〈産業医コラム〉新型コロナウイルスワクチンに関する基本情報


解説:産業医 松本 理

現在、新型コロナウイルスワクチンの医療従事者への接種が行われており、4月以降は高齢者への接種開始、今後は基礎疾患を持つ方にも対象が拡大されます。

一般労働者の接種機会は現時点で未定ですが、企業としては社内に基礎疾患を持つ方がいることも想定し、正確な情報提供を行っていく必要があります。

このコラムで基本的な情報について、簡単に抑えていただき、添付のリンク先などから信頼できる情報をアップデートしていただければ幸いです。

※情報はコラム執筆時(2021年3月下旬)のものです。参考にしたリンク等を添付いたしますので、最新情報については適宜ご確認ください。

今後、日本で接種が予定されているワクチンは下記の3種類です。

・ファイザー社
・アストラゼネカ社
・武田/モデルナ社

どのワクチンも、定められた間隔をあけて2回接種が必要です。


■有効性

どのワクチンでも70-95%の発症を防ぐ効果が認められています。(「発症を防ぐ効果」と「感染を防ぐ効果」は別物です。現時点では感染を防ぐ効果も存在する可能性が高いとされていますが、調査段階です。)


■副反応

副反応とは、ワクチン接種によって起こる期待された効果(例えば「免疫の獲得」)以外の反応のことです。 副作用という言葉の方が馴染み深いかと思われますが、日本ではワクチン接種によるものを「副反応」、薬によるものを「副作用」と区別しています(英語ではどちらもside effectと呼ばれます。)。 

類似する言葉として「有害事象」がありますが、こちらはワクチン接種後に起きたあらゆる好ましくない出来事がワクチン接種と関係があろうとなかろうと含まれます。 極端に言えば、有害事象にはワクチン接種後に交通事故で亡くなった、なども含まれます。


どのようなワクチンも接種後に副反応が生じることがあり、ワクチンの有効性による利益と副反応などのリスクを比較して接種を判断する必要があります。

新型コロナウイルスワクチン接種後に報告される頻度の高い事象として接種部の痛み(≧80%)、疲労(>60%)、頭痛(>40%)、筋肉痛(>15%)、37.5度以上の発熱(>30%)などがありますが、概ね2日以内に回復しています。 (https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_pfizer.html#001


アナフィラキシ―(重大な副反応)の発生頻度は、5件/100万回接種程度(一般的なワクチンによるアナフィラキシー頻度は1.3/100万回接種程度)と報告されており、従来のワクチンよりやや多い可能性がありますが、ほかの薬剤に比べて極端に多いわけではありません。
(参考:抗生剤によるアナフィラキシー 約200/100万回使用程度)


アナフィラキシーには、接種後の喉の違和感や吐き気など軽度な症状から重度の血圧低下を伴い生命の危機に至るものまで様々な段階のものが含まれます。

どの場合も接種直後に起こることが多いため、接種後15-30分程度病院で経過を見ることで対応できます。

そのため、日本では接種を行う医療機関に向けて接種後に経過観察を行うよう指示が出されています。


現段階で、日本ではアナフィラキシーの発生が多い可能性が報道されていますが、経過を追うことができた全例が速やかに処置を受け回復されています(3月26日現在)。 また、日本国内で発生したとされるアナフィラキシーの報告には国際的な基準を満たしていないものが含まれています。専門家が行った調査(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_17208.html)によれば、3月26日時点で報告されている181事例のうち、国際的な基準を満たすものは47例(26%)です。
現在公表されている数値はあくまで速報値のようなもので、実際にワクチン接種との関連があるのかなどの検討が待たれます。


■企業における対策

1)信頼できる情報の提供を心掛ける
残念ながら、報道の中にはワクチン接種と関連が不明な有害事象をあたかも副反応のように扱うなど、ワクチンへの過度な不安を印象付けるものも見受けられます。

また、SNS等の普及によって出典の明らかでない情報が拡散しやすくなっています。

企業は下記のような公的機関や信頼のおける専門家の情報をもとに従業員に情報提供する姿勢が求められます。情報が信頼できるかどうかや解釈に悩んだ際には産業医や保健師にも相談されてはいかがでしょうか。


・新型コロナワクチンについて(首相官邸)
https://www.kantei.go.jp/jp/headline/kansensho/vaccine.html

・新型コロナウイルスワクチンについて(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_00184.html

・こびナビ(新型コロナウイルスの診療や研究にあたる国内外の医師による情報発信プロジェクト)
https://covnavi.jp/


・東京商工会議所 産業医有志グループによる新型コロナウイルス対策情報
https://www.tokyo-cci.or.jp/kenkokeiei-club/covid-19/


2)ワクチン接種を推奨する際の留意事項の確認
ワクチン接種は利益とリスクを勘案して個人が決定するものであり、企業が強制的に接種させることはできません。

また、ワクチン接種の有無は個人情報になりうるため、原則として企業は従業員本人の同意なく把握することはできません。

企業においてはワクチン接種のために休暇を検討する、接種の有無をもとに配置転換を検討する、などの際に情報を得ることになると思われますが、情報収集は本人の同意のもとに行い、職場内での不利益な取り扱いがないように留意しましょう。


なお、企業における留意事項に関しては当コラムを担当しているメンバーの一人である堤医師が執筆された記事も参考にされてください。より実践的な知識がQ&A形式でまとめられています。
https://tohands-handy.com/coronavaccine/?fbclid=IwAR1ApFb7Xb7o9FnG58FJ5KLNHmrB3NUGHvYjuZ90TApukFM6zzQujvPqZqs


ワクチン接種が始まっても、十分にいきわたるには時間がかかります。

また前述の通り、企業は原則として従業員本人の同意なくワクチン接種の有無を把握できないため、合理的な感染対策を行わなずに従業員を感染させたり、クラスターを発生させたりした場合には企業の責任も問われる可能性があります。

現段階では三密の回避、換気、マスク着用、手洗い等の基本的な対策は緩めずに行っていくようにしましょう。


<参考>
・ワクチンの有効性について
(CDC:ファイザー社/モデルナ社)
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/70/wr/mm7013e3.htm

(アストラゼネカ社)
https://www.astrazeneca.com/media-centre/press-releases/2021/azd1222-us-phase-iii-primary-analysis-confirms-safety-and-efficacy.html

・新型コロナワクチンについて(首相官邸)
https://www.kantei.go.jp/jp/headline/kansensho/vaccine.html

・新型コロナウイルスワクチンについて(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_00184.html

・厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会 副反応検討部会)資料
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-kousei_284075.html

・こびナビ(新型コロナウイルスの診療:や研究にあたる国内外の医師による情報発信プロジェクト)
https://covnavi.jp/

・東京商工会議所 新型コロナウイルス対策情報
https://www.tokyo-cci.or.jp/kenkokeiei-club/covid-19/

・新型コロナウイルスワクチン接種にともなう重度の過敏症 (アナフィラキシー等)の管理・診断・治療
https://www.jsaweb.jp/modules/news_topics/index.php?content_id=546


松本 理(Satomi Matsumoto)
■略歴
日本医医師会認定産業医
労働衛生コンサルタント
産業保健法務主任者


※文章出典:株式会社イーウェル「健康コラム」より寄稿

●編集部より~産業医による、職場におけるワクチン接種について

2021年6月21日より、企業・職場において産業医がワクチン接種を行う「職域接種」が開始される予定と、河野太郎ワクチン担当大臣が発表しています。

まずは大規模な事業場から開始されるとのことですが、中小企業においても感染症対策・ワクチン接種に関し、産業医と連携しておくことの重要性が高まっています。

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松本理

松本理

(まつもと・さとみ)日本医医師会認定産業医、労働衛生コンサルタント、産業保健法務主任者

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