくことが重要ですので確認しておきます。
●発症日とは
発症日とは、患者が症状を呈し始めた日とされています。
無症状で病原体を保有している患者や、発症日が明らかではない場合では、陽性確定にかかる検体採取日が発症日になります。
●症状軽快とは
症状軽快とは、解熱剤を使用せずに体温が下がり、かつ呼吸器の症状が改善傾向にあることを指します。
出典:厚生労働省「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律における新型コロナウイルス感染症患者の退院及び就業制限の取扱いについて(一部改正)」
厚労省の通知による“退院の基準”が、仕事復帰までの目安に
“退院の基準”から読む、仕事に戻れるまでの期間
従業員の感染が判明した後「何日間の療養を経れば仕事に戻れるか」ということについては、先ほどの通知にて示されている“退院の基準”がひとつの目安となるでしょう。
その期間は人工呼吸器等による治療を行なわなかった場合で10日間以上とされていますが、ケースによって異なっていますので、目安についてチェックしておきます。
“退院の基準”は人工呼吸器等による治療の有無で変わる
退院の基準は、人工呼吸器等による治療を「行なわなかった場合」と「行った場合」によって異なります。
人工呼吸器による治療とは、人工呼吸管理またはECMO(体外式心肺補助)管理による治療のことです。
また、前述した厚労省の通知によれば「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」において「病原体を保有していないこと」が判断の基準になるとされています。
これについては核酸増幅法または抗原定量検査(PCR検査等)により陰性と判定されることが必要とされています。
同通知では退院までの日数に関する基準が示されていますので、仕事に復帰する際の目安となるでしょう。
●退院(仕事復帰)までの目安となる日数:人工呼吸器等による治療を行わなかった場合
① 発症日から10日間が経過していて、かつ症状軽快後 72 時間経過した場合
② 発症日から10日間経過以前に症状軽快した場合に、症状軽快後 24 時間経過し
た後にPCR検査(核酸増幅法または抗原定量検査等)を行い、陰性が確認され、その検査の検体を採取した 24 時間以後に再度検体採取を行い、陰性が確認された場合
出典:厚生労働省「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律における新型コロナウイルス感染症患者の退院及び就業制限の取扱いについて(一部改正)」
●退院(仕事復帰)までの目安となる日数:人工呼吸器等による治療を行なった場合
③ 発症日から15日間経過し、かつ、症状軽快後72 時間経過した場合
④ 発症日から20日間経過以前に症状軽快した場合に、症状軽快後24 時間経過した後にPCR検査(核酸増幅法または抗原定量検査等)を行い、陰性が確認され、その検査の検体を採取した24 時間以後に再度検体採取を行い、陰性が確認された場合
※ ただし、③の場合は、発症日から20 日間経過するまでは退院後も適切な感染予防策を講じるものとする。
また、新型コロナウイルス感染症の無症状病原体保有者については、原則として次の⑤に該当する場合に、退院の基準を満たすものとする。ただし、次の⑥に該当する場合も退院の基準を満たすものとして差し支えないこととする。
⑤ 発症日から10日間経過した場合
⑥ 発症日から6日間経過した後に核酸増幅法等の検査を行い、陰性が確認され、その検査の検体を採取した24 時間以後に再度検体採取を行い、陰性が確認された場合
出典:厚生労働省「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律における新型コロナウイルス感染症患者の退院及び就業制限の取扱いについて(一部改正)」
■よく読まれている関連記事■
事例から見る:社内で新型コロナ感染者が出た際の対応ポイント
職場で感染者が出た際の対応フローを決めておく
連日、多数の感染者が出ていますので、企業としても感染者が出てしまった際の対応フローを決めておくことがとても重要になります。
具体的には、人事や衛生担当者等が従業員の体調や体温を把握しておくことをはじめ、従業員が発熱等によりPCR検査を受けた後の報告フロー等を定めておくこと、保健所や厚生労働省の公表している対応法を調べておくこと等が挙げられます。
その他にも、衛生委員会等を通じて、有事の際の対応に関する情報を社内で共有することも有用です。
また、これらのフローあるいは体制整備について、産業医から助言をもらうことも検討してください。
自己判断による職場復帰は避ける。主治医の意見と産業保健スタッフとの連携が重要
新型コロナウイルス感染後の回復や心身への負担には個人差があるため、仕事への復帰について、労働者の判断に委ねることは避けてください。
新型コロナウイルス感染後の職場復帰については、厚生労働省の「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」に記載があり、以下のよう示されています。
Q:「新型コロナウイルス感染症に感染した労働者が職場復帰する際にどのような点に留意すればよいでしょうか。」
A:新型コロナウイルス感染症の回復経緯や心身の負担には個人差があることから、療養終了後に職場復帰する場合の対応に当たっては、業務によって症状を悪化させること等がないよう、主治医等の意見を踏まえた本人の申出に基づき、産業医や産業保健スタッフとも連携し、勤務時間の短縮やテレワークの活用など、労働者の負担軽減に配慮した無理のないものとすることが望ましいです。
人事担当者としては、産業医等の専門スタッフと連携し、働き方の調整も含めて対応してください。
また、感染が判明された方についても、会社と相談し、自己の判断のみで復帰せず、専門スタッフの意見などを参考にしましょう。
当サイト「サンポナビ」では、保健師監修のもと人事・衛生担当者の方向けの資料を作成しましたので、あわせてチェックしておくことをおすすめします。
事例:感染判明から職場復帰までの流れ
エムステージの産業医サービスを利用している企業の事例では、前述した厚労省の通知を元に、各社の産業医が復帰や出社に関するアドバイスを行なうケースが多いそうです。
その他にも、従業員の快復後にPCR検査の結果の提出を求め、結果を元に産業医等が判断するケースもありました。
また、快復後に基準となる日数が経過した後であっても、一定期間はテレワークで働いてもったという事例もあるようです。
企業は安全配慮義務を果たし「職場クラスター」を発生させない努力を
企業には「安全配慮義務」という、従業員の安全と健康を守る義務が課されています。
新型コロナウイルスは世界的に流行しているため、従業員の感染については不可抗力であるともいえますが、企業としては「職場クラスター」を発生させない努力をしなければなりません。
企業が適切な感染防止策に取り組まず、結果として職場でクラスターが発生した場合には、その責任(安全配慮義務違反)を問われる可能性や、従業員からの訴訟リスクがあります。
また、企業が安全配慮義務を果たすためには、産業医等の専門家と連携し「ここまで対策した」という記録を残しつつ、実地的な感染症対策を行なうことが重要です。
この点については、数多くのメディアに登場する労働法制に強い弁護士、倉重公太朗先生へインタビューした記事がありますので、参考にしてください。
■職場クラスターに関する記事■
・
・
・
ここまで紹介したように、厚生労働省の通知には退院までの基準が示されており、仕事に復帰するまでの目安になります。
しかし、患者により状態・症状は様々であることから、一律に「退院が可能である=仕事に戻れる」というわけではないと考えられます。
よって、職場の復帰に関する判断に不安がある場合には担当医や産業医等に意見や助言をもらうようにしてください。
株式会社エムステージでは、産業医や保健師の紹介からメンタルヘルス領域まで、産業保健のあらゆるお悩みに対応するサービスを展開しています。人事労務課題にお困りの方は一度お問い合わせをしてみてはいかがでしょうか。
■よく読まれている関連記事■