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【職場に迷惑?】更年期障害による離職を防ぐために企業が取り組むべきこと

50歳前後で症状が出始める更年期障害は、不安定な精神状態となりやすく、攻撃的な言動や態度を取ってしまい人間関係の悪化を招くケースも少なくありません。周囲に迷惑をかけることを気にして離職に至る「更年期離職」が増えています。

職場での更年期障害の従業員へのサポートが必要と感じても、「具体的にどんな配慮を行えばよいかわからない」とお困りの企業担当者の方が多いのではないでしょうか。本記事では、更年期障害の症状や企業に求められる取組について解説します。

更年期障害とは?

更年期障害とは

更年期障害とは、女性ホルモン(エストロゲン)の変動と減少に伴って生じるさまざまな症状により、日常生活に支障をきたす状態を指します。閉経前の5年間と閉経後の5年間をあわせた10年間を更年期と呼び、45歳~55歳頃に症状が現れることが多いです。

具体的には、どのような症状や原因、治療方法があるのでしょうか。


参考:更年期障害│公益社団法人日本産科婦人科学会

症状

更年期障害の症状は多岐にわたりますが、以下の3つに大別されます。

  • 血管拡張・放熱症状
  • 身体症状

  • 精神症状

1.血管拡張・放熱症状

身体のほてりやのぼせ、発汗などの症状で、血管拡張に伴う体温上昇や放熱により生じるものです。ホルモンバランスの乱れから自律神経が適切に機能せず、血管運動や発汗が調節できずに生じる症状とされています。

急に顔が熱くなったり、汗が止まらなくなってしまったりする「ホットフラッシュ」が代表的な症状です。生活においては、「暑くて寝つきが悪くなる」「大量の汗が気になり人前に出られない」などの支障をきたします。

2.身体症状

更年期障害では、以下のような多彩な身体症状がみられます。身体がだるくて仕事に行きづらかったり、仕事の能率が下がったりすることがあるでしょう。

  • めまい
  • 動悸

  • 胸の締め付け

  • 頭痛

  • 肩こり

  • 腰や背中、関節の痛み

  • しびれ

  • 疲れやすさ

3.精神症状

​​​​​イライラや落ち込みなどの精神的な不安定さがみられるのも、更年期障害の特徴です。女性ホルモンの減少により、感情をコントロールする神経伝達物質である「セロトニン」の合成が少なくなるため生じるとされています。

また、職場や育児、介護の負担など、さまざまなストレスが影響し、精神症状を悪化させる場合もあります。

参考:「職場でキレる女性」の原因は性格ではなく、更年期症状の場合も│働く女性のウェルネス向上委員会

原因

更年期障害は、女性ホルモン量の変動に伴い、自律神経系を調整する脳の下垂体が過剰に反応しやすくなることが原因です。ホルモン量が減少しているにもかかわらず、脳がホルモンを放出するように指示を出すために生じます。
その結果、自律神経のバランスが乱れてしまい、身体面や精神面に多彩な症状を引き起こすのです。

また、生理的な変化だけでなく、性格などの心理的な要因、中年期に生じやすい家族関係の問題、仕事の影響などの社会的要因も影響します。具体的には、以下のような要因が関連するでしょう。

  • 育児、介護の負担
  • 加齢に伴う役割変化や不安の増大

  • 仕事のストレス

  • 周囲の無理解

支援においては、周囲の関わり方も症状に影響することを理解し、業務に直接関連しないストレス因子も把握することが大切です。

治療

更年期障害の症状には、少量のホルモンを補うホルモン補充療法(HRT)が有効で、特に血管拡張や放熱症状に効果的とされています。また、心臓血管系の疾患や骨粗鬆症など、老後に生じる疾患の予防効果もあります。

薬は、飲み薬や貼り薬、塗り薬など種類があり、生活スタイルに合わせて選択できる点が特徴です。その他にも、精神症状が強い場合は向精神薬や漢方による治療も行われます。

男性の更年期障害にも注意

更年期障害は女性だけの問題でなく、男性も注意が必要です。40代以降で男性ホルモンが減少すると、更年期症状が生じる可能性があります。

男性の更年期障害では、男性ホルモンであるテストステロンの減少により、以下のような症状が目立ちます。

  • 関節症や筋肉痛
  • 疲れやすさ

  • 発汗、ほてり

  • 肥満

  • 頻尿

  • イライラ、不安、抑うつ状態

  • 認知機能低下

  • 不眠

その他にも、性機能低下や糖尿病、骨粗鬆症、心血管疾患などのリスクを高め、健康保持に悪影響を及ぼします。

参考:男性更年期障害(加齢性腺機能低下症、LOH症候群)│一般社団法人日本内分泌学会

更年期障害が及ぼす職場への影響

職場への影響

出典:更年期と仕事に関する調査報告 | 公益社団法人女性の健康とメノポーズ協会をもとに作成

更年期障害は身体面や精神面に多彩な症状を引き起こし、生活上の支障となりますが、仕事においてはどのような影響を及ぼすのでしょうか。更年期症状による仕事への影響に関する調査では、上記のとおり、多岐にわたる影響がみられることがわかっています。

特に、以下のように「業務への支障」「周囲との関係悪化」が主な支障として生じているといえるでしょう。

  • 業務への支障:集中力や判断力、記憶力、意欲の低下による業務効率の低下
  • 周囲との関係悪化:イライラなど精神の不安定さから不用意な言動を取ってしまう

そして、業務への支障や周囲との関係悪化が生じた結果、離職や休職につながっています。具体的な職場への影響について解説します。

集中力や判断力、意欲低下による業務への支障

多彩な症状から集中力や判断力、仕事への意欲が低下してしまい、求められる役割や業務をこなせない状態に陥ることがあります。例えば、会議中の話がスムーズに理解できなかったり、予定を忘れてしまったりするなどの支障です。

更年期障害がみられる40〜50代は、管理職など責任ある立場であることが多いといえます。部下のマネジメントやケアなどさまざまな業務を進める必要があるため、仕事の能率低下は大きな支障となりやすいでしょう。

参考:NHK実施「更年期と仕事に関する調査2021」 結果概要│独立行政法人労働政策研究・研修機構

情緒不安定による周囲との関係悪化

イライラなどの精神的な不安定さから、周囲に当たってしまったり、攻撃的な言動が目立ったりしてしまいます。また、本心でないような言動もみられ、周囲からの誤解を招きやすいでしょう。

精神的な不安定さから周囲との関係が悪化した結果、「迷惑をかけてしまった」と申し訳なく思い落ち込んでしまうことがあります。

パフォーマンス低下と人間関係悪化により離職が増加

業務効率の低下や人間関係の悪化が生じた結果、離職や休職に至るケースが多い傾向にあります。

NHKが行った「更年期と仕事に関する調査2021」によると、更年期障害が原因で離職した人の割合は女性9.4%、男性7.4%でした。また、離職に至らなくても、降格や昇進の辞退、勤務形態・勤務時間の変更などの変化があった割合は女性15.3%、男性20.5%とされています。

降格や昇進の辞退などは、症状によって仕事を続ける自信がなくなり、職場にいづらくなることが主な理由です。

  • 仕事を続ける自信がなくなったから
  • 症状が重かったから・働ける体調ではなかったから

  • 職場や会社に迷惑がかかると思ったから

  • 職場にいづらくなったから

多彩な症状から業務に支障をきたしたり、人間関係が悪化したりすることで、職場にいづらくなり離職につながってしまうのです。

参考:NHK実施「更年期と仕事に関する調査2021」 結果概要│独立行政法人労働政策研究・研修機構

更年期障害へのサポートに関する課題

更年期障害へのサポートに関する課題

更年期障害は、症状の多彩さから業務や人間関係に支障をきたし、離職につながる従業員も多い傾向があります。

しかし、更年期障害に関するサポートは十分とはいえません。特に、支援を求める従業員と関わり方がわからない周囲とのミスマッチにより、支援体制が適切に機能していないケースが多くあります。

具体的には、更年期障害へのサポートに関してどのような課題があるのでしょうか。

従業員本人が相談しにくい環境

更年期障害に苦しむ従業員本人が、上司や同僚などの周囲に相談しにくく、適切なサポートにつながりにくい現状があります。

更年期と仕事に関する調査では、更年期障害が原因で業務に支障をきたしたとき、「誰にも相談しなかった」従業員が60.8%と高い割合でした。

また、更年期障害に対するサポートを特に受けていない女性従業員は69.4%と、十分な支援体制が確立されているとはいえません。周囲に相談しづらく一人で抱え込みやすいでしょう。

さらに、働く女性に関する意識調査では、男性が管理職だと相談しづらいと感じる従業員が全体の65%でした。相談しづらい状況の背景には、身近に相談できる存在がいないことが影響しているといえるでしょう。

職場に望むサポートとして最も多かったのが「症状や対処法について理解できる研修」でした。更年期障害の症状や業務上の支障に対する理解不足に悩んでいると考えられます。

以上のことから、更年期障害の症状があっても職場で理解を得にくく、誰に相談してよいかもわからないケースが多いでしょう。そのため、業務の支障があっても相談しづらく、サポートにつながりにくいのです。

参考:更年期と仕事に関する調査報告 | 公益社団法人女性の健康とメノポーズ協会
参考:NHK実施「更年期と仕事に関する調査2021」 結果概要│独立行政法人労働政策研究・研修機構
参考:男性管理職および経営層必見! <働く女性の健康に関する意識調査> 女性活躍推進と働き方改革のカギは『わかって欲しい女性の気持ち』 │PR TIMES

周囲がどう関わればよいかわからない

企業側としては、更年期障害に苦しむ従業員にどのように配慮すればよいかわからず困っている状態にあります。

企業が女性の健康課題へのサポートを行う上での困りごとに関する調査では、以下の課題があることがわかりました。

  • 何をすれば良いかわからない(27.5%)
  • 当事者である従業員から症状を聞く手段がない(18.8%)

  • 当事者である従業員が話したがらない(18.4%)

  • セクシュアルハラスメントにならないか不安がある(17.9%)

  • 他の従業員への業務負担が生じる(20.8%)

管理職や同僚などの周囲からすると、具体的な対応方法や扱い方がわからず、踏み込みにくさを感じているといえます。また、人員不足によってサポートできない事情もあるようです。

一方で、従業員本人は周囲からのサポートとして、「上司や周囲の従業員の理解(68.9%)」を最も求めています。理解してほしい従業員のニーズと周囲の対応とのミスマッチにより、サポート体制が適切に機能していない状況があるのです。

参考:生理やPMS、更年期……職場における女性の健康課題を徹底調査(3)│働く女性のウェルネス向上委員会

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更年期障害による離職を防ぐための企業の取組

更年期障害による離職を防ぐための企業の取組

更年期障害に関する支障は、従業員本人が相談しにくく、周囲もどう関わればよいかわからないため、サポートが十分に機能していない現状があります。業務上の支障を減らし、症状があっても働ける環境を整えることが、離職を防ぐためには不可欠です。

具体的には、以下の5つの取組を行うことが推奨されます。

  • 相談体制の整備
  • 周囲のリテラシー向上

  • 従業員のセルフケア推進

  • 早期受診の勧奨

  • 働く環境の柔軟化

1.相談体制の整備

更年期障害による業務上の支障や悩みについて、従業員が相談しやすい環境を整える施策が求められます。相談できる相手や場所を確保することで、安心感や意欲を高め、離職を防げるでしょう。

更年期障害に苦しむ従業員の相談体制に対しては、女性の28.0%が「直属の上司に相談しやすい環境」を求めています。管理職が対応できるよう、更年期障害の症状に対する理解を深める教育を行うことが重要でしょう。

また、更年期障害について職場に知られたくないという人も一定数存在するため、外部の専門家による相談窓口の設置も有効です。

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参考:NHK実施「更年期と仕事に関する調査2021」 結果概要│独立行政法人労働政策研究・研修機構

2.周囲のリテラシー向上

更年期障害に関するサポートのニーズとして、「症状や対処法を理解できる研修を開いてほしい」が男女ともに高い傾向にあります(女性38.1%、男性39.9%)。更年期障害による働きづらさの根底には、周囲の理解不足があることがうかがえます。

周囲のリテラシーを向上させるため、研修を通して更年期障害の症状について理解を促せるよう、周知を図っていく施策が必要です。

参考:NHK実施「更年期と仕事に関する調査2021」 結果概要│独立行政法人労働政策研究・研修機構

3.従業員のセルフケア推進

更年期障害に苦しむ従業員自身も、症状に対してどのように対処すればよいかわからない場合も多いでしょう。従業員自身がセルフケアについて学び、症状を軽減できるような取組を推進していくことが求められます。

例えば、更年期障害の原因である自律神経のバランスを整えるような研修やプログラムの運営などの施策です。食事や運動、睡眠などの生活習慣を適正化する意識付けを行い、従業員が症状とうまく付き合うことを支援します。

4.早期受診の勧奨

更年期障害は治療を受けることで症状が軽快する可能性があります。しかし、以下のように、更年期障害を自覚しても受診しない割合は多いとされています。

  • 40~49歳・女性:81.7%
  • 50~59歳・女性:78.9%

症状により業務に支障をきたしている場合は、従業員に受診を促すことも求められます。ただし、病院に抵抗感があったり、治療のための時間確保が困難であったりすることから、受診を拒否するケースもあるでしょう。

病院への受診は、従業員にとって想像以上にハードルが高いものです。ただ勧奨して受けてもらうのではなく、従業員に納得した上で受診してもらうことが大切です。
業務を調整した上で時間を確保したり、受診にかかる費用を負担したりするなど、安心して受診できるサポートが必要でしょう。

参考:「更年期症状・障害に関する意識調査」について│厚生労働省

受診の目安

受診を促す判断基準として、重症度を評価するスコアを参考にするとよいでしょう。以下のように、女性の更年期症状の評価には「SMIスコア」、男性には「AMSスコア」が用いられます。

【SMIスコア】

SMIスコア

【AMSスコア】

AMSスコア

出典:「更年期症状・障害に関する意識調査」について│厚生労働省をもとに作成

5.働く環境の柔軟化

更年期症状への配慮に関する調査では、上司や同僚など周囲の理解と並んで、以下の休暇取得や人員配置のニーズが高い傾向があります。

  • 休暇制度や時短勤務など仕事との両立を図るための支援:68.2%
  • 業務分担や適切な人員配置:58.0%

体調不良や治療のための休暇を取りやすい環境整備が求められています。休んでしまったとしても、業務分担が適切に行われる組織運営や人員配置が必要です。また、時短勤務や時間単位での休暇取得など、柔軟な休暇制度があると治療との両立を図りやすいでしょう。

参考:生理やPMS、更年期……職場における女性の健康課題を徹底調査(3)│働く女性のウェルネス向上委員会

更年期障害に配慮した企業事例

更年期障害に配慮した企業事例

更年期障害に対して、企業はどのような配慮を行えばよいのでしょうか。健康経営銘柄2024に選出されている企業から、女性の健康課題に取り組む2つの事例を紹介します。

丸紅株式会社

総合商社として事業を展開する丸紅株式会社では、女性従業員を対象に「フェムテックプログラム」を試験的に実施しています。月経、更年期の不調に対するオンライン診療や相談、服薬指導を行い、プレゼンティーズムの改善に取り組んでいます。

プログラム参加後のパフォーマンス発揮度は17%改善し、重~中度の症状軽減効果がみられました。

参考:健康経営│丸紅株式会社
参考:健康経営銘柄2024選定企業紹介レポート│経済産業省

株式会社ディー・エヌ・エー

株式会社ディー・エヌ・エーは、社員の健康推進を専門に扱う「CHO室」を2016年から設置しました。常駐の産業医や保健医、人事総務部門と連携し、従業員のヘルスリテラシー向上に取り組んでいます。

女性の健康課題に対しては、更年期や月経不調などをテーマに年2回のセミナーを実施しています。更年期障害の治療に必要な婦人科診療の利用費補助も行っており、仕事と治療の両立がしやすい制度が特徴的です。

参考:従業員とともに│株式会社ディー・エヌ・エー

更年期障害には周囲の正しい理解が重要

更年期障害は、40~50代の女性だけでなく、男性にも影響する健康問題です。多彩な症状が原因で、生産性の低下や離職につながる可能性があり、企業が積極的に取り組む必要があります。

従業員への配慮を行う上で大切なのは、更年期障害への正しい理解を促し、症状があっても働ける職場環境を整えることです。産業医や保健師など、更年期障害に詳しい専門職と連携し、症状に悩む従業員に柔軟な対応を行っていきましょう。

株式会社エムステージでは、産業医や保健師の紹介からメンタルヘルス領域まで、産業保健のあらゆるお悩みに対応するサービスを展開しています。人事労務課題にお困りの方はぜひ一度お問い合わせください。

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