〈事例〉仕事が原因で新型コロナに感染…申請したら労災として認定される?
最終更新日:2022年2月16日
新型コロナウイルスのワクチン接種も開始されましたが、働く世代ではまだまだ感染症対策を行っていく必要がありそうです。
本記事では、新型コロナに感染した場合に「労災として申請できるか」「どんなケースが労災として認定されるのか」を、事例とともに紹介します。
目次[非表示]
- 1.新型コロナ感染の労災申請と認定、対象者・基準は?
- 1.1.「仕事が原因で新型コロナに感染した」と判断されたら、労災として認定される
- 1.2.新型コロナ感染における労災の対象者・基準
- 1.2.1.⑴医療従事者
- 1.2.2.⑵医療従事者以外
- 1.2.3.⑶その他の労働者
- 1.2.4.⑷海外に出張している労働者
- 1.3.新型コロナの労災、どのくらいの件数が認定されている?
- 2.厚労省の事例から見る、新型コロナの労災認定
- 2.1.厚労省発の新型コロナ感染「労災認定事例」を参考にする
- 2.1.1.労災認定の事例①:医師Aさんの場合
- 2.1.2.労災認定の事例②:看護師Bさんの場合
- 2.1.3.労災認定の事例③:飲食店で働くCさんの場合
- 2.1.4.労災認定の事例④:タクシー運転手Dさんの場合
新型コロナ感染の労災申請と認定、対象者・基準は?
「仕事が原因で新型コロナに感染した」と判断されたら、労災として認定される
結論からいうと、労働基準監督署から「仕事と新型コロナウイルスの感染に関連性がある」と判断された場合には、労災として認定されます。
新型コロナに感染した場合、労災となる基準や対象については次の⑴~⑷ようになっていますので、確認しておきましょう。
なお、それぞれ労働基準監督署が労災として認定した場合にのみ、支給が決定されます。
新型コロナ感染における労災の対象者・基準
⑴医療従事者
医師、看護師、介護従事者など、患者の診療や看護などの業務を行なっている人は、仕事以外で新型コロナに感染したことが明らかでなければ、原則的に労災認定の対象となります。
⑵医療従事者以外
新型コロナへ感染した理由が業務に内在していることが明らかな場合には、労災認定の対象となる可能性があります。
例:新型コロナに感染している同僚と同じ営業車に乗って仕事をしていた等。
⑶その他の労働者
医療従事者ではないが、新型コロナへの感染リスクが高い仕事をしている場合、感染が業務に起因するもと判断された場合には、労災認定の対象となります。
例:顧客と近接で接触する機会が多い労働環境や、複数人の感染が確認されているような職場で働いていた場合。
⑷海外に出張している労働者
出張先の国において、多数の新型コロナ感染が発生しており、明らかに感染リスクが高いと判断された場合。
出典:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて」
新型コロナの労災、どのくらいの件数が認定されている?
2022年1月31日、厚生労働省からの発表があった時点での新型コロナの労災申請件数は、24,103件。
そのうち、労災としての認定(支給決定)された件数は21,495件です。
つまり、80%以上の新型コロナ感染に関する労災申請が認定されていることになります。
ちなみに、21,495件の内訳で一番多いのが、やはり⑴の医療従事者の労災認定で、15,395件の請求に対し、14,666 件の支給が決定しています。
また、⑵や⑶など、医療従事者以外で労災請求の多い職種は「社会保険・社会福祉・介護事業」で5,142件。そのうち4,836件が新型コロナ感染を労災として認定されています。
※労災申請・支給件数の情報はすべて2022年1月31日現在のものです。
出典:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症に関する労災請求件数等」
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厚労省の事例から見る、新型コロナの労災認定
厚労省発の新型コロナ感染「労災認定事例」を参考にする
厚生労働省では、新型コロナに感染した場合の労災認定の事例を公表しています。
公表されている事例から「こんなケースが労災認定される」ということをチェックしておきましょう。
労災認定の事例①:医師Aさんの場合
医師であるAさんは、発熱している患者の診察をしましたが、その後日に患者が新型コロナに感染していることが判明。
Aさんが濃厚接触者としてPCR検査を受けたところ、新型コロナウイルス感染の陽性判定となりました。
その後、労働基準監督署が行った調査により、Aさんは仕事以外で感染したことが明らかではなかったことから、労災として認定されました。
労災認定の事例②:看護師Bさんの場合
看護師であるBさんは、勤め先の病院にて多数の患者の問診や採決といった看護業務を行なっていました。
ある時、頭痛や発熱等の症状があらわれたためPCR検査を受けたところ、新型コロナウイルス感染の陽性判定が出ました。
その後、労働基準監督署が行った調査により、Bさんは仕事以外で感染したことが明らかではなかったことから、労災として認定されました。
労災認定の事例③:飲食店で働くCさんの場合
新型コロナウイルスの感染者が、Cさんの勤務先である飲食店に来ていたことが確認されました。
その後、CさんがPCR検査を受けた結果、新型コロナウイルス感染の陽性判定。
また、Cさんの勤める飲食店において、他の従業員にも複数の感染が確認されたことで、労働基準監督署によりクラスターの発生として認められました。
このように、感染経路が特定され、その感染源が仕事にあることが明らかであったため、労災として認定されました。
労災認定の事例④:タクシー運転手Dさんの場合
タクシーのドライバーとして働くDさんは、発熱の症状があったためPCR検査を受けたところ、新型コロナウイルス感染の陽性判定が出ました。
労働基準監督署による調査では、感染の経路は特定されませんでした。
しかし、発症前の14日間の業務では、海外からの乗客等も含む数十人の人間との接触があり、業務において感染リスクが高いという判断がされました。
そして、発症前14日間の私生活においては、日用品の買い出し程度しか外出も無かったため、仕事によって感染した蓋然性が高いとされ、労災認定されています。
事例の出典:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に係る労災認定事例」より抜粋し一部改変
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このように、労働基準監督署から「仕事と新型コロナ感染に関連性がある」と判断された場合には、労災認定されるのです。
しかし、適切な感染症対策を行わない状態で、職場クラスターが発生した場合には、企業が安全配慮義務を追求される可能性もあります。
よって、産業医をはじめとした産業保健スタッフと連携し、十分な感染症対策を行うなどの注意が必要です。
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