【まとめ】なぜバレる?「労災かくし」罰金・リスク・防止策について解説

最終更新日:2021年3月11日

「労災かくし」は犯罪です。

仕事に関連したケガ・病気が発生した場合には、必ず労働基準監督署へ報告する必要があります。

労災かくしのリスクや防止策について解説します。



目次[非表示]

  1. どのようなケースが「労災」になるのかを知る
    1. そもそも「労災」とは何か
    2. 仕事が原因で「病気」になったら労災?
  2. なぜ「労災かくし」はバレる?~罰金と企業のリスク
    1. 「労災かくし」とはなにか
    2. なぜ「労災かくし」はバレるのか
    3. 労災かくしは「犯罪」でありリスク。企業には50万円以下の罰金も
  3. 「労災かくし」防止策には産業医等の専門スタッフの活用も有効
    1. 「労災かくし」を防止する職場づくり
    2. 産業医等と連携し「どのようにして労災を防ぐべきか」を考える


どのようなケースが「労災」になるのかを知る

そもそも「労災」とは何か

「労災」という言葉を聞いて「仕事中のケガ」と想像する方は多いでしょう。

しかし、労災には仕事中の“ケガ”だけでなく、仕事を原因とした“病気”も含まれています。

そして、たとえ仕事中でなくとも、通勤・退勤中のケガが労災(通勤災害)として扱われることもあります。

労災については「労災保険法(労働者災害補償保険法)」によって定められており、認定基準では“業務と災害(ケガ・病気)の関連性”が判断の基準となっています。


仕事が原因で「病気」になったら労災?

例えば、次のような2つのケース。仕事中に起こった災害ではありませんが“仕事と関連性がある労災”といえそうです。

ケース1:長年にわたりパチンコ店で勤務しているAさんは騒音性の難聴になってしいまった

ケース2:交通整理をしているBさんは、紫外線に長時間さらされていたことにより、眼の疾患になってしまった

このように、その場ですぐに症状が出なくとも、後から身体に影響がでることもあるでしょう。

こうした場合も労災として認定される可能性が高いと考えられます。

●ポイント:「過労死」も労災になりうる

長時間の残業や、休日を返上して働くことで、身体に負荷がかかり、過労死が発生してしまうこともあります。

この過労死についても「業務起因性」といって、仕事に関係があると認められる場合には、労災として扱われることもあります。



なぜ「労災かくし」はバレる?~罰金と企業のリスク

「労災かくし」とはなにか

仕事に関連したケガ・病気が発生した場合には、遅滞なく労働基準監督署へ「労働者死傷病報告」をする必要があります。

もし、死傷病報告書の提出を怠ったり、虚偽の報告をすれば、それは「労災かくし」となり、犯罪行為になります。

また、仕事中(あるいは仕事に関連した)のケガ・病気に関しては、健康保険を使うことはできません。保険の「二重取り」を防ぐためにも、必ず労災保険を利用します。

ですので、例えば使用者が「仕事中のケガだけど、自分のミスなんだから自腹で病院に行ってね」と、労働者を促す行為はNGです。

労働者としても「会社に迷惑をかけたくない……」と考える方もいることが想定されますが、これらは「労災かくし」につながる危険性がありますので気をつけてください。

●ポイント:企業が「労災かくし」をしてしまう理由

企業が労災を隠してしまう理由は様々なものが考えられます。例えば、

・企業のイメージダウンを恐れて労災の存在を隠す

・提携企業などからの信用を落としたくないために、労災を隠す

・公共事業を請け負っており、今後の受注への影響を恐れて労災を隠す  など


なぜ「労災かくし」はバレるのか

結論からいえば、労災かくしはバレます。

例えば、実際は労災であるにもかかわらず従業員が健康保険を使って入院・治療を行っている場合、休業期間中の補償はありません(休業が4日以上になる場合は休業補償給付があります)。

また、こうした生活に不安を感じた労働者が労働基準監督署などへ相談をしに行くなどした場合に、労災が発覚します。

その他にも、治療中に労働者と医師とのやりとりの中で、業務中の被災だということがわかれば、労災かくしはバレてしまうことになります。

労災が発生した場合は、速やかに労働基準監督署へ「労働者死傷病報告」の提出をしてください。

「労働者死傷病報告」の提出を怠った状態で労災保険の手続きを行うことでも「労災かくし」がバレるケースも発生しています。


労災かくしは「犯罪」でありリスク。企業には50万円以下の罰金も

繰り返しになりますが、労災かくしは犯罪行為です。

労災の報告をしなかった場合、あるいは虚偽の報告をして出頭しなかった場合、事業者には50万円以下の罰金が科せられます(労働安全衛生法第120条、第122条)

また、労災かくしを行った事業場に対しては、以下①~⑤のような、司法処分を含めた厳正な措置が講じられます。

①事業場に対して司法処分を含め厳正に対処する

②事業者に出頭を求め、局長または所長から警告を発するとともに、同種事案の再発防止対策を講じさせる

③全国的または複数の地域で事業を展開している企業において労災かくしが行われた場合は、必要に応じて、当該企業の本社等に対して、再発防止のための必要な措置を講ずる

④建設事業無災害表彰を受けた事業場には、無災害表彰状を返還させる

⑤労災保険のメリット制の適用を受けている事業場では、メリット収支率の再計算を行い、必要に応じて、還付金の改修を行う等適正な保険料を徴収する

出典:厚生労働省「労災かくしは犯罪です」リーフレットより引用



「労災かくし」防止策には産業医等の専門スタッフの活用も有効

「労災かくし」を防止する職場づくり

労災かくしを防ぐためには、使用者だけでなく労働者の協力も必要です。

ですので、まずは労災が発生した場合の社内の連絡体制などを整備し、管理職や従業員にしっかりと周知しておきます。

また「労災かくしが犯罪になる」ことや「仕事に関連したケガ・病気には健康保険が使えない」ということを知らない労働者がいることが想定されます。

労災の発生を防ぐ職場づくりを目指し、これらの内容を啓発することも大切です。


産業医等と連携し「どのようにして労災を防ぐべきか」を考える

「うちはオフィスワークだから、労災は関係ないでしょ」と思う方もいるかもしれませんが、製造業や建設業の現場でなくとも労災が起こる可能性はあります。

例えば、通勤中の災害、過重労働による精神障害・脳血管疾患など、労災はどんな職場にも発生し得るのです。

労災かくしを防ぐためには、原因となる労災の発生ゼロを目指すことも効果があります。

ケガを防ぐために各種の作業手順をチェックリストで管理することや、産業医などの専門スタッフから労災防止の情報を提供してもらうこと、衛生委員会や衛生教育をしっかり行うことなど、労働者のみならず、使用者も含めリテラシーを向上させることが重要になります。​​​​​​​

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サンポナビ編集部

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