産業保健師とは?働き方・企業における役割・産業医との違いを解説

企業で働く保健師は「産業保健師」と呼ばれ、健康経営のキーパーソンとして注目を集めています。

では、産業保健師の役割や専門性とはどのようなものでしょうか?また、産業医との役割の違いは何でしょうか?

産業保健師の役割や重要性について紹介します。

目次[非表示]

  1. 1.企業等で健康管理を行う産業保健師とは?
    1. 1.1.産業保健師とは、企業の健康管理を担う専門職
    2. 1.2.保健師の総数は55,595名。うち企業で働く「産業保健師」は3,789名
  2. 2.健康経営の推進により、その役割に注目される産業保健師
    1. 2.1.産業保健師の役割は、従業員・企業・産業医をつなぐコーディネーター
  3. 3.産業保健師の役割~産業医との違い
    1. 3.1.法的義務から見た産業保健師と産業医の違い
    2. 3.2.健康状態がグレーゾーンの従業員へ早期フォローアップができる
  4. 4.企業が産業保健師を導入するメリットは?
    1. 4.1.産業保健師は〈企業と産業医〉をつなぐ医療専門のコーディネーター


企業等で健康管理を行う産業保健師とは?

産業保健師とは、企業の健康管理を担う専門職

まず、「産業保健師」の前に、「保健師」について説明すると、保健師とは人々の病気やけがを予防するための保健指導に従事する人のことです。

つまり、産業保健師とは、企業において働く人の健康を管理する保健師のことです

保健師は看護師や助産師と同じ「看護職」であり、保健師になるためには、保健師国家試験と看護師国家試験の両方に合格する必要があります。

保健師の主な働き方としては次のものがあります。

  • 行政で働く「行政保健師」
  • 学校で働く「学校保健師」
  • 病院で働く「病院保健師」
  • 企業で働く「産業保健師」


保健師の総数は55,595名。うち企業で働く「産業保健師」は3,789名

2022年に厚生労働省から発表された「令和2年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」によると、2020年末時点で保健師の就業状況は55,595 人(2023年3月時点で最新の内容)

そのうちの大部分を占めるのは「都道府県」や「市町村」、「保健所」で働く行政保健師と呼ばれる方々であり、その数は27,967 人とされています。

一方、企業や工場などの「事業場」で働く産業保健師は3,789人。

保健師全体で見ると全体の6.3%が企業(事業場)にて産業保健業務に携わっています。



健康経営の推進により、その役割に注目される産業保健師

産業保健師の役割は、従業員・企業・産業医をつなぐコーディネーター

「働き方改革」が進んだことで、産業医に求められる業務も増加しました。

同じように、企業には数多くの健康に関する対応が迫られているため、人事労務担当者の負担が増えていることも課題となっています。

厚生労働省はその対策として、企業の担当者・産業医・産業保健師などの専門職が「チームとなって産業保健活動をすすめる」ことを推進しています。

産業医と人事労務担当者の負担を軽減しつつ、従業員の健康を確保するためには、この「産業保健チーム」の構築が効果的です。

具体的には、これまで産業医のみが行ってきた業務を、医療専門職である産業保健師と分担することです。

これにより、産業医が行う業務の質の向上が期待できます。

産業保健師には、産業医と企業をつなぐコーディネーターとしての機能もあるため、円滑な保健活動を可能にします。

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産業保健師の役割~産業医との違い

法的義務から見た産業保健師と産業医の違い

従業員が50人以上の事業場では産業医の選任が義務付けられていますが、保健師の選任については定められていません。このように、産業医と保健師では法的な義務の違いがあります。

産業医と比較した時、産業保健師の強みとなるのは、企業担当者・従業員との“距離の近さ”が挙げられます。

産業医を選任している中小企業では、産業医が月に1回訪問するケースがほとんどです。

また、専属産業医のいる大企業の場合では産業医が常勤しますが、従業員数が多いため、その分産業医と従業員一人一人との接点は限られてしまうことがあります。


健康状態がグレーゾーンの従業員へ早期フォローアップができる

産業医が従業員の不調を認識する主なタイミングとしては以下のものがあります。

①健康診断の結果に異常の所見があると判断された場合

②ストレスチェックで「高ストレス者」と選定され、面談を希望する場合

③時間外・休日労働時間が1月あたり80時間を超え、面談を希望する場合

④時間外・休日労働時間が1月あたり100時間を超えた場合

⑤本人から面談の希望があった場合    など

こうしたタイミングが主なきっかけで産業医との接点を生まれますが、その一方で、面談の段階になるまで産業医が従業員の不調を把握しにくいことや、面談対象の基準には達しないものの軽度の不調を抱えた従業員への対応が難しい状態ともいえます。

産業保健師の強みは、この点のフォローが可能になることです。

日頃、健康の相談窓口として機能する産業保健師は、従業員にとって身近な存在となるため、潜在している問題の早期発見に期待できます。

産業保健師も専門的な知識を有していますので、都度、的確なアドバイスが可能となります。

産業保健師の役割は、従業員それぞれの健康状態を総合的に把握し、早期のフォローアップへつなげることができる“身近な医療専門職”です。


企業が産業保健師を導入するメリットは?

産業保健師は〈企業と産業医〉をつなぐ医療専門のコーディネーター

企業が産業保健師を導入するメリットは、産業保健師が労働者や人事労務担当者、産業医などをつなぐコーディネーター役になることで、企業の産業保健活動をより強化できることです。

保健師は第一種衛生管理者免許を受けることや、ストレスチェックの実施者になることができます。

日ごろのメンタルヘルスを含む保健指導や健康相談、健康教育のほか、職場復帰支援や治療と仕事の両立支援など、幅広い産業保健活動の業務を担いますので、産業保健体制を強固なものにしたい企業にとって、産業保健師は心強い存在になるでしょう。

認定されることで企業の大幅イメージアップにつながる「健康経営優良法人」。認定される企業では産業保健師を導入している事例も多く、保健師の活躍に期待が高まっています。

健康経営に大きく貢献できる産業保健師の導入を検討してみてはいかがでしょうか。


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