産業医”契約書”とは?契約時のポイント・注意点を紹介
最終更新日:2023年7月19日
事業場の従業員が50名になったら、企業は産業医を選任しなければなりません。
そして、産業医の選任時・交代時には契約書を交わします。
本記事では、産業医との契約形態や契約書のテンプレートをテーマに、ポイントと注意点を紹介します。
目次[非表示]
産業医との契約:従業員50名以上で選任が義務に
従業員が50名を超えたら、産業医の選任・契約が必要
事業場の従業員が50名になった場合、産業医と契約・選任することが企業の義務となります。
産業医は、従業員が安全で健康に働くために欠かせない存在であるため、選任義務を果たすためだけに産業医と契約することはおすすめできません。
必ず、自社に合った産業医を選任し「どんな産業医と契約するか」という視点で産業医を探すとよいでしょう。
なお、産業医の主な業務には次のものがあり、これらの業務に対応できる産業医と契約することが大切です。
●産業医が行う主な業務の例
・労働環境や健康増進に対する指導
・長時間労働に対する面接指導
・作業環境管理
・職場の定期巡視
・就労制限、就労上の配慮や就労可否の判断
・病気と業務の関連性の判断
・健康診断の結果に対する指導
・休職・復職判定 など
産業医選任の「契約書」について内容・テンプレートを紹介
産業医との契約書に記載しておくべき内容
選任する産業医を見つけたら、産業医と契約書を交わしましょう。
また、産業医契約書の内容としては、自社の産業医として選任する旨の契約だけでなく「産業医にどのような職務を行なってもらうか」や「情報の取扱い」「報酬」などについて定めておくことが推奨されています。
●産業医との契約書に記載する主な内容
- 産業医の選任
- 産業医の職務内容
- 産業医の責務
- 情報の取組いについて
- 報酬
- 補償
- 契約の有効期間
- 反社会的勢力との関与について
- 協議 など
※出典:日本医師会「産業医契約書の手引き」を元に作成
産業医選任では契約書のテンプレートを活用
産業医の選任時や交代時、また契約を見直す場合には、契約書を取り交わす必要があります。
また、日本医師会をはじめ、(独立行政法人)労働者健康安全機構などでは、産業医契約書のテンプレート(ひな形)を案内しているため、自社にあった産業医契約書を探し、使用するとよいでしょう。
※労働者健康安全機構「中小企業事業者のために産業医ができること」を元に作成
産業医契約書と選任報告書は何が違う?
産業医を選任する際に必要な書式の一つに「産業医選任報告書」があります。
これは、産業医を選任したことを記載し、労働基準監督署に提出するものですので、産業医と交わす契約書とは異なる書類です。
ちなみに、厚生労働省の選任報告書テンプレートは厚生労働省のホームページからダウンロードできます。
また、2019年より、産業医の選任報告書は厚生労働省のホームページ上で作成することも可能になりました。
産業医の選任に関連する書類作成については、下の記事にまとめていますのでチェックしておきましょう。
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産業医との契約形態2種:直接雇用と業務委託とは
専属産業医に多い「直接雇用契約」
次に、産業医との契約形態についてです。
産業医との契約形態には、大きく分けて「直接雇用契約」と「業務委託契約」の2種類があります。
直接雇用契約は、その名の通り企業が産業医を直接的に雇用するものですので、契約社員等と同様に雇用契約書を交わすことになります。
主に、従業員規模の大きい事業場において、専属産業医を選任する際、産業医を直接雇用として契約するケースが多いです。
専属産業医は、社員のように企業に常駐することが多いため、直接雇用契約を行うことが一般的といわれてます。
嘱託産業医、紹介会社を介するケースに多い「業務委託契約」
一方の「業務委託契約」は、月に1回程度の訪問がメインとなる嘱託産業医との契約形態といえます。
特に、医師の紹介会社等を利用して、産業医を選任した場合は、ほとんどのケースで業務委託契約になります。
しかし、医師紹介会社を介したからといって、必ずしも業務委託契約になるとは限らず、産業医を選任する企業の希望によっては、直接雇用契約となる場合もあるのです。
医師紹介会社が仲介し、産業医と業務委託契約を結ぶことのメリットは「医師に対する意見を紹介会社が伝えてくれる」ことや、「企業と産業医の間に入り、産業保健活動をサポートしてくれる」といったことが挙げられます。
産業医と契約書を交わす際の注意点
契約書の業務を遂行してくれる産業医を選任する
産業医の選任時には「産業医の名義貸し状態」に注意してください。
名義貸しとは、産業医を選任し「当社でこんな産業保健活動をしてください」と、契約書まで交わしたものの、実際には職場に訪問しない・活動しない産業医のことです。
また、産業医に訪問を依頼しても「忙しいから」等といった理由で、なかなか職場に来てもらえないケースも多く存在するようです。
しかし、産業医が名義貸し状態であることは、従業員の健康維持が困難になるだけでなく、労働安全衛生法(※)の違反になります。
このような事態にならないためにも、契約書に記した業務内容に対し、しっかりと取り組んでもらえる産業医と契約することが大切です。
※労働安全衛生法
第十五条 産業医は、少なくとも毎月一回(産業医が、事業者から、毎月一回以上、次に掲げる情報の提供を受けている場合であって、事業者の同意を得ているときは、少なくとも二月に一回)作業場等を巡視し、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。
一 第十一条第一項の規定により衛生管理者が行う巡視の結果
二 前号に掲げるもののほか、労働者の健康障害を防止し、又は労働者の健康を保持するために必要な情報であって、衛生委員会又は安全衛生委員会における調査審議を経て事業者が産業医に提供することとしたもの
出典:労働安全衛生法
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産業医と契約書を交わす前に注意すること
上述したように、選任する産業医は慎重に選ぶことが大切です。
企業の産業保健活動をしっかりサポートしてくれる産業医と契約することは、生産性の向上や休職・離職リスクの低減など、さまざまなメリットがあります。
ですので、産業医と契約書を交わす前に「本当に自社に合った産業医だろうか」と注意することも必要といえます。
「選任後、産業医に活動の意思を伝えられるか心配だ」
「選任後、産業医とのスケジュール調整に不安がある」
といった場合には、アフターサポートつきの産業医紹介サービスを利用することも検討してみましょう。
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