制度を変えるだけでは自分ごとにならないーインテージグループの働き方改革


国を挙げて取り組む「働き方改革」。長時間労働の是正やワーク・ライフ・バランスの実現を目指し、制度改革や業務改革を進める企業が多いなか、あえて細かな制度や残業時間規制などを設けず、「時間と場所の自律的な選択」にのみスポットを当て、社員の「プロフェッショナリティ」に主眼を置いたのが株式会社インテージホールディングスだ。

改革がはじまって約半年、取り組みへの手応えはあるのか。「インテージグループ『働き方改革』プロジェクト」マネージャーの松尾重義(まつお しげよし)さんにお話を伺った。


働き方改革の目的は「時間と場所のコミット」からの転換


――インテージグループの働き方改革の歴史は古く、過去にも多くの取り組みがなされていたそうですね。


当時は「働き方改革」という名前はありませんでしたが、「あれもそうだった」という思いです。

当社がフレックスタイム制を導入したのは1990年代のはじめで、当時から働き方に対しては高い意識を持っていました。さらに2005年、ひばりが丘から秋葉原へのオフィス移転をきっかけにフリーアドレス導入や社員全員へのPHS支給など、先進的な働き方を模索しました。

ただ、社員数が増えるにつれて理想と現実とが乖離する部分が出てきたこともあり、その都度、制度は変更、修正をしつつ運用しています。


――では、現在の働き方改革ではどのような取り組みをされているのでしょうか。


今年4月から実施している第12次中期経営計画の重点課題として、「働き方改革」へのチャレンジを掲げています。もともと残業時間も月20時間程度と、恒常的に多いわけではなかったこともあり、残業時間の削減のみを働き方改革のゴールにするつもりはありませんでした。

働き方改革の目的は、社員一人一人の「プロフェッショナリティ」を高めること。そのためには、個人が仕事を進める上での制約から解放され、最大限に裁量を発揮してクライアントに対し価値を提供することが必要となる。これこそが、私たちの考える「働き方改革」です。

その際に制約となるのが「時間」と「場所」。そこで実施したのが、コアタイムをなくすこととリモートワークだったのです。グループの多くの会社では、これまで10時半から3時のコアタイムがありましたが、これを撤廃し、フルフレックス制度の導入を進めています。リモートワークは回数制限を設けず、個人の事情に応じていつでも活用できるようにしています。「時間と場所のコミット」からの転換ともいえると思います。


こういった働き方改革の方針はインテージホールディングスが発信していますが、具体的な手法はグループ各社が考え、独自に取り組んでいます。


成果を発揮できる条件はひとり一人で違う


――取り組みをはじめておよそ半年が過ぎましたが、効果は出ていますか。


取り組みを開始しているグループ会社は、それぞれ開始から1か月後と4か月後に、取り組み後の意識変化にフォーカスしたアンケートを行っています。フリーコメントでは、「通勤のストレスが減った」「家族と夕食を摂る時間ができた」「仕事への集中力が増した」というものから、「何も変化はない」「部署ごとのルールを上から決めてほしい」など、様々な意見がありました。

これを言うと驚かれることもあるのですが、肯定的な意見も、否定的な意見もすべてグループ全体に公開しています。そうすることで互いの考え方の違いに気づき、各々が働き方について考えるきっかけにしてほしいと考えているからです。


――まずは気づきのための材料を提供すると。


そもそも我々はフルフレックスやリモートワークという手法にこだわっているわけではないのです。もとより「オフィスで働いてはいけない」というメッセージは出していませんし、オフィスに来る必要があるのなら、きちんと来てほしいとアナウンスしています。オフィス以外でできることを増やしていく必要はありますが、「リモートワークが絶対」「オフィスワークが絶対」ということはしたくないのです。

アンケートのコメントなどからもうかがい知ることができましたが、成果を最大限に発揮できる条件は社員ごとに違います。それに気づけるようになっただけでも、取組みとしてはいいスタートを切ったかと考えています。


――部署によって、またリーダーによっても受け止め方に違いが出てくるのではないかと思いますが。


そうですね。職場単位で見ても、それぞれの社員には多様な生活背景がありますので、「うちの部署にはそのやり方は馴染まない」といった声も出てくることは当然だと考えています。リーダーには、メンバーの違いを理解したうえで、チームとしてどのようにやっていくかを考えることを求めています。

自分たちのやり方を選ぶという過程を大切にしたいと考えているからです。


自分たちのコンディションは、自分たちで整える


――10月から新しい取り組みをはじめられたと聞きました。


仕事でパフォーマンスを上げるには、日々のコンディションは重要です。それは「健康」というより「体調」ですね。コンディションを整えるために不可欠な「食」に着目し、10月から秋葉原オフィスでランチの出張販売をはじめました。

ここでも会社から「これを食べるべき」というのではなく、個人のコンディションは自分で考えてほしいと思い、複数の業者でトライアルをし、その中から選択する方法をとりました。


1社は選択に迷うほど、お弁当の種類が豊富な業者。もう1社は、調味料や食材にこだわりがあり、容器回収など環境にも配慮するといった特徴がありました。この2社でトライアルをして、社員アンケートをとった結果、後者の「調味料や食材にこだわりがある業者」に決定しました。社員の中には、自発的にホームページなどで調べ、選択した方の業者の、食にかける姿勢を評価した人もいました。

ランチ施策も、働き方改革についても、会社が選んだのではなく、社員のみんなで選ぶというプロセスが大切なのだと考えています。食も労働も日々のことなので、会社からおしつけても継続するのは難しいですからね。


――あくまでも「自分たちで選択していく」という過程を重視されているのですね。


働き方改革を「自分たちで自分たちのコンディションを整えていくこと」について考えるきっかけにしてほしいと思っています。制度を変えるだけでは“自分ごと”になりません。いろいろなやり方があって、いろいろな考え方があることにまず気づく。そしてその中から自発的に選び取ることで、初めて“自分ごと”になっていきます。

これからの時代は「時間」という尺度だけで仕事のパフォーマンスをとらえていくのは難しくなっていくでしょう。その時、どんな選択が自分の仕事のパフォーマンスを最大限に発揮できるのか、各々が考えて選択していってほしいと思います。

さらに言うと、その選択はいつでもその時の自分にとって最も良いものにしていくべきだと考えます。もちろん制度自体についてもです。今年いいものが、将来もいいかどうかわかりませんからね。


――今後の展望を教えてください。


仕事のパフォーマンスを上げるためのコンディショニングについて、さらに取り組んでいきたいと考えています。

ランチもそのきっかけのひとつですが、仕事とプライベートの両立や、組織やチームで働くうえではコミュニケーションの質や接点も重要になるでしょう。いい取り組みはシェアし、実践している人の声を取り上げていきたいと思っています。

一例として、子育てをしながらマネージャーとして働く女性社員の座談会を人事広報ブログ「ワークスウェブ」に掲載しています。働き方改革の取り組みをどう活用しているか、参考になる事例があれば今後も積極的に情報交換していきたいですね。

プロとして自律し、価値を提供していくために、社員一人ひとりが蓄積した知見をいかに共有するのか、前向きなコミュニケーションが生まれることを期待しています。今はまだ現場での個々の取り組みに任せているところですが、次は個人やチームの成果にどうつなげていくかについても皆で考えていきたいと思っています。


サンポナビ編集後記

一貫して「自分たちで選択していくことが重要」と強調されていた、松尾さん。特にランチの出張販売のお話は、ご自身の「食」にかける熱い思いもあり、盛り上がりました。食も仕事のパフォーマンスに大いに影響する。でも日々のことだからこそ、押しつけがましくしたくないので、社員自身が選択し、自分のパフォーマンスに注意を払ってほしい、とのこと。

あくまでも社員の「自律」に主眼を置いたインテージグループの働き方改革は、“制度ありき”ではない、“制度を選び取る”取り組みでした。


プロフィール:松尾 重義(まつお しげよし)


株式会社インテージホールディングス 
人事戦略統括グループ シニアマネージャー

NTTデータ経営研究所、シグマクシスの人事コンサルティングマネージャー、クックパッド株式会社人事部などを経て現職。「インテージグループ『働き方改革』プロジェクト」マネージャーを担当。社員のパフォーマンスを上げるための『働き方改革』施策に日々取り組んでいる。

文/坂口鈴香


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