〈産業医コラム〉コロナ禍とお酒とふるさと納税

労働衛生コンサルタント 日本医師会認定産業医
原田 真吾


1.はじめに

皆様は、コロナ禍によるステイホームやリモートワークにより、お酒の量は増えているでしょうか?私は、コロナ禍によるストレスとふるさと納税の返礼品にも助けられ、アルコール量がだいぶ増えてしまいました(反省)。

私と同じように、世界ではアルコール摂取量が増加しているという海外論文が散見されます。

83カ国を対象とした調査では、36%の人々がアルコールの摂取量が増えたことが分かっています1)。
またイギリスでは、コロナに伴うロックダウン(都市封鎖)が各地で実施される中、2020年のアルコール関連死は2019年より16.4%増加しています。
その原因は明らかになっていませんが、COVID-19のパンデミックによるストレスが関係している可能性があるという報告もあります。世界的に見ても、アルコール量の増加とアルコールに伴う病気も増加しているようです。


2.酒は百薬の長!?

1996年発表された海外論文3)は、14の研究をまとめて解析した結果、「Jカーブ効果」(図1参照)といって、飲酒量と総死亡リスクの相関関係を表したグラフがJの字を描き、飲まない人は意外にもリスクが大きく、適度に飲む人は最も小さくなる。適度を超えて飲むほどリスクはまた上昇する。これは、お酒好きの人たちが「酒は百薬の長」の根拠としてよく引き合いに出されるものです。このような論文などから「健康日本21」における「節度ある適度な飲酒量」すなわち「純アルコールで1日平均20g程度」は決められました(20gは、ビール:中瓶1本、日本酒:1合、ワイン:グラス2~3杯)。

<図1>



しかしながら、お酒好きの方には衝撃的な海外論文が2018年に2つ発表4,5)されました。

1つは「死亡リスクを高めない飲酒量は、アルコール換算で週100gが上限」。

こちらの論文では、アルコール摂取量が週100g以下の人では死亡リスクは飲酒量にかかわらず一定だったのに、週100gを超えてから、150gくらいまでは緩やかに上昇し、それ以降は急上昇しているのです。


もう1つの論文は、「健康への悪影響を最小にするならアルコール量は0」というものです(図2参照)。

1ドリンク(アルコール換算で10g、ビールなら200ml)未満でも緩やかではあるもののアルコールによる死亡リスクは上昇し、それより多くなると明らかに死亡リスクは上昇傾向となる。

6ドリンク(アルコール換算で60g、日本酒で約3合)で死亡リスクが1.5倍になる計算です。

これより、今まで「健康日本21」が掲げていた「純アルコールで1日平均20g程度」は、今後の研究結果によって見直しも必要になってくるかと思います。

<図2>



3.最後に

お酒の量が増える原因がコロナ禍によるストレスならば、コロナ禍解消されれば、自然とお酒の量も減る!?
そう願いたいです。
「酒は百薬の長」と言えなくなってきたこの時代に、私達がまずできることは、今よりもアルコール量を減らすことです。そのため私の今年のふるさと納税の返礼品は、お酒ではなく、宮崎県都○市のお肉にすることから始めようと思います。

引用参考文献

1) BMJ Open 2020 Nov 26;10(11):e044276.

2) Holman CD,et al. Med J Aust. 1996;164:141-145.

3) Lancet. 2018;391(10129):1513-1523.

4) Lancet. 2018;392:1015-35.

文章出典:株式会社イーウェル「健康コラム」より寄稿

原田真吾

原田真吾

(はらだ・しんご)昭和大学医学部卒業。関東労災病院で研修後、横浜市立大学医学部消化器・腫瘍外科学入局。現在はクローバーホスピタル病院診療部長として地域医療に貢献しながら、複数企業で産業医活動を行っている。

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