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〈産業医コラム〉献血ルームを探してみよう!~献血は不要不急の外出ではありません~

産業医 永田 明久

コロナ禍、献血に協力する方が減少

唐突ではありますが、2月は政府機関がプロモーションする「献血キャンペーン(1月1日~2月28日)」や毎月の「食育の日(毎月19日)」があります。

2021年1月7日に新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のために再度の「緊急事態宣言」が一都三県において発出され、次いで同月14日には7府県に対象地域が拡大されました。

もともと冬季は献血者が減少し、血液が足りなくなる傾向にありますが、2020年4月7日に発出された「緊急事態宣言」の際には、企業や学校での集団献血が困難になったことや「不要不急の外出」自粛要請により全国で献血にご協力いただける方が大幅に減少してしまいました。


新型コロナの治療にも、輸血は不可欠

輸血は現代医療にとって不可欠な治療法であり、新型コロナウイルス感染症の重症患者に対する人工心肺装置ECMO(Extracorporeal Membranous Oxygenation:体外式膜型人工肺)を使用する際においても、適時輸血により不足する成分を補充する必要に迫られることがあります。

もちろん輸血による治療は受ける方の安全性や医療の質等の血液製剤が本来有する危険性に着目するだけではなく、有限で貴重な医療資源であることからも、適正使用のもと慎重に実施されますが、現時点においては人工的造れない為、不足することがあります。

さらに、血液は「生もの」です。輸血には大きく分けて、「赤血球製剤」「血漿製剤」「血小板製剤」等の血液製剤がありますが、「赤血球製剤」は出血が多い場合や赤血球が非常に不足する場合等に補充するために使われます。

ただし、採血後21日間しか使用ができません。また、「血小板製剤」は血液の止血機能を持つ血小板が減少若しくは出血傾向のある場合に使われますが、採血後4日間しか使用ができません。

すなわち、絶え間ない安定供給がどうしても必要になるのです。


特に40代の女性に多い「鉄欠乏性貧血」

現在の社会情勢を鑑みると、「献血ルーム」に行くことを躊躇われる方もいらっしゃるかもしれません。

ただし、新型コロナウイルスによる不安・緊張・孤独等のストレスを抱えながら生活をしている今だからこそ、いつもより少しだけ視野を広げて、自分にできることを模索することも社会の一員としての自覚と責任なのかもしれません。

現代医療に不可欠な輸血のための献血への協力は「不要不急の外出」に当たらない為、是非「お住まいの近隣地域」にてご予約のうえ献血へ協力してみてはいかがでしょうか?

そこで、せっかく献血をしようと思い至ったのに、血色素量が少なく、断られることがあります。

献血の際の採血基準として「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律施行規則」(昭和31年6月25日厚生省令第22号)に基づき、全血採血(200mL、400mL)および成分採血(血漿、血小板)ごとに、年齢、体重、血圧、血色素量、年間採血量、採血間隔等の基準が定められており、この基準に不適合な場合は採血ができません。

例えば、400mL全血採血においては、血色素量は12.5g/dL未満である方や体重50㎏未満の方は安全性の観点から採血はできないのです(200mL、血漿成分、血小板成分採血は別基準)。

特に献血の見合わせをする原因の一つに貧血があります。血色素量が少ないことを貧血といい、その原因は多岐に及びます。

2015年の厚生労働省の調査によれば、日本人女性の約10%に貧血があり、特に月経のある女性に絞ると、その数は約20%とも言われています(40代で最多)。

貧血の中で最も多く約7割を占めるのが「鉄欠乏性貧血」です。

私たちの身体には隅々まで酸素を運ぶヘモグロビンというタンパク質が赤血球の中に含まれており、このヘモグロビンが酸素を全身に運んでいます。

しかしながら、鉄分が不足するとヘモグロビンの生成が減少し、酸素を運ぶ量が少なくなってしまいます。そうすると、身体は大量の血液を流して酸素供給量を保とうとするので、脈が速くなるため動悸や息切れを感じるようになるのです。


学校給食を参考に、食生活を見直しましょう

鉄が欠乏する大きな原因は、食事からの摂取量が不足するか出産、成長などで必要量が増加しているか、もしくはどこかから出血がある場合です。

女性は1日に約0.8㎎の鉄が失われており、月経の時には1日間換算で約0.5㎎追加されて損失するため、しっかりと食事で補う必要があります。

月経のある女性では食事から鉄を摂取する量は10.5㎎が推奨されていますが、令和元年の国民健康・栄養調査では20代が6.2㎎、30代が6.4㎎、40代が6.7㎎と不足しています。

すなわち、鉄の摂取という観点からは健康な食習慣ではないということになりますが、国民健康・栄養調査では、「仕事(家事・育児等)が忙しくて時間がないこと」が健康な食習慣の妨げになっていると回答した方が27.5%であり、「面倒くさいこと」が25.3%という結果でした。

確かに、食品中に含まれる鉄の量まで考えて食事するのは時間がないとできず、疲れているのに面倒なことではあります。

この面倒さを解決するために「学校給食」を思い出してみましょう。

2005年の食育基本法の成立以降、「食育」として、子どもたちが一生涯にわたり、健やかに生きていくことができるように「学校給食」も「生きた教材」として食に関する知識がちりばめられています。

献立表の材料には赤、黄色、緑の食品群がバランスよく入っていたはずです。赤色は主にタンパク質やミネラルが豊富な食品、黄色はエネルギーのもとになる炭水化物や脂質が豊富な食品、緑はビタミンが豊富な食品です。特に赤のレバー、赤肉、赤身の魚は「ヘム鉄」が多く含まれており、黄色や緑の卵・牛乳や野菜には「非ヘム鉄」が多く含まれています。

また、鉄と同様にビタミンB6やビタミンB12もヘモグロビンをつくるのに必要な栄養素で、ビタミンCは鉄の吸収を良くします(鉄の吸収率は10~15%程度)。


献血は「不要不急の外出」ではありません

バランスの良い食事と規則正しい生活は自らの健康を維持するために「自分にできること」としてもとても大切なことです。

しかしながら、「頭では分かっているけど行動できない」という方も多いはずです。

当に、「健康な食習慣」は維持するのが「面倒なこと」なのですから、なかなか行動に繋がらないのはとても人間らしい行動です。そして、価値観として他人からのアドバイスは受け入れがたいこともあると思います。

国民調査でも食生活に影響を与えるのは、「テレビ」と回答した方が52.3%と最も多く、次いで「家族」と回答した方が36.6%という結果でした。

不要不急の外出自粛要請により「ステイホーム」で自宅にいる時間が増えている方は、「個人の時間」「家族の時間」「パートナーとの時間」等と会話し、ピーター・F・ドラッガーが言うように自分らしく相手の話に耳を傾け、価値観の変化・相違をポジティブに解釈し、より良い信頼関係と今日と違う明日を作り出す機会にしてみても良いかもしれません。

家族と会話の際には、是非、食事の3色探しをゲーム感覚で実施し、健康診断の結果を今一度確認しましょう。

そして、健康が維持できているのならば、不可欠な医療資源である輸血製剤を確保するために感染防御が十分に行われている「献血」ルームを探してみましょう。

献血に行くことは「不要不急の外出」ではありません!

解説:永田 明久

博士(医学)、法務博士、日本医師会認定産業医・産業衛生学会専攻医、日本輸血・細胞治療学会認定医、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本血液学会専門医・指導医

※文章出典:株式会社イーウェル「健康コラム」より寄稿

永田明久

永田明久

博士(医学)、法務博士、日本医師会認定産業医・産業衛生学会専攻医、日本輸血・細胞治療学会認定医、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本血液学会専門医・指導医

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