会場準備・人員確保は?「職域接種」のポイントをやさしく解説
2021年6月10日最終更新
6月初週、河野太郎ワクチン接種大臣より「6月から職域でのワクチン接種」がスタートする旨の発表がありました。
まずは、専属の産業医が駐在する大規模事業場(従業員1,000名以上)から開始されますが、規模に関わらず、商工会議所等が共同でワクチン接種の準備を進めるケースも登場してきました。
職域接種において「企業が準備すべきもの」を紹介します。
※情報は最終更新日時点のものです。実施の際は、行政発表の資料等から最新の情報を入手するようにしてください。
ワクチン職域接種の申請方法は「申請サイト」から
新型コロナウイルスワクチンの「職域接種」とは
職域接種とは、自治体のワクチン接種に関する地域の負担を軽減し、接種の加速化を図ることを目的にスタートするもので、いわば企業・職場(あるいは大学等も含まれますが、本稿では「企業」と表記しています)における集団接種のことです。
厚生労働省によれば、職域接種には「モデルナ社製」が使用されます。
企業において職域接種を行うためには、まず厚労省へワクチン接種の申請を行う必要があります。
この職域接種の申請が2021年6月8日よりスタートしました。
職域接種の申請は「職域接種会場申請サイト」から行える
企業が職域接種を行う際には「職域接種会場申請サイト」から申込を行う必要があります。
職域接種会場申請サイトに「接種会場」「接種の予定回数」「接種の開始予定日」といった情報を入力し、都道府県および国へ提出します。
また、企業における事前準備として、接種会場の責任者・連絡先の担当者を決めておくことや、職域接種会場申請サイトに掲載されているテンプレートをもとに申請内容を整理しておく等の準備をしてください。
同時に、職域接種に関する「事務局」を設置することも求められています。
「職域接種会場申請サイト」はこちら
職域接種において、企業で設置すべき「事務局」とは
国へ提出する各種申請をはじめ、医療機関の確保、企業内における連絡や調整、接種会場の手配など、職域接種には数多くのやるべきことがあります。
そのため、企業において社内の連絡体制・対外調整役を確保し、医療機関や都道府県等との連絡調整等を行なっていく「事務局」が必要となります。
事務局に必要な人数や体制について決まりはありませんが、接種人数の規模や事務量等と照らし合わせ、適切な人員を確保します。
●職域接種における事務局の役割
1:従業員等のうち、接種を希望する者の把握、必要なワクチン量の策定(※)
2:スケジュール設定(接種計画の作成)
3:会場運営にかかる企画・全体調整
4:集合契約への加入などの行政手続き
5:医療機関との連携等
※雇用形態によって接種対象者を区別することが無いように注意する。また、接種に関しては強制せず、本人の意思を確認すること。
職域接種において企業で準備しておくべきこと
職域接種を行うための要件~会場・医療スタッフ等の確保
職域接種の事前準備として、企業には大きく分けて「接種会場(場所)」と「医療スタッフ(人員)」を確保する必要があります。
また、企業が職域接種を行う場合には、以下8つが要件として定められていますので、確認しておきましょう。
●職域接種を実施するための要件
①医師・看護師等の医療従事者、接種会場の設営・運営を担う事務スタッフ等、必要な人員を企業等が自ら確保すること(原則として市町村における予防接種体制に影響を与えないようにすること)
②接種会場や会場設営に必要な備品等は企業等が自ら確保すること
③企業等内において、職域接種の準備・実施のための体制を確保すること
④同一の接種会場で2回接種を完了すること、同一の接種会場で 2000 回程度(1000 人程度×2回)の接種を行うことを基本とすること
⑤ワクチンが納品される接種会場においてワクチンを適切に保管の上、接種すること
⑥職域接種の接種対象者に関しては、各企業における接種能力や職場におけるクラスター対策等の観点に応じ、雇用形態によって一律に対象者を区別することは望ましくないという趣旨を踏まえつつ、公平・適切に判断すること
⑦被接種者の個人情報の取扱いについて、医療機関等に準じた取扱いを行うこととし、目的外の使用を決してしないこと
⑧一人ひとりが接種を受けるかどうかを自ら決定するという考え方に基づき、接種に当たっては、本人の意思を確認するとともに、接種を強制することがないよう留意すること
企業に求められる、接種会場と医師・看護師等スタッフの確保
職域接種を実施する場合には、会場や医療スタッフの確保も企業が行う必要があります。
厚労省は職域接種について、以下3つのパターンを示しています。
パターン①:企業内の診療所が職域接種を実施する
企業または組合等が保有する、企業内に設置された診療所等が接種を実施すること。
ただし、職場への入館管理等の都合があるため、対象は社員のみが基本となる。
パターン②:外部機関が出張して職域接種を実施
社内に診療所がない場合には、外部から医師等を確保した上で、企業が用意した接種会場において職域接種を実施すること。
例えば、外部の医療機関が企業内の会議室等で接種を実施するパターン。
ただし、診療所ではない場所を使用する場合には、接種会場を新たな医療機関として開設(医療法に基づく巡回健診の届出)をする必要がある。
パターン③:接種を受ける人が外部機関に出向いて実施
企業が指定した医療機関にてワクチン接種を実施すること。
〈注意点〉職域接種で使用されるワクチンは「武田/モデルナ社」製であるが、市町村の機関では他社のワクチン接種を行なっている場合もあるため、接種が不可になる場合がある。
職域接種に必要な医療スタッフ等の人員確保について
職域接種を実施するにあたり、企業は医療スタッフ等の人員を確保しておく必要があります。
例えば、1日に400人の接種を行う場合、具体的に必要な人数は次のようなものが考えられます。
●1日400人の接種で具体的に必要な人数の例
・接種人数:400人/日 ・接種時間:8時間(9~18時、1時間休憩)
・3レーン設置 15人程度/1レーン/1時間
・医師2名(問診)、看護師5名(接種3、予診票2)
事務職6名(受付2、誘導2、消毒の対応等1)
会場責任者1名を確保する必要があります。
職域接種にあたり「医師」が行う必要がある行為
職域接種の流れでは、次の①~⑥の工程が考えられますが、これらの中で「医師が担当しなければならないもの」は③の予診のみです。
その他に関しては看護師や企業のスタッフが協力し、職域接種を進めることが可能になるよう準備を進めます。
①受付:検温、身分証明書の確認、予診票記載の案内
②予診票確認:記載項目の抜け漏れ・不備のチェック(2回目接種の場合)接種間隔や1回目接種ワクチン種別の確認
③予診:体調や持病を確認する等必要な診察を接種前に行い、予防接種を受けることが定期等でない者または予防接種の判断を行うに際して注意を要する者に該当するか否かの確認
④接種:(薬剤師等)薬液を補充する人員も別に配置が必要
⑤接種照明の交付:接種したワクチンのワクチンシールを接種済証貼り付けし、接種日・接種場所を記載する
⑥接種後の状況観察:アナフィラキシーや血管迷走神経反射等の症状が生じることがあるため、一定期間観察を行う
〈まとめ〉職域接種で企業にもとめられている5つのこと
職域接種について、企業が準備しておく内容を紹介しました。
職域接種の準備では次の5つがポイントとなりますので、おさらいしておきましょう。
1:ワクチン接種会場の運営には医師・看護師等が必要。必要な人員は企業が自ら確保すること
2:接種場所、動線等の確保についても企業が自ら確保すること
3:社内の連絡体制、対外調整約を確保する(事務局を設置する)こと
4:同一の接種会場で2回の接種を完了させること
5:ワクチンの納品先の事業所でワクチンを確保の上、接種すること
〈補足〉ワクチンに関する事前の情報収集も肝心
企業が職域接種の準備を行う前に、ワクチンに関する基本情報を収集しておくことが肝心になります。
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職域接種の準備について紹介しました。
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