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<産業医コラム>-謹賀新年2025-

明けましておめでとうございます。
快活気分で新年をお迎えのことと思います。
 
こんな快活さが、正月以降もずっと続いていたいものですね。
だって気分がよければ、意欲も出るし、仕事もうまくいく、友人関係も職場の人間関係だってうまくいきます。何かとストレスの多い人間関係を快適な環境に変えることができるなら、これ以上の武器はありません。
さて、ではどうすると、自分も人も快活で快適な気分になれるのか。自分が快活でいるということと、人が快活になるということを、ちょっと考えてみることにしましょう。

-自分が快活になる-

そもそも快活だという場合、「体」の快活さと、「心」の快活さの、両方がそろっていないといけません。「体」のどこかが悪いとか、あるいは「心」に気がかりな部分があるなどしたら快活どころではありませんよね。
でも考えたら、「体」のどこかに不具合はよくあるものだし、「心」の中に何一つ懸念がないという人もそう多くありません。ということは、快活でいるということは意外と難しいことのように思えます。

でも経験則で言えば、「体」に多少の違和感があっても、「心」に多少の懸念事項があっても、快活さを感じる瞬間はあります。たとえば、自分が何かを達成した時だったり、プレゼントをもらった時だったり、本や映画で感動した時だったり、我を忘れて誰かとおしゃべりした時など、快活な気分が沸き起こってきます。
また単純に、激しい運動をした直後の時だって、それなりの快活さや爽快さを感じることができます。ということは、快活さは、体の痛みや心の懸念と同居していて、これらが存在していても瞬間的に突き破って沸き起こってくる気分であることに気がつきます。

ちなみに、体の痛みや心の懸念は、脳の中で自律神経が不安定になっていると増幅されることがわかっていますので、自律神経を整えることができれば、これらを調整することができることになります。自律神経を調整するというのは神経を安定化させることなのですが、じつは脳全体を安定化させる必要があって、脳を安定化させる方法となると、やはり十分な睡眠しかありません。
実際に睡眠が取れていないと、必要以上に体の痛みを感じますし、心の懸念は実際以上のストレスに感じることは体感的にもお分かりいただけると思います。

たっぷりと睡眠することで脳が本来の機能を取り戻せば、生物は自然とポジティブになっていくようになっています。脳の前頭葉が安定化するので、おのずと意欲、活力、高度な感情管理力が回復して、気分は快適になり、開放的、前向きな気持ち、希望的な考えが出てきます。それらは、中脳にある動物的な機能である偏桃体や辺縁系を抑制しますので、不必要な不安や恐怖、抑うつ感を抑えます。つまり体の痛みと心の懸念は低減化されて、快活さの発現頻度が相対的に増えることになるのです。快活さと睡眠との重要な関係性をご理解いただけたと思います。

-人が快活になる-

次に、自分以外の人の快適、快活を考えてみましょう。最近、職場の労働生産性を上げようと、ワークエンゲージメントという概念に注目が集まっています。ワークエンゲージメントの定義は「仕事に誇り(やりがい)を感じ、熱心に取り組み、仕事から活力を得て活き活きしている状態」ということなのですが、この状態はもちろん個人の健康面にも影響を及ぼします。ワークエンゲージメントが高い人ほど、抑うつ度は低く、不安も低く、心理的苦痛も低く、高感度CRP(体内の炎症を示す血液物質)も低いことが証明されていて、またこの状態は、良質な睡眠がとれるようになることもわかっています。これは、脳が安定し個人の快活さを維持するという意味でも経験則とも合っています。

このように、ワークエンゲージメントが高いと人を健康にして、かつ人の快活さも向上することはわかっているのですが、逆に、快活さがあるとワークエンゲージメントが高まるか、については特段の証明はありません。ただしかし、快活な連中が集まっていて、そこに、いい仕事、いいリーダー、やりがい、があるのなら、放っておいてもエンゲージメントは上がりそうです。
最近の研究では、エンゲージメントは人に伝染することがわかっています。リーダーや管理職のエンゲージメントが高ければ、それに影響されて職場のエンゲージメントも上がっていくのです。これも体感的に納得できますよね。
となるとこういう法則になります。あなたの快活さはあなたのエンゲージメントを上げます。あなたのエンゲージメントは、周囲のエンゲージメントを上げます。エンゲージメントが高まった周囲の人には快活さが同時に発現します…、というポジティブサイクルが起こるという法則です。
となると、事の始まりは、あなたから!ということになります。
今年もあなたから仕掛けてください!周りはそのリズムで快活さが始まります。
今年もよい年になるに違いありません。

文章出典:人事・総務向け「ウェルビーイング経営」サポートメディア「ウェルナレ」専門家記事より寄稿

浜口伝博

浜口伝博

(はまぐち・つたひろ) 産業医科大学医学部卒業。病院勤務後、(株)東芝(1986~1995)および日本IBM(株)(1996~2005)にて専属産業医として勤務。その後、Firm & Brain(有) を設立し開業型の産業医として独立。大手企業を顧客企業としてもち、統括産業医、労働衛生コンサルタントとして活躍するかたわら政府委員や医師会、関係学会の役員を務めながら、産業医科大学をはじめ、慶應義塾大学医学部講師 (非常勤)、愛媛大学医学部講師(非常勤)を兼任。

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