嘱託産業医にどうやって業務を依頼する?~前編~ 教えて!山越先生 よろず相談室 第4回


産業医の山越志保先生が、人事労務担当者の疑問や悩みに答える「教えて!山越先生 よろず相談室」。

第4回となる今回は、「嘱託産業医への業務依頼」についてのお悩みにお答えします!




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 人事労務担当者

Q . これまで専属産業医がいるような大企業にいた経験しかなく、月1回程度の訪問頻度の嘱託産業医とどのように関わればいいのか、どの程度まで業務をお願いしていいのか、といった対応の仕方が分かりません。教えてください。


  山越先生

A . わたくし自身も専属産業医、嘱託産業医のどちらも経験させて頂いたことがあります。その時に、同じ産業医という名前にも関わらず、企業の中で、こんなにも立ち位置が違うのかと戸惑ったことを覚えています。


専属産業医は主に、大企業の一社員となり、健康管理室などの部門の構成員として、保健師さんとともに、チーム的に業務を進めていきます。一社員なわけですから、当然、社内の人ですよね。

一方で、嘱託産業医は、50人~数百人規模の会社に、月1回~数回程度、訪問します。保健師さんがいることはほとんどなく、どちらかと言うと社外的な立場で、企業に対してアドバイスをしていきます。


そして、実務における最大の違いは、産業医の稼働時間です。専属産業医は社内の人のため、ほぼ企業が営業中のときは社内におります。このため、困ったら相談すればいいのですが、嘱託産業医は原則社外の人であり、その訪問時間が月1時間~2時間というところさえあります。専属産業医に比べて、稼働時間が非常に短いです。ただし、産業医のやるべき職務自体が大きく変わることはありません。

このため、嘱託産業医とともに仕事をする場合には、ある程度、人事担当者がロードマップを描き、産業医のスケジュール管理をしないと、正直、うまく産業医を活用しきれないでしょう。


山越 志保(やまこし しほ)/日本医師会認定産業医/労働衛生コンサルトタント(保健衛生)


都内の病院で内科医として勤務しながら、日本医師会認定産業医・労働衛生コンサルタントを取得し、産業医としての業務を開始。これまで多岐にわたる企業で、産業医業務を担ってきた。現在は、株式会社さくら事務所を設立し、臨床と産業医活動を行っている。

では、今回は、嘱託産業医に業務をお願いする場面を考えていきたいと思います。まずは当たり前といえば当たり前ですが、『法令遵守』を基準に考えると、やるべきこと、優先順位が見えてくるのではないかと思います。

わたくしが嘱託産業医として、企業担当者に産業保健のお話をするときに、いつも、お願いしているのは、5つの柱を立てて、各柱に沿って、バランスよく、優先順位をつけて、業務を進めていくことです。

裏を返せば、人事担当者もまずはこの5つの柱に沿って、産業医に仕事をお願いしていくのがよいかと思います。

ただし、ここで重要なことは、先ほどもお話しましたように、嘱託産業医はどうしても、訪問時間が限られているため、人事担当者が主体となって、仕事を振り分ける必要があります



【産業保健実務における5つの柱】

1.衛生委員会の開催

2.職場巡視

3.定期健康診断の事後措置

4.過重労働対策

5.メンタルヘルス対策


1.衛生委員会の開催

  山越先生

50名以上の従業員がいる企業では、衛生委員会を設置することが義務付けられております。(業種によっては安全衛生委員会という形になります)

多くの企業で、産業医が訪問した際に、毎月1回、衛生委員会を開催しています。開催時間は30分程度です。産業医の参加は義務ではないものの、是非、参加してもらうことをオススメします。

そして、衛生講話をしてもらうのです。社外的な立場である産業医が参加することで、通常の会社の会議とは違って、ピリッとした雰囲気が出てきて場が引き締まりますし、講話を通じて、産業保健的な観点から企業や社員にアドバイスをもらうこともできます

最初は形式的なものでも、回を重ねるごとに、委員会として役割を成すものになってくることが多いです。半年くらいで形になってくるでしょう。そして、3年ほど経過しますと、社内での衛生委員会としての役割が上がり、よりその活動が活発になることが期待されます。


2.職場巡視

  山越先生

第一次産業が主な産業であった時代、また工場などがある職場では今でも、この職場巡視は大切にされております。と言いますのも、作業環境が適切か、作業工程に有害・危険業務がないか、有害・危険業務には保護具が適切に装着されているか等々、産業医が実際に現場を見て回ることによって、有害・危険作業やその職場環境に対して指導してもらうのです。


ただし、産業構造が変わり、現代では第三次産業がメインとなってきております。特に主に首都圏で、オフィスワーク中心になると、「職場巡視したって、有害・危険業務なんてないし、何も産業医に見てもらうこともないじゃんっ」と言う企業担当者もたまに、見受けられます。

ところが、 実際に巡視してみると 、オフィスでも意外とツッコミどころ満載ということがよくあります。そのツッコミどころを産業医に指摘させるのです。よくあるツッコミどころは、整理整頓ができていないとか、消火器の前に物が置かれている…などでしょうか。

「こんなこと…」と思いますが、案外、ちゃんとできていないのです。

産業医に職場巡視して、これらの点を指摘してもらうのです。もし、産業医の先生が不慣れである場合には、人事担当者のほうで、職場巡視チェックリストなるものを作成してあげてもいいかもしれません。それを持って、職場巡視に出かけましょう。


また、個人的には、職場巡視の裏の役割もあると思っています。産業医が巡視に来るというだけで、ちょっとピリッとした(襟を正さないと…的な)雰囲気がオフィスに流れます。そして、「あの人、だれ? ああ、産業医、あの人が産業医なんだね。」というように、産業医の存在をアピールする絶好のチャンスです。

この職場巡視を繰り返すことで、毎回、産業医が訪問しているんだという事実、産業医の存在、その実際の素顔などを社員さんに周知徹底されることができるのです。


3.定期健診の事後措置

  山越先生

当然ですが、定期健診の結果をみて、産業医に就業判定をしてもらいましょう。その際には、日付、産業医の名前、就業判定(通常勤務など…)を必ず残してもらいます。

そもそも、この定期健診の複数ある役割の中には、単に健康状態を知る、病気の早期発見・早期治療というだけでなく、『現在の業務に耐えうる健康状態なのか』を知るというものがあります。

このため、産業医に就業判定を行ってもらい、会社としてフォローするという流れが必要です。もっと言えば、フォローするまでの一連の流れが安全配慮義務を遂行するということになります。このため、産業医に定期健診の結果を診てもらい、著しくデータが悪い社員さんなどは、必要によっては産業医面談してもらってもよいのではないでしょうか。



今回は、産業保健実務における前半の3番目の柱までお話しさせて頂きました。10月には後半の4番と5番の柱をお話したいと思います。それまで1か月間ございますが、是非、まず、3つの柱から計画を立て、産業医に業務を振って頂けたらと思います。


つづけて読みたい

▼ 教えて!山越先生 よろず相談室のバックナンバーはこちら

第1回 「長時間労働の社員をどう説得すればいい?」

第2回「メンタル不調社員に産業医面談を受けてもらうには?」

第3回「二次健診の受診率を上げるには?」

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