放っておくとどうなるの?数字で見る「健康診断」



秋ごろになると、健康診断を行う企業も多いですよね。

「健康診断で再検査を受けてって言われたけど、病院に行かなくても大丈夫だろう」

と思っているそこのあなた!本当に病院に行かなくても大丈夫なのでしょうか?

今回は、働く人たちの「健康診断」について数字で見ていきましょう。


労働者の約半数は「所見あり」



健康診断で「所見あり」となる人は実際にどれくらいいるのでしょうか。

「所見あり」: 定期健康診断などの結果、何らかの異常の所見が認められたことをいう。通常、医師から要経過観察、要治療、要再検査などの指示(判定)がある。(厚生労働省「主な用語の定義」より)


常時50人以上の労働者を使用する事業所を対象とした2017年の厚生労働省「定期健康診断実施結果(年次別)」によると、所見のあった人の割合は54.1%で、半数を超えます。


有所見率が高い項目、1位は「血中脂質」。TOP5は…?



健康診断では、採血・腹囲・レントゲンなどたくさんの検査を行いますが、どの項目で「所見あり」となる人が多いのでしょうか。

2017年の厚生労働省「定期健康診断実施結果(年次別)」によると、有所見者の中で最も多い項目は血中脂質で32.0%、続いて血圧が15.7%、肝機能検査が15.2%、血糖が11.4%、心電図が9.9%となっています。


血中脂質は血中のコレステロールと中性脂肪の濃度です。中性脂肪・悪玉コレステロールが多い場合、または善玉コレステロールが少ない場合、「脂質異常症」と診断されます。

脂質異常症・高血圧・高血糖のような生活習慣に由来する病気を総称して「生活習慣病」と呼びます。


また、血中脂質・血圧・血糖の異常は内臓脂肪の蓄積が原因となる場合もあります

内臓脂肪が蓄積すると、血中脂質・血圧・血糖が上昇します。そして、血中脂質・血圧・血糖の異常や生活習慣病が複数重なると、それぞれが軽症だとしてもより動脈硬化が進みやすい状態になってしまいます。

そのため、腹囲が男性で85cm、女性で90cm以上(内臓脂肪型肥満)かつ、血中脂質・血圧・血糖の3つのうち2項目に異常がある場合、「メタボリックシンドローム」と診断されます。(厚生労働省「メタボリックシンドロームの基礎知識」)


「要再検査又は要治療の指摘があった」人のうち、再検査・治療を受けた人は64.4



では、実際に再検査や治療を受けている人はどのくらいいるのでしょう。

2012年の「労働者健康状況調査」によると、所見ありと通知された人の中で「要再検査又は要治療の指摘があった人」のうち、再検査・治療を受けた人は64.4%となっています。そして、残りの35.6%は、再検査や治療を受けていません


それでは、再検査や治療を受けずに放っておくとどのようなリスクがあるのでしょうか。

血中脂質・血圧・血糖の数値が高いまま放っておくと、血管内部に脂質が蓄積し、血管の壁が厚く血管が細い状態である「動脈硬化」の原因となります。

動脈硬化になると血管が詰まりやすくなり、最悪の場合、脳梗塞や心筋梗塞・狭心症などの病気を引き起こします。


また、肝機能検査の数値が高いまま放置すると、肝硬変肝がんなどのリスクがあります。


サンポナビの産業医インタビューやコラムでも、産業医が働く人の健康意識について警鐘を鳴らしています。

▼健康診断についての産業医の意見はこちら

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まとめ

高血圧は自覚症状がないまま進行し、脳梗塞や心筋梗塞など、命に係わる病気を引き起こすため「サイレントキラー」と呼ばれます。また、肝臓も「物言わぬ臓器」と言われており、自覚症状が現れにくいことが特徴です。

そのため自覚症状が現れる頃には、完治が難しい状態になっていたり、後遺症が残ってしまったりすることも少なくありません

健康診断・再検査を受診することで、このように自覚症状がないまま進行する病気の予防・早期発見ができます


また、「異常なし」だからといって安心、という訳ではありません

異常なしの項目についても、数値の変化を意識して睡眠・運動・食生活など普段の生活習慣を見直すといいかもしれません。

健診機関によっては、診断結果表に今年の結果だけでなく過去の結果を載せている場合もあります。


人生100年時代と言われる昨今、健康で長く働き続けるためにも体のSOSは見逃さないようにしましょう。

健康診断を機に、再検査の受診や生活習慣の見直しを進めてみてはいかがでしょうか。


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参考)

厚生労働省(2017)『定期健康診断結果報告』「定期健康診断実施結果(年次別)」
厚生労働省(2012)『労働者健康状況調査』 「再検査又は治療の受診別労働者割合 第 33 表」
​​​​​​​厚生労働省 『生活習慣病予防のための健康情報サイトe-ヘルスネット』「メタボリックシンドロームの基礎知識」

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