〈保健師解説〉仕事とうつ。テレワークにおけるセルフケアの大切さとポイント

仕事のストレスや長時間労働は、メンタルヘルスに大きな影響を与えます。

また、昨今ではテレワークの普及など働き方そのものにも変化が起こり、ストレスの要因となっているケースもあるようです。

テレワーク時に取り組めるセルフケアのポイントとその大切さについて、産業保健師の本田和樹さんにお話しを伺いました。


コロナ禍、テレワークで働くからこそ大切になる「セルフケア」

お話を聞かせていただいた保健師の本田和樹さん

うつにはどのような症状やサインがあるのでしょうか。

まず「うつ状態」と「うつ病」の二つは異なりますので、その2つを知りましょう。

「うつ状態」とは、一時的に憂鬱になり気分が落ち込んだ状態で、この「うつ状態」が長期化・重症化することで、脳とこころのエネルギーが低下してしまいます。

この病的な状態のことを「うつ病」といいます。

うつのサインには「気分の落ち込み」や「集中力の低下」をはじめ、「何をしていてもつまらないと感じる」ことなどがあります。

数日も経つと、多数の人が回復し「また元気に頑張ろう」と思える力を持っているのです。

しかし、時間が経過しても気持ちが沈んだままになってしまうことがあります。

このような症状があればうつ病の黄色信号といえますし、2週間以上も続くような場合は赤信号となります。


テレワーク従業員がセルフケアを行うことの大切さについて教えてください。

厚生労働省の「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」には「メンタルヘルスケアは、セルフケア、ラインによるケア、事業場内産業保健スタッフ等によるケア、事業場外資源によるケアの「4つのケア」が継続的かつ計画的に行われることが重要」と記載されており、「健康づくりは労働者自身が、ストレスに気づき、対処すること、いわゆる「セルフケア」の必要性を認識することが重要である」と述べています。

セルフケアは最も基本的なメンタル・フィジカルヘルス対策です。

健康に関する正しい知識や適切な行動を身につけることで、予防的な行動をとったり、自発的な相談行動をとるようなことができるようになります。

特にコロナ禍でテレワークが増える中、「孤独感」や「コミュニケーション不足」、「生活リズムの乱れ」、「運動不足」などメンタル・フィジカルともに弱まってしまう状況にあるので、自宅で自分自身で行えるセルフケアは一番身近な方法であり、簡単に行える対策であるかと思います。


個人で取り組めるセルフケアには、具体的にどのような方法がありますか。

「セルフケア」の基本は「自分自身のストレス(ストレス要因・反応)に気づく」ことです。

自分のメンタルが悪化していることに気づかない従業員は少なくありません。

まずは、ストレスチェックを行うことを勧めます。(サイト「こころの耳」に「5分でできる職場のストレスチェック」の使用がおすすめ)

実施することで、不調レベルを自分自身で把握できるようになり、セルフモニタリングが可能となります。

次に、ストレスに対する対処行動をとることが大切です。

例えば、テレワーク中に仕事とプライベートのONとOFFができなく疲労感が強い場合、休み時間になったら一切パソコンを見ず、TVを見たりや散歩をすること。

また、テレワーク開始前に仕事着に着替えて、整髪や化粧など身だしなみを整えることや、家の中にワークスペースを作り、仕事が終了したら、ワークスペースから離れることなどが良い方法だと考えます。

そのほかにも、出勤する時と同じような生活習慣を維持する、自宅でエクササイズやストレッチをする、他従業員と密に連絡をとる、7~8時間程の睡眠時間を確保する、身の回りの整理整頓をすることなどが考えられます。

もう一つは、ポモドーロテクニックという時間管理術を試してみてもいいと思います。

ポモドーロテクニックとは、タスクを一つ選び、タイマーを使って自分が決めた取り組みを25分間集中して実行し、その後に5分程休憩を取ります。それを4回繰り返し、20分程長い休憩をとる方法です。

これは仕事の生産性を上げるための方法ですが、反面慣れないとストレスがたまる可能性があるため無理せず進めていく必要があります。


「4つのケア」を上手に活かし、メンタルヘルス対策を

セルフケアの効果を高めるポイントがあれば教えてください。

セルフケアはメンタル・フィジカルヘルス対策の基本ですが、この方法だけでは効果の限界があるかと思います。

そこで、前述した「ラインによるケア」、「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」、「事業場外資源によるケア」)を組み合わせることでより効果的な対策ができます。

「ラインによるケア」は上司が部下の健康状態や職場環境を把握して、ケアすることです。

部下から上司に相談をするというセルフケアも必要ですが、上司は日頃から意識的に声かけを行い、コミュニケーションを取るようにすることがより大切となっていきます。

「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」は産業医や保健師など専門スタッフによるケアのことです。

自分自身で利用していく意志がないと無駄なものとなってしまうので、企業のルールとして定期的に専門スタッフとの面談時間を設けさせるようなものをたてることも必要かと思います。

「事業場外資源によるケア」は企業以外で対応してくれる機関・施設によるケアのことです。

具体的には病院やクリニック、保健所、EAP(従業員支援プログラム)が考えられます。

こちらも個人の意思に委ねられるため、事業場外資源を上手く活用できるような企業の施策が必要になっていきます。


適切にセルフケアを行っても、なお不調になってしまった場合、どのようにすべきでしょうか。

健康の専門家に相談することが大切です

具体的には「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」と「事業場外資源によるケア」を上手に活用していく必要があります。

一番身近にいる上司に体調の相談することのハードルは高くなく簡単そうですが、上司がストレスの原因だったり、上司に知られたくないこともたくさんあるかと思います。

その時は企業にいる専門スタッフである産業医や保健師、心理士などに相談することを勧めます。

相談者の同意がない限り、個人情報は守られるため安心ですし、専門的な知識を持っているため的確なアドバイスを受けることができます。

しかし、産業医しかいない企業では、なかなか活用できないこともあるでしょう。

その際は、ためらわず病院やクリニックに受診する、カウンセリングを受ける、EAPを使用するなどの方法をとってください。

早期の行動は疾患予防、治療期間の短縮、予後良好などメリットが大きいものです。


「自分は病気になるはずがない」や「精神科病院は怖い、通うのは恥ずかしい」とは思わず、病気はだれにでもなり得るものだと正しい理解・認識を持って、行動していただければと思います。

解説:本田和樹(ほんだ・かずき)

株式会社エムステージ 産業保健事業部 産業保健師

看護師として急性期精神病院で5年間勤務したのち、2020年4月エムステージに入社。産業保健師の業務委託事業立ち上げに携わる。労働と精神衛生についての啓蒙活動、寄稿なども行う。


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